2015年06月02日

半分






目を開けて、もそもそと起き上がり
イツキは、今日が何日の何曜日の朝なのか夜なのか考える。


身体中が、痛かった。


縛ったり叩いたり、上になったり下になったり、よくもまあアレコレ手を施すものだと思う。
それにイチイチ反応して、精も根も尽き果てている自分も、どうかと思う。



とりあえずシャワーでも浴びようとベッドから起き上がると、貧血のような眩暈がした。
リビングのソファには黒川が座っていて、イツキをチラリと見たが、別に何も言わなかった。
熱い湯船に浸かり、また溺れそうになりながら、パネルに表示されている時計で今が月曜日の夕方なのだと知る。
学校は、今日は、あったはずだと思う。
そして今週の金曜日には、終業式なのだと、思い出す。







「……俺、……向こう、帰ろうかな…。学校、あるし…」


風呂から出たイツキはタオルで髪の毛を拭きながら、そう言い、黒川の出方を伺う。
黒川は持っていた新聞から目を離すことなく、別にどうでも良い話のように「…そうか」と、言う。




お互い、引き留めて、傍に居続けたいと、気持ちの半分は思っていたのだけど



もう半分は、これ以上傍に居れば、自分の中の何かが融けて崩れて、二度と離れる事が出来なくなるほど互いと混ざり合ってしまうのではないかと…

危惧していた。




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2015年06月03日

カウントダウン






火曜日の昼休み、食堂では梶原と大野が顔を突き合わせていた。
イツキは、今日も欠席らしい。
相変わらず不安定なイツキとは、おそらく、三学年ではクラスが別になる。
いよいよ勉強に本腰を入れなければいけない梶原は、解ってはいるものの、寂しさを隠しきれなかった。


「……あいつ、大丈夫かな。新しいクラスで、やっていけるかな…」


梶原がそう言うと、大野は紙パックのコーヒーのストローを咥えたまま、押し黙る。
過保護で世話焼きな梶原に、多少、呆れているといったところだろう。


「…大丈夫だろ。…それに俺たち、もう、そんな事に構ってられないと思うぜ」
「大野、お前、意外とサバサバしてんのな。…イツキの事、気になんないのかよ」
「…なるけど。…気にしたって仕方ないだろ…」


そう言って、今度は二人とも押し黙る。





お互い、イツキに、友達以上の感情を抱いていることは確かなのだけど、同時にそれが何の意味も持たないことも知っている。


それでも


大遅刻のイツキが食堂に現れ、梶原と大野に向かって手を振る姿を見ると、無性に切なく胸が苦しくなるのだった。





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2015年06月04日

面談・1







加瀬は学年主任ではあったが、それはもっぱら名前だけという所で
実質はやはり副理事。…それ以上に、学校の裏側を仕切る立場という役職だった。
健全な学校運営の影には、やはり、多少の毒も必要で、理事長からの信頼の厚い加瀬は、その辺りを一任されていた。


学校では殆ど副理事長室に籠り、そう姿は見掛けない。
たまに廊下で擦れ違っても、一般の生徒は、加瀬の名前すら思い出せないだろう。

何か、特別な事情がある者は、別だが。








「………まあ、問題は無いと思いますがね……」



ブラインドの隙間から西日が差し、逆光の中、加瀬は書類をぱらぱらとやる。
正面のソファにはやや緊張した面持ちで、生徒が一人座っていた。


「少々、成績を落としましたか?…何か問題でもありましたか?」
「いえ。…大丈夫です。3年で、カバーできます」
「そうですか。なら、結構」


加瀬は、手に持っていた書類をデスクに置き、顔を上げると、とりあえず笑顔を浮かべる。



「君には期待していますよ、梶原くん」
「ありがとうございます」
「条件とペナルティを忘れないようにね」
「……はい」


そう言って、梶原も、とりあえずぎこちない笑顔を浮かべた。




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2015年06月06日

面談・2







扉の前でもう一度頭を下げ、それから梶原は取っ手に手をやり、少し…、留まる。



「……あの…」
「何ですか?」



気掛かりな案件があるのか、梶原は口籠りながら、また加瀬の方に向き直る。
加瀬は、銀縁の眼鏡のフレームに手をやり、梶原を見据える。



「実は、少し、心配な事があって…。今、同じクラスの…岡部一樹なんですけど。
…その、色々、…悩みとかあるみたいで…、俺、面倒…て言うか、その、友達として…色々、サポートしてたって言うか……、その…」



