2015年12月22日

嫌な想像







『…本日未明、北区の住宅街にある工場で火災が発生、焼け跡からこの工場の責任者とみられる男性の遺体が発見されました…』


夕方、リビングでコンビニの弁当を食べながらぼんやりとテレビを眺めていると、そんなニュースが聞こえて来た。
最初はただ聞き流していただけだが、映し出された工場の様子を見て、箸を持つ手が止まる。


『…工場は夜間も稼働しており、異様なモーター音を聞いたとの情報もある事から、何らかの事故の可能性があるとみて警察が調べています……』



「………かわいそう…」


そう、ぽつりと呟く。
何の関係もないとはいえ、つい昨日、自分が会ったばかりの人が死んでしまったとなれば、多少は、気になる。

こんな偶然は、そう滅多にあるものではない。


ないのだ。





ニュースも終わり、賑やかなバラエティ番組が始まる。
けれどイツキは、まだ弁当も食べ終わらず、適当に箸をゆらゆらさせながら、何か、考え込んでいるようだった。



昨日、黒川に頼まれた事。
男の元に行き、金を受け取る。
酷く憔悴していた男。到底、稼働していたとは思えない、静かな工場。
そして、火事。



もしかして…と、イツキが嫌な想像をしていた時に、黒川から電話が入る。
これから、この部屋にやって来ると言う、連絡だった。





posted by 白黒ぼたん at 22:49 | TrackBack(0) | 日記

2015年12月25日

危ない煮物







「…糞。一ノ宮を九州にやった途端にこれだ。何でこんなに下らない仕事が多いんだ」


部屋に入って来た途端、黒川は悪態をこぼす。
聞けば一ノ宮は今、他の仕事で九州方面に行っているらしく、その間、替わって黒川が細々な雑務まで行っているそうだ。

それでも、その仕事の、少しの隙を縫って、イツキの元を訪れる。




「…メシは…、…コンビニ弁当か、そんな物、食いやがって…。肉、焼いたら食うか?…米沢のA5だ、ワインも……」


黒川は自分で夕食を持参したらしく、そう言って、台所に入って行く。
下手な物を買うより、自分で用意した物の方が美味いと、解っているのだろう。
包みから取り出したのは、立派な霜降り肉で、適当に切り、フライパンに放り投げる。
年代物のワインで焼き付け、そのワインをラッパ飲みしながら、他に何か摘まむものはないかと冷蔵庫を漁る。


ふと、イツキが台所の入り口で、壁に寄り掛かったまま立っている姿が目に入る。
今日は、いやに、もの静かな様子。



「………何だ?」
「……昨日の、……滝田さんって人、……亡くなったって…。ニュースで……」
「ああ、上手くやったようだな」



いとも簡単に答え、黒川は、冷蔵庫の奥にあった煮物のパックを取ると
蓋を取り、鼻をくんくんとさせ、まだ食べられるものかどうか確認していた。




posted by 白黒ぼたん at 23:00 | TrackBack(0) | 日記

2015年12月26日

黒川の仕事






「…どういう事?…マサヤ、何かしたの?あの人に…」
「大きな声で喚くな。火事だったんだろう?…ご愁傷さま」
「お金、渡して、すぐに死んじゃうなんて、変。…マサヤ、何か……」


焼き上がった肉を食べながら酒を飲んでいる黒川の横で、イツキはあれこれと、質問をぶつける。
最初は適当に受け答えをしていた黒川だったが、次第に面倒になったのか、口数も減り、
最後には、イツキを冷たく、睨む。



「それで?……それ以上、聞いてどうする?」
「……だって…」
「今更どうした?……それが、俺の、仕事だろう」





おそらく。
事は、イツキの嫌な想像通りで。
多額の負債を抱えていた男は、その返済を、自らの保険金で賄ったのだ。
それに黒川が、どこからどこまで関わったのかは解らなかったが、まるで無関係ではないようだ。




「事件沙汰になる前に、現金を回収出来て良かった。あのオヤジ、死んでも、まだ揉めるぜ?…ウチ以外にもかなり借金を重ねていたからな…」


黒川にすれば、よくある話の1つにしか過ぎないのだろう。
食べていた途中の肉をフォークに刺し、イツキの前に出し、くっくと笑い、

「…焼き方は上出来だったがな、はは」


と、酷く悪趣味な冗談まで、言うのだった。






posted by 白黒ぼたん at 22:33 | TrackBack(0) | 日記
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