2017年06月01日

今夜のふたり・終







イツキが寝入って、しばらく経ってから、黒川から電話が入る。
今日の仕事の報告と明日の予定。他に細々とした話をして最後に、ついでのように、イツキの事を尋ねる。



『……連絡はあったか?……あの馬鹿、電話にも出ない。…とっくに終わっている頃だと思うんだが……』
「ああ、イツキくんなら、ココで眠っていますよ」
『………ここ?……事務所か?』



おそらく、連絡が付かないイツキを心配していたのだろうけど、そうは言わない。
相変わらず素直ではない男なのだが、それを汲んでやるにも、若干飽きたという所。



『…大人しく帰ればいいものを…。どうせまたヤリ足りなくて、フラフラ出歩いていたんだろう…。
悪いが一ノ宮、後で送ってやってくれ…』

「…ええ。……ああ、でも社長。…途中でイツキくん、ちょっとお借りしても良いですか?」
『……は?……何だ?』
「今日は彼、とても可愛いんですよ。私も少し、ご相伴に預かろうかな……と」





一ノ宮の応対に、電話の向こうで、黒川が言葉を詰まらせる。
他の相手になら『…勝手にしろ』と放り投げるのだが、こと、一ノ宮となると様子が違うようだ。
本気な訳はない。けれど、冗談など今まで言った試しがない。

もし本気であれば、どんな状況になるのか、想像もつかない。







「冗談です」





黒川が返答に口を開く前に、一ノ宮は軽く笑って、そう言うのだった。





posted by 白黒ぼたん at 23:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2017年06月02日

不愛想な黒川


  




「おかえりー」
「………ああ」



夜、黒川が部屋に帰ると、イツキは台所に立ち、何やら鍋を掻き回していた。


「…カレー…ぐらいなら…、作れるかな…って。…まあ、…大丈夫かな…」


そう言って笑って、鍋を覗き込む。
黒川はネクタイを解きながらソファに座り、煙草に火を付ける。



「あと10分くらいで出来るけど、すぐに食べる?…マサヤ」
「……ああ」
「エキナカの…、あの量り売りのお店の、コブサラダ買って来たよ。…食べるでしょ?」
「ああ」



何を聞いても黒川は不愛想な返事を返すばかりだったが、まあ、別段イツキも気には留めず。
テーブルにカレーとサラダを並べ、白ワインのボトルを開け、いつもの定位置に座り食事を始める。
ご飯が少し水っぽい気もしたが、それも何も言われず。
カレーのルーが溶けきらず、ダマになっていたが、黒川は気付かないようで、具材と一緒にそのまま食べてしまっていた。




「……マサヤ、……今日、変?」




食事も終わり、残ったワインを飲み干す頃、ようやくイツキが尋ねる。
黒川はグラスをテーブルに置き、横目でチラリとイツキを眺め、
 
手を伸ばし、イツキを引き寄せ


返事の代わりに、キスをするのだった。







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2017年06月05日

くだらない話








別に気にしている訳じゃあ、ない。

今更、一ノ宮がイツキに懸想するハズもないだろうし、たまには冗談の一つも言うだろう。
例え、イツキからちょっかいを出したとしても、一ノ宮が相手をする事は無い。


イツキも、
ここ最近、多少『仕事』が多くなってはいるが…まあ、大人しく言う事を聞いている。
あまり放って置き過ぎると拗ねる時もあるが、まだそれほど、機嫌を損ねる事も無い。


