2017年05月04日

朝のふたり







物音で黒川が目を開けると、ベッドから抜け出したイツキが、着替えをしていた。
明け方に部屋に帰って来て、一眠りして、今は昼前、と言ったところか。


「……どうした?」
「ん。……ガッコー、いく」
「……はぁ?」


黒川もベッドから起き上がる。
煙草を探そうとそこいらに手を伸ばしていると、イツキがボードの上から取り、黒川に手渡す。


「馬鹿か。そんな精液臭いカラダで出掛けるなよ」
「…ちゃんと、お風呂、入ったもん」
「それ位で消えるかよ、まだ、匂うぜ?」


煙草に火を付け、吹かしながら、黒川はそう言って笑う。
…実際、匂う訳ではなかったが、そう言われても仕方が無いほどの事を、数時間前まで行っていた。
ベッドの足元には、途中、あまりにも濡れて気持ち悪くなったシーツが、丸めて置かれている。
多分、クリーニングはしない。この部屋でシーツは、ほとんど、使い捨てだった。



イツキは、黒川に言われ、自分で自分の腕あたりをくんくんと嗅いでみる。
風呂上がりの優しい石鹸の匂いしかしないが、言われてみると、なんとなく気になる。
そんな様子のイツキに、黒川は声をあげて笑って、最後にもう一度念を押すように



「……行くなよ」




と、言うのだった。



posted by 白黒ぼたん at 13:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2017年05月08日

均衡・1






「……グリルミックスとポテトサラダ。ごはんセットでお味噌汁は豚汁で。…ああ、佐野っち、チョコパフェはどうしたらいいと思う?」
「いいよ。頼めよ」
「…じゃあ、チョコパフェも。…一緒に持って来ちゃっていいです」



真夜中。終夜営業のファミレス。
真剣な表情でメニューを開くイツキを、佐野は、くすくすと笑いながら眺める。
こんな時のイツキの食欲は驚く程で、それでも何度も見慣れた光景で、…自分はドリンクバーと、付き合い程度のピザを頼む。
煙草に火を付け、ケータイを確認し、連絡メールを手早く打つ。
そうこうしている内にテーブルに並んだ料理は、予想通り…大量で、見るだけで佐野は胸やけしそうになる。

イツキは『仕事』の後だった。




数時間前に黒川から電話があり、ホテルに、イツキを迎えに行く役目を仰せつかる。
…まだ、そんな『仕事』をしていたのかと、佐野ですら一瞬驚いたのだが…それを問いただす訳にもいかず、大人しく従う。

場末の汚い連れ込み宿では無かったのがせめてもの救い、と言うべきか。

まあ、ヤル事の内容はさして変わらないのだけど。
星が付くホテルの上客ともなれば、そうそう酷い事も無いようで、
待ち合わせのロビーに出て来たイツキは、いたって普通で、白い首筋に散る愛撫の跡さえなければ、そんなコトの後だとは解らなかった。


『疲れてはいない。お腹が空いた』と言うので
佐野は、イツキを、ファミレスに連れて行く。
イツキの性欲は、食欲といっしょくただと、前に黒川が言って笑っていたけど

こんな風に無理に食べ散らすイツキは、嫌な思いや感触を忘れようと必死になっているようで、どこか痛々しかった。




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2017年05月09日

均衡・2







今回の黒川の仕事は、大損、とまでは行かないものの、かなり分の悪い条件でまとまった。
しかも、最終的に、「イツキ付き」で。

多少は申し訳なく思っているのだろうか、黒川は甘いセックスの後でその話を切り出す。
イツキは、物分かりよろしく、いやにあっさりと承諾する。

後日、クリーニングから戻ったばかりの黒いスーツを身に纏い、約束のホテルへ向かう。
…学校の制服よりも、良く似合うのは知っていた。自分の身体も、この服も、休む間が無いな…と、小さく笑った。




相手は、以前にも何度か会ったことがある壮年の男性だった。
黒川と同じような仕事をしているのだろう、同じような、匂いがする。
紳士らしく、そう酷い扱いはしない。
逆に大事にされ過ぎると、イツキは困ってしまう。

