2011年10月02日

真夜中のドライブ・7






「…学校?……何?…何の用事?、……仕事?」
「馬鹿か、お前は。…学校に戻りたいと言っていたのはお前だろう」

マサヤの言葉が信じられなくて、俺は、そのまま固まってしまう。

マサヤが言っているのは、俺が、また、高校生になるって事なんだろうか…。

「事務的な手続きは一ノ宮がしている。また連絡が行くはずだ。とりあえず向こうに越してから…」
「待って、待って、マサヤ。それ、本当の話し?」
「冗談ならそれでもいいぞ」

取り付く島もなく、マサヤは俺の手を払い、もう話しは終いだという風にひらひらと手を振る。
俺は、車のドアに手を掛けたまま、身体半分外に出したまま、マサヤを見つめたままだった。

「…早く降りろ。車を出す」
「…………マサヤ」



相変わらず薄い笑みを浮かべ、何を考えているか解らない表情のマサヤに抱きつく。
首の後ろに腕を回して、マサヤの胸とハンドルの間の狭いところに、身体を捻じ込む。
どこか腕が当たったのか、一度だけ、短いクラクションが鳴って
マサヤが迷惑そうに、俺を引き剥がそうとしたが、俺はそれを譲らなかった。

「……マサヤ……俺……」
「ああ、いい。解ったから、退け。…車が…」


何か言いかけたマサヤの、口を、唇で塞いだ。

それは、マサヤがいつも俺にしている事で
くだらない言い訳を止めさせるのに、一番手っ取り早い方法だった。




posted by 白黒ぼたん at 00:24 | TrackBack(0) | 日記

2011年10月03日

真夜中・最終話






長い、長い、長いキスが終わって、ようやく唇を離してマサヤを見つめる。
マサヤは俺の頭に手をやって、髪の毛を2,3度撫ぜて、それからそれを引っ張る。
「…済んだか。…もう、行くぞ?」そう言ってニヤリと笑って、俺の身体を脇に退かせる。

あまりに呆気無くマサヤが帰ってしまうものだから…後に残された俺は、まるで、夢でも見ているようだった。

マンションの部屋に戻って、ビールを一本開けて、ソファに座って、ぼんやりとする。


学校…。一年前には高校には行っていたけど…それより前から…中学の時から…マサヤと出会ってから
ほとんどまともに、学校なんて行って無かったような気がする…。
確かにずっと、学校に行きたいって言っていたけど…いざそうなった所で今更、勉強とか…友達付き合い…とか…俺に出来るんだろうかと不安になる…。
もう、「仕事」はしなくていいのかも知れないけど…それで俺が、普通の…男の子に戻った…なんて思えない。
今までに自分に起こった出来事をざっと思い出して、改めて…首を横にぶるぶると振る。


それに何より、マサヤどうして急にそんな事を言い出したのかが理解出来なくて…一層不安を煽る。


それでも…


確実に変わり出した俺とマサヤの世界に…半分、期待をして…
これがマサヤの気紛れじゃない事を祈って
残っていたビールを、一気に、飲み干した。




posted by 白黒ぼたん at 01:06 | TrackBack(0) | 日記

2011年10月05日

家具は「ニトリ」






黒川が事務所に入った時から、その小さな変化に一ノ宮は気づいていた。
およそ、らしからぬ…柔らかい空気。油断すると笑みまで浮かべてしまいそうな…

「お疲れ様です、社長。…準備はいかがですか? 契約は済みましたよ。鍵も。…明日、ニトリが来るそうなので、それまでは私が持っていても大丈夫ですか?」

デスクから顔を上げ、つとめて普通に、事務的に話をする。
貰ってきたという鍵を指に引っ掛け、チャランと鳴らして、デスクに置く。

「ああ。悪いな。そのまま頼む」

黒川はジャケットを脱ぎ、ネクタイを解き、ソファの背もたれに置く。
部屋の隅の小さな冷蔵庫から缶ビールを2本取ると、1本を一ノ宮に渡し、もう1本の缶を開け、ぐっと煽った。
一ノ宮のパソコンを覗き、書類をぱらぱらとめくり、ビールを飲み
…ふふ、と小さく、思い出し笑いをする。


