2016年01月04日

嫌悪感







黒川が手を伸ばすと、イツキは過剰なまでに、ビクリと震える。


黒川は、イツキが、男が死んだ事で変にナーバスになっているのだと思っていたが、

イツキは、それ以上に、……黒川に対して、嫌悪感を抱いていた。



この男は、他人の人生や生き死にに、平気で普通に関わり
軽く踏みにじり、足蹴に出来るのだと、今更ながら思う。

何かが一つ違えば、自分も、足蹴にされた側の人間だったし
これから先、何かの弾みで、そちら側に替わる可能性だってあるのだ。


まあ、まず、それは無いのだけれど
イツキにその判断は出来ない。



身を固くするイツキに構わず、黒川は手を伸ばし、イツキを傍らに抱く。
そして、空いている方の手で、残りの肉を口に放り、ワインで流し込むと
次は、イツキを食すと
ばかりに、抱えたまま立ち上がり、半ば引きずるように寝室へ連れて行くのだった。








あけましておめでとうございます。
こんな中途半端なお話の続きで新年を迎えてしまいました。すんませんあせあせ(飛び散る汗)

醤油っ辛いおせちの後には、甘いぜんざいを用意しておきます!
少々、お待ちくださいませ〜
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2016年01月06日

勘違い






何かが間違えているのかと、ふと、思う。
イツキを自分の手の内に押し込め、求める欲望のすべてを与えているというのに
一向に、イツキの眉間のシワは消えないまま。
どこか苦しく、もの悲しいのは、黒川にさえ、解る。

頬を2,3回叩き、尻を叩き、髪の毛を掴み、顔をこちらに向かせても
どうにも。
イツキが、自分を見ようとしていない気がする。



「………何だよ。……まだ拗ねているのか?」
「……拗ねてなんて…、ない…」
「お前は解り易いな。文句があるなら、はっきりと言え」
「文句なんてないよ。……あっても、…言わない」
「ふん」



言い合っていても埒が明かないので、噛み付くようなキスをすると、口の中に血の味が広がる。

抱き締めても、あまり、熱くはない。



「イツキ」
「マサヤ」



名前を呼んだのはほぼ同時で、お互い、顔を見合わせ、視線の奥の真意を探る。




ふと、イツキの力が抜けて、素直に黒川の腕に身体を預ける。

それで、イツキが自分に従うようになったと思うのは、黒川の大きな勘違いだった。




posted by 白黒ぼたん at 00:16 | TrackBack(0) | 日記

イツキの提案






「……ハァ?」



平日昼中。
マンションからほど近い場所にある定食屋で、イツキと黒川は食事を取っていた。
明け方まで続いていた運動のようなセックスで、余程腹が減ったのか、特に弾む会話もなく黙々とメシを口に運び、
最後に、味噌汁で流し込み、一息ついたところで、イツキがある提案をする。

黒川は、煮物を喉に詰まらせそうになり、慌てて、熱いお茶を飲み、
素っ頓狂な声をあげて、イツキを睨む。



「…何を言っている。…馬鹿か」
「馬鹿じゃないよ。…いいじゃん」
「お前に出来る訳、無いだろう?」
「出来るよ。…アルバイトくらい」



イツキは突然、アルバイトをしたいと言い出したのだ。
それは、人の道から外れた仕事で金を稼ぐ黒川への当てつけのようなものだった。
そして、そうは言っても自分も、その黒川の金で…他人を蹴落とし欺き、時には死に追いやり得た金で、生きているのだ。

今、食事をしたこの代金も、その金で賄われる。



「…好きにしろ。どうせ問題を起こすだろうがな。…痛い目に遭って来い」



イツキの思いを知ってか知らずか、黒川は端から馬鹿にした様子で、そう言う。
ともあれ、とりあえずこれで黒川の了承は得られたと、イツキは鼻息を荒くする。




事の結末は、黒川の言った通りになるのだけれど。


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2016年01月08日

忠告







「イツキくんが来ましたよ。…バイトを始めるので、銀行口座が欲しいと」
「…ああ」
「以前、作ったものを渡しましたが…。本当に、お許しになったのですか?」
「ああ」



数日後。
黒川が事務所に戻ると一ノ宮がそう告げる。
明らかに怪訝な表情を浮かべながらコーヒーを淹れ、それを黒川に手渡す。



「どういう風の吹き回しか知らんが急に言い出してな。…まあ、勝手にすればいい。どうせ、まっとうな仕事なんざ、出来んさ。
適当に遊んで、酷い目に遭って、すぐに飽きるだろうよ」
「…そうですかね…」
「何だ。いやに気を揉むな」
「…あの子は、色々考えていますよ?」



