2016年03月01日

テスト、終わり







「……俺、テスト中だから、そっちには行けないかも…」
『ああ、いい。俺も今週は忙しい。じゃあな』


黒川との電話は簡単に終わった。
また、横浜での仕事が入ったらしく、何日か泊まり込みになるらしい。
イツキはどこか安心したように、ふうと息をついて、ケータイをソファの上に放り投げる。
それから、また、梶原が作ったノートを開き、とりあえずその全部を、自分のノートに書き写す。


梶原も、暇では無い筈だ。
それなのにテスト前になると毎回、イツキのために、要点を解り易くまとめたノートを作ってくれる。
「それが自分の勉強にもなるから」と、梶原は言うのだけど、負担は少なくはないだろう。

「……ほんと、……いい人…」

イツキは小さく呟いて、せっせとノートに文字を書き写す。
せめてこれ位は一生懸命やらなければ、梶原に申し訳ないと、イツキでさえ、思うのだった。




二日目の試験も終わり、ようやく教室の、ピンと張った空気が緩む。
この日は午前中でお終いなので、梶原は帰り支度をしながら、この後、イツキをどこかに誘おうかと考える。


「……な、イツキ……」


と、振り向いたその先には
イツキと、すでにイツキに何か話をしている、清水の姿が見えた。


梶原が近寄ると、清水は、
最後に一言、と、イツキの耳元に顔を寄せ、何か話をして

そして、イツキの頭の上にぽんと手を一つやって、その場を立ち去るのだった。





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2016年03月03日

気になる話






「……先輩と、何、話してたんだよ?」
「ん?」


学校の帰り、イツキと梶原は駅前のファミレスに立ち寄る。
パスタとハンバーグとグラタンをテーブルに並べ、分厚いステーキにナイフを入れながら、イツキは梶原の質問に答える。


「…別に、何も。…テスト、どうだった、とか…そんな事」
「それだけ?」
「それだけ」


それは本当の事だった。
けれど、イツキと清水の仲を怪しんでいる梶原にすれば、それだけにしても、気になる話。
…もっとも、清水も、梶原が気にするのを解っていて、あえて、見せつけていたのだけど。



梶原はライスの上にハンバーグを乗せ、ガツガツと口に運ぶ。
満たされない気持ちは空腹な訳ではなく、もっと、イツキと密な関係になりたいという欲求だった。

身体の関係、とまでは行かなくても、もっともっと。
何でも腹を割って話せる大親友。頼り、頼られ、いつでも一番傍にいる存在になりたかった。


「…テストも終わって、これで少し、落ち着くかな。来週は課外授業があるぜ?
夏になると忙しくなっちゃうし…、その前に、どっか遊びに行く?」

「……梶原、グラタン、冷めるよ?…食べないなら、貰ってもいい?」



梶原の密かな想いは、本人すら気づかないまま、宙に浮いたまま。

それでも、この普通の時間が何より楽しくて、貴重なものだということは、
ちゃんと、イツキにも、解っていた。





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2016年03月04日

簡単な罠・1






試験が終わって数日して、イツキは、加瀬に呼び出された。
副理事に直接呼び出される程、悪いこともしていない。
職員室の向こうの、個室の扉の前で、イツキは憂鬱なため息を付く。
悪い予感しかしなかったが、それは、ほぼほぼ、間違いではないだろう。



「どう、イツキくん。テストは出来た?」
「……ええ、まあ…」
「まだ全教科、まとめてないけど…、…梶原くん、トップみたいだねぇ。…あんなクラスでよく勉強できるよねぇ…」


そう言って、自分とはまるで関係のない事のようにクスクス笑う加瀬を、イツキは冷ややかな目で睨む。


「…今日は、…何ですか?……俺に何か用ですか?」
「うん?…いや、テストも終わって少し落ち着いたからね。一緒に食事でもどうかなって…」
「行きません」
「そう、つっけんどんに断ることもないだろう?ほら、クラス替えでガッカリさせちゃったからさ、お詫びも兼ねて……」
「結構です」



イツキはきっぱり言い切り、膨れっ面のまま、視線を逸らせるのだけど、
もちろんそんな事は、加瀬の予想内だった。
加瀬は自分の椅子から立ち上がり、イツキの傍へと歩く。
すぐ横に立ち、身を屈め、イツキの耳元に唇を寄せる。



「…今日の、8時に。…君が最初に私を誘った料理屋においで。
…それ次第で、試験の順位に影響があるかも知れないよ?

