2017年02月01日

夜の帳






地下にあるバーで、黒川は酒を飲んでいた。
知り合いの店という事もあり、黒川も若干、飲み過ぎていたのかもしれない。
隣に座るイツキはまだ大っぴらに飲む事が出来ないのだけど、それでも色の綺麗なカクテルを貰い、ちびちびと口を付ける。
カウンターの背の高いスツールに肩を寄せて並ぶ二人は、どこから見ても、恋人同士のようだった。


会計を済ませ店を出ようとする黒川に、店主がタクシーを呼ぶと言うのだが、
事務所まではそう遠くないからと、それを断る。
それでも、酩酊状態、とまでは行かなくても、歩き方が多少覚束ない様子。
地上へ上がる階段の途中で転ばれては大変と、イツキは、黒川を支える様にぴったりと寄り添う。


イツキの世話女房ぶりに、黒川は小さな声で「…馬鹿が」と言って、笑う。





よろけたついでのように、黒川はイツキを壁に押し付け、
唇を重ねる。


そして、この後はどうしたいか、などと
わざとらしく、イツキに尋ねるのだった。









ちょっと身の回りがバタバタしておりまして
更新、お休みがちです。すみません。
posted by 白黒ぼたん at 23:41 | TrackBack(0) | 日記

2017年02月05日

謝意







「…悪かったな」



その一言で、黒川の謝罪は終わる。
多少の手違いでイツキが他の男に渡され、一晩、好きに扱われたとしても
その程度なのだ。

イツキはベッドの上で毛布に包まり、顔だけ出して黒川を見上げると、またすぐに毛布に戻る。



酒の席ではつい営業笑いを浮かべてしまうのも、うっかり飲み過ぎてしまうのも、自分が悪い。
『もう話はついているから』と手を引かれ、簡単に個室に連れ込まれてしまうのも、自分が悪い。
始まってしまえば、あっという間に飲み込まれて…、嫌がる言葉も素振りも嘘で、ただただ、目の前の男を悦ばせるための器になってしまう身体も…

自分が悪いのだけど、でも、それはほんの少しで

多分、残りのほとんどは、黒川が悪いと思うのだけど。



『俺の不注意でまた辛い目に遭わせたな。…済まない、イツキ』
と、そんな言葉は貰えない。
仮に貰ったとしたら、きっと、泣いてしまう。
そう、想像しただけでも、涙が溢れる。




黒川の手が、毛布の上から、イツキの頭をぽんと叩く。

イツキが再び毛布から顔を出した時には、黒川の姿はそこには無かった。



posted by 白黒ぼたん at 23:28 | TrackBack(0) | 日記

2017年02月08日

普通のイツキ






朝。
イツキは普通に教室に入り、梶原や清水に、普通に挨拶をする。
自分の席に着くとカバンから缶コーヒーと教科書を出して、さも勉強していますという風にパラパラとやる。
授業が始まると、寝ずに、ちゃんと、教師の話を聞き、黒板の文章をノートに書き写したりする。

シャープペンの頭を唇に押し当て、考え込む素振りを見せる。
何を思いついたのかくすっと笑い、気を取り直すように深呼吸して、また、勉強に戻る。



昼休みには食堂へ行き、梶原と大野と一緒に食事を取る。
日替わりランチは白身魚のフライで、ライスは少な目。それに、売店で買った、粒あんがぎっしり入ったあんぱんを食べる。
梶原と大野が、勉強と、受験対策と、ゲームの進み具合の話しをするのを、笑顔を浮かべながら聞く。
そして、コップのお茶が無くなったからと、一度、テーブルを離れる。




「……今日のイツキ…、普通だな…、なんか…」

カウンターでお茶を貰うイツキを眺めながら、梶原がそうつぶやく。

「…うん?…いいだろう、普通で。…逆に、普通じゃないって、どんなんだよ?」
「…まあ、そうなんだけどさ。いい事なんだろうけどさ。…なんか、拍子抜けする」
「…はあ?……お前、何言ってるのか、解らないよ?」



大野が呆れたように溜息を付いた頃、イツキがテーブルに戻って来る。

普通じゃなくても、普通でも、梶原は、イツキが気になって仕方ない様子だった。







ま、何事もないフツーの日です。
posted by 白黒ぼたん at 00:30 | TrackBack(0) | 日記

頃合






廊下の向こうに加瀬の姿を見つけ、イツキは、気付かなかったフリをして目を背けるのだけど、
独特の、舐めるような視線を感じ、つい、顔を上げてしまう。
加瀬はニヤリと笑い、ちょいちょいと手招きをするように手を振って、廊下の向こうに消える。

