2016年02月01日

久々週末・6






「……佐野っちだよ」
「…ん?」




一通りコトが終わり、黒川の後にイツキもシャワーを済ませ、タオルで髪の毛を拭きながらまた寝室に戻って来る。
ガウンを羽織り、ベッドの縁に座り、煙草をふかしていた黒川に、イツキが頼まれてもいない告白をする。



「……マサヤが横浜に行ってた日。……なんとなく…。ごめんなさい…」
「そんな事、いちいち言わなくても良いと言っただろう?」



黒川は少し不機嫌そうにイツキを睨む。
イツキは構わず、まるで自分自身への謝罪のように項垂れ、そのままベッドの黒川の隣に上がる。

擦り寄る猫のように身体を触れさせ、くっついたまま、丸く寝転ぶ。



「……怒ればいいのに」
「それはお前の都合だろう?俺に怒られれば、それで謝罪が済むと思っているんだろう?」
「……もっと、気にしなよ、俺のこと。……ヤキモチとか、焼けばいいのに」



そんな事をイツキが言うので、黒川は少し驚き、傍らのイツキを見下す。
寝ぼけているのか、まだ余韻で頭がおかしいのか、様子を伺う様にイツキの顔に手を伸ばす。



すかさず、イツキは、その手を取り、口元に当てるようにして



「……煙草の匂いがする」



と、言う。





その数秒後には、黒川はまた、イツキを抱いてしまうのだった。




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2016年02月02日

久々週末・7








イツキの希望通り、黒川はイツキの火遊びをあれこれ詮索する。
けれどそれは、ただ、そうやって問い詰めて、楽しんでいるだけに過ぎなかった。



「…外で、ヤって来て、怒れば…怒るし。怒らなければ、…拗ねるし。…勝手な奴」
「拗ねてる訳じゃないけど……、何にも言われないのも……、いや……」
「佐野とヤるのは、いつもの事だろう?……自分から誘ったのか?股を広げて…」


そう言いながら黒川は、膝を立てていたイツキの足を、M字に開いてみる。
中心に、幼い性器が勃ちあがる様が、卑猥だ。
その先端だけを、黒川は軽くぺろりと舐める。
イツキは短く鳴いて、それだけでは足りないと言う風に、腰を揺する。


「言えよ。同じように。……佐野を誘ったように、俺にも、言ってみろよ」
「……おれ…が…、誘ったんじゃ…ないもん。……なんか…、……なんとなく……」
「ああ。…なんとなく、そこいらの男とセックスするのは、お前の十八番だったな…」


黒川は馬鹿にした様に笑って、今度はイツキの尻の穴から物の先端までをベロリを舐め上げる。
そしてそのままイツキの足を割り、身体を重ね、自身の物でイツキの物を擦る。


「良かったか?…佐野は。……どうせみっともなく喘いで、ヨガリまくって……」
「…知らないの、マサヤ」
「…うん?」

「…おれ、…本当に気持ちいいのは…、マサヤだけだよ…?」




キスをするほどに近く顔を寄せ、そんな戯言を言いあう。

2人のセックスのダシに使われる佐野は、ただただ、気の毒としか言いようが無かった。




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2016年02月04日

久々週末・8






日曜日の夜、黒川はちょっとした仕事で、一ノ宮と出掛けていた。
本当は昨夜から連絡をしていたのにと、少々、愚痴を零す一ノ宮に、助手席の黒川は、はいはい、と返事をする。

管理している店を数件回り、知り合いの事務所に顔を出し、軽い接待を受ける。
さらにこの後も別の場所で…と誘われるのだが、それはまた次回と丁重にお断りする。


「…どうしますか、雅也。事務所に戻りますか?…西崎さんからも、時間がある時に寄って欲しいと言われていましたよ?」
「それも、次だ。どうせあいつの用事は大した事じゃない」
「池袋のマッサージ店の事だと思いますが…」
「お前が行って聞いて来い」