付かず、離れず、程よい距離感を保っている。
俺たちには、これ位が丁度良いのだと、お互い、解っているはずだ。





それでも、
抱き締めて、唇を重ねると、イツキは少し顔を背け…、嫌がる素振りを見せる。
何かやましい事でもあるのかと、顎を掴み、無理やり顔をこちらに向けさせる。





「……何だ?……言う事があるなら、言えよ」


尋ねるも、イツキは口を真一文字に結び、視線だけでもと、横に逸らす。


「……言え、イツキ」
「……だって……」



さらに顎を掴み、逸らした視線ごと、強引にこちらに向けさせると
イツキは、困ったように小さく笑い




「………俺、……いま、多分……、………カレー臭いから……」



などと言うのだった。








くだらぬぞ、黒川! 笑
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2017年06月06日

当たり前の意見







「……まあ、……いいのかなって…。

高校卒業しても、ちゃんと働けるか解らないし…、自立…とか、出来ないだろうし。
自分で稼いで、その分で住むとこ探して、自分だけで生活して…なんて、想像つかないし…。


マサヤは…、そりゃぁ、ムカつく事もあるけど…、まあ、優しい時は優しいし…。

たまには、すごい嫌な事もあるけど…。…うん。……他の、人と……しなきゃいけない時とかは…、……嫌だけど。

それでも昔よりは回数も減ったし、そんなに酷い事も無いし。痛かったり、大怪我とかも、前よりは少ないし。


確かに、それで…今までマサヤが俺にしてきた事が全部帳消しになる訳ないけどさ…。



このまま、なんとなく…、マサヤと一緒にいてもいいのかなって…、たまに思うんだ。


毎日、…なんとなく…、過ぎて行くのも…、いいのかなって……」






昼下がりの学校で。
進路先や、人生の目標や、自分自身の夢や希望について、梶原が熱く語る流れで
イツキもつい、今の自分の考えなどを、述べる。

開いた窓から、心地よく、秋の風が入る。
ふわりとカーテンが舞うと、午後の日差しが、チラチラと光る。




「……馬鹿じゃないの、お前。そんなん、おかしいに決まってるだろ?
もっと自分の事、ちゃんと考えろよ!」


穏やかなイツキの口調とは裏腹に、
話を聞き終えた梶原は、真っ赤な顔で激昂して、当たり前の意見を言うのだった。





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2017年06月08日

焼き鳥屋にて







事務所の近くの焼き鳥屋で、黒川と一ノ宮は酒を飲んでいた。
仕事の話をざっと済ませ、明日の予定を確認し
鶏皮の塩加減にケチを付け、新しい焼酎のボトルを開ける。




「お前も、くだらない冗談を言うようになったな」


と、黒川が言う。

あまりに突然過ぎて、一ノ宮は何の話だったのか、一瞬戸惑うのだが
すぐに、イツキの話なのだと、気付く。
…いつだって黒川は極力さりげなく、もののついでのように、イツキの事を話す。
むしろ本当はそれが一番の気掛かりなのだと、本人も、解っている。



「…はは。…少しは、驚きましたか?」



先日。事務所で。『仕事』後のイツキと。
勿論、何も無かったのだけれど、何かある風に、匂わせてみた。
一ノ宮がこの手の話をすること自体、極めて稀で、だからこそ、印象に深く残る。



「お前にその気が無いのは知っている。…それでも、…そうだな。…何を血迷ったかと思ったぜ」
「十分あり得る話でしょう?……彼が可愛いのは、あなたが一番ご存じなのですから」



一ノ宮の言葉には、少し、気に障る部分がある。
黒川はグラスに口を付けながらチラリと一ノ宮を伺うと

一ノ宮は黒川の視線を感じながらも、あえて、そちらは向かずに
自分の酒を、静かに飲み続ける。





posted by 白黒ぼたん at 23:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2017年06月12日

焼き鳥屋にて・2







お互い、口数は少ない。
たまに何かを話したかと思えば、仕事の話か、追加の焼き鳥を頼むくらいで
本当は聞きたい事も、言っておきたい事もあるだろうに。

いちいち、言葉にしなくても、解っているというヤツなのだろうけど
それでも確認しておいた方がいいことは、世の中には、多々ある。






「……渡辺の社長からも、…小野寺会長からも、まだ、イツキ君を借りたいと、話があるそうですね」
「……ああ」
「…きっぱりとお断りしても良いのではありませんか。…まあ、仕事に支障は出るかも知れませんが、どこかではっきりさせた方がよろしいでしょう?」
「……ああ、そうだな…」