君も。…梶原くんも」



と、およそ教師らしからぬ言葉で、イツキを誘うのだった。




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2016年03月05日

簡単な罠・2







「あはは、冗談だよ、冗談。ああでも言わなければ来てくれないだろう?」


約束通りイツキが料理屋に現れると、加瀬は上機嫌に笑ってそう言う。
店の二階には宴会などが出来る個室があり、イツキはそこへ通される。
テーブルの上にはすでに刺身や、鍋用のコンロが置かれ、その隣には白い薄紙に包まれたいかにも高そうな日本酒の一升瓶が置かれていた。


「君とゆっくり話がしたかったんだよ。…最初はビールにする?…すぐ、こっちにする?」


うっかり美味しそうな料理や、一升瓶を見つめていたイツキに、加瀬は尋ね、イツキは慌てて顔を上げる。
急いで真面目な顔を取り繕っても、若干、遅い。


「良いんですか?学校の先生が、未成年にお酒、勧めて…」
「あはは、今更そんな事、言うんだ?やっぱり面白いね、君」


加瀬はイツキに構わず先に席に着き、乾杯用にとビールを用意する。
鍋の蓋を開け中を覗くと、具材が彩り良く綺麗に並んでいて、思わずニコリとする。


「まあ、座りなさい。私とは、懇意にしていた方が良いでしょ?」




そうしてイツキは渋々ながら、加瀬の向かいの席に座る。

学校でいくつもの権限を持つ加瀬を味方に付ければ、確かに学校生活に有利な事もあるだろうけど、
逆を言えば、無事に過ごすのは、加瀬の裁量に掛かっているという事だ。

イツキは、諦めたように溜息を一つつく。
黒川が仕事で数日間不在であることだけが、唯一の慰めだった。



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2016年03月06日

簡単な罠・3








「…飲まないの?」


席に着き、黙々と食事を始めるイツキを、加瀬は面白そうに眺める。


「…今日は、ご飯食べに来ただけです。食べて、帰ります」
「ふぅん。せっかく、良いお酒、用意したんだけどなぁ…」


加瀬はそう言って自分のグラスを傾ける。
さすがに、イツキも、酒を飲み始めては自制が効かなくなることくらい解っているのだろう。
ちらりと、テーブルの端に置かれている一升瓶に目をやり、ふんと、顔を背ける。
その様子があまりにも解り易く、加瀬はくすくすと鼻で笑う。


「…そんな我慢、しなくてもいいのに。…少し、お酒が入った方が、アレも良くなるのに」


冗談めかしそう言うと、イツキが物凄い顔で睨むので、また笑う。


「…それとも、お酒に何か入れてるんじゃないかと…、心配しているのかな?」
「そうですね。…先生、信用ならないし…」
「あはは。何か仕掛けるなら飲み物とは限らないよ?食事にだって、何だって、混ぜられるじゃない?」


その言葉の後でイツキは咽込み、手に持っていた鍋の取り皿をカタンとテーブルに落とす。


「ああ、嘘、嘘。…そんな事しないよ。君はもう、本当に解り易いねぇ…」
「…他に、お話、無いんですか?…俺、もう、帰ります…」
「そう急ぐこと、ないじゃない。まだ、何も話、してないじゃない?」



加瀬はのらりくらりと言葉を交わし、その都度反応するイツキを楽しんでいた。
そして、ただ本当に、それだけが目的だったように、特に何をする訳でも無く酒を飲む。

その姿にイツキは少し、油断してしまったのかも知れない。




加瀬の嘘が、嘘では無いと気付くのは、少し時間が経ってからだった。






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2016年03月07日

簡単な罠・4






眠気を感じたのは、腹が満たされたせいかと思っていた。
食事もあらかた終わり、そろそろ席を立とうかと思ったのだが、身体が重い。
酒や、食事に薬を盛るなど、そんな類の事を言ってはみても、本当にそんな事をされるとは考えていなかったのは、
やはり、加瀬が、教師だから…という事もあったのだろう。

もっとも、イツキの体調の変化はゆっくりと、ごくごく僅かだったので、イツキ自身、それを疑うことも無かったのだけど。



「……俺、……帰ります…」
「そう?…眠たそうだねぇ、ちょっと休んで行けばいいのに」


笑う、加瀬に、イツキは首を横に振る。
これ以上長居をしては、本当に寝入ってしまいそうだった。






「……ああ、丁度良かった…」


イツキが「ごちそうさまでした」と言って席を立とうとした時、短いノックと同時に、扉がガラリと開く。
加瀬は、その客が訪れる時間を知っていた様で、グラスの酒を煽りながら、そう呟く。