「…イツキくんに話しはしましたか?…学校の件は?」
「ああ。今さっきな。あいつ…馬鹿みたいに騒いでいたぜ」
「それはそうでしょう。嬉しいんですよ…」

言葉の最後にうっかり『…あなたも』と、付けそうになって、一ノ宮は慌てて口をつぐむ。
誤魔化すように、ビールを一口飲み、思い出したように引き出しから何か封筒を取り出した。

「そうそう。学校関係の書類です。こちらの処理も済んでいます。…イツキくんのご両親にも確認済みです」
「…ふん」

その部分だけ、一瞬、黒川の顔が曇る。
それでもすぐ気を取り直し、封筒からイツキが通う高校の案内を出し、馬鹿にしたように笑う。

「くだらないな。ガキの遊びだ。こんなもんに行きたいのかね…」
「まあ…、イツキくんにも「普通の生活」があって良いでしょう」
「ま、いい暇つぶしにはなるだろうよ。こっちも、そうあいつに構ってはいられないからな。この辺りをフラフラされて、また仕事の邪魔でもされたら面倒だ」

「おや、それではまるで、厄介払いでもするような言い方ですね」

黒川に一番近い場所にいる一ノ宮にも、時々、黒川の真意が解らない時がある
こと、イツキに関しては…気持ちも言葉も行動も、すべてちぐはぐだったりするから困る。
少し、意地の悪い一ノ宮の言葉にも、黒川は「…ふ」と鼻を鳴らして
意味深な薄い笑みを、浮かべるだけだった。







…いくらタイトルが思いつかなかったからって…!!(笑)
せめてIKEA にすればいいのに〜
posted by 白黒ぼたん at 00:45 | TrackBack(0) | 日記

2011年10月06日

距離感







「…近すぎる。どうにも…馴れ合い過ぎだな…。好きとか嫌いとかの話しではなく、冷静な判断が出来ない距離だ」

ソファに腰を下ろし、何本目かのビールを飲んでいた黒川が独り言のようにつぶやく。
パソコンに向かっていた一ノ宮は丁度仕事が一区切りついた所で、パソコンをぱたりと閉じると、黒川の向かいのソファに座った。

「…「仕事」をさせないとなると…正直、させる事が無い。あいつも暇だから、くだらん事ばかりしでかすんだろう」
「それで引越しに学校ですか。…まあ、イツキくんにとっては良い事でしょう。何しろ…まだ、子どもですから…」
「…面倒なガキだよ」

黒川は静かに笑い、持っていたビールを煽る。
「次は焼酎ですか?」と一ノ宮が尋ねると、もういい、という風に手を前にやる。
ふうと溜息を付き、ソファから立ち上がると、脇に掛けていたジャケットを羽織り
テーブルの上の鍵やらケータイをポケットに突っ込んだ。

「お帰りですか?…マンションに?」
「いや。少し、用事がある」
「…明日の夜は渡辺建設の常務と会食の予定です」
「ああ、解っている。……一ノ宮」

黒川は話しながらドアに手を掛け、最後にと、一ノ宮に向き直る。

「イツキは頼む。引越しと…学校と、しばらく落ち着かないだろうが…」
「…はい」



ドアがぱたりと閉じ、黒川の姿が消えると
一ノ宮は今まで以上の、盛大な溜息を付く。

そして、

相変わらず、恋人に正面から向き合おうとしない親友に、どうしたものかと頭を抱えた。




posted by 白黒ぼたん at 01:30 | TrackBack(0) | 日記

2011年10月08日

申し訳ない…

昨日は飲み、今日は学校の用事で
1日、過ぎてしまってます。

しばらく…こんな感じかも〜

拍手ぱちぱち ありがとうございます
posted by 白黒ぼたん at 02:22 | TrackBack(0) | 日記

2011年10月11日

エスカルゴ





どこぞのガイドブックにも名前が載る、フレンチのレストランで
黒川は、フォークを持ったまま…少し神妙な顔をして、くすりと笑う。
その一瞬を見逃さなかったのか、向かいに座っていた取引相手の男が
「おや、エスカルゴはお口に合いませんでしたか?」と聞く。