一ノ宮も自分のコーヒーを手に持ち、デスクに寄り掛かる様に腰を預ける。
一口啜り、溜息を付き、何をどこまで話そうかと、少し考える。



「自由になるお金や、…あまり下手な知恵を与えない方がよろしいかと思います。
…普通であれば…、こんな場所にいられるはずは無いのですから…。
ここを、離れたいと……、あなたの傍から離れたいと、…気付くかも知れませんよ?」

「………そうだな」





一ノ宮の忠告に、黒川は、そう返事をして笑う。
それはもう、その事なら解っていると、いった様子だった。





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2016年01月09日

昼食は鯖定食







「バイトぉ?お前がぁ?高3のこの時期にぃ?」
「…そんなに大騒ぎする事じゃないでしょ、梶原」
「なんだよ、急に。何かあったのかよ?」
「何も。…ただ、ちょっと…。自分でお金、稼いでみたいなって…思っただけだよ」


昼食の鯖定食を吹き出しそうになりながら、梶原は騒ぐ。
イツキの言動には驚かされる事が多いが、今回もまた然り。


「それで、梶原、何か知ってるかなって…。…いいバイト。あんまり、疲れなくて…、人に会わなくて、短い時間でいいの」
「そんなん、知ってたら俺がやるよ!……何?何か欲しいモンでもあるの?」
「別に。…ただ本当に…、ちゃんとした方法で、お金、貰ってみたいだけ」


そう言ってイツキは塩サバの身をつつき、ちょうど当たった骨に困りながら、唇を尖らせる。

普段、イツキが、どんな風に「金」を得ているか知らない梶原には、イツキの言っている意味が解らない。


黒川がどれだけ人を傷つけ欺き、陥れているのか。
イツキがどれだけの男に抱かれ、心と身体を切り売りしているのか。
梶原には想像もつかないだろう。




「…お前って、たまに変な事、言うよな。…ああ、でも、バイトも、社会勉強の内かなぁ…」


そう言って梶原は最後の味噌汁をすすり、イツキに向かって、屈託のない笑顔を向けるのだった。





posted by 白黒ぼたん at 23:00 | TrackBack(0) | 日記

2016年01月10日

バイト探し中






イツキ自身も、一応の努力はしたのだ。
街中にあるバイト求人誌を開き、条件が合うものを探す。
けれど、働ける時間は学校が終わってから、夜9時までの数時間。
週末は黒川との予定があるため入れず、平日とて、急に呼び出しがあるかも知れない。
体力勝負の仕事は無理だし、スーパーの単純なレジ打ちすら、はるかに難しい仕事に思える。

何より、募集要項にある、「明るく元気な方、募集」というだけで、もう、無理だと思ってしまう。


求人誌をぱらぱらとやって、溜息をついて、放り投げる。
自分には何が出来るのだろうと、考える。




目の前の男を誘惑して、ホテルに連れ込む事は、出来る。
ベッドの前でもじもじと恥じらい、向こうから、自分に手を出させる事も出来る。
キスも上手だし、フェラも得意。
中でイク事も出来るし、それを途中で止めて、ずっと長い時間、相手を悦ばせる事も出来る。




「………ああ、違う違う違う。…そんな仕事じゃなくって…!」


思わずイツキが声を出して、自分の考えを中断させたところで、
梶原からの電話が、鳴った。





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2016年01月12日

早速後悔






『……俺が夏休みとかバイトしてるスーパーなんだけどさ、担当の人、知り合いで、仲良くて…、…で、系列の店がリニューアルオープンで、少しだけでも手伝って欲しいって言われてて…
とりあえず、来週、一日だけ……』



聞けば、その店の責任者と梶原の親が昔からの馴染みで、
高校に上がった梶原は学業第一の手前、シフトに縛られるバイトは出来なかったのだけど、その代わりにこのスーパーで都合に合わせて、働かせて貰っていた。

人当たりも良く頭の回転も早い梶原は、店でも重宝がられ、どうしても人が足りない時の最後の頼みの綱と、時折、呼び出されていた。
最近は勉強を理由に、あまりバイトは出来ないからと断っていたのだけど、


イツキのために、何か仕事はないものかと、当たってみてくれたのだ。



『…そんなに大した仕事じゃないよ、抽選会があるらしくてさ、…ビラ配って、景品配ってっ…、とりあえず、3時間ぐらい…、夕方のピークだけ…』
「やる。…ありがと、梶原」