それは、店の従業員でも、見たこともない男でもなかった。



男は、部屋に入って来ると、立ち上がろうとしていたイツキの肩を押さえつけて、また、席に座らせる。
そして自分もそのままイツキの隣に座り、親しげに、加瀬に挨拶などするのだった。




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2016年03月08日

簡単な罠・5







「丁度良かったですよ。…イツキくん、帰る、なんて言い出してね…」
「…ん?…締めの雑炊、食って無いだろう?……めずらしい、グラスも空じゃねぇか…」


男が座ると、向かいの加瀬が、空いていたグラスに酒を注ぐ。
男はそれを一気に飲み干し、今度は一升瓶ごと貰うと二杯目を注ぎ、隣のイツキのグラスにもそれを注ぐ。


「飲めよ、ここの酒はうまいぜ?」
「………西崎さん、が…、何で……?」
「俺と加瀬さんが知り合いって、もう知っているんだろう?…お前の話はちょいちょい聞いてるぜ?学校でも、相変わらず大安売りしてるみたいだな」



西崎は笑い、煙草を取り出すと、口に咥え、火を付ける。
ゆっくりと流れる紫煙に、イツキは、少し混乱する。



西崎のコネで、この学校に入ったことは知っていた。
学校内部に、裏と通じている人物がいて、それが加瀬であることも解っていた。
西崎と加瀬が繋がっている事も解っていたのに、その2人がこうやって揃って現れるとは、思ってもいなかった。


イツキは、加瀬と西崎の顔を交互に見遣り、言葉を詰まらせる。

息苦しさを押し流すように、うっかり、酒のグラスに口を付けてしまい、慌てる。



西崎はすでに残った鍋の具材を皿にあけ、だし汁にご飯を入れていた。





posted by 白黒ぼたん at 20:42 | TrackBack(0) | 日記

2016年03月09日

簡単な罠・6






「…西崎さん、俺、帰ります…」
「まあ、待てよ。もうすぐ雑炊が出来上がる…」
「こんなの、マサヤに怒られちゃう…」
「メシ、食うだけだろう? そんな事で社長が怒るかよ?…それとも」


西崎は鍋の蓋を開け、様子を伺う。
丁度良い塩梅だったようで、そこに青ネギを入れ、軽く掻き回す。


「メシ以外の事でも、期待してるのか?……ん?」


小馬鹿にしたように西崎は笑い、イツキに、イツキの側にある小皿を取ってくれという風に、顎をついと向ける。
『メシ以外の事』を期待しているのは西崎の方だろうに、イツキは不機嫌そうに頬を膨らませ、小皿を取る。


それでも、玉子で閉じた雑炊はふっくらと仕上がり、その香りだけでも、美味しそうだと解った。




「…何なら、社長に電話して、了解を貰ってもいいぜ? …お前の、学校での悪さも、全部話すけどな」
「…悪さ、なんて、してない……」
「加瀬さんとヤったんだろう?……他にも先生、垂らし込んで、成績を融通して貰ってるんだってな、……ヒデェよなぁ」



西崎の言葉はすべてが本当の事では無かったけれど、嘘、とも言い切れなかった。
イツキは西崎を睨み、頬を膨らませたまま、雑炊が入った小皿に口をつけた。



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2016年03月11日

簡単な罠・7







「西崎さんとイツキくん、仲が良いねぇ。楽しそうだ」


2人のやりとりを聞いていた加瀬が、そんな事を言い出す。
西崎は、はっはっはと笑い、ついでのように、自分の手をイツキの太ももの上に置き、
イツキは慌てて、それを払い退ける。


「何だかんだ、長い付き合いだよなぁ、イツキ」
「……そうですか…」
「3年…4年か…? あの頃はお前、毎晩、客、取って…、よく事務所でもヤられてたよなぁ…」
「そんなに前からなの?…西崎さん、犯罪じゃないですか!」


加瀬は冗談めかして、そう言って、笑う。
イツキは『…今でも犯罪じゃんか…』と思いながら、また、つい…手元の酒を飲む。
西崎の手が再びイツキの太ももを弄り、虫でも払うように、イツキはそれを払う。


「最近は、ちょっと偉くなったんだよな、イツキ」


また、西崎の手が、乗る。


「別に、偉くなんて、なってないです…」
「そうか? その割には、最近、俺にはヤらせてくれねぇじゃないか?」
「それは…、関係ないでしょ! そんなの…」
「ああ、そうだったな。お前がヤらせるのは、何か下心がある時だけだよなぁ」



