2015年11月19日

馬鹿・最終話







西崎の言葉は、まあ、嘘では無かった。
西崎は黒川に一仕事頼まれる代わりに、『今度、俺にもイツキ、貸して下さいよ』と言い、
黒川も軽く『ああ。イツキがイイって言えばな』と言う。


相変わらず黒川は、挨拶や冗談のついでに、イツキを雑に扱う。
失くせば困るくせに、手元で、酷い目に遭う分には、構わないらしい。






「……どっちにしたって、お前…歩けないだろう?休んで行こうぜ?」
「………や…」
「俺と、良い関係の方が、イイだろ?……カケルの事も、上手くやってやる…」


言いながら西崎はイツキの身体を弄り、手首を取ると、イツキの手の平を自身の股間に当てる。
衣服の上からでも、勢いが解り、その良さを知っているイツキは…ドキリとする。



「…休むだけだ…」



そんな、使い古された嘘を言って、西崎は掴んでいたイツキの手首を、今度は強引に引き
ホテルの小さな入り口を、潜るのだった。





イツキを手軽な性の捌け口にする西崎も、それを簡単に容認する黒川も、
……そんな事、解り切っているのに、油断して酒に飲まれてしまうイツキも


三人とも、馬鹿だった。





posted by 白黒ぼたん at 23:00 | TrackBack(0) | 日記

2015年11月20日

イツキ猛省・1






朝。
時間ギリギリに教室に入って来たイツキに、梶原は話し掛けようと近寄るのだけど
イツキはすぐに机に突っ伏してしまい、明らかに近寄るなオーラを出す。

まあ、概ね朝は不機嫌なイツキには、珍しい事ではないと
梶原も放っておく。
多分、昨日、何か予定があって…、眠かったり、疲れていたり…と、そんな感じなのだろうと思った。


午前の授業が終わり、昼休み。
梶原は再びイツキの傍に寄るのだけど、イツキは、朝と同じ格好のまま。
まさか、授業中もずっとこうだったとは思いたく無いけれど、もしかすると、…そうなのかも知れない。



「……イツキ、昼飯、行こうぜ。……なあ?」


何度呼んでも返事も無い。
寝ているのかと、肩をぽんぽんと叩くと、ようやくイツキは頭をほんの少しだけ傾ける。


「……な、メシ……」
「行かない」


前髪の隙間から視線だけを寄越して、イツキはそれだけきっぱりと言い、また、顔を伏せてしまった。



梶原は、イツキが余程、調子が悪いのだろうと思って、
後は何も言わず、



売店で買った缶コーヒーと栗あんぱんを、イツキの机に、置いてやるのだった。




posted by 白黒ぼたん at 23:00 | TrackBack(0) | 日記

2015年11月21日

イツキ猛省・2







放課後。
清水がイツキに目をやると
イツキは、今、起きたという風なボサボサの髪と、顔に服の袖のシワを付けたままで
ぼんやりと…、あんぱんを食べていた。

授業も終わったのだから、さっさと帰ればよいのだけど、
どうにも、お腹が空いて、目の前にある、梶原が置いて行ったパンを食べる。



清水も朝から、イツキの様子を伺っていた。
眠たいのか、疲れているのか、機嫌が悪いのか。
近寄って話し掛けなかったのは、常に、世話焼き乳母のように梶原が傍にいた為だったが、今は委員会の仕事とやらでどこかに行っている。

清水はイツキの傍へ行き
空いていた、イツキの隣の席に座る。




「…どうした?…調子、悪いのか?」


清水が話し掛けるも、当然、返事は無い。


「…ずっと寝てたな。…あっはっは。……腹、減ってるなら、そんなパンより、もっと美味いモン、食いに行こうぜ?」
「……行きません」


イツキはあんぱんをもそもそやりながら、視線だけをチラリと向け、そう言う。


「……行こうぜ?……あ、焼肉とか…」
「行かないってば!」


清水の言葉の途中でイツキは声を荒げ、食べかけのパンをカバンに放り込むと
そのまま席を立ち、教室を出て行ってしまった。




posted by 白黒ぼたん at 23:00 | TrackBack(0) | 日記

2015年11月22日

イツキ猛省・3







1人、部屋に帰ったイツキは着替えもせずに、すぐに寝室のベッドに沈む。
自分自身が嫌で、悔しくて、枕に突っ伏すのだけど、もう、流す涙もない。

うっかりすると、昨夜の、自分の姿を思い出しそうになる。
嫌だの駄目だの言うくせに、身体は貪欲で、泥酔して緩んだ穴に、欲の塊を際限なく詰め込む。






『あとで、見せてやるといいぜ、カケルに』と、


犬のような格好で挿入され、後ろから髪の毛を掴まれ、顔を上げさせられて…
正面の、鏡と、それに映る、ケータイをかざした西崎と目が合った時も……

逃げ出すよりも、快楽が勝ってしまった。




ついさっきメールで届いたその写真には
きちんと、ヨダレを垂らして恍惚の表情を浮かべる自分と、後ろに、西崎の姿が映っていて
鏡越しに、よくこんなにちゃんと、フレームに納めたものだと、感心する。

