2017年07月03日







真夜中に目が覚めてしまい、イツキはベッドから抜け出して、キッチンへ向かう。
水道の水を一杯汲み、立ったまま一気に飲み干してみるが、喉はまだ張り付き、痛い。
汗を掻いたのか、シャツの首元が濡れている。

嫌な夢を見たのだろう、どうにも気分が落ち着かなかった。





事務所で乱暴される女性を見て、味の無い焼肉屋に行き、
何事もなかったように二人の部屋に戻り、セックスをした。

あまり気乗りがしないのは、少し酒に酔って、眠たいから…という事にした。

勿論黒川はそんな事にはお構いなく、イツキの身体を開き、こじ開け、捻じ込む。
逃げる訳ではないけど何かに捕まりたくて、手を伸ばしてシーツを手繰り寄せる。


黒川は、そのイツキの手に、自分の手を重ね、指を絡める。

黒川の手はイツキよりも大きく、押さえつけられてしまえば、自由に動くことも出来ない。

うつ伏せのまま、そのまま後ろから貫かれていると、まるでピンに留められた昆虫採集の虫になった気がする。


こうしていると、昔、自分が事務所で犯されていた時と、状況はあまり変わっていない気がする。






水をもう一杯飲んで、溜息を付いて、イツキは寝室に戻る。

ベッドに上がると、多分、本当に眠っているだろう黒川が腕を動かし

イツキの眠る場所を、空けてやるのだった。





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2017年07月04日

今日は一人







放課後。
他のクラスに立ち寄り時間を潰していた清水は、帰り際、何気に食堂の脇を通り抜ける。
もう食事が出るわけでは無かったが、まばらに人が座り、自動販売機のお茶など飲みながら雑談をしていた。

その一角に、イツキが、独りぼっちで座っていた。




「……どした?」
「……あ。先輩。……今、帰りですか?」



清水が声を掛けるとイツキは顔を上げ、ぺこりとお辞儀をする。
見ればテーブルには教科書やノートを広げ、真面目に勉強をしているようだった。



「何?…居残り?」
「そういう訳じゃないんですけど…。覚えている内に、終わらせちゃおうかなって…」
「こんなトコで?」
「少しザワザワしてた方が、何となく、落ち着くんです」



そう言ってイツキはニコリと笑う。
清水は向かいの席に座り、手元の、イツキのノートに目をやる。
少し癖のある丸っこい字が並び、赤ペンで矢印やチェックなどが書き込まれている。

清水がそれを見ている事に気付くと、イツキは恥ずかしそうに、ノートを手で隠す。



「……解んないとこ、結構あって。…面倒臭くって…」
「はは。…つか、なんでこんな時に梶原、いねーの?……いつも一緒にくっついてるくせに」
「梶原は図書室にいると思いますよ」
「……ん?……」




実を言えば、学校内でイツキが一人でいることの方が稀だった。
いつもは梶原は保護者のような顔で、イツキの隣を独占していると言うのに。



「……梶原も、もう勉強、大変な時期だし。……あんまり、俺といない方が、良いんです…」





そう言ってイツキは、静かに、寂し気に、微笑むのだった。



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2017年07月05日

曖昧






下校を促す校内放送がかかり、イツキは帰り支度を始める。
清水はしばらくの間、イツキの向かいに座り、一緒に帰ろうだ、遊びに行こうだと誘っていたのだけど、
あまりにイツキが素っ気なくするものだから、諦めて先に帰ってしまった。

食堂を出て昇降口へ向かう。
その先に、人影と、聞き覚えのある声がして、思わずイツキは壁際に身を潜めた。



「……まあ大丈夫だとは思うけどね…。書類はほぼほぼ…、順位も持ち直しているし…」



そう話していたのは加瀬で、相手は、梶原だった。



「…はい。…あの、今度の面接って、…どんな感じなんですか?」
「ウチの会長と、理事と…あと姉妹校の理事と。まあ、形だけだよ。普通にしていれば大丈夫。……だと、思うよ」
「……はい。……緊張しますね…」


加瀬は軽く笑い、梶原の肩をポンポンと叩き、向こうへ行ってしまう。
梶原は頭を下げた後、深いため息を付いて、自分の下駄箱に向かう。

そこで、下手糞に身体を半分隠していたイツキと目が合った。



「……え?……あ?……、なんでこんな時間までいるの?」
「……課題、……やってた。……食堂で……」
「食堂で?……図書室来れば良かったのに、俺も、大野も…さっきまで……」
「うん。……まあ、……うん、平気……」