馬鹿にした様に西崎はそう言って、笑い、イツキは不機嫌そうに頬を膨らませ
加瀬は、それを見て、笑う。




西崎の手は、イツキの太ももの上に、乗ったままだった。



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2016年03月12日

簡単な罠・8






加瀬や、ましてや西崎に、抱かれるつもりは無かったのだけど
心のどこかでは…逃げ切れるものではないと…今までの経験上、思っていた。
それを意識してしまうと、イツキの身体は本人の意志とは関係なく、勝手にスイッチが入ってしまうので、
なるべく、考えないようには、していたのだけれど。


アルコールや、太ももの上で微かに動く西崎の手や、もし何か…、ほんの少しでも、自制を緩くさせる薬でも入れられていては…

どうにも、止める事は出来ない。





「……さてと。そろそろ行きますか…」

締めの雑炊も綺麗に食べ終わり、西崎がおもむろにそう切り出すと、加瀬も同調し、席を立とうとする。
イツキだけは何故か驚いた顔をして、西崎を見上げる。

「……帰るの?」
「うん?帰らねぇのか?」
「…帰るよ…!」

イツキは勢い立ち上がると、少しフラつき、西崎の肩に寄り掛かる。
脚が痺れたのか、少し、飲み過ぎてしまったのか…そのどちらかだと思った。


「大丈夫か?」


西崎はそう言って、優しげに、イツキの腰に手を回す。

イツキは、びくんと、反応し、その時になってようやく、
自分の身体の中心が、熱く硬く、形を変え始めていることに気付いた。




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2016年03月14日

簡単な罠・9







店の前に呼ばれた車はタクシーでは無く、おそらく、西崎の手の内の車だったのだろう。
そうでなければ、ふらつきながら歩くイツキと、両側を固める男たちの姿に不信感を抱いたに違いない。

後部座席に三人も座ると、お互い身体は密着し、逃げ場もない。
真ん中に座るイツキは、西崎の悪戯な手に身を捩らせ、結果、加瀬に身体を預けることになる。


「………や…」
「…や、じゃ、ねぇ。…こんなに…チンコ、おっ勃てやがって…。穴も、ズブズブじゃねぇか…」
「……や、………かえる……」
「…舐めてやるぜ?お前の好きなように…。ベロ突っ込んで、ぐちゃぐちゃにしてやるぜ…?」
「……や…ぁ…」


西崎はイツキの首筋に顔を寄せ、卑猥な言葉を吐きながら、耳たぶまわりをべろりと舐める。
その感触で、あの感触を思い出すなというのは、無理な話。
イツキの小さくつぶやく声に、すでに力はなく、ただただ、艶気を零すのみ。
西崎から逃げるように思い切り顔を背けると、その先には加瀬がおり、いやらしい視線を絡ませる。


車は、誰の了承も得ないまま、どこかのホテルの駐車場に吸い込まれ、
イツキは二人の男に引きずられるように、部屋へと入って行った。





先にイツキを抱いたのは、加瀬だった。
イツキの身体は丁度いい頃合いで、何の前戯も必要なく、ずるりと男を飲み込んだ。

イツキは、何故、いつの間に、自分の身体がこんな風に堕ちてしまったのか、ぼんやりと考えながら


笑う西崎の目の前で、加瀬に、犯されていた。





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2016年03月15日

簡単な罠・10







「……あいつは?」
「加瀬さんか?…先に帰ったよ」


西崎にも好きなように抱かれ、そのままベッドで少し寝入ってしまったイツキは、目を覚ますと、そう聞く。
「加瀬さん」と親しげに呼ぶこともないし、まして「先生」とは、到底呼べない。



「…なんで、あいつと…、こんな…、こと…」



まだ醒め切っていないのか、イツキはたどたどしく単語を繋げ、独り言のように呟く。
傍のソファで煙草を吸っていた西崎は太った腹を掻きながら、イツキを見遣る。


「…お膳立てして欲しいと言われてなぁ。…加瀬さんとは学校以外でも、イロイロあってなぁ…。……お前もそうだろう?」


西崎は煙草を灰皿に押し付けると立ち上がり、イツキが寝るベッドへと戻る。
端に座り、素肌に毛布を掛けただけのイツキの身体を、手のひらで何度も擦る。


「…色々、融通利かせて貰っているんだろう?ギブアンドテイク、だろう?……たまに、ヤらせたっていいじゃねぇか、減るもんじゃねぇし」


イツキの肩を抱き、上から圧し掛かる様に被さり、耳元でそう囁く。
見開いたままのイツキの目には涙が溜まり、瞬きをする度に、零れ落ちそうになっていた。


「………こんなの、マサヤが……、……怒る…」
「…ん?……ちょっと遊ぶくらい、構わないって言っていたぜ?」
「……言わないよ…」
「…ふふ。…まあ、社長も横浜でヨロシクやってるんだ。お前だって、いいだろう…」



