2016年03月21日

営業用イツキ







黒いスーツは「仕事用」の服なのだけど、その格好自体は意外と嫌いでは無かった。
イツキは、普段は、何を着たら良いのか、解らなくて困ってしまう。
何色に何色を合わせれば良いのか、シャツの裾は出すのか仕舞うのか。
いつもそんな様子なので、黒スーツや学校の制服など、最初から仕様が決まっている服は、楽で良かった。


それでも、たまに擦れ違う人が振り返り、イツキの事を二度見などすると、
自分が何か、おかしな格好をしているのではないかと不安になる。
もしかして服を着ていると思っているのは、自分の勘違いで、
いつでも、裸で、公衆の面前に晒されているのではないかと…思う。


実際にはまるで逆で
特異の雰囲気で人目を惹いているのだけど、イツキにはあまり自覚はない。

色気を垂れ流して歩いているなどと、考えてもいないのだ。




「……待ち合わせですか?…良かったら、ちょっとお話、出来ませんか?」




ホテルのロビーの片隅でぼんやりと立ち尽くしていると、品の良い男性から声を掛けられた。
イツキはこれが今日の相手なのかと、顔をまじまじと眺めてしまったのだけど、聞いていた話とは年恰好が違うようだった。


「ごめんなさい。…待ち合わせなんです」


と、断り、ついでに、柔らかく微笑んでみせる。
男は残念そうに肩を落とし、「…お時間、ある時にでも…」と、イツキに電話番号の書かれたメモを手渡すのだった。





posted by 白黒ぼたん at 22:37 | TrackBack(0) | 日記

2016年03月22日

残業黒川






横浜での仕事が一段落ついた黒川は、事務所に戻り、
残った、細かい用件を、渋々片付ける。
ヒトや、モノを動かし、利益や欲や羨望を集めるのは面白い仕事だったが、それに伴う事務的な作業は、どうにも性に合わなかった。


「…とりあえず会長にご挨拶はしないと…。ああ、その企画書にも目を通しておいて下さい。…テナントの候補もすでにいくつか…」
「解った、解った…」




一ノ宮に言われるまま、黒川は真面目にデスクに向っていたのだけど
しばらくすると、手に持っていた書類をばさりと投げ、ふんと鼻で息をする。



「今日はもう、止めだ。くだらん」
「…社長。…週末には契約まで持って行くのでしょう?」
「お前がやっておけ」
「出来る事はしています、後は、あなたの仕事です」


黒川は書類の山に目をやり、もう一度、ふんと大きく鼻で息をする。
…横浜でアレコレ仕事が増えた事もあり、拠点を持とうと、ビルを一つ購入することにしたのだけれど、
元々の利権者や、そこいら一帯の元締めや、近隣の勢力関係など、整えておかなければいけない問題は多い。