「…いや。…ただの思い出し笑いですよ…」
「はっはっは。黒川さんがそんな顔をされるなんて…余程の思い出なんでしょうねぇ…。どちらの女性と食事に行かれたんですか?」
「…まあ、大した事じゃないですよ…」

黒川はそう言ってエスカルゴを指先で摘む。
フォークで器用に中身を引き出すと、口に運び、白ワインを流し込み、指先を白いクロスで拭いた。






『…や…』

そう言ってイツキは首を左右に振って、ベッドにうずくまっていた。
すでに「仕事」で散々弄ばれて来た身体をまた最初から、開き、熱くさせ、貫く。
酒か薬か、意識も半ば飛ぶ中、イツキは身体をくねらせて、窄んだ入り口から何かを出す。

『…お前、…ビー玉が出て来たぞ?……何で遊んで来たんだか…』
『…や…、…んん……、なんか…、いっぱい……入れられたの……、お腹、……いたい……』
『全部出して来なかったのか?』
『…わかんない…、………でも…、残ってる…気がする……』

仕方なく、そこ、に指を突っ込み中をくるりと掻き回す。
指先に何かが当たるので、それを追いかけると…イツキは極まった泣き声を上げて、腰をひくひくと震わせる。

『結局…これで感じているんだから…始末に終えんよな』
『…だって、…マサヤ…』

涙を浮かべた目で黒川を見遣り、さらに「ん、ん…」と声を洩らす。
黒川はそんなイツキを見ながら、指先で摘んだそれを器用に引き出す。
取り出したビー玉には、少し…汚れが付いていて

黒川は指先を、白いシーツで拭いた。







何?この話し!?
…えーと…
蝸牛つながりであせあせ(飛び散る汗)

マサヤ、もっといい思い出は無かったのかしらん…
つーかー、こんな事思い出しながらご飯食べるなよ〜〜
posted by 白黒ぼたん at 00:57 | TrackBack(0) | 日記

2011年10月12日

指輪の思い出・1





引越し前夜。
あらかた荷物も片付いて、あとは忘れ物がないかと、あちこち確認して回っていた。
そこには多分、自分のものは入っていなかったと思う小さな引き出しも開けて、覗く。
テレビが置いてあるボードの脇。
小物入れみたく引き出しが3個並んでいて…予想通りそこには、古い服の端切れやボタンや…
ガラクタめいたものが少し入っていただけだった。

けれど

ぱたんと閉めようとすると、何か、奥で引っ掛かっているのか…綺麗に閉まらない。
俺は引き出しごと、引き抜いて、中を覗く。
綿埃の中で、光るそれに、そっと、手を延ばしてみると…

そこには、赤い小さな宝石が付いた、指輪があった。



勿論、俺のじゃないし
マサヤの物でも無いだろうし…。


「……あっ」


俺は突然、忘れていた昔の光景を思い出して、小さな声を上げた。



その人は確かに…長い黒髪を床に垂らしながら頭を低くして
そこいらの物陰を覗き、引き出しを覗き、この指輪を探していた。



posted by 白黒ぼたん at 01:20 | TrackBack(0) | 日記

2011年10月13日

指輪の思い出・2






あれは多分…2年、3年前…
俺がまだ中学3年だった頃。
その少し前に、マサヤと「契約」を交して…俺は昼夜問わずこの部屋に呼び出されては、マサヤに好きなように扱われていた。

その人はリョーコさんと言って、初めて会ったのも、この部屋でだった。
リョーコさんは昔、マサヤと付き合っていて、昔、この部屋に一緒に住んでいたらしかった。
でもそれも数年前の話し。
今では付かず離れず…良い仕事仲間なのだそうだ。