そう言いながら、西崎の手は再び、毛布の中に潜って行くのだった。





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2016年03月17日

簡単な罠・最終話







すでに二度、男に抱かれたというのに、西崎の手にイツキの身体は、また、熱を帯びる。
簡単に収まる身体では無いことは、西崎も、当のイツキも、良く知っていた。


それでも一応、決まり事のように、嫌、嫌と、首を横に振ってみせる。
そのくせ腰をぴくぴくと震わせ、感じる部分を摺り寄せてくる様は、盛りのついた猫よりいやらしい。


結果的に、イツキは自ら西崎の腰の上に跨り、緩みきった穴を自分の手で広げながら、西崎のものをそこに埋めていく。
堪え切れずに動き出すまでの圧迫感が、また、好きで…できるだけ身体を密着させて、さらに奥へと飲み込む。

「うう」と呻いたのは西崎が先で、ひとつ、腰を突き上げると、イツキはさらにしがみ付き

「……まだ。……もうちょっと…、もうちょっと……」

と、身体の奥で、静かに達してしまうのだった。







翌日。
横浜から戻って来た黒川に、事務所を訪れた西崎は、さらりとコトの報告をしたそうだ。
学校の関係者との食事の席で、酒を飲み過ぎたイツキが、自分から誘って来たのだと。

後からその話を聞いたイツキは、それは違うと黒川に反論したのだけど、

黒川はどうでも良いといった風に鼻で笑い、「相変わらず、淫乱だな」と言うだけだった。




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2016年03月18日

欠席






久しぶりにイツキは学校を休んでしまった。
酒を飲み、複数の男に抱かれる事など、別段、大した事でもないのだけど、
疲れてしまったのと、誰とも会いたくなかったのと、少し熱があったのも、本当の事だった。


『今日は学校、休みます』

梶原が余計な心配すると困るので、先に連絡を入れておく。

『大丈夫?何か、あった?』

間髪入れずに、すぐに返信が来る。

『ちょっと体調が悪いだけ。でも、平気だから、心配しないで』
『カゼ? 大丈夫? 薬飲んだ? メシ、喰った?』
『大丈夫。寝れば治るから』


やりとりを終えるとイツキはケータイの電源を落として、テーブルの向こうに追いやる。
梶原は、きちんと連絡しても、しなくても、ウルサイな…と、小さく笑う。





黒川は、変わらず忙しく、出掛けていた。
西崎との事も、馬鹿にして嫌味を二、三言うくらいで、終わった。
酷く怒られるのも嫌だったが、あまり関心が無いのも…寂しい気もする。
なんとなく…、気持ちの落とし所が定まらず…、考えると、頭がぼんやりとする。






『社長も横浜でヨロシクやってるんだ、お前だって、いいだろう?』





ふと、先日のコトの最中の、西崎の言葉が、思い出される。
自分を抱くため戯言だったのだとは思うのだけど…何故かその言葉がずっと、頭の中で鈍く光っていた。





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2016年03月19日

はらぺこイツキ






『悪いな。…明日、銀座の…、ああ、先月行ったイタリアンだ。…いや、お前一人だ』
「……しごと?……俺?」
『ジジイと飯を食うだけだ。まあ、その後どうなるかは知らんが…、お前の得意なヤツだろう?』



一方的にそんな事を言って、黒川の電話は切れた。
イツキは納得の行かない顔で、しばらくケータイを握りしめていたのだけど、それを部屋の隅に放り投げた。



黒川は、自分が、他の男に抱かれるのを、煩く詮索しない。
そしてそれを許す代わりに、男に抱かれる事は大したコトでは無いのだろうと、自分を他の男に抱かせる。
以前のような「仕事」では無いと言うけれど、内容は、ほぼほぼ同じで区別はつかない。


身体を開くだけだと割り切ってはいるものの、それで全て了承出来るほど、イツキは達観していない。


黒川は…本当は、自分がどうなろうか、まるで関心が無く、どうでも良いと思っているのかも知れない。


そんな事を思ってしまい、それではまるで、自分が本当はその逆を願っているようで、それが悔しい。



「……はー……」



イツキは解り易い大きなため息を付いて、ソファにごろりと横になる。


寒くて、どこか満たされないのは、多分、お腹が空き過ぎているからだろうと思った。





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