「……クソ」



黒川は悪態をつき、気を紛らわせようと、煙草に手を伸ばす。


そして、早いところ、この仕事を終わらせて、


部屋に帰り、イツキを抱こうと、思っていた。





posted by 白黒ぼたん at 23:27 | TrackBack(0) | 日記

2016年03月23日

開かずの扉







真夜中。
部屋のソファで黒川は、忌々しげに紫煙を吹かせていた。
すでに灰皿には吸殻が、軽く山を作っている。

「……ああ、クソ…」

小さく呟き、持つところも無い程短くなった煙草を灰皿に押し付け
黒川はソファから立ち上がる。

そして、バスルームの前まで行って、…すでに小一時間、閉め切りになっている扉を、コツコツと2回ノックした。



「…イツキ。いい加減出て来い」

声をかけるも、返事はない。
先刻まで聞こえていた、すすり泣く声も、今は収まり静かになっている。

「いつまで拗ねているんだ、おいっ」

そう言って、今度は少し乱暴に、握り拳で扉を叩いた。






数時間前。
仕事を終えた黒川が部屋に来ると、イツキは、留守だった。
またどこかで遊んでいるのかと、少し機嫌を損ねたところで、程よく酩酊したイツキが帰って来る。

髪は濡れ、シャワーの後だと解る。
身体も、どこか……生臭い。


「またどこぞで股を開いて来たのか?尻軽め」

話を聞く前に、先に、口と手が出てしまった。


そして、そのすぐ後に、今夜はイツキは、自分が頼んだ「仕事」のため、男に抱かれに行っていたのだと思い出した。




posted by 白黒ぼたん at 23:00 | TrackBack(0) | 日記

2016年03月25日

開かずの扉・2






バスルームへ続く脱衣所の扉は引き戸で、内側から鍵が掛かる様になっているが、
安全面からか、外側からでも、ツマミを爪で引っ掻くようにすれば開けることが出来た。

それでも、開かずの扉を自分から開けるのは、どうにも癪に障る。
黒川はもう一度、握り拳で、扉を叩く。


「……ああ、悪かった。言い過ぎた。……とにかく、出ろ」


まるで誠意の感じられない謝罪の言葉を口にしながら、黒川は、軽く舌打ちをする。
そして、仕方なく鍵をこじ開けようと身を屈めたところで、錠がカタンと開く音がした。

扉が開き、中から、イツキが出て来る。





「………今日は…、………マサヤが…、……言ったやつ、じゃん……」
「ああ、そうだったな。悪い、悪い」




泣き腫らした顔を不機嫌に膨らませ、イツキは、ぼそりと呟く。
黒川は、一応イツキが出て来たことで安堵したのか、冗談めかして、手をひらひらと振る。


イツキはそんな黒川をちらりと視線をやったきり、寝室へと向かう。
そこでようやく黒いスーツを脱ぎ、下着姿になって、ベッドへと潜り込む。




「…間違えただけだ。そう拗ねるなよ。…実際、この間は、西崎と寝たんだろう?
…数が多過ぎて区別がつかんよ」
「……そうだね。……それでいて、あっちが良くて、こっちは駄目って…、それも区別がつかないよ」
「まあ、気分だよ、気分。……そう、いちいち気にするな」



曖昧な言葉を並べ立て、黒川は誤魔化すように笑う。
そして、自分もベッドに上がり、壁に向かって身を丸くしているイツキを背中から抱き締める。



イツキの身体は、まだどこか湿ったまま。おそろしく冷え切っていた。




posted by 白黒ぼたん at 00:17 | TrackBack(0) | 日記

開かずの扉・3







もうじき6月だとはいえ、夜はまだまだ冷える。
濡れた髪のまま帰り、そのまま脱衣所に閉じこもり、おまけに、黒川が乱暴に扉を叩くまで、少し転寝をしてしまった。
イツキ自身、気付けば酷く寒く、手足は冷たい。
これから風呂に入る気力も無く、ならば早く布団に潜ってしまおうと、脱衣所を出たのだ。




黒川がイツキの身体を抱くと、衣服ごしにも、冷気が伝わるようだった。
手を伸ばし、イツキの手を探し、握ると、やはり指先も冷たく小さく震えさえしていた。



「……馬鹿が…」



思わず、黒川はそう呟いてしまう。



「…どうせ、馬鹿だよ。…次は何?、誰?……マサヤがいいって言った相手と、ヤってくればいいんでしょ?」

「…違うだろう」




黒川はイツキの手を引き、イツキの身体を自分の方へと向ける。
キスをしようと顔を寄せると、イツキはそれを拒むように、顔を横に背ける。
それでも無理矢理、顔を向かせ、唇を重ねるのだけど、イツキの唇は真一文字に結ばれたまま。



それは、まるで、開かずの扉のようだった。





posted by 白黒ぼたん at 22:48 | TrackBack(0) | 日記

2016年03月27日

開かずの扉・4







黒川は少しだけ顔を上げ、イツキを見る。
イツキは一瞬、黒川を見て、またすぐに、視線を逸らせる。


「…俺、…ちゃんとやってるでしょ?…たまにフラフラするけど、でも、だから…
マサヤの言うこと、ちゃんと、聞いてるでしょ?」
「ああ、そうだな」
「今日だって……」


言いかけて、イツキは口を噤み、替わりに、涙を一つ、零す。
…数時間前の、仕事の内容を思い出したのだろう。
馴染みの、どこぞのお偉い老人が今日の相手だったのだが、少々趣味が悪く、
イツキはその時間の殆んどを、泣いたり、叫んだりして過ごしていた。

身体に傷こそ負わされてはいないが、心に深く傷が付くやり方だった。



「………別に、……大したこと、なかったけど…、………でも、や……、だったし…」

「……ああ、そうだな…」



イツキの長い間合いに、大方の予想はつく黒川はそう返事をして、横を向いたままのイツキの頬に、キスをする。
憔悴したイツキに異常な性衝動を抱くのは、何も黒川に限った話ではないのだ。



