2015年09月01日

新学期の朝・6






小走りで廊下を通り、階段を駆け下りる。
さすがに清水が追ってくることは無かったけれど、それでもキョロキョロと、後ろを振り返る。


昇降口で靴を履き替える時になってやっと、まだ、手を繋いだままだった事に気が付く。
お互い、照れくさそうに…手を解くのだけど、手のひらには暫く、熱と湿気が残ったままだった。




「……ありがと…」



そう、小さな声でイツキが言うと、梶原はイツキを見て「うん」と言う。
……久しぶりに、……イツキを見たと、思う。
2学年の終わりから、この3学年の始めまで、2週間もない程だったのに、随分と、間が空いてしまったように思う。

少し、痩せた気がするのは、気のせいだろうか…。
一層、儚げで、頼りなさげに見える。



「………だから、……嫌だったのに、…先輩と一緒になるの…」



呟くイツキの声は、梶原に話し掛けているのか、独り言なのか、区別が付かない。

「…お前と先輩って、結局、……どうなの?……喧嘩して、わ、別れた、とか?」
「喧嘩した訳じゃないけど、もう、終わってる。……終わってるのに…」
「先輩は、…そう思ってないんじゃない?何か、話し、したそうだったじゃん……」
「話なんて、無いよ。もう…!」



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新学期の朝・7







駅までの道を早足で歩くイツキは、どこか、怒っている様子で、
梶原はなかなか、他の話を切り出す事が出来ない。
それでも必死でイツキの隣に並び、イツキの顔を覗き、言葉を探すのだけど

そうしている間に、イツキの目から涙が零れ落ちて、梶原は何も言えなくなってしまった。





イツキは道の真ん中で立ち止まり、ぽろぽろと落ちる涙を、手の甲で拭う。



梶原や清水と、同じクラスになりたくないと、あれだけ画策したというのに
何もかもがふいになってしまった。
何故なのかは解らないけど、結局は、自分が一番望まない形になってしまう。

そうなると、残るのは、ただただ、自分の浅はかで軽率な行動ばかり。




「………イツキ?、…大丈夫か…?」
「…なんで、…上手く行かないんだろう、……俺って…」
「…そんなに、嫌だった?…クラス。……清水先輩と…、俺も…、いて…」
「違う。………俺が、……馬鹿なだけ……」



そう言って、
イツキはまた手の甲で、目を、ガシガシと拭う。
そして、大きなため息を一つついて、
また、歩き出すのだった。





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2015年09月03日

新学期の朝・8






駅前で一緒にメシでも食べようと言う梶原の誘いをアッサリ断り、イツキは改札に吸い込まれて行く。
梶原はイツキの小さな背中を眺めながら…少し、呆然としていたのだけど…、

慌てて、その後を、追い掛ける。



「……送る。……俺、まだ、お前と話し、したいし…」
「………梶原って…………」


その後に続く言葉は、『しつこい男』や、『面倒臭い奴』だったかもしれないが、
その割には、イツキは微笑み、どこか嬉しそうな様子だった。



梶原の事も、清水の事も、あれこれ考えすぎて、一周回って、どうでも良くなってきた感じではある。

自分はこれだけ頑張ったのだから、もう、どうにでもなれ…と言った所なのか。





「……修学旅行、楽しかったよな。……沼原が、ミニアルバム作ってさ。……写真も、プリントすると、なんか違うよな……」
「…そうだね。……アイス、美味しかったね…」
「抹茶のな!、…うん、美味しかった。……楽しかったな」



