2020年04月01日

イツキのおでかけ・6







マンションへの帰り道、ふと
黒川の事務所に立ち寄る。

丸一日留守にして少し後ろめたさがあったのか
裏手にある焼き鳥屋の匂いにつられたか。

事務所には黒川と、一ノ宮の姿があった。



「おや、イツキくん。こんばんは」
「一ノ宮さん!ご無沙汰してます。……イロイロ…、ありがとうございました。
お米とラーメンと甘納豆の箱、嬉しかったです!」
「いえいえ。ちゃんと戻って来られて良かったですね」


久しぶりに会う一ノ宮にイツキは深々と頭を下げる。
一ノ宮には本当に世話になった。実は黒川よりも頼り、頻繁に連絡を取り合っていたかも知れない。
親身にイツキを気づかい、必要なものを宅急便で送ったりもしてくれた。



「お仕事しているイツキくんも良かったんですけどね。ふふ。実は、フェスタで接客している様子、見させていただいたんですよ」
「ええ?……一ノ宮さん、いらしてたんですか?」
「端っこのほうからね。……忙しそうで、楽しそうで……」
「やだー! 声、掛けて下さいよー!」




一ノ宮はイツキに茶を淹れ、そんな話をする。一緒に買い物に行った女性から、もう一つ同じ商品が欲しいと頼まれている、と告げると
イツキは嬉しそうに微笑み、…レモンかな、ユーカリかな、と商品名をメモ書きに残していた。




デスクに向かい書類仕事をしていた黒川は、顔を上げ
「…………そんな話は聞いたことがないぞ…」という風に、一ノ宮をチラリと見遣り
ふんと鼻息を鳴らし、疎外感を誤魔化していた。






posted by 白黒ぼたん at 20:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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