以前のような「仕事」はしないと公言してみてはいるが、相変わらず、イツキへの誘いは多い。
極力回数を減らし、分の良い条件だけを受けるようにはしているが、する事には変わりはない。



「……まあ、イツキもそんなに嫌がってはいないし、多少なら構わんだろう。
所詮、あいつは、そういうヤツだしな…」

「…………私が手を出せば、怒るくせに……」



相変わらずの暴言を吐く黒川に、一ノ宮は小さな声で反論する。
黒川は一ノ宮をチラリと睨み、空になったグラスに酒を注ぐ。




「今日は、やたらと絡むな、一ノ宮」

「…いい加減、この状況に飽きたという所でしょうか。…イツキ君も、いつまでも、子供でも馬鹿でもありませんよ?」

「そうなんだよなぁ…。ふふ。あいつは馬鹿で、丁度良いんだがなぁ…」





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2017年06月13日

焼き鳥屋にて・終







「ふふ。あいつは馬鹿なくらいで、丁度良い…。

……馬鹿で、子供で。……いつまでも何の疑いもなく、俺の言う事を聞いていればいいんだ。

大人しく。


俺の傍にいればいい…」




グラスに口を付けながら、黒川はぽつりと呟き、
すぐに、しゃべり過ぎたと苦笑する。
煙草に火を付け、二、三吹かすと、灰皿に押し付ける。

自分で何を話しているのか、自覚はあるのだ。
酒に酔った時にだけ零れる本音が、忌々しい。



「……飲み過ぎだな…。……そろそろ、出るか…」



最後の酒を飲み干し、黒川は席を立つ。
スーツの内ポケットから一万円札を出し、「ご馳走様」と言って、テーブルに置く。




「……怖い子ですね、……イツキくんは…」
「……うん?」
「あなたに、こんな話をさせるのですから。……だから、故意に距離を取るのでしょう?」


「はは。…俺が怖いのは、お前ぐらいだよ、一ノ宮」





一ノ宮も席を立ち、最後にそう言うと
黒川は笑って



一ノ宮の胸あたりを、ぽんぽんと手で叩くのだった。






おわり







posted by 白黒ぼたん at 23:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2017年06月16日

昼休みの三人







「大野、今度の模試、行く?」
「光文社の?…ああ、申し込んだ」
「俺も。あと来月の短期集中コースも」



昼休み。食堂にて。
梶原と大野は受験生らしく、それらしい話をしていた。
話に参加出来ないイツキは紙パックのコーヒー牛乳を飲みながら、適当に、間を潰していた。


「……ほぼほぼS判定は出てるんだけど、一番狙いんトコがちょっと足りないんだよなぁ…。…小論文、…苦手だし…」
「斎藤先生の講義、いいぜ。短期集中で取れるだろ?」
「一応、希望は出してるけど……」




とりあえずの目標が、無事に学校を卒業すること、なイツキには、二人の話はよく解らない。
梶原と大野の様子をチラリと眺め、明後日の方向をぼんやりと眺める。
進学も、就職も、少し悩んでみたものの、結局またよく解らないトコロに来てしまった。
一番に、自分がどうしたいのかはっきり決めなければいけないのだろうけど、
決めた、その後の手順を考えるだけで、気が遠くなりそうだった。


何をするにしても、黒川を通さなければいけない。
酒も飲まず、セックスもせず、面と向かい合って真面目な話をするなど、想像するだけで可笑しくなってくる。

そんなイツキを、梶原は横目で眺め

その様子を、大野が、眺めていた。





「……お前はいつも呑気そうだよなぁ…。ちゃんと考えてんのか?」



ふと、大野がイツキに声を掛ける。
イツキはストローを口に咥えたまま、困ったようにはにかみ


「………まあね」


と、言うのだった。




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2017年06月17日

図書室の二人






「もう、イツキの事は気にすんな。お前、それどころじゃないだろう?ここからが、一番大事な時期だろう?