『ああ、一樹くん。ごめんね、起こしちゃったかな…』
『…リョーコさん。……こんにちは…』
『ふふ。……もう、夜よ…。またあいつに、苛められた?』

酷く乱暴で残酷な時間がようやく終わって、暫く1人で寝室で眠って…何かの気配に気付いてリビングに出ると、そこにリョーコさんがいた。
長い黒髪を床に垂らし、ソファやテレビ台の足元を覗き、何か探している風だった。
それでもその時の俺は、意識が飛んでいて、記憶が切れ切れで…
気がつくと、リョーコさんが作ってくれた鍋焼きうどんを前に、ふうふうとやっていた。

『…聞いたわよ。…きみ、黒川の物になるんだって?』

こくんと頷いて、熱々のうどんを啜る。
涙が出そうになったのは、多分、うどんが熱かったせいだと思う。

『まだ中学生って言ったっけ。…ちょっときつ過ぎるよねぇ…』

リョーコさんは俺の隣に座って、心配そうに俺を見つめて、お茶を入れたり、鼻水用のティッシュを取ってくれたり。


俺が、こうしてここで、日常とはかけ離れた有り得ない状況で、どうにか生きてこられたのは
リョーコさんがいてくれたからだって、今でも思っている。
心は勿論…実際の身体のケアから管理まで…行為に慣れない俺は、色んな事を彼女から教わった。




posted by 白黒ぼたん at 01:20 | TrackBack(0) | 日記

2011年10月15日

指輪の思い出・3






『どうする?一樹くん。…おうち帰るなら送って行くけど』
『いま…何時?』
『七時。…夜のね』
『…マサヤ……黒川さん…八時に戻ってくるって……だから、俺…帰れない…』
『やだ、あいつ、戻ってくるの?』

そう言うとリョーコさんはもう一度時計を見て、まだ、その姿が無いかどうか玄関を見て
「私、ここであいつには会いたくないのよ。先に帰るわね」と慌てて、バッグに手を掛けた。
それで、俺は、最初にここで見たリョーコさんを思い出して
「リョーコさん。…何か、探してたんじゃないの?」と聞く。

バッグを持って立ち上がり、ついでに、テーブルの上のグラスをキッチンのカウンターに置いて
リョーコさんは部屋をくるりと見渡して、静かに、微笑む。
線の細い綺麗な面差しは少し儚げで、俺は、心臓がおかしくなったみたいに苦しくなる。

『指輪を…探していたの。ここ、出た時の荷物に…入っていなくて…。もう、いらない物だから…どうでも良いんだけど…』

言いながらリョーコさんは…
無意識に左手の薬指を触る。
それは、かつて、そこにあったはずの指輪を
懐かしんでいる風だった。

『…黒川さんが…くれたの?』
『…まあ、…そんなとこかな…』
『リョーコさんと黒川さんって…結婚してるの?』
『やだ。違うわよ。それに、もう…昔の事なの。だから指輪も暫く付けていなくて…』

リョーコさんは大袈裟に手を振って、照れた笑いを浮かべる。

『仕舞い込んでしまって…。解らなくなっちゃったのね…。…だから、別に、いいの』
『…いいの?』
『いいの』


そして、リョーコさんは、そのまま帰ってしまった。
「指輪の事、黒川には言わないでね」と、俺に言って。

俺は「別にどうでも良いものを」あんな風に探すのかなって思ったけれど
すぐ後に戻って来たマサヤの相手をするのに手一杯で、その事は、忘れてしまった。




posted by 白黒ぼたん at 00:10 | TrackBack(0) | 日記

2011年10月16日

指輪の思い出・4






「明日は10時に一ノ宮が迎えに来る。残っている荷物は適当にするから気にするな。
必要なものは向こうに大体揃っているはずだ。
後は…また連絡する。大人しく待っていろ」