また、並んで歩きながら、そんな思い出話をする。たった一か月前の話なのに、随分の昔の事のようだ。
どうしてイツキと距離が空いてしまったのかと、梶原は不思議に思う。





ふいに立ち止まり、涙を零し始めたのは、今度は梶原の方だった。




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2015年09月04日

新学期の朝・9







「………梶原?」


立ち止まり、涙を零す梶原に気付き、イツキは驚く。
イツキ自身、人目も憚らず涙をポロポロ流すくせに、目の前にそんな男がいると異様だ。


「…何?……どうしたの…?」
「…イツキ、…もう…、俺のこと、嫌い?」
「……えっ……」
「嫌いになっちゃった?……もう…」


あまりにストレートな言葉に、イツキは目を丸くさせて、梶原を見る。
取りあえず脇を通り過ぎる人の邪魔になりそうなので、梶原の腕を引いて、壁際に移動する。


「……梶原…?」
「ごめ…ん…、なんか……、……俺…」



極まってしまった自分が恥ずかしくて、梶原は照れたように笑い、服の袖で涙を拭う。

「……お前と、最近、なんか……、変だなって……、もう、嫌われたかなって……」

それだけを聞くとまるで別れ際の恋人同士の会話のようで、それもまた可笑しくて、梶原は誤魔化すように、はははと笑う。

「………ごめん…」






実を言えば、素直に、自分の感情をぶつけて来るというのは…酷くぶしつけで卑怯なやり方だ。


そんな事を言われてしまえば、イツキは取りあえず「……そんな事、ないよ」と、言うしか無くなってしまう。




posted by 白黒ぼたん at 21:42 | TrackBack(0) | 日記

2015年09月05日

新学期の朝・10







「……でも、全然、連絡、取れなくなったじゃんか……」
「……え?」
「クラスも。……本当は同じクラスになりたくなかったとか…、なんか、聞いて…」
「……誰から、そんな……」
「…金髪と、抱き合ってんのも、見た。…なんか、俺、解らなくなっちゃって…」
「………んん?」



梶原のゴタクに、イツキは一瞬戸惑い、素っ頓狂な声を上げてしまう。
イツキはこの時になって初めて、梶原が、自分に嫌われたと誤解しているのだと、知る。
それは半分正解で、半分は間違いで。

そのまま「そうだよ」と言って、梶原と離れてしまっても良かったのだけど、

それが出来るほど、イツキは、計算が出来る子ではなかった。




「……2年の、…終業式の日に、お父さん、死んだって…連絡あって、それから、バタバタで…」

「……ええっ?」


今度は梶原が目を丸くし、素っ頓狂な声を上げる。


「…金髪と抱き合ってたって…、佐野っち…? 佐野っちは色々、助けてくれて…運転とかもしてくれて……」
「……お父さん、亡くなったの?」
「……うん」
「言えよ!そんな大事な事!…なんで言わないんだよ!」


「……ごめん」





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2015年09月08日

新学期の朝・11


「……お前が、謝る事じゃないよ、イツキ。……ごめん、俺が、…悪い…」



お互い、謝罪をし合い、それでもまだ、重苦しい空気が流れる。
結局はイツキを誤解していたのだと知った梶原は、猛烈に反省する。

「……でも、じゃあ…、俺と同じクラスになりたくないって…言うのは…?」

反省ついでに、一番聞きたかった事を聞いてみる。






「……同じクラスになったら、きっとまた…、色々、迷惑掛けちゃう…でしょ。
梶原の、勉強の、邪魔になる……。
梶原、勉強しなくちゃいけないのに、俺がいたら……駄目だよ」



イツキの返事は真実全てでは無かったけれど、あながち、間違いではない。
自分と一緒にいることで、梶原に何か悪い事が起きるのは、嫌だった。
そしてその気持ちだけが、梶原が知りたかった事の、全てだった。





「…俺、馬鹿だし。……梶原に頼ってばっかりだし。……他にも色々、迷惑……」
「……イツキッ」





突然、梶原は、イツキの両肩を掴み、そのまま壁際へと押さえつける。
これが男と女の話ならば、間違いなく、愛の告白でも始まる場面。
正直なところ、イツキは、襲われるのではないかと身構える。

梶原は、イツキの肩にやった手に力を入れ、そのままガクン、ガクンと前後に振り、


言葉も出ない、感極まった様子で、今度はその肩を、ぎゅっと抱き締めるのだった。






posted by 白黒ぼたん at 00:55 | TrackBack(0) | 日記

始業式の朝・最終話






2人がイツキのマンションに辿り着く頃には、ようやく、重苦しい微妙な空気も消える。
梶原は1人でクスクスと笑い出し「……俺、アレコレ考え過ぎてた。…馬鹿みてぇ…」と、照れくさそうに呟いたりする。


