2022年08月10日

木曜日の昼下がり・2








「……本当は嫌なんです。こんな事でグダグダ悩んでるの。気持ち悪い。
ほら、マサヤって……悪い男じゃないですか、そんなの誰よりも俺が知ってて
それでいて、それでも今、一緒にいるって……それだけでも十分、おかしくて」



風呂の湯が少し熱くなって来たのか、イツキは湯船の中の段差になっているところに腰掛け
上半身を出した格好で、つらつらと話を続ける。
ほんのり赤みを帯びた肌。髪の毛からしたたる水滴。つい数時間前に抱いた身体。

警戒している筈の男と、気が付けば風呂場で世間話をしているのだ。
おかしいのはイツキも相当だと、松田は思う。



「だから…もう。…考えないようにしようって思ってるんです。
考えたって仕方ないな、なるようにしか、ならないなって……」

「もうそんな心境に辿り着いちゃったの? ふふ、悟りを得ちゃったかな」

「悟りって言うか……超、強力な磁石って言うか、どうしたって結局
元のところに戻っちゃうんで……、だからもう、それはそれで置いておいて……」


イツキは前で揃えた両手を、置いておいて、と一緒に横に退かせる。
その、置いたはずのものを少し眺めて……、何を置いたのだろうかと…自分でも思う。



「だから。良いんです。別に。何があったって…、いちいち気にしないんです」

「でも、やっぱり気になっちゃって、腹いせに俺と浮気しちゃうんだよね」

「してないです」




語気を強めて言うイツキの顔は、すでに茹って真っ赤になっていて
それを見た松田は、笑いを堪える事が出来ずにいた。






posted by 白黒ぼたん at 23:38 | TrackBack(0) | 日記