2017年08月25日

黒いスーツのイツキ






『四の五の言わずに、来い』

と、黒川から横柄な電話があった、すぐ後に
梶原から電話が掛かって来た。
イツキはもう、返事をするのも面倒くさい様子で、それをあしらい
通話を終えたケータイをソファに投げ、大きなため息を付く。




「………着替えなきゃ……」



自分に言い聞かせるように、そう呟き、動き出す。
今は何も考えられないイツキは、とにかく、ひとつ、ひとつ、決まった事をやって行くしかない。


黒いスーツは、昨日脱ぎ捨てたままの形で、洗面所に転がっている。
シワだらけだし、確か、ボタンも飛んでいたので
イツキはクロゼットから、予備のスーツを持って来る。
「仕事」で着る服は何着かあり、クリーニングのビニールを掛けられたまま出番を待っている。


「……最近、……多い。……洗濯、間に合わないね…」


イツキはそう言って自嘲気味に笑い、スーツに袖を通した。









「何だ、スーツで来たのか?……今日は違うぞ。
……それとも、抱かれる気、満々なのか? はは。仕事熱心だな」



約束の時間に事務所にやって来たイツキに、黒川は相変わらずの軽口を叩く。
イツキは、もう反論する気もないといった感じで


後ろ手に、ぱたんと閉じた事務所の扉に、そのままもたれかかり、俯いたまま




「仕事で、いいよ。今日は、誰と、ヤルの?」

と、言うのだった。




posted by 白黒ぼたん at 22:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2017年08月28日

決壊







憮然とした表情。
俯いたまま、足元の一点だけを見つめるイツキ。
黒川は仕事の手を止め、イツキを見遣る。
どうせまた、拗ねて、愚痴を零しているのだろうと、鼻で笑う。



「…仕事は、また今度だ。…寿司と焼肉、どっちがいい?」
「……じゃあ、マサヤとヤルんだ。……そういう、仕事、でしょ」
「……うん?……何を言っているんだ?」
「もう全部『仕事』でいいよ。……俺、……そういう子で、いい」



ぽつりぽつりとそう吐き出して、イツキは泣き出すのを我慢するように、肩で大きく息をする。
黒川は煙草に火を付けながら、いつもとは多少様子の違うイツキを、いぶかる。
……ここ暫く続いてしまった仕事を、恨んでいるのだろう。もちろん、小野寺絡みという事も、気に入らないのだろう。
イツキの不満は重々解ってはいるが、あまり黒川にも、それに付き合ってやる余裕はない。



「悪かったよ。拗ねるなよ。……ここの所、少し、続いたな…。
……お前が、大人しく行ってくれて、助かったよ。……しばらくは、ナシにするから、な?」



黒川はデスクから離れ、イツキの傍に立つ。
宥める様に優し気な声を出し、イツキの顔を覗き込む。
けれどイツキは身を固くするばかり。
一歩後ろに後ずさり、扉に、張り付くように身を寄せる。


「…イツキ」


黒川は、キスの一つでもして、このやりとりを終いにしようと
イツキの頬に手をやる。
けれど、イツキはその手を払い除け、意を決したように黒川を睨む。




「……マサヤが、優しのか、優しくないのか、解んない。
……結局、他の男んトコに行かされて、エッチされるんなら…、…もう、そんな子でいい。
最初っから、そういう子だって思ってたら、守って欲しいとか、大事にして欲しいとか、考えなくていいもん。
……昔みたいに、商品として扱えばいいよ。……どうせ今と一緒だよ。
マサヤだって、本当はそんな風に思ってるでしょ?」





posted by 白黒ぼたん at 21:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2017年08月29日

ヒステリック






「……なんだよ、『そんな子』って」

「…いつも、みんな、言うじゃん。…俺のこと。簡単にヤれて、始まれば止まんなくて、自分から腰振って、咥え込んで…。
写真もビデオも大股開きで大売り出しだよ。俺の知らないとこで、みんな俺のこと笑って、次にヤル順番、待ってるんでしょ!……だから…」


堰を切ったように日頃の不満が溢れ出す。
一息つくと、涙が出るのを堪えるように目を見開き、口を真一文字に結ぶ。
これだけ、イツキが、黒川に口ごたえをする事は実は稀なのだけれど


残念ながら黒川には、まだ、その危機感はない。



どこか馬鹿にしたように、薄く笑う。




「まあ、そうだな。確かに、大売り出しだな…、ふふ。
今更、どうした。そんなの、今までだって散々言われて来ただろう?
小野寺の所で、マワされたか?気の毒だったな。
いい加減、機嫌を直せよ。3,4人、相手にするくらい、別に大した話じゃないだろう」

「2人だよ、2人で十分だよ!俺が、どんなにヤな思いしたかなんて、マサヤには、解んないんでしょ?
もう、俺のこと、気に掛けるフリなんてやめてよ。
護ってくれないなら、俺のこと、放っておいてよ。
……マサヤに、ちょっとでも期待しちゃう、俺が、馬鹿だよ。

もう、……嫌! ………だったら、もう、全部、ナシにする!……もう、嫌!」



イツキはヒステリックに声を荒げ、目の前の黒川を少しでも遠ざけようと腕を突っ張る。



黒川は、いつまでも訳の解らない事を喚き散らし、自分を拒絶するイツキが
少し、煩わしくなっていた。



posted by 白黒ぼたん at 21:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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