今度は一ノ宮の方が、はいはい、と返事をする。
そうして黒川は、今日はこれ以上仕事をするつもりはないと、早々に引き上げてしまった。








真夜中に部屋に戻り、寝室を覗くと、ベッドの中にイツキがいた。
日曜日の夜で、黒川が外出するとなれば、いつもならイツキは、自分の部屋に帰るはずだった。
物音に気付き、イツキは薄く目を開けて、「おかえりなさい」と言う。


「…まだ、いたのか」
「…だって、マサヤが帰るなって言ったんじゃん。……続き、……するって…」
「そうだったか?」


とぼけたように黒川はそう言って笑って、上着を脱ぐと、ベッドのイツキの隣に潜った。





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2016年02月05日

週明け






月曜日、イツキは学校を休んでいた。
火曜日。相変わらず連絡の無いイツキを半分心配し、半分は呆れ、梶原は窓側の席で頬杖を付いていた。

イツキが学校を休むのは今に始まった事ではないけど、
もうじき定期試験もあるし、無駄に欠席を重ねて、良い訳はない。



二時間目が終わった頃、グランドの向こうの道路に、タクシーが止まるのが見えた。
降りてくる人までは確認できなかったけど、それから数分して、イツキが教室に現れた。

眠たそうに欠伸をし、自分の机に向かう。
カバンから缶コーヒーと菓子パンを取り出し、大きなあんぱんを、もそもそと食べ始める。


「おはよ、イツキ。…朝メシ?」
「………ん」
「タクシーで来た?降りて来るの、見えたよ」
「……ん」


梶原の質問に、イツキは面倒臭そうに短く返事をする。
そして、どうにかパンを食べ終えると、もう休憩とばかりに、机に突っ伏してしまう。
授業を受けると言う気は、更々無いらしい。


もっとも、黒川との週末を終え、朝、向こうからタクシーで戻り
自分の部屋で制服に着替え、そのまま待たせてあったタクシーで学校に来たのだ。

来ただけでも、偉い。



「…もう寝ちゃうのかよ?…早いな。次、古文だぜ?試験範囲だぜ?
…タクシー通学なんて、スゴイよな。バイト代も、一日で吹っ飛ぶな、はは」



イツキと話し足りない梶原は、ちょっとした嫌味を言ってみるのだけど
イツキはチラリと梶原を見ただけで、次の間にはもう、寝入ってしまったようだった。



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2016年02月06日

ちょっとした話・1



(…番外編的な)





その日、イツキがその界隈を歩いていたのは、単に道に迷ったからだった。


黒川の事務所に行くのに、いつものように、いつもの駅を通ったのだけど
以前、見掛けた和菓子屋にもう一度行ってみたくて、うろ覚えの出口から地上へ上がる。

日本一と言われる巨大ターミナルのこの駅は、1つ出口を違えるだけで、とんでもない方向へ放り出される。
イツキが地下街から階段を上がると、そこはおそらく、知っている街中のどこかなのだろうけど…目的の和菓子屋がある通りではなかった。



「………んー…」



と、少し、唸る。
まあ、それでも通りの看板や人の流れから、多分、正しい思われる方向へ歩き出す。
賑やかな通りは、黒川の事務所がある辺りより、少し、趣が違う。
風俗店などのいかがわしい店は少なく、替わりに音楽や小劇場などのホールがあるのか、若者が多く歩いていた。



「……やめて下さい。あたしたち、そんなんじゃ、ないです…!」



人混みの中から、そんな声が聞こえてくる。
どこにでもトラブルはあるのだろう、周囲もそんなに気にも留めず、イツキもちらりと伺っただけで、その向こうでタクシーが拾えないかと脇を通り過ぎる。


「…離してください、やだ。…本当に、そんなつもりじゃないんです!」


若い女性二人が、いわゆるチンピラ風の男に絡まれているようだった。
イツキは通り過ぎ、そして、足を止めて、ふと振り返ってしまう。


そこにいたのは、どこかで見たことのある、女の子だった。





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2016年02月09日

ちょっとした話・2






「……イツキくん?……イツキくん!」


女性がイツキに気付き、思わず名前を呼ぶものだから、イツキはここから立ち去れなくなる。
しかたなく傍に寄り、「……どうしたの?」と声を掛ける。

女性は、去年同じクラスで、何度か話もしたことがある。知り合いよりは、知っている感じだが、友達、という程ではないと思う。
名前は、確か、沼原、だったか。
活発でいつも笑顔で、梶原と賑やかに話をしている印象だったが、今は眉間にしわを寄せ、泣き出しそうな顔をしていた。