当然、無視して、立ち去ってしまっても良いのだが、
どうせ絡まれるのは、遅いか、早いかだけの問題。






「君はさ、進路、どうするの?…この間、資料室にいたけど?」
「……別に、まだ。……決めてません……」
「まだって、もうこの時期だよ?……ああ、縁故で就職って言ってたんだっけ?……西崎くんのトコ?」


壁側に並んで立ち、そんな話をしていると、まるで普通の教師と生徒のようだった。
実際、回りには他の生徒たちも歩いているのだから、そう、変な話は出来ない。


「…西崎さんの所は…、無いでしょ? ……西崎さんが何をしてる人か、知ってるんでしょ?」
「売ったり、買ったり、回したり…。…君みたいな子が仕事するには、丁度良いじゃない? 得意でしょ?」



解っていて、加瀬はそう言って、馬鹿にしたような蔑んだ目でイツキを見下ろし、くすくすと笑う。



「まあ、今度、ゆっくり話しましょう。イロイロ。……西崎くんに、また一席設けて貰うからさ。
…そこで、ゆっくり……ね?」



それだけ言うと、加瀬はじゃあねと手を上げて、そのまま向こうに行ってしまった。
この場で何かは無いだろうと思っていたイツキだったが、何事も無さ過ぎて、拍子抜けしてしまう。


それでも、加瀬の問題は、
そろそろ、どうにかけじめをつけなければいけない頃合いだと
さすがに思っていた。



posted by 白黒ぼたん at 23:34 | TrackBack(0) | 日記

2017年02月10日

ガールズトーク・2






「…あたしは高校中退。地元のカレとアレコレあって、家で揉めちゃって、出て来ちゃったの。でも、学校は行っておけば良かったなーって、今では思うよ。
イツキくんもさ、行けるなら行った方がいいよ。卒業した方がいいよ」

「…うん…」



とある街中のカフェで、イツキはカヨと会っていた。
カヨは、以前、黒川と訪れたクラブのホステスで、何となくイツキとは気が合い、たまにメールをしたりお茶をする仲になっていた。
オープンテラスの店で、二人、フルーツとクリームが山盛りになったパンケーキを突く姿は……

デートというよりはむしろ、女子会という方が近い感じだった。



「黒川さまだって、別に、文句は言わないんでしょ? イツキくんがガッコー行ってる事」
「言わないけどさ。…でも、どうでもいいって思ってるんだよ、多分。気が向いたらいつだって、辞めさせられちゃう…」
「ふぅん。黒川さまって、ソクバッキーね。結構、面倒臭いかもー」



カヨの言葉にイツキは声を上げて笑い、カヨも一緒に笑い出す。


それから話はカヨの、今一番新しいカレシの自慢話になり、イツキも負けじと、ミツオの話などをしてみる。
そしてまた二人できゃあきゃあと笑い合う。

こんな、どうでも良い時間が、
たまには、イツキには、必要だった。





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2017年02月13日

馬鹿な子・1







夕方、イツキは黒川の事務所に向かう。
普通に待ち合わせて、食事に行き、そのまま二人の部屋に帰る週末。
明かりが漏れる事務所の扉をノックし、中に入ると

そこにいたのは、西崎だった。



「よう、イツキ」
「………こんにちは。……マサヤは?」


イツキは一瞬、息を飲む。
狭い事務所をぐるりと見回してみるも、黒川の姿は見当たらない。


「…社長ならちょっと出てるぜ。 『パピヨン』で急用が出来たってよ。…まあ、すぐ戻るんじゃねぇか?」
「………そうなんだ…」
「突っ立ってねぇで、入れよ。ここで待ち合わせてるんだろ?」
「………うん」


デスクに座る西崎を警戒するように、イツキは、部屋の端に身を寄せながら、ソファへと向かう。
その、あからさまな怯えた様子が可笑しくて、西崎は笑う。


「馬鹿。こんな所で取って食いやしねぇよ」
「……西崎さんは、どうして、ここに…?」
「荷物待ちだ。一ノ宮さんが来るハズなんだがな。……何か飲むか?」


そう尋ねる西崎に、イツキは無表情のまま首を左右にぷるぷると振る。
その様子が可笑しくて、西崎はまた、笑う。





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2017年02月15日

馬鹿な子・2







「……そうだ、イツキ。お前、来週の水曜日、空けておけ。メシに行くぞ」


急に西崎がそう言いだして、イツキは目を丸くする。
西崎と食事に行く理由が解らなくて…、…思い当たる事が無い訳でもなくて…、それをどう聞けば良いのかと、少しの間、考える。