うなじから首筋。肩口、薄い胸。
服も脱がされずにキスばかり繰り返されて、イツキは腰をもじもじと揺する。
時間を掛けて丁寧に準備されると、それだけでイツキは勝手に、溶けだしてしまう。
触れられてもいない場所が、感じてしまう。一度、始まると、もうイツキにも止められない。

『…君みたいな子、他にはいないよね。…面白いカラダだよ、本当に…』

駄目と言いながら身体を痙攣させ、股を開き男を誘うイツキに、男は遠慮なく、欲情をぶちまけるのだった。






「……っち。聞いてる?佐野っち?」
「…あ、ああ?」
「…でね、この前、梶原と行った大盛ラーメンの店が凄くてね、チャーシューが山みたいに積まれててね……」


情事の後。いやに明るく、どうでも良い話をするイツキに
佐野は頬杖を付きながら、適当な相槌を打つ。


こいつはどんな気持ちで、好きでもない男に抱かれて来たんだろうと思う反面、

頭の片隅では常にその時の、乱れた、いやらしい姿が、ビデオのように再生されていた。




posted by 白黒ぼたん at 22:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2017年05月12日

均衡・3







食事の途中でイツキは眠たくなったと言い出し、大方残した状態で、店を出る。
助手席でうつらうつらとするイツキに、佐野は、一応確認のように「……どこかで休んで行くか?」と尋ねる。


イツキは薄く目を開け、佐野をチラリと伺い、ふふ、と笑う。
佐野は運転中だったが、イツキが気になって、危うくハンドル操作を間違えそうになる。


「…いいよ。…佐野っちなら、…マサヤ、…怒らないから……」


イツキがそう答える前に、すでに車は、道路沿いのホテルの駐車場に吸い込まれていた。





イツキの身体はほどよく湿り、丁度良かった。
佐野は、こんな機会を逃すまいと少々慌ててコトに挑んだのだが、それでも、イツキは簡単に佐野を受け入れた。
イツキは、
頻繁にカラダを重ねていた数年前と、同じようで、まるで違っていた。

少し背が伸びたのか、挿入したままキスをするのが、楽になった。
優しい言葉を掛けると、恥ずかしそうに顔を背け、嬉しそうに笑った。
『イツキはどこか柔らかくなった』と言っていたのは、西崎だったか、誰だったか。
身体の具合が良いのは勿論のこと、漂う甘い雰囲気に、佐野はすっかり夢中になっていた。




「……イツキ。いいぜ。可愛いぜ…。お前、……中、ぐちゃぐちゃ。……欲しがり過ぎだぜ……」
「………やだ。………佐野っち……」


腰を突き上げながら、耳元でそう囁きながら、佐野は


こんなに、良い子を、どうして社長は
無碍に『仕事』に出したり、手放すような扱いをするのだろうと思った。





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2017年05月13日

均衡・4








「ご苦労だったな、佐野」


随分と寄り道をして、車は黒川の事務所へと戻る。
扉の前に立つ佐野の横をすり抜け、イツキは中に入り、倒れる様にソファに寝転ぶ。

黒川は、疲れて切った様子のイツキをチラリと見ながら、佐野に、手間賃代わりの一万円札を数枚渡す。


「……あー…、社長、すんません…。……実は……」
「…いい。…構わんよ」


イツキを抱いた事の報告は、軽く、あしらわれて終了した。
佐野は、どうにも腑に落ちないのだけれど…、今更黒川とイツキの関係を疑問に思ったところで始まらない。
……しかも、自分もそのお零れに預かっているのだ…、口を出す権利は無いだろう。

金を受け取り、ぺこりとお辞儀をして、佐野は事務所を出る。
最後に見た黒川は、煙草に火を付けながら、ソファに眠るイツキを覗き込んでいた。






帰りの車の中で、佐野は、イツキを思い出す。
コトの後。ふと、何かを思い出したように、口を開く。
『仕事』と、自分と、二度の行為の後では、さすがに意識も朦朧としていたのだろう。
たどたどしく話す言葉は、寝言と独り言の合間のようなもので
佐野にはその意味が、よく解らなかった。