イツキも、梶原との間のしこりが消えた事が、少し嬉しかった。
一ノ宮に嫌な話をされ、梶原と距離を置こうと思ってはいたが、それは思うより難しくて、

心に、負担が掛かるものだった。


「…ごめん、梶原。…俺も…、色々、考え過ぎてて…、ぐるっと一周、回っちゃった感じ…」
「あはは。…俺ら、今日、謝ってばっかりだな…」
「そうだね」




丁度マンションの入り口でそんな話をして、笑って、
「じゃあ、また明日」と手を振って、今日は、お終いになる。


イツキは、わだかまりも解け大人しく帰る梶原の背中を眺め、これで良かったのだと…思う事にする。





クラスが一緒になってしまった以上、無理矢理仲違いすることなど、イツキには難しい。
イツキにとって梶原が、気の許せる友人である事には、変わりがない。

あとは、自分が、黒川との関係を、上手くやれば良いのだと思う。
それも、ここ暫くの間の事を思えば…、多分、大丈夫なのではないかという気がする。





黒川から離れたいと、以前ほど思っていない事に、イツキは気が付いていた。






話、間延びし過ぎて、着地点が解らなくなってしまいました。すんませんあせあせ(飛び散る汗)
まー、とりあえず、梶原とは仲直り出来たという事で。
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2015年09月09日

疎外感







「結局、俺だけ、仲間外れじゃんか。訳、解んねーよな」
「…腐るなよ、大野」
「お前も、何も言わずに帰っちゃうし。…図書室で待ってたんだぜ?」
「……悪ぃ…」



夕方。
これから塾へ行くという大野は、その前の腹ごしらえにと、梶原をラーメン屋に誘う。
追加で乗せて貰った煮玉子を箸で突きながら、大野は、クラス替えについての愚痴を零す。

本当に、成績順でも、何かの計略でもなく、ランダムに組まれただけなのだと聞いていても、
だからこそ、自分だけが漏れてしまったのが、少々、悔しかった。



「でも、大野。ちゃんと勉強しようと思うなら…、お前の方がラッキーじゃんか」
「まあな。お前のクラス、大波乱間違い無しだからな。……どうだった?」
「……ん?」
「イツキと、清水先輩。…何か、話し、してた?」


蓮華にすくったスープを飲んで、大野は、ニヤリと笑う。
…付き合っていたらしい、でも、別れたらしい、何か訳ありの2人は、少し離れた場所から様子を伺うには、格好のネタだった。


「いや、なんか…。イツキが避けてた。……ちょっと前は、清水先輩の方が、イツキの事、嫌ってる風だったんだけど…」
「…イツキも、忙しいよな。あっちこっちで、イロイロ、やってんだろうな……」



どこか侮蔑を孕んだ大野の言葉に、梶原は不満げな視線をやって、黙って、ラーメンをすする。



単純に、大野は、イツキの「色々」に入れなかった事が、寂しいだけだった。




posted by 白黒ぼたん at 23:16 | TrackBack(0) | 日記

2015年09月10日

熱病







塾の講義を受けていた大野が、頬杖を付き、ぼんやりと明後日の方を眺めていたのは、
ラーメンと餃子を食べ過ぎて眠たくなり、勉強に身が入らなくなってしまった…という訳ではなく

うっかり、イツキの事を、考え始めてしまったからだった。




一時は本気で、イツキに、恋をしていたと思う。
謎めいた笑顔。傍に寄ると何か、頭がクラクラとする匂いがする。
同じ男のくせに、その身体はまるで別の性のもののようで、触れて抱き締めて、確かめてみたくなった。


熱病のような想いはやがて冷め、自分にも彼女が出来き、冷静に考えれば…イツキは、変で、

なるべくなら距離を置いて、あまり…巻き込まれないようになどと…考えていたのだけど、

朝な夕なにそんな事を考えている時点で、すでに、毒されているのだと思う。





厳重に鍵を掛けたスマートフォンの中には、相馬に貰った、イツキの写真が残っていた。


B級のアダルトビデオより下品で猥雑なイツキの姿に、


大野の熱は、簡単に、ぶり返すのだった。


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2015年09月11日

八つ当たり







数日前にクリーニングに出した、黒川のスーツを受け取りに行く。
部屋に持ち帰るのかと一応確認すると、事務所に持って来いと言うので、渋々、向かう。

この事務所に赴き、良い目に遭った事は、あまり、無い。





繁華街の一本裏手の雑居ビルの2階。
階段を上がり、扉に手を掛けると、中から、険悪な怒号が聞こえる。
内容まではよく解らないが、今、中に入ってはいけないことは、イツキでも解る。
静かに、急ぎ足で階段を戻ると、丁度降りたか降りないかの所で扉が開く。