「加瀬さんと、だよ」


そして、イツキが口を開くより先に、西崎がその名前を告げる。


「……いい。……俺、行かない…」
「馬鹿か。断れる話じゃないんだろう?」
「…なんで、俺、あの人とヤらなきゃいけないの?…なんでそれを西崎さんに言われなくちゃいけないの?」


イツキの疑問はもっともな事だったが、西崎にはどうもピンと来ないらしい。
煙草に火を付け、デスクを離れ、イツキが座るソファへと近寄る。
表情はまだ穏やかで優し気だが、もともとが強面の巨漢なのだ。

…傍に立たれるだけで、反射的に身が竦む。


「お前が加瀬さんに頼んでるんだろう?アホーのお前がガッコー続けるために、色々融通して貰ってるんだろう?」
「……違うよ!……そんなの、頼んでないよ!」


西崎の言いように、つい、イツキは声を荒げ反論する。
……確かに、最初は、そんな下心もあって加瀬に近づいたのだけど…、…それを常習化してしまうほど、慣れ合うつもりもない。

無いけれど、利用するつもりがいつの間にか一方的に利用されてしまう。
簡単に立場が悪い方へと入れ替わってしまう。
悪意を持った男達に抗うには、イツキは無知で無力過ぎる。



「お前みたいなのが何のコネもなく、普通に暮らせると思うなよ。とにかく、決まった話だからな。解ったな」



posted by 白黒ぼたん at 19:17 | TrackBack(0) | 日記

2017年02月16日

馬鹿な子・3






「……そんなこと、勝手にしたら…、……マサヤが怒る…」
「はぁ?勝手にしているのはお前の都合だろう? …お膳立てしてやってる、俺の身にもなれよ」
「……だから、そんな事、頼んでない…」
「解らない奴だな。…ギブ・アンド・テイクくらい、いい加減覚えろよ。お前にやれる事なんて、ヤる事しか無いだろう!」



西崎がまた大声を出しイツキを威嚇した所で、事務所の扉が開き
黒川が入ってくる。

黒川はただならぬ雰囲気を感じたのか、西崎とイツキの顔を交互に見遣り、そして、どうでも良いかと言う風に、ふんと鼻を鳴らす。



「社長。お疲れさまです」
「……ああ、西崎。待たせて悪かったな。…一ノ宮は2.3時間、遅れるらしいぜ」
「そうですか…。じゃあ、出直しますか…」
「いや、他にも頼みたい事がある。パピヨンのマスターと話して来たんだが……」



黒川はデスクに向かい、手に持っていた封筒から書類を出し、広げる。
西崎もその傍に行き、書類を覗き込む。
ソファに残っていたイツキはどうしたものかとキョロキョロし、うっかり、黒川と視線を合わせてしまう。


黒川もチラリと見る。

そして、本当にただの気まぐれで、さして興味もない事を、こんな時に限って言ってみたりする。


「…揉めていたな、イツキ。…ふふ。西崎と痴話喧嘩か?」
「…ちが……」

黒川の軽口にイツキが反論しよう口を開くと、それよりも先に、西崎が話し出す。


「こいつ、我儘なんですよ。加瀬さんと…、ほら、学校の副理事の…、世話になってるじゃないですか…、
一席持つって言ってるのに、嫌だとか言い出して…。初めての事でもあるまいし、…今さら断る意味が解らないんですよ」





posted by 白黒ぼたん at 21:19 | TrackBack(0) | 日記

2017年02月17日

馬鹿な子・4







西崎の言葉に黒川は、イツキの表情を探る様に伺い見て、そして、また馬鹿にしたように鼻で笑う。
イツキが学校の副理事と関係を持っている事も、本当はそれを嫌だと思っている事も、
別に、どうでも良いらしい。


「…くだらない事で揉めるなよ。ヤらせておけばいいだろう?、減るものでも無し。
どうせお前はそれしか取柄が無い……」



黒川が予想通りの返事をした所で、イツキはソファから立ち上がり、精一杯、黒川を睨みつけて、事務所を出ようとする。

「…俺、帰る。…今日はご飯、行かない…!」
「ああ、メシか、そんな約束もしていたな。…今日は無理だ。帰っていいぞ」

そう言って黒川はまるで邪魔者を扱うように手をひらひらと振った。





イツキが大きな音を立てて事務所の扉を閉めて、出て行ってしまってから
西崎は少し意外な顔をして、黒川を見る。
自分が振った話で、ほぼ、想定内の流れになったのだけど、それにしても、黒川の、イツキへの扱いが雑過ぎる。
…逆に、少し、イツキが気の毒に思えてくる。