ふいに部屋に来たマサヤは台所で水を一杯飲んで、慌しそうに煙草をスパスパやって
俺に、手短にそれだけ言って、またすぐに部屋を出ようとする。

「…マサヤ、また出掛けるの?」
「ああ。…何だ?」
「だって、…今日で、ここ、最後だよ?…何か…無いの?」
「お別れ会でもするのか?…馬鹿か!」

呆れたように鼻で息をついて、マサヤは玄関に向かってしまった。

俺は慌てて、その背中を追いかけて、マサヤの上着の裾を掴む。
マサヤはバランスを崩したようで、危うく躓きそうになりながら、壁に手を付く。
振り返りざまに怒られそうな気がしたので、そのまま、ぎゅっと背中にしがみついて

…しばらくしてから…やっと向かい合って、顔を見合わせた。


「…お別れ会なら、やらんぞ?」

意外に、怒っている風ではないマサヤに「…違うよ」と言って、

俺は、マサヤの前に、リョーコさんの指輪を差し出した。



「…テレビの…、引き出しの奥にあったんだ。……リョーコさんの指輪」

マサヤは一瞬…息を止めて、その指輪を見つめる。
記憶の片隅のそれを思い起こしているようだった。





posted by 白黒ぼたん at 01:48 | TrackBack(0) | 日記

2011年10月18日

指輪の思い出・最終話





「……そうだな、見覚えがある」
「リョーコさん、これ、探していたんだよ。…マサヤに…貰ったものだからって…」


玄関に立ったまま、しばらく2人して指輪を見つめて、無言になってしまった。

マサヤとリョーコさんがどんな関係だったのかを、マサヤから直接聞いたことはあまり無かった。
俺が知っているのは、それが、終わってからの話しだけ。
どんな出会い方をして、この部屋でどんな出来事があって、指輪を渡したのか…
今更聞くつもりは無かったけど…

マサヤにそんな心があった事が、嬉しい。



「…どうする?…これ…」
「そうだな。…お前にやる。…リョーコの形見だ」

マサヤはそう言って、珍しく優しく笑って、部屋を出て行ってしまった。



リョーコさんが亡くなったのは、俺が彼女と知り合ってから半年も経たない内だった。
悪性の腫瘍で、気づいた時には手遅れの状態で、……あっという間に逝ってしまった。
最期の時は、実家に戻っていたらしくて良く知らないけど、マサヤも…嘘だと思うけど…「知らない」と言っていたけど…
俺にはやっぱり大切な人で、思い出すのは儚げな笑顔と、抱き締められた温もりだった。

『一樹くん。…ここだけの話し…。あいつが、名前で自分のことを呼ばせるのって…君だけなのよ。
多分、すごく、惚れてるのよ。あいつ。
…必要以上に君に辛く当たるのは…自分自身、それに戸惑っているのね。

まだ、ガキね。……許してやって』

そう囁かれた言葉が、今でも、耳の奥をくすぐっていた。


リビングに戻って、テーブルの上に指輪を置く。
それから、最後に残っていたビールを一本持って来て、

この部屋の最後の夜を、リョーコさんと過ごした。






posted by 白黒ぼたん at 02:00 | TrackBack(0) | 日記

2011年10月20日

その夜のこと・1







リョーコを玄関で見送ると、部屋は急にがらんと寂しくなり、寒くなった気さえした。
イツキはリビングに戻り、リョーコが探し物をしていたテレビ台のあたりを眺めてみたが
リョーコがそうやって思いを残す指輪が、あの男があげたものだという事が、どうにもしっくりこなかった。

もとより、あの男の傍に、リョーコという女性がいた事自体が、信じられなかった。


あの男。


昨日の夜に男に呼び出されてから、イツキはずっとこの部屋にいた。
何度か抱かれ、さすがに疲れて反応が鈍くなると…次は多少、痛みを伴う事もされ
ベッドが汚れると言われれば、床に這い、泣き声がうるさいと言われれば、口に、専用の器具を詰め、
哀れでみっともない姿を晒し、さらに従順に身体を開き、男を悦ばせた。