食事が終わり、梶原と大野は一旦イツキと離れ、図書室に向かう。
二人になるやいなや、大野が、梶原に説教を始める。


「……なんだよ、大野、急に…」
「見れば解かんだよ。イツキの事、気にしてるって。…まだ勉強、見てやってるのか?もうそんな時間、無いだろう?」
「……してないよ。したとしても、学校で…ちょこっとだけだよ。別に大した時間じゃない」



どこか不機嫌な様子の大野に、梶原は口ごもる様に答え、図書室の扉を開ける。
図書室の一角には受験生向けに様々な資料が置いてあり、大野と梶原は定期的に、これらの整理をする役目をしていた。

進学や、就職や、関連セミナーの開催告知や…そんなチラシを手にしながら…梶原は小さく息をつく。



「……あいつ。まだ進路、決めてないっぽいんだよなぁ…。なんか、このまま…ニート的な感じで…、あの男の人と一緒にいるみたいなんだよなぁ……」

「だから!…そういう事、考えるなって!……そうだとしても、それがイツキの決めた道なんだろう?だったら、放っておけよ!」



思わず大きい声が出てしまい、大野は慌てて周りを見渡す。
図書室には他に数名、自習をしている生徒がいて、皆、迷惑そうにこちらを伺っていた。

大野はバツが悪そうに俯き、手早く、手元の資料を整える。
期限が過ぎているものなどを回収し、足りないものなどは、奥の棚から補充する。



「……イツキが心配なのは解るよ。……でも今は、自分に集中しろよ。

………頼むよ」



小さな声で、大野はそう、つぶやく。
梶原がイツキを心配するように、大野も、梶原が心配なのだ。
それが解らぬほど、梶原は、馬鹿ではなかった。





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2017年06月18日

部屋で一人







梶原は自分の部屋で一人、黙々と今日の課題をこなす。
一段落すると台所へ行き、カップラーメンを作り、また机に戻る。
狭い公団の一室。テレビ前の座卓が勉強机でもありダイニングテーブルでもあった。


ラーメンを啜りながら、カレンダーを見て、これからの予定を色々確認する。


10月の連休を中心に予備校での短期集中講座がある。
梶原は予備校の生徒ではないが……それは主に経済的な理由からだったが……、一般向けの模試や、集中講座などには参加していた。
やはり自己流の勉強ではムラが出てくるし、情報収集という意味からも、大切なものだった。

志望している大学は…、まあ、圏内かな…という所。
絶対的な自信がある程ではなく、その不安を早く埋めたかった。




それが終わる頃には、学校での面談がある。
普通の進路指導ではなく、特待生への特別なものだ。

梶原の特待生としての条件は、有名大学への合格を含め、模範的な生徒であること。
満たされない場合は、付与された奨学金の返納も有り得る。

面談は、受験を前に、現在の状況を確認するためで、形式的なものなのだが、
それでも学校の役員や理事を前に、話を聞かれるのは緊張するだろう。




「……別に…、普段通り。………大丈夫…、集中できてる。」




自分に言い聞かせるように呟いて、最後のスープを飲み干した。






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2017年06月20日

抱かれたくない男







都内有数のホテルの上階にある、星の付いたレストランで、イツキは
頬を膨らませ、口を尖らせ、明らかに不機嫌な顔を見せる。
食事も終わり、先方が一服と席を立った隙に
恨みがましく、隣の席の黒川を睨む。



「……もう、小野寺さんとは…、関わらないと思ってた……」
「付き合いだ。仕方ないだろう。…今日はメシだけだ」
「……今日は、ね……」



夕方に黒川と待ち合わせ、向かった先には、小野寺がいた。

以前、イツキに執着するあまり、イツキの父親も含めトラブルを起こし、その挙句イツキが家出をしたり、数億規模の仕事を棒に振ったりと、かなりの遺恨を残した相手なのだが、

