2017年05月30日

今夜のふたり・3






「…一ノ宮さんは、こんな時間まで、仕事?」
「ええ。細々とした書類が残っていまして…」


自分の話に飽きたのか、ふいに矛先を一ノ宮に向ける。


「大変そう。普通の会社勤めの人みたい」
「はは。やっている事は大して変わりありませんよ。土地や建物の売買や、税金対策…、仕事の斡旋、人を集めて…派遣して……」
「……普通の会社なの、ここ?」
「普通ですよ、表向きは。ただ、ゴリ押しする時の力が、ちょっと強いぐらいです」


そう言って、笑う。
イツキも、ここが普通の場所だとは到底思ってはいなかったが、いつも穏やに作業をしている一ノ宮を見ると、つい、そんな事を思ってしまう。


「……一ノ宮さんはさ、…なんで、マサヤと一緒にいるの?」
「…さあ、何故でしょうねえ……」
「…仕事も忙しくて、…マサヤは勝手なことしてばっかりして、…偉そうで、…面倒臭くて、…すごく、怖い時もあるのに…」
「……そうですねぇ…」



一ノ宮は手に持っていたビールを一口のみ、少し、物思いに浸る。
何故と、改めて問われても、答えはすぐに出るものではない。



「……古い付き合いですし、多少の問題は、もう、どうとでも…。
…お互い、傍にいる事に馴染んでしまった、といった感じですかね…。

イツキくんも、同じでしょう?」




そう言って一ノ宮がイツキを見ると、イツキは、自分は違うという風に頬を膨らませ、首を左右に振るのだった。




posted by 白黒ぼたん at 22:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2017年05月31日

今夜のふたり・4






二本目のビールも空けて、さすがにイツキは眠たそうにソファに沈む。
大丈夫、とは言っていても、ここに来る前にすでにかなり飲まされ、数時間にわたり男に弄ばれて来たのだ。
疲れていない訳はないだろう。


「…少し、お休みなさい。後で車で送りますよ…」
「…一ノ宮さん」
「……はい?」


まどろむイツキに一ノ宮が仮眠用の毛布を掛けてやると、イツキはもう一度、ゆっくりと瞼を開ける。
夢とうつつの境にいる様な危うい表情は、ゾクリとするほど綺麗で、一ノ宮ですら変な感覚になる。





「……一ノ宮さんとマサヤみたいな関係だったら良いのに。
ちゃんとお互いのこと解ってて、信頼していて、パートナーって感じで。
…一人の人と、人として…、ちゃんと。……ちゃんと、してて……
…おれと、…マサヤは…、だめ。……どうしたって……、おれが…下になっちゃう……」



呟いて、何度か瞬きをする。
一ノ宮はイツキが泣いているのかと思い、うっかり、イツキの頭に手をやってしまう。



「…社長は、あなたが思っている以上に、…あなたの事を大切に想っていますよ」

「……知ってる。…だから、それが嫌だから、たまに俺を突き放すんでしょ?…あいつ…」



そう言ってイツキは諦めたように小さく息を付いて、深く、目を閉じるのだった。


posted by 白黒ぼたん at 23:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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