助けを求めるように、イツキの上着の袖を、きゅっと掴む。



「…何、アンタ。この子の知り合い?カレシ?」


沼原に絡んでいたチンピラが、いぶかしげにイツキを眺める。
こんな類の男には慣れているイツキだったが、事情が分からない事にはどうしようもない。
しかも男の後ろには数人仲間がいるようで、なんとなく、取り囲まれてしまう。


「…どうしたの?沼…原…さん?」
「どうしよう。…あたし達、解んないの…」
「何が?」
「急に…怒られて…、……どうしていいのか、解らないの……」


イツキという知り合いに合えて少し気が緩んだのか、沼原の目から涙が零れ落ちる。
横にいたもう一人の女の子は…、こちらも学校で見かけたことのある子だったが、すでに泣きじゃくり話にならない模様。



「……えっと。……俺、この子たちの…、知り合いです。……何か、あったんですか?」
「ぁあ?…どうもこうもねぇよ。このお嬢さんたちがね、俺らの仕事の邪魔、したんだよ!」


男は凄味を効かせて、イツキに詰め寄る。
イツキは、まだ若い男の荒い鼻息を聞きながら、男のジャケットの裏地が紫色のサテンなのを見付けて、…安っぽいな、などと、思っていた。




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2016年02月10日

ちょっとした話・3







事の次第はこうだった。

すぐ近くにあるホールで、あるアイドルグループのコンサートが行われていた。
沼原たちはそれに行くつもりだったのだが、手元には人数分より多いチケットがあった。
より良い席を確保しようとオークションで落札したものが、ダブってしまったのだ。

そこで、そのチケットを別の人に譲ろうと…あれこれ画策し…
ようやく見つけた取引相手とこの場所で落ち合う約束をしたのだけど

現れたのは、風体のよろしくない男達だった。



「困るんだよねぇ。俺らのシマで勝手にこんな事されちゃぁ…」
「ごめんなさい。あたし達…駄目な事って…、知らなかったんです…。ごめんなさい…」
「謝って済む問題じゃないよ。それなりの場所代、貰わないとねぇ」



泣きながら謝り続ける沼原と、因縁を付ける男達。
要は、自分の縄張りで勝手に商売をしようとした沼原達から、金を巻き上げようとしているのだった。

恐る恐る金額を尋ねる沼原に、男は指を三本立ててみせる。
たとえそれが三万円でも、普通の高校生の彼女には大きい額だったが、実際は桁が一つ違った。



「……そんなの…、無理です…。あ、あたしたち……」
「まあ、ここで立ち話もなんだからさ。ちょっと来な。…な?」



そう言って男達は、沼原達を取り囲み、どこかへと誘導する。
すでに怯えきり、恐怖で足が竦む女の子たちには、逃げ出すなどという選択肢は無かった。
イツキも、沼原に上着の袖口を掴まれたまま、そのまま一緒に歩き出すのだった。




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2016年02月11日

ちょっとした話・4






連れて行かれたのは歩いて数分程の場所にあるビルの2階だった。
扉には「中央ファイナンス」と書かれていた。
室内は入ってすぐにカウンターがあり、本当に何か、金融系の事務所のようだったけれど
その奥の応接テーブルにはビール瓶と、吸殻が山盛りの灰皿が置かれ、脇には何が入っているのか解らない段ボール箱が積まれていた。