『…マサヤは……少しぐらい意地悪な方がいいんだよ。…そうじゃないと、俺、マサヤのこと、好きになっちゃうかも知れない。
……だから、……これぐらいが、……ちょうどいいんだよ………』

そう言って、静かに微笑み、目を閉じるのだった。





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2017年05月14日

均衡・最終話







黒川にも、黒川なりの言い分があった。
イツキの『仕事』は、イツキ自身が了承して受け入れている事なのだし
今までイツキを売り込んでいた手前、今更、止められない付き合いというのもある。

何より
疲れて憔悴するイツキが好きだった。
こんなイツキになら、

無条件で、優しくすることが出来る。





「動けるか?帰るぞ」
「……眠い…」
「ヤリ過ぎだ。佐野ともヤッて来たんだろう?」
「……ん」

黒川の言葉にイツキは悪びれることもなく、こくんと頷く。
もぞもぞと身体を起こし、ソファに座り直し、伸びと欠伸を同時にして、手の甲で顔を擦る。

その手を、黒川に差し出す。
黒川は手を取り、イツキを立たせるように引き上げる。
立ち上がり、向かい合ったついでに、軽く身体を抱き締める。

イツキも、手を、黒川の背中に回す。

  



ただそれだけの、話。




おわり






いつも◎スイッチ◎にお立ち寄り頂き、ありがとうございます。
拍手ぱちぱちメッセージ、大変励みにしております、
本来なら個別にお返事したいところなのですが、なかなか対応しきれずスミマセン…。
ブログ内にもコメント受付があります。こちらですと、返信がしやすいかな…?…どうかな??
パソコンやらブログやらの知識が十数年前から一ミリも進んでいなくて、色々、不便なトコロが出ていると思いますが…
もうしばらく、お付き合いいただけると嬉しいです〜(#^_^#)


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2017年05月16日

別枠







昼休み、食堂で。
今まで隣にいた梶原が所用で席を外した、その僅かな隙を狙い、清水が、イツキの隣に座る。
紙パックのコーヒーを飲んでいたイツキはストローを咥えたまま、驚いて、清水を見る。


「お前さ、オヤジんトコのチンピラと、ヤったって、本当?」
「……チンピラ…?」
「金髪の。よく、来る奴」
「……ああ、佐野っちの事?」


およそ昼下がりの学校には似合わない内容だったが、イツキは思い当たる節があるのか
清水から視線を逸らし、思い出したように小さく笑う。


「…マジか。…黒川さんに言われて、他の男とヤって、その後で、チンピラともヤったって…」
「……その話、なんで先輩が知ってるんですか?」
「チンピラが言いふらしてたって。…オヤジが聞いて。わざわざ、俺に言いに来たぜ」


西崎は今でも事ある毎に、イツキの良くない話を、清水に吹き込んでいる。
『あいつは誰とでも寝る尻軽なのだから、お前は相手にするな』と。
半分は事実なのだし、そう言われ、そう思われたとしても、まあ構わないのだけど

それにしても佐野は口が軽すぎる。



「……もう。……佐野っち…のバカ……」
「…なあ」


イツキが佐野への悪態を付いたところで、清水が、イツキの顔を覗き込む。
うっかり、距離が近すぎて、無駄にドキドキしてしまう。



「……なんで、そいつとはヤって良くて、俺とは、駄目なんだろうな。
……俺は別枠?……お前にとって。
だから、黒川さんもオヤジも、必死こいて俺らの事、止めに来たのかな?」


そんな事を言って、清水は、ふふと笑うのだった。





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2017年05月17日

手首






イツキの手首は特別細いという訳ではなかったが
黒川の商売相手の男達からすれば、それこそ赤子同然。
片手で簡単に捕まれ、引かれてしまえば、もう身動きを取ることも出来なくなる。



街中で突然腕を掴まれて
物陰や暗がりに追いやられる。

「よう、イツキ。久しぶりだな」

と、普通の挨拶をしてはいるが
顔は近いわ、男の腰は密着しているわで、まったく、普通の状況ではない。



「……お…ひさしぶり…です」
「いつ以来だ?最近は呼んでも来ねぇな。少しは付き合えよ」
「…俺が…、決めることじゃないので…。……すみません…」
「…クソ。相変わらずエロい顔してるよな。口でも、ケツでもいいや。…ブチ込みてぇぜ」