こんな、下手なアダルトビデオの一コマのような写真は、もちろん
清水を遠ざけるのにも、……西崎に、次の関係を強要されるネタにも、使えるだろう。






そのケータイが鳴って、仕方なく中を開くと、そこには黒川からのメッセージが入っていた。

西崎から、昨夜の経緯を聞いたらしく、相変わらず淫乱だなと、イツキを馬鹿にした言葉が並んでいた。





posted by 白黒ぼたん at 23:37 | TrackBack(0) | 日記

2015年11月25日

暖簾に腕押し






「俺はビールを持って行けと言っただけだぜ?無理矢理、部屋に入って来たのか?」
「……違うけど。……マサヤの了解を得てるって…、俺を抱くって……」
「お前がいいならな。……結局は、お前がOKを出したんだろう?」
「……そうだけど…」


週末。
事務所の近くの中華屋で、イツキと黒川はラーメンを食べながら、先日の西崎との一件を話す。
イツキとしては単純に、西崎に近寄りたくないだけで、関わりを持つ用件を作りたくないのだけど…黒川に、その思いは伝わらない。


「別にいいだろう。怒る話でもない。他に何か、問題があるのかよ?」
「無いけど。……マサヤは、俺と西崎さんが……しても、全然、いいの?」
「今更、そんな話か? お前が誰かとヤルのをイチイチ気にしていたら、頭がいくつあっても足りん。馬鹿か」
「……マサヤは…」




イツキは口を開き、何かを言おうとしたのだけど、考えがうまくまとまらない。
とりあえず、その口で、ラーメンをずるずると啜る。



自分の身体が、他の男に良いように弄ばれている事を、嫌がって欲しい。
それは、イツキの我儘なのだろうか。
黒川が、まともな感覚を持ち合わせていない事は、百も承知だけれど。




「…焼肉食って、酒飲んで、その勢いでホテルに行ったんだろう?…いつも通りじゃないか」

「ああ、そう。そうだね、はいはい。いつも通りだよ。何も問題は無いよ!」




最後はイツキが堪え切れずに、つい声を荒げてしまう。
これ以上、黒川と話をしても仕方が無いので、両手で器を持って、スープをごくごくと飲み干した。




黒川が、そんなイツキの姿を笑いながら見ていた事は、知らず。





posted by 白黒ぼたん at 19:57 | TrackBack(0) | 日記

2015年11月26日

無条件







黒川とて、イツキが、どうなってもいいと思っている訳では無かった。
得体の知れない浮浪者や、何かしらの病気を持っている者と関係を持つとなれば、激怒するだろう。

ただ、自分の周りの、自分とイツキの事を知っている人間ならば、最低限のルールは守る。
…多少、傷を作ったり、身体が汚れるくらいは、そう気には留めていなかった。

傷には、軟膏を塗ってやるし、
汚れは、洗い流す。
以前、中を流してやろうとシャワーヘッドをそのまま突っ込んだ時は、酷くイツキが泣いたので、それはもうやっていない。

これでも黒川は、自分が寛大で優しい男だと思っていた。






黒川とイツキは中華屋を出て、マンションへ戻る。
イツキが不満気で浮かない顔をしている事は、知っている。

どうせ、抱いて、少し優しい事をしてやれば、すぐに機嫌を直すだろうと、黒川は思っていた。
まあ、それはそれで、当たりなのだけど。





いつだってイツキの心の奥底には、ちりちりと燻る火種がある。
黒川への不満が消せないのなら、いっそ、すべて、焼きつくしてしまえばいいのに。






マンションの部屋に入ると、2人とも、それが当たり前なのだという風に寝室へ向かう。

抱き合っている時だけは、無条件で1つになれると、お互い、知っていた。




posted by 白黒ぼたん at 22:29 | TrackBack(0) | 日記

2015年11月27日

刹那







とても短い時間を刹那と言うのだけど、それは仏教用語で、一度指を弾く間に60も刹那があるのだと言う。
テレビか何かで見たのか、それとも梶原のウンチク話だったのか…、…そんな事をふと、思い出した。