「……もともと、あいつが言い出した話なんだろう?」


西崎の同情を知ってから知らずか、黒川が声を掛ける。


「えっ…、あ…、加瀬さんですか…、そうみたいですよ。学校の便宜を図ってもらうために、イツキから誘って来たって話です」
「……馬鹿な奴だ。……自分が蒔いた種じゃないか。……少しは痛い目に遭えばいい」



そう、薄ら笑みさえ浮かべ話す黒川を見て西崎は、背筋がぞくりと、冷たくなる。




posted by 白黒ぼたん at 22:59 | TrackBack(0) | 日記

2017年02月19日

馬鹿な子・5






黒川が二人の部屋に戻って来たのは、真夜中を過ぎた頃。
珍しく、部屋中の明かりは消され、イツキはベッドの中に埋もれる様に眠っていた。
黒川は、イツキがちゃんとそこに居る事を確認すると安心したように小さな笑みを浮かべ、シャワーを浴びに行く。


ざっと済ませ、リビングに入ると、キッチンの暗がりにイツキが立っていて、驚く。


「……起こしたか」
「…お水、飲みに来ただけ」


イツキは冷蔵庫から水のボトルを取り、コップに注ぐ。そしてもう一つコップを用意すると、黒川にと、カウンターの上に置く。


「マサヤ、ご飯、食べた?」
「あ、ああ。…西崎とラーメン屋に行ったよ」
「俺も、ラーメン食べたよ。…カップラーメンだけど」


イツキはくすっと笑い、コップの水を飲み干し、小さな声でおやすみを言うと、また寝室に戻って行った。



黒川は煙草を一本吸い、それから、寝室に入る。
イツキは最初に見た時のように、ベッドの中に埋もれる様に眠っていた。
少し毛布をめくると、イツキの頭が見えて、黒川は何気に手を当てる。
本当に眠っているのか、髪を梳くように指を絡ませても、目を覚まさない。

ベッドに上がり、覆うように上から覗き込み、こめかみにキスをする。




「…マサヤ」



突然、普通にイツキが話し出すので、黒川はまた、驚く。








「……ひぃぃっ」
posted by 白黒ぼたん at 21:06 | TrackBack(0) | 日記

2017年02月22日

馬鹿な子・6








「……むずかしいね。……いろいろ…」
「…何の話だ?」
「……んー。……いろいろ。……上手くいかないね……」


イツキは毛布に包まりながら、身体を丸めながら、独り言のようにつぶやく。
何度か瞬きをするのだが、黒川を見ることはない。


「……俺が、……やることなんて、……馬鹿なことばっかりだ。……いつまでたっても……」


おそらく、加瀬との件を話しているのだろうけど
きっぱり、嫌だ、と言う訳でもなく。

今回のように元はと言えばイツキが招いた話でも、また、黒川が押し付ける悪い話でも…
嫌だと言って、泣き泣き喚き、激高していれば、逆に脅したりすかしたり甘やかしたり…誤魔化す方法もあるのだけど

こう、静かに、ただ語られると、どう返せばいいのか少し迷う。



「…そうだな。…いつまでたっても、馬鹿だな」
「うん」



イツキの素直な返事は、半分は本当で、半分は諦めに近いもので。



「……だが、俺は気に入っているぜ、お前の馬鹿なトコロも。……馬鹿な子ほどカワイイとか言うだろう?……ふふ」


冗談めかして黒川はそんな事を言う。
イツキはやっと黒川を見て、そして小さく笑って、「……ずるいなぁ…」とつぶやくのだった。





posted by 白黒ぼたん at 23:32 | TrackBack(0) | 日記

2017年02月23日

馬鹿な子・7







水曜日。
とあるホテルの一室に加瀬と西崎とイツキがいた。



加瀬は言わずもがな悪い男で、公職に就きながら、多少裏とも関わりがある。
西崎とは以前、西崎の息子が地域で問題を起こした時に、色々便宜を図ったらしい。
どちらかが一方的に強いという訳でもない。持ちつ持たれつ、状況により旨い汁を吸う、といった様子だった。