「…お前が、いてくれて、助かっているよ。…さっきは、悪かったな、イツキ」



珍しく素直な黒川の謝罪に、イツキはまた、涙を零しそうになる。
酷いことをしておいて、後で優しく接するのは、黒川の常套手段だと言うのに。

いつも、ここで流されてはいけないと思ってはいるのだけど、


こんな時の黒川は、卑怯なほど、甘い。




posted by 白黒ぼたん at 22:53 | TrackBack(0) | 日記

2016年03月28日

開かずの扉・5







黒川の狡さを、こんなに簡単に許したくはないと、いつも思っているのだけど
それはなかなか難しい。
黒川はイツキの頬にキスをし、こめかみにキスをし、まぶたの上にキスをする。
鼻の頭をぺろりと舐められると、イツキはくすぐったさに身を竦め、つい口元を緩ませ、

黒川の侵入を許す。

ぬるりと熱い舌が入る。




「………だ……、め………」
「…ん?」
「…おれ、今日は…もう……、や…。………しない」



せめてもの抵抗にと、拒んでみるのだけど、そんな心にも無い事を口にしてみても通用はしない。
黒川は軽く笑い、「そうか?」と言って、さらに舌を奥に絡めてくる。



「……眠いもん。……寒いし…」
「すぐに熱くなる」
「……お尻、……痛いし…」
「…ふぅん…」



黒川はもう一度イツキの顔を見て、ニヤリと笑うと…
するりと向きを変え、布団の中に潜り込む。


「………あっ、……ひゃっ……いや、……だめ…ぇ…」


そして、イツキが痛いと言う箇所に顔を埋め、そこを丹念に舐め融かして行くのだった。





posted by 白黒ぼたん at 21:42 | TrackBack(0) | 日記

2016年03月29日

開かずの扉・6







勿論、それは、好きな行為で、熱くとろけて行く感覚は堪らないものだったのだけど、
こと、黒川にして貰うとなると、どうにも……恥ずかしい。
しかもそこはほんの数時間前に、他の男を受け入れたばかりなのだ。


それを重々承知している黒川に、あえて、されるとなると…イツキはもう手足をバタバタとさせて、取り乱すばかり。



「…っや……ぁっ……ん、……んん…、マサヤ……、や………ぁ…っ」




腰を左右に揺すり、自分の股ぐらにある黒川の頭に手をやり、その愛撫から逃げようというフリはする。
けれどそれが本気ではない事ぐらい、黒川にも、解る。

恥ずかしいと思えば思う程、感触が、増す。

それでも、簡単に黒川を許したくはなくて、黒川の髪の毛を掴み引っ張る。



「……やっ…、おれ、……まだ、怒ってるんだか……ら……」
「…しつこいぞ、イツキ」
「…っ。……しつこいって…!……マサヤが悪いんじゃん…っ」
「…謝っただろう?…少し、黙れ。…黙って抱かれていろ」



あまりに気に障る言葉に、イツキは心底ムッとして、今度は少し強く、黒川の髪を引っ張る。
それに合わせるように黒川は顔をあげ、イツキを、見つめる。



そして意外に優しい目をして、

「…黙って、俺に、抱かれていればいい。…他の男とのコトも、全部忘れるくらい、良くしてやるから…」

そんな事を、言うのだった。




posted by 白黒ぼたん at 23:00 | TrackBack(0) | 日記

2016年03月31日

開かずの扉・終





黒川の言葉に、一瞬、イツキの言葉も、息も止まる。
その隙に、黒川の指先が、イツキの中の敏感な部分を掠めて、イツキは大きく身体を反らせ、ベッドへと沈む。


「……あっ……、………もう………」
「…うん?」


イツキは何故か、顔を手で隠す。
その間も黒川の指はイツキの中で蠢く。
イツキはすでに、感じている事を、隠す事も出来なくなっていた。
黒川の指の動きに合わせ、恥ずかしい程、中が収縮する。


「……ズルい、マサヤ…。……そんな事、…言うの」
「…お前のココは、お前より素直だな。欲しがっているのが、…解る」
「…おれ…、まだ…、おこって……る……のに……」
「何に?」



中に指を残したまま、黒川は身体を上げ、イツキの首筋から耳元に顔を寄せる。
空いている方の手でイツキの手を握り、イツキの顔の上から退かせる。

顔を、自分に向かせ、ようやく視線を合わせると、
とりあえず、短いキスを、1つする。



「………おこってたのに…、……なんでか、忘れちゃった……」
「…ふふ。……馬鹿な奴…」
「…どうせ、馬鹿だよ……」
「ああ。……でも、そこが…、いいな…」





黒川はイツキを見つめ、ニヤリと笑うと、
もう一度、今度は深くて長いキスを交わすのだった。





…スミマセン…。なんだか、間延びしてしまって
着地点が解らなくなってしまいました〜滝汗
posted by 白黒ぼたん at 23:00 | TrackBack(0) | 日記
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