「……あんたのやり方はよく解ったよ、黒川さん。フェアな取引が出来ると思ったこっちが馬鹿だったって事だな。
…覚えておけ、何でも自分の思い通りに行くと思ったら、大間違いだぞ!」


事務所から出て来た男はそう捨て台詞を吐いて、勢い、扉を閉め、最後には蹴飛ばす。
そうして、怒り心頭と言った様子で階段を降り、下の出入り口にいたイツキの脇を通り過ぎる。
イツキは、何食わぬ顔で余所を向き、上の事務所とは無関係という素振りで、その男を見もしなかったのだけど、


男が、イツキを眺める視線だけは、感じていた。






少し間を置いて、事務所に入る。
中は黒川一人で、テーブルに足を投げ出しソファに座り、煙草を吸っていた。
入って来たイツキをチラリと睨み、ふんと鼻を鳴らすだけで何も話さず、紫煙を吹かし、
苛ついたように、テーブルを蹴飛ばし、無駄にイツキを怯えさせるのだった。





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2015年09月12日

八つ当たり、その2







「……やだ、マサヤ…、痛い、痛い、痛い……ッ」


そう叫ぶイツキの声は、おそらく、事務所の外にも聞こえていたに違いない。
けれど、白昼賑わう街中では、それに気付く者もいないのだろう。






『突っ立ってないで、こっちへ来い。…脱げよ、お前に服はいらないだろう』

先ほどの男とは何か、トラブルがあったらしい。不機嫌な黒川は、イツキにそう怒鳴りつける。
イツキは一応、首を横に振り

『やだ。なんか、マサヤ、怖いもん』

と、可愛く言ってみるのだけど、今日の黒川にそれは通用しなかった。




ソファに組み敷かれ、そのまま強引に事が始まる。
優しいキスや愛撫は、いつもくれる物ではないと知っていたけれど、それでも今日は、酷い。


ズボンと下着は簡単に脱がされてしまう。
イツキが手をバタつかせていると、黒川はその両手首を掴み、捩じり上げるようにして、頭の上へとやった。

丁度、ソファの肘掛の硬い部分に腕の関節が当たる。
イツキは本気で、肩が外れるかと思った。






「……あッ、……まだ、駄目……ッ」


腕の位置を戻し、痛みを誤魔化し、どうにか体勢を整えようとしている間に、今度は黒川はイツキの足を開かせ、その中心に押し入ろうとする。
さすがに、女ではなく、そう簡単に濡れはしない。

けれど黒川は、自分の手の平に唾液を吐くと、それを自分自身に馴染ませ、

たったそれだけの準備で、イツキの中に、無理矢理入って来るのだった。





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2015年09月14日

八つ当たり・3







慣れた行為だとは言え、痛い事には変わりはない。
やがて麻痺し、粘液によって馴染み、じわじわと快楽が上ってくるにしても
暫くは眉間にしわを寄せ、歯を食いしばり、引きつれる痛みに耐える。


その表情が気に入らなかったのか、その逆なのか、
黒川はイツキの前髪を掴み、乱暴に2,3振ってみる。
何事かと、イツキが怯えた視線を向けると、黒川はニヤリと笑い
『…して、やってるんだ。もっといい顔をしろよ』と言う。




親指と人差し指の爪先で、乳首をキリキリと摘まみあげる。
その都度、イツキの唇から、悲壮な喘ぎが洩れる。




「………マサヤ…、いた…い、よ……」
「そうだろうな。……そう、している」
「……ひ……う………」


堪え切れず、イツキがはらはら涙を零すと、黒川は満足したように、ふんと鼻をならし
それから、イツキの腰の両側と掴むと、本格的に、動き始める。





どうにもこの男は、自分の苛々やうっ憤を、イツキを泣かせる事で発散しているのだ。
イツキが、自分の身を護る為に無理矢理に快楽を引き出し、すがるように黒川の肩に腕を回す瞬間が、たまらなく、いい。


嗜虐趣味のある酷い男だというのは、今更の話。





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2015年09月16日

初鰹







「……何だよ、イツキ。帰るのか?」
「帰る」


殆ど強姦のような事が終わり、イツキは……トイレに駆け込む。
しばらくして出て来ると、ソファの足元に散らばっている服を掻き集め、身支度をする。
膨れっ面のまま、黒川の顔を見もせずに。