イツキの事をどう説明すれば良いのか、梶原は言葉を探しながら必死で話す。



「それで…、えっと…。多分、次は、クラスが別になりますよね…。あいつが新しいクラスでちゃんとやっていけるか、俺、心配で……」

「君が心配する問題ではありませんよ」





梶原にすれば、加瀬は勿論、信頼のおける教師の1人で
色々問題のあるイツキを、どうか助けてやって欲しいと、そんな気持ちだったのだ。

それなのに、あまりにも加瀬が冷たい口調で、そう言い切るものだから、逆に驚いてしまった。





「…岡部一樹、…ね」


加瀬はその名前を呟く。
少し間があき、鼻で笑ったような気がするのは、梶原の気のせいなのだろうか。


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2015年06月08日

面談・3







「問題がある生徒だと、知っていますよ。ですから今年度は君のクラスに入れたのでしょう。…君は、優等生ですからね」


その言葉もどこか嫌味に聞こえる。


「まあ、彼も学校に馴染んだ頃でしょう。大丈夫ですよ」
「でも、…その、あいつ……」



梶原がしつこく食い下がったのは、「大丈夫」という加瀬の言葉がどうにも当てにならなそうだったからだ。
……そのしつこさが、加瀬の癇に障る。


「さて、これで話は終わりかな。もう、戻って良いですよ」
「…イツキのクラスって…、成績順ですか?……悪いヤツ、ばっかりとか…」
「君の問題ではありません。君は、君のやるべき事に専念しなさい」



加瀬はそう言い、手を扉の方にやって、梶原に出て行くようにと促す。
梶原は仕方なく立ち上がり、頭を小さく下げ、扉に向かう。

それでもまだ何か言いたげな、憮然な表情。
最後に一言と開きかけた口を、加瀬が、止める。




「それに、彼は、君とは、同じクラスになりたくないと言っていましたよ」
「……え?」
「君の心配も、彼にとっては無用の長物なのでしょう」





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2015年06月09日

面談・最終話







梶原が面談を終え教室に戻ると、そこにはまだイツキがいて、机に向かっていた。
すでに日課は終わっていたのだが、欠席していた間のノートを、梶原に借りていたのだった。

それも丁度写し終ったらしく、顔を上げると、梶原と目が合う。
イツキはニコリと笑い、ノートをぱたりと閉じると、ありがとうと言ってそれを梶原に差し出す。



「…ん?」



珍しく神妙な面持ちの梶原に、イツキは首を傾げる。
……特待生として色々、面談で厳しい事を言われたのだろうかと、イツキは少し心配する。


「……おこられた?」
「えっ、いや、別に何も…、大丈夫」
「それなら良かった。…俺、もう帰るけど…?」
「ああ…。…あー、俺もうちょっと…、…図書室寄るわ…」



梶原がにべもなくそう言うものだから、イツキも「そう」と言って、引き下がる。
カバンに荷物を仕舞い、じゃあね、と言ってそのまま教室を出てしまった。






よもや、イツキが

自分が梶原と親密になり過ぎたために、一ノ宮や黒川が何か…梶原に危害を加えるのではないかと心配し、
梶原と距離を取るために違うクラスになりたいと、加瀬に、身を挺してまで懇願したなどと…