男はイツキと沼原たちをソファに座らせ、自分も向かいに座り、テーブルにどんと足を乗せる。
他の男も周りを取り囲み、煙草をふかせながら、にやにやと笑う。

その、ただならぬ雰囲気だけで、女子2人はパニック状態になっていた。
勿論、そうさせる事が、男たちの狙いだった。



イツキは、
男たちに言われるがままこの場所に来ることに、多少の躊躇もあったのだけど、
逆に、こんな場所の方が、落ち着いて話が出来るような気もしていた。




「さて。どうしようねぇ。どうやって支払って貰おうかな? 三十万」

半ばからかうように男がそう言うと、沼原は泣きながら首を横に振る。
どうしたって、彼女たちに用意出来る金額ではない。


「親御さんに相談する?でも、まあ、ぶっちゃけ…チケット転売は違法だからねぇ…。学校とかに知られてもまずいんじゃねぇの? 大騒ぎになるよねぇ…」


自分達が行っている悪事はさておき、そんな事を言って、恐怖心を煽る。
普通の相手なら怯え、混乱し、まともな判断が出来なくなる頃合。


「…いいバイト、紹介しようか?…君たち、女子コーコーセーでしょ?…稼げるよ?」

「…三十万で良いんですか?」


男が身を乗り出し、沼原に良からぬ提案をし始めた時、ようやくイツキが口を挟んだ。




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2016年02月12日

ちょっとした話・5







「三十万、渡せば良いんですね?…俺、払います」
「……ぁあ?」


イツキの話に男は眉をしかめ、イツキを威嚇する。
けれどイツキはそんな態度に臆する事も無い。


「持って来るので、この子たち、帰してあげて下さい」
「おーおー、格好良いこと言うね、カレシ。そんな事言って、自分だけ先に逃げる気じゃねぇのか?」
「逃げません」
「…よくよく見れば、カレシも可愛い顔してるね?…そういう仕事、あるよ?紹介しようか?」


そう言って、男は周りの男たちと一緒に、いやらしく笑う。
最初から、イツキたちに金を払えるとは思っていない。
どうにかして、怪しげな仕事の契約書にサインをさせようとしているのだ。


「…お金、払えばいいんでしょ?…じゃあ、持って来て貰えばいいんでしょ!?」


見慣れた笑みに、イツキは半ばヒステリックに声を荒げる。
そしてポケットからケータイを出すと、どこかに電話を掛け始める。

男たちは多少、驚き…「何だ?ママに泣きついちゃうのか?…騒ぎになると、困るのはお前らだぞ?」などと言ってみる。
どうやらこの辺りから薄々、目の前にいる少年が普通ではないと感じ始めていた。



「……もしもし、……一ノ宮さん?」



イツキが電話を掛けた先は、一ノ宮だった。

佐野では、すぐに金を持って来られないかも知れないし、火に油を注ぎ、大騒ぎになるかも知れない。

…黒川では、逆に、自分が困る事が起きるかも知れない…と、思ったのだ。



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2016年02月13日

ちょっとした話・6







イツキの行動に驚いた顔をしているのは男たちだけではなく、
隣に座っている沼原も、そうだった。
自分たちを助けてくれようとしているのは解るが、そんな大金、簡単に用意出来るものではない。
何か、言いかけようとする沼原に、イツキはいいから、と手をかざし、
通話を続けた。



「…ごめんなさい、俺、ちょっと…トラブルに巻き込まれてしまって…。
三十万、…借りてもいいですか?……ん、……今すぐです。
…えっと、多分、近くです。……なんとかファイナンス…、中央ファイナンスって…ガラの悪い所…。
解りますか?……ええ、すみません……」



時折、困ったように、照れたように、笑いながら、イツキは通話を終える。
そして、男たちを見据え「…10分ぐらいで来ます」と、言う。







部屋の扉が開き、入って来たのは、やはり人相の悪い、白スーツの男だった。
どうやらここのボスらしく、男たちは勢い立ち上がり深々と頭を下げる。

「…ああ、いい。続けろ」


黒メガネはそう言って、奥の、自分のデスクに向かう。
街で難癖を付け少女を連れ込み、あれこれいかがわしい交渉をしているのは、日常茶飯事だった。

男は立ち上がったついでにと、気を取り直し…
足で、テーブルの縁を蹴飛ばす。
沼原たちは、きゃあと叫び、身を寄せ合うも、肝心のイツキは一向に動じず。



「……お前、ふざけてるんじゃねぇぞ。どこに電話掛けてたんだよ!」
「もう、来るよ!お金、払えばいいんでしょ!」


そう言ってイツキは不機嫌そうに頬を膨らませ、顔をふいと横に向ける。
すると奥にいた白スーツの男と視線が合い、なんとなく癖で、頭をぺこりと下げてしまった。




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2016年02月15日

バレンタイン小話


(番外編の途中ですが、さらに番外編……苦笑)