そう言って男は、腰をさらにイツキに押し当て、がっはっはと下品に笑う。
それでもそれは本当に、男にとってはただの挨拶だったようで。


「…今度、黒川に言っておくぜ、じゃぁな」


そう言うと、わざと乱暴に玩具を扱うように、イツキの手を振り回し、離す。
よろけそうになるイツキを、笑い、男は、どこかへ行ってしまうのだった。




こんな事は日常茶飯事だし、本当にどこかに連れ込まれて、犯される時だって…あるのだし。
取り立てて別段、どうという出来事でもないのだけど



いつまでたっても嫌なものは嫌だと
イツキは震える手を握りしめながら、思った。




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2017年05月19日

足首






どんなに抗ってみても、どうにもならない時もある。
自分よりも身体が大きく力も強い男達、数名に囲まれてしまえば、イツキなぞ赤子同然。
ベッドに押し倒され、服を剥ぎ取られ、「嫌」と叫んで逃げてみても、無駄な足掻きで
足首を掴まれ、引き寄せられる。
おまけに、うつ伏せのまま足を開き、その両足首を左右のベッドのフレームに括られては、身体を起こして相手を睨むことさえ出来ない。


ずるり、と尻の間に、粘ついた液体の冷たい感触が走る。
潤滑のためのジェルを塗りたくる男の手は、何度もそこを往復し、時折、指が中にまで入る。
無駄な会話も無い。本当にそれだけが目的のようで。
背中で聞こえる男の荒い息遣いと、その向こうにいるだろう、順番を待つ男達の気配に、イツキは泣きそうになる。


「……待って、待って…。俺、いい子に…するから…、ちゃんと、するから…、こんなの、…いや……」


背中を反らせて、どうにか…、ほんの少しでも楽な体勢になりたくて…、男に懇願するのだけど。
男は、イツキの背中をベッドに押し付け、動きを封じ、さらに耳元で
「…嫌なら、拒んでみろよ。……無理だろうけどよ」
と言って、何の断りもなく、イツキの中に押し入ってくるのだった。









イツキが目を覚ました時には、もうそこに、男たちの姿は無かった。
途中で片方だけ、足首の枷が外されたのは、男たちが違う楽しみ方をしたいだけだった。
もう片方は、最後まで繋がれたまま。



イツキは身体を起こして、残された、足首に巻かれた細いロープを解いた。




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2017年05月22日

襟首






学校の食堂にはテラス席があって、天気の良い日などは解放されている。
二階にあるそれは眺めも良く、ベンチでは女子が話に花を咲かせていたり、のんびり読書を楽しんでみたり。



今日は、イツキもそこにいた。

昼休み、梶原と大野は揃って用事が出来てしまい、イツキは一人で……
……ランチセットを頼む気にならず、紙パックのコーヒーだけを買い、テラス席に出てみる。

生憎ベンチは一杯だったので、バルコニーの手摺りの隅に身体をあずけ、ぼんやりと外を眺める。
中庭には、名前の解らない花が咲いている。暑くもなく寒くもない穏やかな陽気。
紙パックのストローを咥えながら、幸福そうな光に満ちた景色を見渡し
どこからか聞こえる誰かの、楽し気な笑い声に、耳を傾ける。


そうすれば、するほど

逆に、自分の中の、暗く陰鬱な部分が、浮き彫りになる。

例えば昨日、自分が、した、コトの内容を思えば

自分は、こんな明るい世界にいてはいけないのではないかと、思う。







「……イツキッ」



突然、襟首を掴まれ、身体が後ろに引っくり返りそうになる。
慌てて顔を向けると、それは梶原だった。
梶原はイツキをバルコニーの手摺りから引き離し、代わりに、自分の身体を間に挟む。