二年も経てば、表面上は穏やかな関係になっていた。

好きか嫌いかで言えば、当然、嫌いな相手なのだが、
……それはそれ。大人の付き合いというやつなのだろう。



「…また一緒に仕事、してるの?…」
「少し、な。横浜で…、リゾートホテルの開発があって…、元を辿ったら、奴がいやがった…」
「……ふぅん」


イツキは頬を膨らませたまま、そっぽを向き、ふんと、鼻を鳴らしてみる。


黒川の仕事の手伝いを、するのは、……まあ、多少は…、我慢もするけれど……
やはり、抱かれたくない男というのは、いる。
直接受けた傷よりも、数倍の、嫌な記憶が……付随して、思い出される。
神経が逆なでされ、虫唾が走る。すでに、生理的に、受け入れられないのだ。





「…お待たせしたね。…さて、静かに飲める所に移動しようか」




席に戻った小野寺は黒川にそう言い、イツキを見ては、静かに微笑む。
その視線の奥底に冷たい残忍なものを感じ、イツキは小さく、背筋を震わせた。





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2017年06月22日

耳元







「……小野寺さんとは、や。痛いし、長いし、…意地悪ばっかり言う…」
「言っただろう。……ヤらせる気はないよ……」
「……今は、でしょ?……いっつも…、……そうじゃん……」



真夜中。小野寺との会食から帰った、二人の部屋で。
多少酔った身体をシャワーで流し、ベッドに入る。
また、小野寺と、何かがあるのではないかと怪訝になるイツキを、なだめ、すかし、
黒川はイツキの身体に、手と舌を這わせる。



「…マサヤだって、もう、小野寺さんと仕事はしないって言ってたのに。…すごい、怒ってたのに…」
「…そうだな…」
「小野寺さん、俺に…、…胸……、おっぱい…付けるとか…言うんだよ?……なんだか、怖い……」
「はは。…それはそれで、似合いそうだな…」



黒川の軽口に、イツキは解りやすく怒り、キツイ視線を寄越す。
そうしながらも、下の入り口に黒川の指の侵入を許し、小さく息を漏らす。
……流されまいと、すぐに唇を噛みしめ、掴んでいた黒川の腕にさらに爪を立て
精一杯の強がりで、何事も無かった顔をして、黒川を睨む。

何かジェルでも塗っていたのか、ぬるんだ指先が数本、イツキの中で虫のように蠢く。
奥の、ある個所を執拗に擦りあげると、イツキは身体を震わせ、…慌ててまた、唇を噛みしめる。