いやに街中がピンクでハートで何となく落ち着かないと思ったら
今日は、バレンタインデーだった。
好きな人がいる訳でもないし、お付き合いしている人がいる訳でもないし、
そんなイベントには、まるで、興味は無かった。


「どうぞ。チョコです」


立ち寄ったコンビニで、会計の後に引いたクジの当たりで、チョコを貰ってしまった。
ピーナッツの入ったハート型のチョコ。
部屋に戻って、ビニール袋から牛乳とプリンを出して、冷蔵庫にしまって

チョコは、そのまま、ビニール袋の中に入れて、そこら辺に置いていた。





そんな物に限って、マサヤは目ざとく、見つけるのだけど。




「………なんだよ、安っぽいチョコだな…」


真夜中。
酒と煙草の匂いが染みついたコートを脱ぎながら、マサヤはそれを手に取る。
しばらく眺めながら、馬鹿にしたように、ふふ、と笑う。


「……違うよっ。……それは…、コンビニで貰っただけだよ」
「そうなのか?……てっきり、お前からのチョコかと思ったぜ?」

そう言って、酔っ払いのマサヤは俺を巻き込みながら、ソファに座る。
そのままキスをするけれど、その口元からはなんとなく、甘い、チョコの匂いがする。

「……マサヤ。……どっかで、チョコ、食べて来た?……甘い味がする…」
「ふふ。…まあ、こんな夜だからな…」



少し、飲み過ぎた様子で、マサヤはどうにも覚束ない。
上機嫌に笑ったかと思うと、目を閉じて、そのまま寝入ってしまいそうになって、また目を開けて、


俺の、チョコを、まだ手に持って、ひらひらとさせて眺めて



「……お前からの…チョコかと…思ったぜ」



と、もう一度、同じ事を言って
なんだか嬉しそうに、ふふと、笑っていた。







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2016年02月16日

ちょっとした話・7







「……誰だ?」


自分の仕事を片付けようとデスクに向った白スーツの男は、傍にいた若い男に尋ねる。

「…え、女子高校生ですか?」
「いや、男の方」
「…さあ…、女の子の知り合いだかカレシだか…。途中で一緒になったらしいんですけど、なんだか様子が変なんですよね…」


イツキは、男たちが自分を見ている事に気付き、慌てて視線を逸らせる。
そのまま自分の手元のケータイを覗き、一ノ宮に電話をしてからどのくらい経ったのだろうかと考える。



「……イツキくん…」
「…ん?」


隣で、今にも消え入りそうな声で、沼原が呼ぶ。
正面では相変わらず男が、睨みをきかせ、さらに強面が増えたとなれば、彼女の緊張もピークなのだろう。


「………あ、あたしたち…、この人たちの言うこと、聞くから。……大丈夫だから…。
イツキくんに……、これ以上迷惑……、かけらんないよ……」


それでも、気丈にもそんな事を言う。


「…この人たちの言うこと聞いてたら、…大変だよ? ……ヤラレちゃうよ?」
「……え…?」
「バイトだなんて、変なのに決まってるでしょ?…こんな人たち、アテになんないんだから…」




小声で話しているとはいえ、イツキはちょいちょい、男の癇に障ることを言う。
そうして男が業を煮やし、再び激高して、テーブルを派手に蹴飛ばしたところで、


事務所の扉が、ノックされた。



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2016年02月17日

ちょっとした話・8






ノックと同時に扉が開く。
現れたのは、不敵な笑みを浮かべる、……黒川だった。

「……どうも」
「…誰だ、テメェ…」
「…ウチのが、世話になっているそうで…」

黒川はどこか小馬鹿にした様子で、そう言ってイツキを見遣る。


そして、招かれてもいないのに室内に入り、イツキ達が座るソファの傍まで来る。
室内をぐるりと見回し、ふんと鼻を鳴らし、男を見下し、
そこいらにあったパイプ椅子を引くと、満員のソファの隣に、勝手に座る。