「バカ、お前、落ちるぞ!?」
「………梶原?………落ちないよ?」
「いや、だって、お前、…なんか、ぼんやりして…、ふわふわしてっから…」


どうやら遠くからイツキを見掛けた梶原が、イツキの様子が危なっかしいと、慌てて駆け込んで来たのだった。

けれど、どうやら取り越し苦労だったと解ると、梶原はイツキから手を離し、照れ臭そうに笑う。


「…あー、ごめん。……俺、なんか、慌てちゃって……」
「……大丈夫だよ。……落ちないよ」


イツキはもう一度、そう言って、静かに笑った。





posted by 白黒ぼたん at 22:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2017年05月23日

気掛かりな事







夜。
梶原は一人、自分の部屋で今日の課題を片付ける。
三流私立高校からトップ校への受験を控えているというのに、予備校にも行っていない梶原は、ただただストイックに自分にノルマを課す。
それは簡単なようで、難しく。強い意志を持って、遂行されるもので。
それでも、おそらく、成し遂げられるだろうと、回りも、本人も思っていた。


気掛かりといえば、一つだけ。


勉強も一段落し、梶原は机から離れ、伸びをする。
立ち上がり、台所へ向かい、冷蔵庫から炭酸飲料のペットボトルを取り、ラッパ飲みする。
口元をぬぐい、小腹が空いたと、夕食の残りの唐揚げを手で摘み上げ、頬張る。

そして、イツキの事を考える。




昼間、バルコニーで見かけたイツキは、脆く、危うく、儚な気で…本当にあのまま、手摺りから零れ落ちてしまいそうだった。
咄嗟に襟首を掴んで引き寄せたものの、思った以上に身体は軽く、弾みで、自分の胸に飛び込んで来た。
『大丈夫』と言って微笑む様子は、笑顔というよりは、泣き顔に近くて
自分と同じ男子高校生だというのに、どうやって生きて来たらこんなに切ない佇まいになるのかと、疑問を通り越して混乱する。



「………あー、ヤバイヤバイヤバイ……」



物思いの最中で、梶原はわざと大きな声を出して、頭を激しく左右に振る。
このままイツキの事を考えていると、身体が暴走してしまうことは、経験上、知っていた。
もう一度、ペットボトルを煽り、「…課題、課題。あと3ページ分…」と言い聞かせるように一人ごち、机に戻る。



当然、その後の勉強など、出来るはずも無かったけれど。





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2017年05月24日

無邪気な笑顔






教室で清水は梶原からの視線を感じていた。
直接ではなく、人垣の合間からとか、読んでいるフリの教科書の向こうから、とか。
最近は、梶原の怒りを買う事も無かったはず…と、清水はさして気にもしていなかったが
まあ、からかい半分、声を掛ける。




「…ナニ?…俺に用?」
「……いえ、別に」
「チラチラ見られるの、気になるんだよね。…告白でもする気?」
「違いますっ」


思わず大きな声が出てしまい、梶原自身、驚いて、辺りをキョロキョロ見てしまう。
少し離れた場所にいたイツキには、聞こえてはいないようだ。

梶原がイツキを見た事で、清水もイツキを見る。
そしてもう一度梶原を見ると、梶原は物憂げな表情で、大きく鼻で息をする。



「……清水さんは…」
「ん?」
「清水さんは、……イツキと、…シた事、あるんですよね…。……その、……思い出して、……変な感じになったり、しません?」



大真面目な顔で梶原がそんな事を言いだすので、清水は一瞬、言葉を無くす。
何かあったのか…、いや、何も無いからこそ、今だに、そんな夢想に頭を悩ますのだろう。
気の毒にも思うが、それ以上に滑稽で、


「バーカ。中学生かよ。そんなもん、適当にヌいて来いよ。」


清水が笑いながらそう言うと、梶原は聞いたのが間違いだったと、拗ねた様子で顔を背ける。




気配に気づいたイツキがこちらを見て、無邪気に、微笑んでいた。




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2017年05月27日

大嫌い







ホテルの部屋で、イツキは男に抱かれていた。
「仕事」ではない。「黒川の仕事の手伝い」だった。
イツキが手伝う事で、抱えている案件が早く片付く、と。
それが互いにとっても一番なのだと、ウィンウィンなのだと。