大まかな話だけ聞いて、イツキは即答する。
電話を切ると、何故だか動悸がして、顔が火照ってくる。


自分が、アルバイトをすると、決まっただけでどうにも…緊張する。
大した仕事ではないと言うけれど、自分が人前に出て何かをするというだけで、それはオオゴトなのだ。



裸ではなく、服は着ていても。
恥ずかしさで、眩暈がする。

そしてやはり、こんな事は止めておけば良かったと、泣きそうな気持になった。





posted by 白黒ぼたん at 21:43 | TrackBack(0) | 日記

2016年01月13日

意地悪






週末は黒川の元に行き、黒川に抱かれていた。
イツキはどこか頭の隅に、数日後のアルバイトの事が気になっていたが、黒川はその杞憂ごとイツキを楽しんだ。


指にたっぷりとジェルを乗せ、イツキの穴を丁寧に解きほぐす。
けれどそれは、中指の一本だけで、イツキにはどうにも物足りない。
最初は半ばぼんやりと愛撫を受けていたけれど、次第に、黒川の指に意識を集中する。
どんな小さな刺激も、逃さないように、肌に当たる微かな吐息さえ、欲しい。



「………んっ、………んん」


満たされない不安に、眉間にしわを寄せるイツキを、黒川は笑って眺める。
そして不意打ちにイツキの中心をべろりと、一度だけ舐めて、すぐに離れてみたりする。



「…やっ………、マサヤ…、や……」
「…うん?」
「……今日…、……いじわるだ…、………いじわる…」
「…そうか?」


黒川はそう言って、中に入れている指の、ほんの指先だけを小さく動かす。
それだけでイツキは脚を閉じたり広げたり、腰を上下に振ってみたりと、忙しい。
穴は、まるで、単体の、貪欲な生き物の様で、
イツキの意志に関わらず、いやらしく、黒川の指を舐る。




「………どう足掻いても、お前は、こっちの住人だよなぁ…」




黒川がつぶやいた言葉が、イツキの耳に届いたのかどうかは、解らない。




posted by 白黒ぼたん at 22:52 | TrackBack(0) | 日記

2016年01月14日

はじめてのあるばいと






それは予想した通り、散々なものだった。




「……はい。岡部くんね、よろしくお願いします。じゃあここに立って、チラシ配って、大きな声で『抽選会場、あちらです』って言って……、んー、もっと大きな声、出せるかな、もうちょっとね。

お客様誘導してね、元気よくね。…んー…、もうちょっと笑顔が欲しいかなー。
チラシ、落ちてるよ、気を付けてね。顔が怖いよ?もっとニコニコして…

で、このロープの内側に並んで貰って…、……ああ、そっちじゃなくて、こっちね、うん。
で、並んでいる間に抽選券が10点あるか確認してね。……ん?……暗算でね。……大丈夫だよね?
…いや、それ、9点。………大丈夫だよね?

……あー、違う違う、ピンクの券持ってる方はこっち、こっち。
こっち並んで貰って…、ロープの内側ね、ああ、前の方、追い越さないの!
……チラシ!……踏んでる、踏んでる!


……ええと、じゃあ…、もう、そっちはいいから…こっちでお子様に風船配って貰おうかな…
この風船、ヘリウム入りだから、手、離しちゃ駄目だよ、離したら………あッ」




イツキが手に持っていた風船はふわふわと浮き上がり、あっという間にホールの天井近くまで飛んで行ってしまった。
横では風船を貰い損ねた子供が、泣きだす。
その泣き声を聞いている内に、イツキまで、泣きたい気分になって来た。





「……岡部くん…、お疲れさま、もう帰っていいよ。これ、今日の手当てね。交通費込みで三千円。
で、人が足りなかったら明日もお願いするかも…なんて話もあったけど、もう、来なくてもいいから。
はい、お疲れさま」


最後にはそう言われ、厄介払いをするように手をひらひらと振られ、おまけに、
後ろで作業をしていた別のアルバイトには、「……あんなので金、貰えるなんて、ドロボーと一緒だよなー」などと、囁かれるのだった。



posted by 白黒ぼたん at 22:40 | TrackBack(0) | 日記

2016年01月15日

交通費込三千円







初めてのアルバイトは3時間のみ。
しかも最初の30分は丁寧な説明だったし、終わりの30分は邪魔者扱いで、ただ、立っているだけだった。
役立たずの高校生の初バイトにしては、そう悪くない金額なのかも知れない。