知る由も無い梶原には、イツキの気持ちが、解らなくなっていた。





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2015年06月11日

不思議、不思議







いつもとそう変りなく、マサヤから、『プラザホテル42階の寿司屋、7時』とメールが来る。
最近は、仕事と思わせておいて、そうじゃない事がほとんどなので、今日もそうなのかと思ったら、違った。


マサヤの言葉からは、区別が難しい。
不思議、不思議。





「……なんだ?……俺とだって、知らなかったのか?」
「……ん。……でも、吉村さんで…、良かったです」
「それは褒め言葉なんだろうな?イツキ。……あっはっは」



吉村さんは、度々会う人の1人だけど、きちんとした人で、好き。
マサヤを通しての「仕事上」のお付き合いだけだけど、その中では、格別の人だと思う。
……実は、俺がそう思っているのを…マサヤも知っていて、適当に、俺の気を緩めたり誤魔化したりする時に、使う。

ずるい。




「まあ、食えよ。酒もいいぜ?…お前、しばらく見ない内に変わったな?…可愛くなった」
「…それ、女の子に言う言葉じゃないんですか?」
「お前だから、言うんだよ、イツキ」




吉村さんは、臆面もなくそんな事を言ってしまえる人だった。
好き、だけと、苦手。


それも、マサヤは、知っていた。



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2015年06月12日

見えない鎖






久しぶりのイツキは、良かった。
相変わらず感度は良いし、反応もいい。
少しだけ背が伸び、骨格が張ったような気もするが…男臭さは全くない。
むしろ、何か、内面から滲む艶気が増したようで、…参る。




『可愛いな』と耳元で言うと、イツキは初心な小娘でもあるまいに、恥ずかしそうに肩をすぼめて顔を背ける。
そのくせ、俺を咥え込む穴を締め付け、さらに奥へと飲み込もうとする。

以前から、イツキは良かったが、何か……違う。
その微かな違いを知りたくて、もっと深く、イツキにのめり込む。




正面に見据えて、まじまじと顔を眺める。
イツキはまた恥ずかしそうにして、顔を背ける。
それを許さずに、唇を重ねる。舌を絡めると少し抵抗して、すぐに、諦める。
ああ、きっとイツキは……誰かに愛される事を、知ってしまったのかも知れない。

そう、思う。









「…悪趣味だな、黒川」
「何の話だ?」


時間が来て、イツキを黒川に引き渡す。
大人しく黒川の傍に戻るイツキは、まるで、見えない鎖に繋がれているようだった。





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2015年06月13日

迷い







「帰るのか?」
「……帰るよ。……明日も、がっこう…、あるし……」
「まだ、ヤリ足りないくせに」
「足りたよ。……吉村さん、優しいもん……」



黒川の車の後部座席に、イツキは乗る。
いつもは助手席なのだけど、今日はなんとなく後ろに。
黒川がミラーで様子を伺うと、イツキは座席に寝転び、もう今にも眠りに落ちそうだった。


「吉村は、お前に惚れてるからな」


黒川は前に向き直り、ハンドルを握る。
行き先はまだ、決めていない。








イツキが目を覚ますと、そこは、学校の近くの自分の部屋だった。
黒川の姿は、無い。


半分夢のような記憶だけれど、黒川が、ここまで連れて来てくれたことを覚えている。
部屋に入って、寝室に入って、少しの間抱き締め合って、キスをする。



そうしている内にまた、イツキは眠ってしまったようだった。


窓の外にはもう、朝の陽の光が射していた。





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2015年06月16日

やせ我慢







一ノ宮が昼過ぎに事務所に行くと、黒川が狭いソファの上で眠っていて、驚いた。
黒川は物音に気付いたのか目を覚まし、もそもそと起き上がる。



「……ずっと、…こちらに?」
「…ああ。…何時だ?」
「2時です、昼の。……昨夜はイツキくんと一緒だと思いましたよ、吉村さんの所だったのでしょう?」
「ああ。迎えに行って、送って…。……運転手か、俺は」