奥にいた白スーツの男は、残念ながら、黒川の正体を知るほどの大物では無かった。
それでも黒川の只ならぬ雰囲気と威圧感に、何事かと、成り行きを見守る。




「………だれ?」


小さな声で、沼原が聞く。


「……俺が、呼んだ人。……もう、大丈夫だから」


そうは言っても、そう簡単に、事は解決しそうには無かった。


明らかに黒川は、この状況を、楽しんでいる様子なのだ。







「…それで? 何か問題でも?」

口火を切って黒川が尋ねると、正面の男は我に返ったように顔を上げ、足を組み直し、ソファの背もたれに肘を乗せ、虚勢を張る。

「も…問題も何も、このガキ共がウチの商売の邪魔をしたんだよ!」
「ほう、それは申し訳ない。で、どうすれば良いのかな?」
「迷惑料、払って貰おうか!……100万だ!」




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ちょっとした話・9






「…100万!?」


突然の値上げに、イツキはつい、声を上げる。
黒川という得体の知れない男の登場で、少々気が動転したのか、ハッタリを効かせたのか。
当然、それくらいの金額で、黒川が驚くはずもないのだけれど。



「…100万の迷惑料だと。…お前、何をしでかしたんだよ?」
「…何もしてないよ。…この子たちがちょっと…、巻き込まれただけだよ…」
「この子たち?…なんだ、お前の女か? …一人前に立たせてたのか? 美人局かよ?」
「違うよ!」

半ば痴話げんかのように、黒川とイツキは話しを続ける。
正面の男は苛立ち、靴のつま先をコツコツと鳴らし始める。

「迷惑料ねぇ…。払えなければ、どうなるんだ?」
「…なんか、…バイト、…紹介するって」
「あっはっは、そりゃぁ、いい。お前、バイト、したがっていたじゃないか!稼がせてくれるぜ?きっと」
「…マサヤ!」


「…おいッ」

2人の話を中断させるように、勢い、男が立ち上がる。
テーブルの縁を蹴るのは、もう何度目だろうか。威嚇にしてはすでに効果は薄い。

「いい加減にしろ! 払うのか、払わねぇのか、どっちだよ! 早くしろや!」



怒鳴りつける男に、イツキは、心の奥で、もっともだと思う。
無用なトラブルを避けたいために、単純に、一ノ宮に、お金だけを借りてしまおうと思ったのに。





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2016年02月18日

ちょっとした話・10







「……マサヤ、……早く、…済ませて。……帰りたい…」


怒鳴りつける男を前に、イツキは小さくなり、黒川にそっと懇願する。
けれど黒川は煽る様に、一度男を見上げ、また楽しそうに鼻で笑うばかり。


「そもそも、お前、何で、こんな辺りに来たんだ? 反対側だろう?」
「…お店、探してて…、迷っちゃって……」
「店?」
「…和菓子屋さん。…この前の、塩豆大福の……」
「…馬鹿か。…あれは、南口の………」


「…テメエ、聞こえぇのかよ……ッ」



黒川とイツキの話の途中で、ついに堪え切れなくなったのか…
男は、黒川の胸倉でも掴もうかと、手を伸ばす。

けれどその手は、虫でも払う様に、いとも簡単に払い退けられてしまった。



「ウルサイ。聞こえている。…ああ、迷惑を掛けたな、金ならくれてやるよ」



そしてようやく黒川も、この茶番に飽きて来たのか。
その頃には、奥にいた白スーツの男も心配げに、ソファの傍まで寄って来ていたのだが、

黒川はその男ごと、射殺すほどの鋭い視線で睨み、スーツの内ポケットに手を伸ばす。




銃か刃物か、
そんな物が出て来そうで、男たちは身構える。


しかし、黒川が出して来たのは厚みのある茶封筒で
それを、ばさりと、テーブルの上に投げつけた。



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