イツキは貰った千円札を三枚、テーブルに並べて、しばらく眺める。




黒川の『仕事』は、すでに黒川と客の間で交渉は済んでいるため、イツキが直接、代金を受け取る事はない。
それでも客はご機嫌伺いか、イツキに気に入られたいのか、イツキ個人にチップを渡すことも少なくない。
あまりに高額であれば黒川に報告するが、それらの金はイツキが持っていて良いことになっている。
金は無造作にリビングのテレビボードの引き出しに入っていて、今、合計でいくらあるのかなど、気にすることもなかった。



いつぞやは…
事が終わったばかりの穴に、一万円札を十枚ほど丸めたものを詰められた。
結構奥まで入れられ、引き抜くのに苦労した。
外側の一枚は濡れ、少し、汚れも付いていたので、タオルで拭き、
帰りのタクシー代で、使ってしまった。




テーブルの上の三千円を手に取る。
立ち上がり、それをいつもの引き出しにしまおうとして、…止める。
封筒に戻し、何を思うのか少し胸に当て、どこか他の別の場所に納めるのだった。




posted by 白黒ぼたん at 21:29 | TrackBack(0) | 日記

2016年01月16日

放課後







まだ数人は教室に残り、ざわざわとした雰囲気の中、ふいに清水が梶原を呼び止める。
イツキは終業のベルと同時に、教室を出てしまっていた。


「…なあ。…あいつ、どうしたの?」
「…どうって…?」
「ここんとこずっと。何だか落ち着かなくね?……様子が変だ」
「……さあ」


梶原は図書室に戻す本を整理しながら、少し、とぼけてみせるのだけど
清水が、手に、アルバイト求人誌を持っているのを見て、おおよその見当はついているのだろうと思う。
求人誌は、イツキが机の中に忘れて行ったものだった。


「…もしかして、何か、バイトしてるとか?」
「いや。……探してるみたいですけど」
「…何で!?」
「知らないっすよ。……ただ」



イツキがアルバイトをしてみたいと言い出した本当の理由は、梶原にも解らないのだけど。

おそらく、確かめてみたかったのだと思う。

自分が、まっとうな方法で、金を稼げるのかという事を。



「……イツキなりに、頑張りたいみたいっすよ。……ちゃんと、したいって…。
ちゃんと働いて、お金、貰ってみたいって…」


「……そっか。……あいつ、そんな事、考えてたんだ…」



たったそれだけの説明だったが…
…イツキが、ちゃんとしていない方法で金を得ていることをしっている清水には、
何となく、伝わったらしい。



イツキに理解を示す清水に、梶原は、少し嫉妬した。




posted by 白黒ぼたん at 23:29 | TrackBack(0) | 日記

2016年01月18日

佐野とイツキ






「…三千円!今どき、ガキの小遣いだってもっと貰えるぜ?」


目の前の佐野はそう言って、笑う。
そして、口の中に入れていた焼肉を零しそうになって、慌てて、手で押さえた。

事務所の近くで偶然佐野に出会ったイツキは、誘われるまま食事に行く。
どこか、何か、人恋しかったのかも知れない。

先日のアルバイトの話をすると、佐野は驚き、半ば馬鹿にしたようだった。


「…そんなに笑う事、ないじゃん…」
「悪い、悪い。でもよ、スーパーで、人前で声張り上げて…なんて仕事、お前に一番似合わないだろ」
「でも、高校生で、初心者で、時間も短くてって言ったら、他に、仕事なんてないでしょ?」

「…あるじゃんか、…お前には」



そう言うと佐野は、さっきとは別の笑みを浮かべて、イツキをチラリと見遣る。
それは、男とセックスする事なのだと、佐野もイツキも、言わなくても知っている。



「……そういうのが…、嫌だから…、なんか、他に出来ないかなって…、思ったんだよ…」
「…ふぅん。…お前がフツーに働くなんざ、想像も出来ないけどな…」



網の上の肉を裏返し、合間に、ビールを飲みながら、佐野は言う。
イツキはビール瓶を持ち、佐野の空いたグラスにそれを注ぎ、何食わぬ顔で、自分のグラスにも注ぐ。



「…チップで貰うの、とか…。マサヤに貰うお金だってそうだよ。…俺の周りは、汚いお金、ばっかりだよ…」




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2016年01月19日

佐野とイツキ・2







「あっはっは。今更、何言い出すんだよ、イツキ。そんなモンだろう、俺らの世界は…」


言って、笑って、肉を食べて…、佐野はふと、思い当たる。
いわゆるヤクザと言われる自分と、イツキは、違った。
現状はどうであれ、イツキは自ら望んでココに来た訳では無い。しかもまだ、若い。