それらの全てが、詭弁であることなど、重々解りきっていたけど。




「…いいね。…いいよ。…根元までずっぽりだよ。いやらしいねぇ…。
…中の、どこで、締め付けてるんだい?
ああ、そう。……引き込まれそうだよ……、ああ……」


正面からイツキを抱いた男は、事細かに状況を説明する。
味わうように、ゆっくりとイツキを堪能する、その間合いがまだるっこしくて
イツキは腰を揺すり、頭を振り、足りない分をどうにか補おうと、甘い声で男を誘う。

男の手が、イツキの乳首を触る。
張りつめ、ツンと勃ちあがったそこは、軽く撫ぜられるだけでも、痛いほど感じる。


「ふふ。乳首、気持ちいいのかな?……。可愛いおっぱいだね。こんなにコリコリにして…。……可愛いねぇ……」


身体の焦れと、男の言葉のくすぐったさに、イツキは顔を横にむけ、誤魔化すように手の甲を口元に当てる。


「……可愛いねぇ」


イツキの素振りに、男はもう一度、そんな事を言う。
そう言われる事が、…実は、イツキは、少し…嬉しくて…





そう思ってしまう自分が、酷く、大嫌いだった。





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2017年05月28日

今夜のふたり・1







真夜中。
一ノ宮が事務所で一人、雑用を片付けていると、イツキがやってくる。
少し酔いが残り、少し、ヤリ足りない身体で、どこかふわふわとした様子。



「……マサヤ、……いないの?」
「横浜ですよ。イツキくんは渡辺社長との…会食でしたか。お疲れさまです」
「…俺が身体、張ってんのに、…あいつ、迎えにも来ないの。……サイテー…」



そう言ってイツキはソファに腰を沈め、ふふ、と笑う。
今更、自分がしている事への疑問や、それをさせている黒川への不満を、蒸し返すつもりはない。


ただ、少し、愚痴を言ってみたいだけなのだ。


それは、一ノ宮にも解っている。




「すみません。…私が行けば良かったですね。渡辺社長にご挨拶もありましたし…」
「ううん。一ノ宮さんは気にしないでいいよ。…ちゃんと、送って貰ったから、大丈夫」
「…ああ、何か入れましょう。お茶か…、何か温かい物の方が良いですか?」
「……んー……」


イツキは狭いソファの上で伸びをしながら、事務所の隅の冷蔵庫を開ける一ノ宮を見上げる。
一ノ宮はそんなイツキを見ながら、まるで猫のようだと思う。



「……それとも、少し飲みますか?」



何気なく、冷蔵庫のビールを取ると、イツキはニコリと笑った。





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2017年05月29日

今夜のふたり・2







一ノ宮から受け取ったビールを、イツキは缶のまま傾け、すぐに半分ほどは飲んでしまう。
目をとろんとさせて、ふうと息をつく姿は、どう見ても酔っ払いのようだ。
心配げに眺める一ノ宮に気付いたのか、イツキはふふ、と小さく笑い、
「だいじょうぶです」と言いながら、残りのビールも空けてしまう。


「…一ノ宮さんも、飲んで?」
「ええ、はい」


イツキは一ノ宮にも勧め、自分は二本目のビールに手を伸ばす。


「…今日と、……先週も、………だよ。…おれ、偉くない?仕事熱心じゃん」


自嘲気味にイツキはそう言い、鬱憤を洗い流すようにビールを飲む。
行為に、納得している訳ではない事は、一ノ宮とて重々承知している。
それでも、黒川に行けと言われれば、拒めないのだ。


「……そうですね。…お疲れさまです」
「…あいつ、…俺のこと、あんまり外には出さないとか言ってたのに…、…結局こうなっちゃうんだよね…」
「…そうですね。……申し訳ないとは…、思っています」

「一ノ宮さんが謝る事じゃないでしょ。…まあ、俺が、いいって…、仕事…、じゃなくて…、マサヤの手伝いはするって、言っちゃったんだけどさ……」



確かに、以前
清水との一件があった時に、
黒川のご機嫌を取るために、自分の多少の自由を得るために、黒川の言う事を聞くと、約束はしたけれど


ぽろり、ぽろりと回数が増えていく。
次第にそれが、当たり前の事に、なってしまう。





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