多少は、黒川も、悪い事をしたと思っているらしい。
煙草に火を付けくゆらせながら、口の端を吊り上げ、笑う。


「…横浜の仕事で揉めてな。…出て行った男がいるだろう、自分が下手を打ったくせに、俺のせいにしやがって、胸糞悪い。
……まあ、こんな時に来るお前が悪い」



一応、説明をしているらしかったが、謝罪には程遠い。
イツキは黒川をちらりと見ると、部屋の隅に置いてあったクリーニングの袋を取り、テーブルの上にぼすんと置く。


「……マサヤが、持って来いって言ったんでしょ。……じゃあ、俺、帰る」


これで用事は終わったと、イツキはくるりと振り返り、扉に向かって歩き始める。



ふいに、黒川は、イツキを引き留めるように、背中から抱き締める。




「…帰るのか?」
「……帰る」
「…これから、武松寿司に行くぞ?いいカツオが入ったと、大将から連絡があった」
「………かえ…る」





そんなやりとりをしていると、軽いノックの後、突然、扉が開く。
入って来た一ノ宮は目の前にイツキと、その背中ごしに顔を寄せる黒川と目が合い…口をぽかんと開けたまま…

一礼だけすると、何事も無かったと言う風に扉を閉め、また外に出て行ってしまった。




posted by 白黒ぼたん at 23:54 | TrackBack(0) | 日記

2015年09月17日

一ノ宮と黒川






「……それで?」
「ああ、武松に行った。、…初鰹が美味かったぜ。日本酒もいいのが入っていて…」
「いえ、横浜の件です。海王商事の金田社長が乗り込んで来たのでしょう?」
「ああ、そっちか……」



真夜中もさらに更けた頃、事務所で一ノ宮と黒川は、あれこれ仕事の報告をする。
本来なら夕方から落ちあい、出掛ける予定もあったのだけど、それはもう聞かない事にする。



「かなり息巻いていたな。馬鹿な奴だ。結局は自分の失敗だろうに」
「…あなたのやり方が、いささか、強引過ぎたのでしょう。…まあ、向こうにも非はありますけどね…」



以前から黒川は横浜で、その商事会社と手を組み、とある物品の輸入販売に関わっていた。
黒川が関わる以上、正規のルートのまともな商品では無かった。
法的に表に出ないものであれば、お互い、画策し、取れるところから取れるだけ、利益を得ようとしていた。


結果的には…黒川が、その商事会社すら…騙したような形になったのだが。
まあ、それが黒川の仕事なのだから、仕方がない。




「…その内、適当な仕事でも振って、誤魔化しておくさ。…こんな時には、秋斗がいれば便利だったな」
「…そう言えば。…金田社長は秋斗くんを気に入っていましたね」
「…呼び戻して…、金田にやるのも、いいな。……ふふ」




まるで使わなくなったオモチャを人にくれてやるという風に、黒川は言って、笑う。
冷たいその笑顔は、一ノ宮にさえ、ゾクリとする恐怖心を与えた。





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2015年09月18日

はじめてのチュウ





(ちょっと番外編的なお話です)



とある自習の時間。
イツキは陽の当たる窓側の席で、頭を突っ伏し、うとうとと居眠りをしていた。
周りの生徒も勉強するでもなく、自由に席を移動し、雑談に興じている。
その中で、後ろに座っている男子だろうか、友達とひそひそと話す声が余計に耳についた。


「……マジ、お前。それ、初キスかよ。……遅いんじゃね?」
「…うっせーな。お前だって同じようなモンだろ」


どうやら昨日のデートで、初めて、キスをしたと言うのだ。
イツキは聞くとはなしに、話を聞き、半分眠りかけたぼんやりした頭で、…自分の、初めてのキスは、一体どれだったのだろうと…考えた。





中学2年の夏には、黒川に抱かれていた。
行為の度、唇は重ねていたけれど、それが世に言う「初めてのキス」だとは思えなかった。
もっと、もっと。手を繋ぎ、見詰め合い、恥じらい、
互いの気持ちが高じ、引き寄せられるように、唇を重ねる。
そんなキスを、いつ、自分はしたのだろうか。



「仕事」で他の男に抱かれて、身も心も酷く傷ついて
黒川の車の助手席で、泣きじゃくっていた自分に、ふいに、黒川が唇を合わせたのは、

どんな種類のものだったのか。







「…イツキ、爆睡しすぎ。…顔に服のシワ、残ってんぞ」


授業が終わり、顔を上げたイツキに、梶原がそう声を掛けた。




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