黒川と過ごす夜は、そう悪くはないのだけど、かと言って、良いばかりではない。
物のように乱暴に扱われたり、痛かったり、酷い意地悪をされる時もある。

自分は仕事があるからとパソコンに向かい、その間
イツキには、無理な格好で異物を咥えさせて、ただただ、生温い快楽を与え、
やがてイツキが堪え切れずに、黒川の足元に擦り寄り懇願すると、それを見て笑い、
すっかり緩んだ穴に自身を埋め込み、侮蔑の言葉を吐き、尻を叩く。



クーラーを入れていても、何故か、熱い。
どちらのものか解らない汗が、ぽたぽたと垂れる。



「イツキ」




途中、名前を呼ばれて、目を合わせる。


ただそれだけの事で、今までの事が帳消しになる訳ではないけれど、
その短い時間が、イツキも、好きだった。




posted by 白黒ぼたん at 22:09 | TrackBack(0) | 日記

2015年11月28日

シャンプー







「イツキくん、来るなら連絡くれればいいのに。今日は俺、いるから良かったけど」
「…ん。…たまたま。…時間、空いたから」
「前みたいにカット?毛先、少し痛んでるね、トリートメントしようか」
「お任せです」



日曜日の昼下がり、イツキは美容院に来ていた。
以前、通学電車でレイプされて知り合ったミツオの店は、マンションと事務所の目と鼻の先。
ミツオとそれ以来身体の関係は無かったが、なんとなく気が合うのか、美容院は度々訪れている。



今日も、ふいに、黒川は出て行ってしまった。
もっとも昨日の夕方からする事はすべて済ませたので、もう用事はない。
自分の部屋に帰ろうかと思ったのだけど、髪の毛が目に掛かる様になっていたので、美容院に向かう。
ミツオがいなくても構わなかったのだけど、鏡の前に座ると、すぐに奥からミツオが出てくるのだった。




シャンプー台に移動する。
椅子に座り頭を下げ、シャワーで髪を濡らす。



「熱くない?」
「…ん」
「痒いとこ、ない?」
「へいき…」



顔にはガーゼが掛けられて、ミツオの顔は見えない。
単純に、人に髪の毛を洗って貰うのが気持ち良くて、イツキはあっという間に眠くなってしまうのだった。




posted by 白黒ぼたん at 23:00 | TrackBack(0) | 日記

2015年11月29日

シャンプー2





「はい。お疲れさまです」



小さな三面鏡を手に、ミツオはイツキの後ろに立つ。
イツキは正面の鏡を覗き込み、毛先を指で摘まみながら、ふふと小さく微笑む。

もともと、髪型や身嗜みには無頓着なタイプなのだが、あまりみっともない格好をしていると黒川に怒られる。
髪の毛は厄介で、放っておけばどんどん伸びてしまうし、かと言って、自分でハサミで切る訳にはいかない。

今までは、あちこち、適当な店で、その都度適当に切ってもらっていたのだけど
ミツオに切ってもらうスタイルは、好みに合っていて、良かった。



「……ありがとうございます。……いいです」
「イツキくん、ずっと寝ちゃってるから、どれだけカットしていいのか心配だったけど」


イツキはカウンターで会計を済ませ、ミツオから上着を受け取る。


「……ねえ、これからどうするの?……俺、もう上がって平気なんだけど、どこか、行かない?」


ミツオの誘いを聞き流しながら、イツキは上着を羽織り、ポケットからケータイを出す。
チカチカと光るそれに、少し、嫌な予感を覚えながら、開くと、

案の定、そこには黒川からの着信があった。


「近くに新しくワインバーが出来て…、あっ、まだ駄目か…。えっと……あっ?」


ミツオの言葉を遮るように、イツキは慌ただしくミツオに礼を言い、頭をぺこりと下げると
ミツオが引き留める間もなく、店から出て行ってしまった。






可哀想なミツオ笑
posted by 白黒ぼたん at 23:00 | TrackBack(0) | 日記
最近のコメント
林田と松田 by はるりん (10/19)
余計な揉め事 by ぼたん (10/18)
余計な揉め事 by はるりん (10/18)
甘い欲求 by ぼたん (10/17)
足りないイツキ by ぼたん (10/17)
甘い欲求 by はるりん (10/16)
足りないイツキ by はるりん (10/15)
誘惑・5 by ぼたん (10/13)
誘惑・5 by A (10/12)
誘惑・5 by はるりん (10/12)