「……まあ、……お前がそう思うのも…、解るけどな。……解るけど…」


上手くその先が続けられなくて、佐野はとりあえずビールを飲む。
二本目のビンはすでに空になり、追加でもう二本、頼む。
一緒に、イツキに、他に何か食べたいものはないかと尋ねる。
そんなさりげない気遣いの、ただそれだけでも、イツキは嬉しい。


「…骨つきカルビと上ハラミ。……佐野っち、ありがと」
「…は?何言ってんだよ。…ああ、あと、ウーロン茶」


一応、ウーロン茶をイツキ側に置き、そしらぬ顔で、ビールも注ぐ。
…多少、酒に酔えば、この後どこかに連れ込めるのではないかと…思っていない訳でもない。




「…でもよ、イツキ」
「…ん?」
「金に、汚いも綺麗も無いだろ。お前が貰う金だって、タダで貰っている訳じゃない。
お前が、身体張って、している事の対価だ。
大威張りで貰って当然のものだ。…だろ?」



焼き上がった骨付きカルビにハサミを入れながら、佐野はそう言い、イツキを見ると、


イツキは何故か泣きそうな顔をして、こくんと、頷くのだった。



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2016年01月20日

イツキと佐野・終







2人、ほろ酔い気分で焼肉屋を出る頃には、外はすっかり薄暗く、夜の街になっていた。


「イツキ、この後、どうする?」
「…帰るよ。…向こう。マサヤ、今日は横浜に行ってて…いないから…」
「ふぅん。…社長、いないのかぁ……」


まるで大した問題でも無いという風に、佐野は明後日の方を向いて、そう言う。
そして、そのままタクシーが拾えそうな大通りまで歩くのだが…


「……ちょっと飲み過ぎたか?……歩くと、回るなぁ…」


そんな事を言って、足元が覚束ない様子で、イツキごと押しやる様に道の端に寄る。
そこが丁度ホテルの入り口だった事は、偶然ではないだろう。





「…………佐野っち…」
「……悪ぃ。…よろけちった…」


佐野は照れくさそうに笑い、酒に酔ったと言う割には鋭い目で、イツキを見る。
イツキが逃げられないように、自分の身体を覆い、すでに硬い、下半身を押し付ける。


「…ちょっと、休んで行こうぜ?」
「休まないでしょ?」
「じゃあ、エッチしようぜ。な。…イツキ」
「…駄目だよ…」


イツキはそう言って、視線を逸らせ、顔を背けるのだけど



やはり、酒に酔って足元が覚束ない様子で、ふらふらと佐野に押されるまま、ホテルの中に入って行くのだった。






駄目じゃん、イツキ笑
posted by 白黒ぼたん at 22:45 | TrackBack(0) | 日記

2016年01月21日

反省会







佐野がホテルのベッドで目を覚ますと、隣にはもうイツキの姿は無かった。
風呂にでも入っているのかと思ったが、その気配もなく、しばらくしてから、先に帰ってしまったのだと気付く。


あわよくば起き抜けにもう一度…と思っていた佐野は、軽く舌打ちしながらも
それでも昨夜のイツキで十分満足したようで、それを思い出しては、腰をもぞもぞさせるのだった。





イツキはホテルを出て、すぐにタクシーに乗り込み、自分の部屋に戻る。
部屋に戻ると、風呂に浸かり、何一つ佐野の痕跡を残さないようにと、念入りに身体を洗う。

石鹸を泡立てながら、どうして昨夜はあんなに簡単に、佐野の誘いに乗ってしまったのかと猛省する。


食事に誘われた時から、多少、ナーバスだったことは解っていた。
勧められるままアルコールを入れれば、自分が拒めなくなることも知っていた。
「遊び」なら勝手にやればいいと、黒川は言うけれど…後から必ず尻軽と罵られるし、
相手が佐野の場合は、寛大に許す時もあれば、そうでない時もある。

なにより、目の前の快楽を欲しがり過ぎる自分が、酷い。




風呂からあがり、ケータイを確認するも、昨夜から黒川の連絡が一切無い事に安堵する。
ふと、…嫌な予感がして、寝室を覗いてみるのだけど、そこに黒川が寝ている事もなく、胸を撫で下ろす。



「……まあ、たまには…、こんなこともあるよね……」



イツキは台所で牛乳を飲みながら、自分自身に、言い訳をするのだった。




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