黒川は、イツキのこの顔が、好きだった。
安易に快楽に身を任せまいと、必死で堪えるものの、簡単に内側から溶け出す。





「………冗談だ。……小野寺にそんな事は、させんよ……」



そう耳元で囁くと、イツキはどこか、感じたようで…、ぎゅっと目を閉じ、小さく震えた。






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2017年06月23日

必要最低限







後から思えば

黒川の言葉は酷く不確かだ。

『小野寺には、そんな事はさせない』とは、言うが

黒川が言う、『そんな事』は、どこから、どこまで…なのか。

おそらく、同意なしに、豊胸手術はさせないにしても。






確かめたくても、すでにイツキの息は上がり、まともな会話が出来る訳はない。
もっとも尋ねてみたところで、今の黒川には、誠実な返事をするほどの余裕はない。


焦れ焦れと、中を犯す黒川の指の刺激に、ついにイツキは物足りなくなり
自分から腰を浮かせ、身体を離すと、拗ねた不機嫌顔はそのままに、黒川の上に乗る。

「……がっつくなよ。…ものには、手順が……」


と、言いかけた黒川に構わず、イツキは勃ちあがった黒川のものを口に含み、舌を絡める。

おそらくそれは黒川の為にではなく、自分の為にだったが
結果としては同じだった。

十分な硬さと、ぬめりを持った所で、イツキはそれを、自分の入り口にあてがう。




「…あっ…あッ……あ……ああッ……」




自分から動いて解っていたはずなのに、思いのほか大きな声が出てしまう。
自分ばかりが良くては、なんだか恥ずかしいので…イツキはチラリと黒川の様子を伺うが

黒川も、ほぼ変わらない様子だったので、安心する。









「………マサヤは、………ちゃんと、俺のこと……、護ってくれるの?」



喘ぎの合間に、ついでのように、必要最低限の質問をすると、黒川は



「……くだらん。……当たり前の事を聞くな。………そんな暇があるなら、もっと、ヨガれよ……」



そう言って、イツキの腰を掴み、自身の腰を突き上げ、激しく中を揺するのだった。






posted by 白黒ぼたん at 14:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2017年06月26日

距離







二時間目が終わった辺りに、遅刻のイツキはこっそり教室に潜り込む。
目が合った梶原に照れ笑いを浮かべ、自分の席に座り、カバンから缶コーヒーを出す。
何も話が出来なかったのは、すぐに次の授業が始まったためだった。


『朝帰り?黒川さんと、シてた?』


授業中に際どいメッセージを寄越すのは、清水。
あえて返事はしなかったが、少し動揺してしまったのは、イエスと言う事なのだろう。
斜め後ろに座る清水をチラリと睨む。


午前の授業が終わり、昼休み。
いつものように梶原の傍に行き「…今日のランチ、何だろう?」と尋ねる。
梶原は素っ気なく「……さあ」と答え、「…ゴメン、俺、ちょっと図書室」と言う。

ノートやら教科書をガサガサと持って、教室を出てしまう。
廊下の向こうでは、大野が立っていた。






「…メシ、一人とか、珍しいな」

食堂の片隅でサンドイッチを食べていると、清水が声を掛けて来る。

「……先輩。…授業中に変なメール、止めて下さい」
「…はは。図星なんだろ?………今日はあいつら、いねぇの?」

清水はイツキの向かいの席に座り、いつもは我が物顔で隣にいる梶原と大野の姿を探す。


「今日は別です。なんだか、忙しいみたいです」
「…ふぅん。……イツキ、首筋、キスマークついてるぜ?」
「……ついてませんってば!」


そう言いながらも、慌てて首筋を手で隠すイツキを、清水は声を立てて笑う。





端から見れば楽し気な二人のやり取りを

少し離れた食堂の向こうから、梶原は、眺めていた。





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2017年06月29日

19時の話






19時に来いと黒川から連絡があり、事務所に向かうも
扉を開ける前から、何か、嫌な感じがしていた。
複数の人の気配がするし、ガタンと時折、大きな音もする。


「……何、してるの?」


扉を開けて最初に目に飛び込んで来たのは
ソファに横になる半裸の女性と、おそらく、その女性を犯している若い男。
近くには西崎が立っていて、デスクには、黒川の姿もあった。



「……なんだ、早いな」
「…マサヤ、19時って…」
「ああ?…9時だ、馬鹿。……まだ取り込み中だ、出直せ」



どちらが間違えたのかは解らないが、とにかく、来る時間が早かったらしい。
イツキはどうしたものかと少し呆然としてしまったが、ここにいても仕方なさそうなので、
…ぺこりとお辞儀をして、事務所を出ようとする。

ソファにいた女性が慌てて半分身体を起こし、イツキを見る。
『たすけて』と言ったようにも聞こえたが、生憎口にはガムテープが貼られていたので
、よく解らなかった。






時間が余り、イツキは近くのコンビニに行く。
コーヒーとアイスクリームを買い、店内のイートインで食べる。
食べながら、自分も昔、あんな風に、事務所で無理やり乱暴された事を思い出す。

そして酷く、憂鬱な気分になるのだった。





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