イツキは自分の下駄箱から靴を出しながら、そう

曖昧に答えて、曖昧に微笑むのだった。




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2017年07月08日

帰り道






一緒に帰るつもりではなかったけれど
駅までの道が一緒なので、とりあえず並んで歩く。
最近、あまり、話す機会のない二人は、奇妙に緊張する。
付き合いたての恋人か、別れたばかりの恋人か、そんな感じ。



口火を切るのはイツキ。

「……加瀬さんと、話してた。……面接が…あるの?」

どうしても気になった事を尋ねる。



「え?……あ、ああ。……ほら、俺、特待生だから。……ちゃんとやってますか?って確認だよ」
「…大変そう。…大学も、受からないとダメなんでしょ?」
「まあね。ああ、でも、平気。俺、結構、頑張ってるから」



「……ごめんね。俺が加瀬さんとまだ付き合ってたら…、少しは、役に立てたのに……」



ぽつりと呟いた最後の言葉は、幸い、梶原には届かなかった。






そんな話をするうちに、あっという間に駅についてしまう。
今までなら、梶原は、一緒にメシでも食おうだの、家まで送るだの、少しでもイツキと一緒にいるための最大限の努力をしたのだけど

それすら、迷う。

そんな戸惑いを察したのか、イツキは軽く手を振って「じゃあね、梶原」と、足早に改札を通り過ぎてしまった。





イツキの背中を見送る、その時になって初めて梶原は

自分が、自分の勉強の為にイツキを遠ざけている以上に

イツキが、自分の事を心配して、距離を取ってくれているのだと気付いた。




posted by 白黒ぼたん at 00:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

脆弱イツキ







その夜のイツキは何故か、酷く、脆かった。
接待と称し、黒川を交え、顔なじみの客と酒を飲んでいたのだけど
黒川は、『どちらでも。お前の好きにしていいぜ』とイツキに耳打ちし、消えてしまう。
イツキの判断に任せると、イツキの気持ちを尊重するると、そんな優しさを装いつつ
この状況では、選択肢など、一つしか残されていない。




酒に酔い、ふらつき、介抱されながら手洗いに行くと
いつの間にか寝室に通されていた。
違う、と言おうと口を開くと、すぐさま男の口で塞がれ
帰る、と、歩き出すも、そのままベッドへと押し倒された。


「…ちがう。……おれ、きょうは…、……しない」
「………ふふ。………そう?」


するりと男の手が、イツキのシャツに滑り込む。
交差させるように重ねた脚が、イツキの股間を擦り上げる。
首筋を舐め、耳たぶを噛み、耳の穴に舌を入れ、ぴちゃぴちゃと音を立てる。



「……可愛いな、イツキ。今日は、…俺のものになれよ」



そう言われてしまうと、イツキはもう、駄目だった。




「………や…」




と、最後に一言、微かな抵抗の言葉を漏らしたものの、身体中の力が抜ける。


イツキの腕は男の背中に巻き付き、その肌の熱に心酔し、快楽の波に飲み込まれて行くのだった。








パイレーツオブカリビアン見てたら
なんだかイメージが海っぽくなっちゃった・笑
posted by 白黒ぼたん at 23:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2017年07月09日

想定外






翌日昼下がり。
黒川がマンションに立ち寄ると、イツキは丁度風呂から上がったところの様で
髪の毛を拭きながら、リビングのソファに座っていた。
聞けば、夜中にはこちらに戻り、一眠りして、先ほど起きて来たのだと言う。



「…どうせ、ヤって来たんだろう?」


いつもの、解りきった、馬鹿にした表情で黒川は尋ねる。
自分からそう仕向けたのだ。勿論、それを怒るつもりは無い。ただ、

不本意ながらそうなってしまった時の、イツキの、拗ねた、落ち込む顔が好きだった。




黒川は冷蔵庫から缶ビールを2本取り、リビングのソファに向かう。
イツキを端に寄せると、自分もそこに座り、イツキの目の前にビールを1本置いてやる。
灰皿を引き寄せ、煙草に火を付け、一服する。
そして自分のビールを開け、傾けながら、隣のイツキをチラリと見遣る。


けれどイツキは黒川を見ることもなく、タオルで髪の毛を拭いていた。
首筋には隠せない、夕べの愛撫の跡が残されている。



「…どうした?疲れて声も出ない程、良かったのか?」
「………そうだね、良かったよ」
「…うん?」



軽口に、予想外の答えを返され、黒川は少し驚く。
イツキは…何かを思い出しているのか、髪の毛を拭く手を止め、はにかんだ笑みを浮かべる。



「……優しくしてもらっちゃった。……俺、たまになら、……あんなの、いいかも知れない」
「………は、は。……誰でもいいのかよ?……さすが淫乱だな」

「だって、マサヤは、してくんないでしょ?」




イツキはそんな事を言って、ソファから立ち上がり、洗面所へと行ってしまうのだった。







黒川、内心、大慌てです
posted by 白黒ぼたん at 23:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2017年07月12日

