2017年06月30日

9時の話






約束の時間の少し前に黒川から電話が入る。
今、いる場所を聞かれたので、近くのコンビニだと答えると、ほどなくそこに黒川が現れる。
イツキが食べていたアイスの容器を見て、馬鹿にしたように鼻で笑う。


「…これから焼肉だぜ?…そんなもん、食うなよ」
「……何、してたの?」
「…うん?」


黒川は飲みかけだったコーヒーを手に取り、口をつけるも…甘すぎるそれに顔を顰める。
イツキは視線を向け、普通の様子の黒川に怪訝な表情を浮かべる。


「何してたの?…あの、女の人に…」
「ああ?…見た通りだろ。…お前も良く知ってるだろう」
「マサヤも、…した?」
「なんだ、ヤキモチか?」


イツキの言葉をまともに取り合う気もなく、ましてや、なぜイツキが不機嫌なのかに気付くこともなく、
黒川はコーヒーのカップをゴミ箱に投げ入れると、「行くぞ」と言って、背を向ける。


仕方なくイツキは、その黒川の後を追う。





あんな風に人を扱う事を、黒川たちが生業にしている事も
かつては自分も、ああやって扱われていた事も、

そして多分、今は、自分はそうはされない事も、頭では重々解ってはいるのだけど




それでも、
事務所のソファの上で無碍に身体を開かれ、助けを求めた女性の眼差しが、どうにも忘れられなくて、

その後の焼肉は、すっかり、味のないものになってしまった。





posted by 白黒ぼたん at 23:25| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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