黒川はそう言って、自分で笑う。
背伸びをして、手を首の後ろにやって、筋を伸ばしてみる。


一ノ宮は事務所の隅の小さな流しでコーヒーを淹れる。
黒川は煙草に火を付けながら、「…そうそう、あいつに付き合っていられん。俺も忙しい。武蔵会から電話があったぞ、来週の予定を……」と、あれこれ言い訳がましく並べ立てる。






黒川とイツキは、時折、親密に濃厚に距離を縮めたかと思えば
それを認めまいとするように、わざとらしく間を空ける。
別に今更、どうでも良いだろうにと、一ノ宮は思うのだけれど
この特殊な関係には何かと、気遣いが必要なのかとも、思う。




「…おつかれさまでした」と言って、一ノ宮はコーヒーのカップを黒川に手渡す。

黒川が怪訝な顔をしたのは、一ノ宮が少し、笑っていたからだろう。





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すれ違い






いよいよ明日で2学年も終わりという日。
イツキが学校に来たのは、3時間目が始まる直前だった。
慌てて教室に駆け込み、席に着く。
何事かと振り返る梶原に、ニコリと笑みを浮かべて、上がった息を整える。


「…おはよう、梶原。……また、ギリギリになっちゃった…」


今日はもう午前授業で、すでに日課の半分は終わっている。
ギリギリも何もないだろうとは思うのだけど、昨日の遅くまで「仕事」をしていたイツキにすれば上出来だった。

これでも一応、終業式までの…、梶原と同じクラスでいられる時間を、大切にしているのだ。



「…ああ、おはよ…」



梶原は短く、そう言っただけで、すぐに前に向き直ってしまった。
素っ気ない素振りなのは、教室に、授業の講師が入って来たためだろうと、その時のイツキはあまり気にしなかった。






『彼は君とは同じクラスになりたくないそうですよ』



梶原は、先日加瀬に言われた言葉が、まだ引っ掛かっていた。
確かに自分はお節介で、イツキにとっては、迷惑な部分もあったかも知れないが…、そう、嫌われているとは…思ってはいなかった。


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2015年06月17日

すれ違い・2





『彼は君とは同じクラスになりたくないそうですよ』



梶原は、先日加瀬に言われた言葉が、まだ引っ掛かっていた。
確かに自分はお節介で、イツキにとっては、迷惑な部分もあったかも知れないが…、そう、嫌われているとは…思ってはいなかった。





『…イツキは俺の事、本当は面倒だと思ってたのかな。確かに色々…ウザい事もしたし、……ちょっと…、アレな事もしちゃったけど…
でも、友達だよな?…何だかんだ、一年間、楽しかったよな?
修学旅行だって行ったし、一緒に、ソフトクリーム食べたし…

同じクラスになりたくないって、何か理由があるんだよな?
大体、何で加瀬先生がそんな事、知ってるんだよ。…何か、事情があるんだよな?』





授業中、梶原はイツキの事ばかり考えて、講師の言葉など何一つ頭に入って来なかった。
終業のベルが鳴ると弾かれたように顔を上げ、振り返ってイツキを見る。

イツキはまだノートに視線を落とし、必死に、黒板の文字を書き写していた。
決して上手ではない字と、隅の方に書かれたウサギ…、か、猫…の絵が愛しい。


おそらく、イツキなりの理由があるに違いない。
こんな事でもやもやと頭を悩ませている自分が、嫌だった。





「……な、イツキ」
「先生、字、書くの早い…。図とか、…無理だし…」
「それ、教科書に同じの、載ってるよ。……な、昼メシ、食いに行こうぜ?」



悩んでいるくらいなら、はっきり本人と話をしようと、梶原はそう、誘う。
けれど、やっとノートを取り終わったイツキは顔を上げ、にこりと笑って、

「……ごめん、ちょっと、用事がある……」

と、言うのだった。



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2015年06月18日

すれ違い・3






「………面談?、何で?」
「……んー、……俺、成績悪かったし、欠席多かったし…、その辺りじゃない?」
「誰と?担任?」
「……ん、……なんか、偉そうな人」



午後、イツキは加瀬に呼び出されていた。
それでも学校内での事なので、そう、変な用件ではないだろうと…軽く思っていた。
一応、用心のためと…何となく罪悪感で、あえて加瀬の名前は言わなかったのだけど、
こんな時ばかり勘の鋭い梶原は、イツキの相手が加瀬なのではないかと、気付いた。