短い話








洗面所で鏡に向かうイツキを後ろから抱き締める。
首筋にキスをしながら、留めたばかりのシャツのボタンを、ひとつひとつ、外していく。

「……おれ、……向こう、帰る。……明日、学校あるもん…」
「行くなよ。優しくして欲しいんだろう?……お前の好きなだけ、くれてやるよ?」
「……ずるいなぁ、……マサヤ…」

肌蹴たシャツの隙間から手を差し入れ、素肌に指先を這わせる。
鏡に映るイツキは顔を俯かせ、黙って、俺の手に弄れている。
腰より下に手を伸ばそうとすると、一応、抵抗するように、俺の手に自分の手を重ねてみたりする。
もっとも、構わず、股間を握ると、そこは程よく熱く膨らみ、イツキもまんざらではない事が解る。







「イツキ」







そう呼ぶ、自分の声で目が覚めた。
事務所のデスクで、うとうととしていたらしい。
ソファにいた一ノ宮が何事かとこちらを向いたが、何もなかったかのように取り繕う。




先刻、イツキを一人で帰した事を、後悔している訳でもないだろうが




こんな夢を見るなど、俺も、相当、イかれて来たのだと思う。






posted by 白黒ぼたん at 00:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

夜の駅前







夜の駅前でバッタリ、清水は梶原と出会う。
清水はフラフラと遊び回り、これから馴染みの店に行く途中で
梶原は参考書を探しに大きな書店を回り、今から、家に帰るところだった。


お互い顔を見合わせ、軽く顎を突き出すだけの挨拶で、すれ違ってしまっても良かったのだけど、
うっかり立ち止まってしまう。
そして、丁度目の前にはラーメン屋があり、豚骨の匂いが二人の空腹を煽った。




「大変だよなぁ、受験生。お前なんて、どこでも楽勝なんじゃねぇの?」
「…そんな事ないっす。……あ、俺、味玉チャーシューダブルで」
「俺、全部乗せ。ギョーザ2枚。……な、あいつは?……進路、決まった?」
「……さあ。……でも、まあ、色々考えてるみたいっすよ……」


話す内容と言えば、もちろん、イツキのこと。
全ての手の内を晒し、情報を共有することは出来ないが…それでも小出しに、様子を探る。



「お前さ、自分のおベンキョーも大事だろうけど、……あいつの事もちゃんと見てやれよ?」



目の前に置かれたギョーザの皿を一枚、梶原の方に寄越し
清水は、そう言う。

今までは、保護者面してイツキの傍にいた梶原を、どうにかして引き剥がそうと躍起になっていた清水だったが
ここ最近のイツキの、少し寂し気な様子を見てしまうと、そうもしていられない。



梶原は小皿を2枚並べ、ギョーザのタレを作り、ラー油の小袋を取る。
『イツキのことは、俺がちゃんと面倒見てます』と、すぐに答える事が出来ないのは


確かに自分に、後ろ暗い所があるからだった。





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2017年07月14日

夜の駅前・2






「…俺、今ちょっと勉強とか…大変で…。イツキとあんまり…一緒にいてやれないかなって…、なんか、勝手に思ってたんだけど…

気が付いたら、あいつの方が、俺に気を使って…、…俺から距離を取ってる」



梶原はラーメンを啜りながら、まるで独り言のように、話し始める。
イツキの事は、誰にも話せない。
話せないからこうやって、清水の前でだけ、ぽつりぽつり、呟く。



「……学校も休んでばっかりだし、勉強もギリギリだし。いつもフラフラ、なんだか危なっかしくて、
…だから俺、あいつの事助けてやろうって、……守ってやろうって思ってたけど…

なんか、違うのかな。……あいつ……」


箸の先にチャーシューを挟んだまま梶原は向こうを見て、次に続くうまい言葉を探す。
清水はギョーザの小皿にラー油を足しながら、梶原をチラリと見て、ふふと鼻で笑う。



「あいつ、馬鹿なくせに、だろ?」
「ば、馬鹿?……ち、違いますっ」
「あはは。解る解る。……あいつ、馬鹿なくせに、いっちょ前に人の心配、すんだよなぁ…」


ギョーザを食べ、ラーメンを啜り、清水は声をあげて笑った。



「…イツキはさ、自分の事で手一杯なくせにさ、…人のことまで、…考える。
……相手を護るために、自分は身を引いて、チョー、崖っぷちで、落っこちても構わないって感じで。