一通りの行為が終わると、男はイツキを放り、自分だけシャワーを済ませると身支度をする。
『…おわり…?………俺、帰っても…いい…ですか……?』
と、イツキがベッドの中から声を掛けると、男は振り返り

返事をする前に、頬を一度、平手で叩く。

『…8時に戻る。風呂に入って中を綺麗に洗っておくんだな』

そう吐き捨てて、男は部屋を出て行ったのだった。



「…あ。…おふろ……」

テレビの前でぼんやりと立ち竦んでいたイツキは、デジタルの時計を見て、その言葉を思い出す。
男が戻ると言った時間まで、あと数十分しか残されてなく、慌てて、風呂場に向かった。

頭からシャワーを浴びると、どこか傷でもあるのか、身体のあちこちが染みた。
せっけんを泡立て、自分の尻に指を入れると、中から何か、どろりとしたものが流れてくるのが解った。
鏡に映った自分の姿を、横目でちらりと見てしまって、酷く気が滅入った。
涙が出そうになったけど、生憎、そんな水分はもう残っていなかった。


自分は「契約」を結んであの男のものになったのだから、何をされても仕方がないのだと、必死に自分に言い聞かせていた。




posted by 白黒ぼたん at 22:57 | TrackBack(0) | 日記

2011年10月22日

その夜のこと・2






男は宣告通り8時を少し過ぎて部屋に戻って来た。
イツキはベッドでうとうととしていたのだが、物音に気付き、…とっさに頭から毛布を被り、身を丸くする。

台所の水音。戸棚をカチャカチャとやる音。
リビングのテーブルに何かを置き、一度テレビを点けて、すぐに消して。
寝室の扉が開く音。近づく足音。ベッドの縁に腰を下ろしたのか、マットがぎしりと鳴って
サイドチェストの引き出しを開けて、何かを取り出す音。

ひとつひとつの音を拾いながら、反対に、自分の息を飲む音が聞えてしまうのではないかと…イツキは呼吸を止めてみる。
けれど、そんな事で、自分を隠す事は出来なくて…

男の手が乱暴に毛布を剥ぐと、簡単にイツキは見つかってしまい
次が、始まった。



男が持っていたのは洋酒か何かのボトルで、自分でも数回口を付けると、それをイツキの口元にやった。
つんと、鼻先に独特の匂いがついてイツキは顔をしかめるが、男は構わず唇の隙間に先端を捻じ込む。
髪の毛を掴み、頭を押さえつけて喉を開けると、ボトルを逆さにする。

「…ぐっ……はっ……」

焼け爛れるような液体が流れ込んで来る。
イツキはむせ返し、吐き出しそうになったが…男の大きな手が口を塞いでいた。
仕方なく、こくんと飲み込むと胃の中まで熱くなるようだった。

「…や……だ…、お酒……なんて…飲めない…」
「四の五の言ってないで、口を開けろ。…嫌ならケツから飲ませるぞ」
「……ゃ……」

そうやって何度も何度も、酒を流し込まれて、ボトルが半分空くころには意識も飛んでいたのだが
それでいて、身体の感覚だけは酷く敏感になっていくようだった。




posted by 白黒ぼたん at 01:00 | TrackBack(0) | 日記

2011年10月23日

その夜のこと・3






ローションを流し込まれた穴には、グロテスクな玩具が詰め込まれていた。
乱暴に掻き回され…かと思えば繊細に的確に中を擦られて、入り口ギリギリでくすぐるように揺らされて、また奥まで突かれて。
不規則に動くそれに、イツキは何度も達してしまいそうになっていたが…その都度、男はイツキの乳首に爪を立て、意識を引き戻す。

一度、気が逸れてしまうと、また最初からやり直しで、
イツキははあはあと短い息を吐きながら、腰を震わせ、次の波を待つ。

「…やっ…、あああ…ん。……んん…」

男は仰向けに寝ていたイツキの腰を高く上げると、まるで後ろ回りの途中のように、足を、頭側にやる。
柔らかい身体は簡単に屈み、自分のもの、や、玩具が突き刺さった箇所まで、イツキはに見えてしまう。