梶原は顔色を曇らせる。
イツキは、梶原が自分を心配してくれているのだと、思う。



「お昼は無理だけど、夕方とかなら。…大野くんも呼んで、みんなで晩ご飯もいいね」



イツキがそう言うと、解り易く、梶原が微笑む。
多少の懸念があったとしても、梶原がイツキを好きな事には変わりがない。



「そうだな。修学旅行の打ち上げもしてねーしな。5時?4時?3時は早いか?
駅前のコーヒー屋で待ち合わせでいい?」
「じゃあ、4時で。コーヒー屋さんって、チョコ味のコーヒーがあった所だよね」
「そうそう」




約束をして、イツキと梶原は別れる。

結局、待ち合わせの時刻にイツキは現れなかったのだけど、

梶原がその理由を知るのは、少し後の話。




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2015年06月19日

昼下がりの情事・1






副理事長室、加瀬の部屋は、良い部屋だった。
そう広くはないものの、きちんとした落ち着いた部屋で、窓側正面に事務机と、手前に応接セット。
両壁際には天井まで高さのある、作り付けの本棚。それが防音壁の役目もするのか、部屋の音が外に漏れることは、まず、無かった。



イツキは、


肘付のアーロンチェアに座る加瀬の、上に乗って、腰を落とした所だった。





当然、こんな所でコトを始めるつもりは無かったのだが、成り行き上、こうなってしまった。







梶原と別れ、イツキは1人でこの部屋に来た。
加瀬は最初の内は普通の教師の顔で、やはり、イツキの学校生活の乱れや勉学の遅れなどを指摘し、3学年は頑張る様にと、ごもっともな事を言う。

それから、今度は、ちょいちょいと手を拱いて、イツキを自分の傍に招く。
イツキは半ば諦めていた様に、ふんと鼻を鳴らして、加瀬の座るアーロンチェアの隣に行く。


何か、少しは嫌な事があるとしても、学校内なのだし、昼下がりなのだし
そう、悪い事はないだろうと思ってしまうのは、イツキの治らない浅はかさだった。




加瀬は、傍に来たイツキの、手を取る。
指先で、指先だけを撫ぜながら、軽く、焦らす。





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2015年06月20日

昼下がりの情事・2






「……クラス分けね、決まったよ。……ちゃんと君の希望通り、あの優等生とは、別ね」
「……何もしなくても、……別々だったんでしょ?」
「まあね。……あと、追加のお願いも」



加瀬がそう言うと、イツキの指先がぴくりと動く。
その、微かな反応が、楽しい。



「…清水君ね。彼も、別。……大変だったよ、こんな時期に、動かすのは」
「…もしかして、…先輩も、最初から別々だった、とか?」
「……さあね」



お互い、試すような探るような言葉を交わし、それから加瀬は、ニヤリと笑う。
イツキが、突然、清水とも同じクラスになりたくないとメールを寄越したのは、修学旅行初日の真夜中。
土産物屋で『またね』と言ったのは、別れ際の常套句だったのだが、こんな形で実現するのは実に愉快だった。



「ともかく。君のお願いを二つも叶えてしまったのだが。……見返りは、何かな?」
「この間、セックスしたでしょ?……お釣りが来るよ」




イツキは、少し、強気に出る。

こういった駆け引きに実は滅法、弱い事を、イツキ自身は知らない。




「そうだね。良かったよ。さすが、西崎さんのトコの売り子さんだね」


加瀬の挑発に、イツキは解り易くムッとしてしまう。
小さく、加瀬は、笑う。





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