……うっかり手を放すと、……見失う。

それで自分が護られてると気が付いたときには、もう、遅い……」




今度は清水が、そう、呟いた。
梶原と状況は違えど、同じように、イツキと距離を取ってしまった事を
今は、酷く、悔いているのだった。





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2017年07月18日

夜の駅前・終








「ギョーザは俺のオゴリ」
「いやっ、俺が食べたんだから、俺が払います」



会計の前に少し揉め、結局自分が食べた分は自分で支払い、店を出た。
夜の駅前は独特の賑やかさで、人混みのどこかにイツキがいるのではないかと、眺めてしまう。


「……梶原」



呼ばれて梶原が顔を向けると、清水は煙草を口に咥え、火を付ける所だった。
あまりに違和感のない様子に、梶原は、たしなめる事さえ忘れてしまう。


「…あいつの事、見てやれって言ったけど、…お前も、気を付けろよ?
離れてても、傍に居過ぎても、駄目だ。巻き込まれる。
ヤバくなったら、速攻で逃げろ。それでも…、あいつを、傷付けるなよ?」

「………よく、意味が解らないです……」
「…ああ、……そうだな…」


清水は自分でも整理がついていないと言った風で、紫煙を吹かすと、頭をガシガシと掻いてみる。
そして、梶原に「……飲みに行くか?」と誘うのだけれど、当然それは断り、


二人は、その場で、別れるのだった。





清水は、一度でもイツキの手を離してしまった事を後悔していたし
梶原は、このままイツキと離れてしまう事を危惧していた。

生半可に残るイツキへの想いが、間違いなく今後の火種になると

この時にはまだ誰も、知りようが無かった。





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2017年07月21日

小話「寝ぼけイツキ」







よしむらさんはすき。



優しいし、俺を大事に扱ってくれる。
頬を叩かれる事も、髪を掴んで引き倒す事もしないし
ボタンが飛ぶほど乱暴に、服を脱がされることも無い。

夜景が綺麗なホテルの部屋で、甘いデザートワインを飲んで、
頭を撫ぜられて、親指の腹で唇に触れられたら

キスもしていないのに、お腹の奥が熱くなって、もぞもぞしてくる。



「……吉村さん。……そんなに舐められたら、おれ、溶けちゃう……」



愛撫も丁寧で、優しくて、ちょっとしつこい。
気持良すぎて、ねむくなっちゃう。
吉村さんは、おれに会いたくて、抱きたくて、会いたくて、抱きたくて
ずっと待ってたんだって、言う。



おれを、抱ける、条件は、なんなんだろう。
マサヤに、すごい、良い事をしたひとは、一発クリアで。
あとは、細かく、点数を稼ぐ、とか。


たぶん、スタンプカードがあって
10個ぐらい、スタンプが溜まると、2時間無料。
カードが5枚で、ひとばん貸し出しオッケー……

とか……。





「………よしむらさんは、……何枚目?」
「…は?」
「……カード。……マサヤが、……スタンプ、押すの………」




そう呟いてから、突然、
自分が何を言っているのか訳が分からなくて
酷く、驚いて。


吉村さんは、俺を抱きながら、大笑いしていた。





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小話「駄目な男」






部屋に帰るとマサヤがいた。
薄暗いリビングで、お酒を飲んでいた。

「……ただいま」

と声を掛けても返事は無い。
俺は別に気にもしないで、風呂に入ろうと洗面所に向かった。





「……どうだ?……吉村は良かったか?」
「………っ」

鏡に向かって服を脱いでいたら、突然、後ろからマサヤが抱き付いてきた。
首筋に顔を寄せ、手は、シャツのボタンを外そうとしていた俺の手に、重ねられる。
鏡に映るマサヤは髪の毛もボサボサ、目が据わり、息は酒臭い。
ただの酔っ払いで、自分の指示で吉村さんに抱かれてきた俺に、絡む。