「自分のちんこでもしゃぶるのか?安上がりだな」

男は笑って、イツキのペニスを手で支え持ち、その先端を本当にイツキの口元にあてる。
そうしながら、もう片方の手で玩具を揺らし、ぐちゅぐちゅと抜き差しさせた。


酒を飲みすぎたのか、それとも快楽に馴れすぎたのか
焦点の合わない目を潤ませて、自分でもどうして良いのか解らずに、いやいや、とただ首を横に振ってみせる。
空気を欲しがる金魚のように、口をぱくぱくさせて、男の顔を見上げ
すがるように、ねだるように、男の腕を、きゅっと掴む。


「…もう、だめ。……マサヤ…」
「…何が?」


こんな、状況に陥って、何か一番、イツキを困惑させたかと言えば…

こんなにも自分が、自分の身体が、男を欲しがるようになってしまった事だった。

酷い扱いを受けて、心にも身体にも傷を負って、何もかもを滅茶苦茶にされたと言うのに
この瞬間には、目の前にいる男が、自分を救う全てになってしまう。


それが、男の思惑通りだと解っていても、もうイツキにはどうする事も出来なかった。




posted by 白黒ぼたん at 21:43 | TrackBack(0) | 日記

2011年10月25日

その夜のこと・4






中の玩具を引き抜かれて、無理な体勢からも開放されて、イツキはふうと息を付いてベッドに沈む。
男はイツキに被さり、唇を合わせながら、器用に自分の服を脱いで素肌を重ねる。
男の指先がイツキの乳首から腹に辿り、幼い性器を軽くなぞってから、股の間に滑り込むと
イツキは何の抵抗も無く、脚を開き、腰を上げてしまう。

男が、どんなに冷酷な笑みを浮かべているのかも、気が付かなかった。

中指1本から始まった愛撫は、玩具で馴らされた穴には物足りないものだった。
それでもくちゅくちゅと掻き回され、人差し指と合わせて、中で鉤のようにされて擦られると
すぐに「…は…んん」と湿った甘ったるい息が鼻から洩れた。

「…ひゃっ……やん…、や……」

股間に、潤滑のためのローションが垂らされて、その冷たさにイツキは声を上げる。
それもすぐに、そこいらを這い回る男の手のせいで、艶めいた喘ぎ声に変わる。
つるりと性器を握られ、扱かれ、先端の亀裂を弄られ
イツキは腰をくねらせながら、思わず…「……いい。…きもち…いい…」とつぶやいてしまう。

「…きもちいい…、いい…の…。……このまま…いきたい…よ…ぉ…。…おねがい…おねがい……」

自分の口元に手をやり、うなり声を上げながら首を左右に振る。
次々に襲う快楽の波をどうにか逃し、悲痛な叫びにも似た懇願を繰り返し、淫らな腰を浮かせる。

そのイツキの様子は
次の、男の凶行を煽るのに、充分すぎた。




おかしいと思った時には、男が、腹の上に全体重を載せていて、身動きが取れなくなっていた。
中をくすぐっていた男の指の本数が増し、快楽よりも痛みの割合が高くなっていた。

めり、めりと音を立てて…そこが押し広げられていく気がする。


それが男の握りこぶしだと気付いたのは、親指の付け根の一番太い所が入り口で引っ掛かり…回転しながら捻じ込まれた時だった。




posted by 白黒ぼたん at 01:26 | TrackBack(0) | 日記
最近のコメント
フェスタ・3 by はるりん (11/12)
フェスタ・2 by ぼたん (11/11)
フェスタ・2 by はるりん (11/11)
フェスタ・1 by はるりん (11/07)
得意技 by はるりん (11/05)
イツキ沼 by はるりん (11/03)
多少の理性 by はるりん (10/31)
わかりやすい迷路 by ぼたん (10/29)
わかりやすい迷路 by はるりん (10/26)
覚悟 by ぼたん (10/25)