西崎にすれば、今回の話は、イツキが振って来た話なのだし、黒川にも了承を得ている。
ついでに、自分もお零れに預かれるとあって、悪い話ではない。
イツキが嫌だの、何だのゴネるのはいつもの事で、どうせ始まれば良くなってしまうし、元より、イツキはそれしかカードを持っていない。
上手く切ることも出来ないくせに、今更焦らしやがって…と、鼻で笑うばかりだった。


イツキは、
加瀬との件は、自分が蒔いた種なのだと、重々承知していたし、反省もしていた。
良くも悪くも自分の武器は…身体しか無くて、それを取引の材料にしてしまうのだけど、安易過ぎた。
ギブアンドテイク、も解る。けれど、取り分が少ない気がする。
与えるばかりが多すぎる。自分の身体を切り売りして、本当は辛いと涙を流したところで、


黒川が、助けてくれない事が、虚しかった。







「…じゃ、お先に頂こうかな」


そう言って、加瀬はイツキの腰を抱いて、寝室へと入っていく。
西崎はソファに座り、二人の背中を見送りながら、今日のイツキはやけに大人しいなと思う。
煙草に火を付け、暇つぶしにとテレビを付け、古めかしいアダルトビデオを眺める。

ブランデーのグラスの氷が、カランと音を立てて崩れた。





posted by 白黒ぼたん at 23:00 | TrackBack(0) | 日記

2017年02月25日

馬鹿な子・8






加瀬の手はねちねちと絡みつくような動きをして、いやらしい。
ベッドの横にイツキを立たせると、わざと舌を出し、顔中を舐める。
シャツのボタンを途中まで外し、指を差し入れ、乳首を執拗に捏ね回す。
イツキが湿った息を吐き、顔を背けると、逆に嬉しそうに、腰を摺り寄せて来る。


それでもイツキは「嫌」と言うことも、突き飛ばして逃げ出すこともしない。
諦めてしまったのか、どんな抵抗も無駄だと、今までの経験上、解っているのか。


「…今日は随分と静かだねぇ…。……何か、企んでいるのかな?」
「……せんせ。……明かり、……消そうよ…」


室内は天井の照明は落とされているものの、あちこちにスタンドの淡い灯りがつき、表情や仕草を眺めるのには十分だった。

どうせ、始まれば、乱れてしまう。

少しでも、そんな自分を隠したい…見られなくない…と、いまさら恥じらいを感じたところで、何の足しにもならないけれど。



「……ふぅん?…可愛い事、言うね。…じゃあ、
自分で、服、全部脱いでみようか? ズボンも、パンツも、全部。
裸で、ベッドに上がって、お尻突き出して、誘ってごらん?
上手に出来たら、明かり、全部消してあげるよ」



イツキの恥じらいなど、加瀬にはただの余興に過ぎなかった。




posted by 白黒ぼたん at 21:57 | TrackBack(0) | 日記

2017年02月27日

馬鹿な子・9






別に焦らしている訳でも煽っている訳でもないのだが
イツキが、服を脱ぐ様子は、見ものだった。
俯き加減、伏せた瞼。細く白い指がシャツのボタンをひとつ、ひとつ外す。
ベルトを外し、ズボンのボタンを外すと、面倒なのか、下着ごと一気に足元に下す。
その雑さが、滲み出る色気と違い過ぎていて、逆に面白い。

イツキはどこか怒っている風で、加瀬と視線を合わせないまま、ベッドに上がる。
上がってから、靴下を脱ぐのを忘れていたことに気付く。


「ああ、いいよ、そのままで。…ふふ、学校の白ソックス? …君も好きだね、そういうの…」


加瀬が笑う。


「……でんき、…けして…」
「うん?まだでしょ?……ワンちゃんみたいに四つん這いになって、お尻こっちに向けて…、入れてください、って言うんでしょ?」


調子に乗ってそう言う加瀬を、イツキは下から目線でチラリと、睨む。
その拗ねた様子も可愛いと、自分で気が付いているのか…、……どこまでがイツキの「営業」なのか、イツキ自身にも解らない。

とにかく、今日は早く終わらせてしまいたいと、
イツキは加瀬の言う通り、四つ這いになり、尻を突き出し、軽く揺すって…「…入れてください」と、言うのだった。





拍手ぱちりとコメント、ありがとうございます!
お返事出来ていませんが、嬉しく読ませていただいています。
励みになりますー。頑張りますー!!
posted by 白黒ぼたん at 21:23 | TrackBack(0) | 日記
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