「どうせまた、みっともなく喘いで来たんだろう?……ふふ」
「……マサヤ、……飲み過ぎ?」
「お前は吉村の精液まみれだな。…臭い」

言いながら手を、俺の胸に這わせる。
指の腹で乳首を撫ぜ、摘まんで、捏ね回し……爪を立てる。


「…イタ。……痛い。……マサヤ、……意地悪。
吉村さんは、優しかったよ?
気持良くて、俺、寝ちゃいそうだったもん……」
「馬鹿か、お前…」



抱き締める腕の力が強くなる。
後ろに、マサヤの股間が当たって、ドキリとする。
鏡越しに、鋭い視線で射貫かれる。


「寝るほど退屈なセックスで、お前が満足するのかよ」


マサヤは、俺の耳たぶに噛みつきながらそう言って、笑った。






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2017年07月23日

波紋







昼休み。
委員の仕事や何やらで、忙しなく動いていた梶原が教室に戻ると、
イツキは自分の机に突っ伏して、うとうと、昼寝をしているようだった。
午後の日差しがカーテン越しに、穏やかにイツキに注ぐ。
そこだけ世界が違うようで、梶原は思わず息を止めて、見入ってしまう。


別段、何の下心もない風に装って、空いていた前の席に座る。
気配で、イツキの瞼が二、三度、ぴくりと動く。



「………梶原?」
「…お、おお。……悪い、起こしちゃった?」
「寝てないよ。……半分だけ…」



半分だけ眠っていたという事なのか、意味はよく解らない。
イツキは一度目を開け、梶原を見てニコリと笑い、また目を閉じる。
顔に掛かる茶色い髪も、どこか濡れたような質感の赤い唇も、何もかもが
相変わらず、梶原の心を掻き乱す。

勉強に打ち込むためにと、距離を取ってみたけれど。
それでも無碍に遠ざけたくないのは、清水の言葉が、引っ掛かっていたからかも知れない。



「……ちゃんと昼メシ食ったのか?……食堂、まだ間に合うぜ?」
「…さっき、サンドイッチ、食べた。……玉子の…」
「そっか…」




二人の会話はそれ以上続くことは無かったけど、
午後の日差しの中、傍に座っているだけで
なんとなく、心に寄り添えているような気がした。





イツキが、好きだと、






確かな気持ちが波紋のように、梶原の胸に広がっていた。




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2017年07月25日

小さな約束







10月の連休を挟んで4日間、梶原は予備校の集中講座に参加していた。
午前に3時間、合間に休憩と自習を挟んで、午後には5時間と、ハードな内容だったが、
常日頃、自己流で勉強を続けている梶原には、ありがたい機会だった。


「……俺はもうウンザリ。あと2日も耐えらんない」


飲食が出来るラウンジで、買って来たコンビニの弁当を食べながら
大野は盛大な溜息をつく。
大野にしてみれば普段の予備校生活が、さらに強力に延長されたわけで
もう、辟易としていると言った様子だった。


「…ちょっとさ、息抜きしねぇ?……帰り、どこか、寄ろうぜ?」
「大野。今、頑張り時って言ったの、お前だぜ?」
「そうだけどさ、物には限度ってモンがあるだろう?俺、もう、パンパン」
「あと2日じゃん。とりあえず、集中しようぜ」


もっとも至極な事をいう梶原に、大野は観念したように項垂れ、残りの弁当を口に運ぶ。
梶原はその様子を見ながら、小さく笑い、自分も、弁当を食べる。







梶原は、イツキとある約束をしていた。
この集中講座が終わったら、イツキの勉強を見るという名目で、どこか時間を取ろうと。
自分の家でも、ファミレスでも、少しのんびり食事でもしながら、一緒に過ごそうと。



その事を思うだけで
今の時間は頑張れる。
単純かも知れないが
イツキとの約束は梶原の、原動力になっていた。






イツキは梶原のやる気スイッチ…
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2017年07月27日

合間







『……あ、イツキ。…悪い、こんな時間に。あのさぁ、俺、約束、明日って言ったっけ?』
「…………ん?…………なに?、……かじわら…」
『え、ほら。夜、一緒に勉強しようって言ってたやつ…』
「…………ん?」



夜の8時ごろ。
梶原は予備校の合間の時間に、イツキに電話をする。
約束の確認をしたかったのだが、電話の向こうのイツキはどこかぼんやりとしていた。


『…あのさ、明日もちょっと忙しくてさ。…明後日でもいいかな?』
「……うん。……いいんじゃない…」
『あはは。お前、眠そうだな。…じゃあ、明後日。学校終わってから、どっか行こう。…じゃ、またな』
「…………ん」



消え入りそうなイツキの声の後、電話は切れた。
梶原は少し気になったものの、すぐに次の講座が始まってしまうと、自分もケータイをしまい、教室に戻った。












イツキは、腕をだらりと垂らす。
持っていたケータイが、床に落ちる。

一度、汗を流しにバスルームに行っていた男が、また、イツキが横たわるベッドに戻る。

うつ伏せのまま肩で息をするイツキを見下ろし、ニヤリと笑うと

「…さて、次は何で遊ぼうか?」

と、言った。


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