2017年10月02日

小休止







特に何の変化もなく、3,4日経った頃。
イツキの部屋に突然、黒川がやって来た。
時計はすでに夜の11時を回り、風呂にも入り、もう寝ようかというところ。
物音に気付いたイツキがベッドから身体を起こすと、寝室の扉が開き、黒川が現れた。




「…………なに?」
「ここだって俺の部屋だ。文句は無いだろう」
「……あ、………そう……」




黒川はスーツの上着だけ脱ぐと、ベッドの、イツキの隣に入ってくる。
イツキは思わず背を向け、壁側を向いて、身体を丸くする。

この部屋のベッドはセミダブルで、男二人で寝れば、どうしたって身体が触れる。
普段は心地よい互いの温もりも、今はただ、何かの枷か楔のようで、重い。


いる、という事だけでも、オオゴトで大問題なのだ。





イツキは、黒川の横暴も暴力も許すつもりは無かったので、とにかく、無視を決め込む。
自分から折れ、和解に向け歩み寄る事はしたくない。

黒川は、何を考えているのか良く解らないが…、例えどれだけ自分に非があろうと、自分から素直に謝罪をするような男ではないだろう。




結局のところ、この夜の二人は、
互いの体温を感じながら、眠りに落ちてしまうだけ。

いつの間にか寝返りを打って、身体が向かい合ってしまい



目覚めて、慌てて、また背を向けるのだった。






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2017年10月03日

我慢大会






昼過ぎにイツキが目を覚ました時には、もう部屋に黒川の姿は無かった。
少しは、まともな話をしようかと、少しは、思っていたので…
残念、というよりは、腹立たしい気持ちになった。


「………むかつく…、………あいつ……。ヤれれば、どうでもいいって感じ……?」


そう呟いて、毛布を頭まで引き上げて、深いため息を付いた。






明け方に、うっかり、身体を交わらせてしまった。
生理的に身体が反応してしまう時間帯だったし、寝ぼけていて頭が働かなかったし。

気付いたらもう始まっている状態では、なかなか、拒むことも出来ない。
ねっとりと乳首を舐められ、指でくちゅくちゅと、下の穴を弄られる。
一応、「嫌」と言って、黒川の髪の毛を掴んでみたのだけど

『……仕事なら、ヤれるんだろう?………そう、思っていろよ』

そんな憎たらしい事を言うのだった。



『……あ、……そう。………じゃあ、……我慢する…』
『…ああ』



色気のない会話を重ねながらも、思う以上に愛撫の手は優しく丁寧で
イツキの呼吸は、早くなる。
うつ伏せに寝かされ、舐められ、溶かされ、……入り口に塊を押し当てられて



イツキが我慢するのは、黒川の名前を、呼ばない事だった。






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2017年10月05日

忘れ物







一ノ宮が事務所で細かな仕事を片付けていると、イツキが顔を出す。
最初は扉を少しだけ開け、中をキョロキョロと伺い、
「……マサヤ、…いる?」と尋ね、一ノ宮が「いいえ」と答えると
安心したように微笑んで、中へと入って来る。


「どうしましたか?」
「……これ。……マサヤの忘れ物」


ぶっきらぼうにイツキはそう言って、紙袋を差し出す。
そこには先日、イツキの部屋で黒川が脱ぎ捨てた、スーツの上着が入っていた。


「…おや。イツキくんの所に行きましたか。……何か話は出来ましたか?」
「なーんにも。突然来て、……勝手に帰っただけだよ。……これ、あると、取りに来ちゃうかも知れないから、持って来た…」


そう言って、笑う。
一ノ宮がコーヒーを勧めたのだが、黒川が戻ってくると厄介なので、すぐに帰ると言う。


「……まだ、駄目ですか…。……多少は、反省しているようですけどね…」
「まさか! 全然だよ。……この間も『仕事』だったし。…結局、俺は、そういう扱いって……事でしょ……」



少し寂し気なイツキの口調。
…本当は、そんな事を望んでいるわけではないと、自分でも知っている。

あの日、黒川に、『昔のように、ただの商品として扱えばいい』と言ったのは、半分は本当で、半分は嘘で。




「……『仕事』するって…、自分で言っちゃったから…、いいんだけどさ。ただ、ちょっと…さ、……程度ってもんがあるじゃん……。

……小野寺さんは、……嫌い。………それぐらい、ワガママ言っちゃ、駄目だったかな……

ちょっとだけでもマサヤに……、気にしてて欲しかっただけなんだ………」





イツキはそれだけ、独り言のように呟いて、一ノ宮にぺこりと頭を下げて、事務所を出て行った。



一ノ宮は深いため息を付いて、すれ違ってばかりの二人の今後を、案じた。







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2017年10月06日

残念な男







しばらくして、黒川が事務所に戻って来る。
一ノ宮に、イツキが来た事を告げられ、ふんと鼻を鳴らして、上着を受け取る。


「……雅也…」
「ああ、もう、解ってる。何も言うな。…ちゃんと考えているよ、はい、はい」



これ以上、小言を聞かされるのは御免という風に、黒川は手の平を一ノ宮に向ける。
一応、このままではいけないと、解ってはいるのだ。
それでも、『仕事』も含め、今までの生活をそう簡単には変えられない。


イツキは馬鹿で可愛くて、愛しい。
自分よりはるかに下の、好き勝手に使える駒で、貴重で、大切で、かけがえがない。
大事にして来たつもりだったが、それが意にそぐわないとなれば…、それ以外の接し方が解らない。


基本的に黒川は、一般で言う愛だの恋だの言う感情に、疎い。
持っていない訳ではないのだが…どうにも。反応が薄いし、どう表現するべきなのかも知らない。




受け取った上着を、デスクに放り、黒川は部屋の隅の冷蔵庫から缶ビールを取る。
その場で開け、傾ける。空腹の胃に染みるのか、手で腹を抑える。


痛いのは、そこではなく。





ふと一ノ宮を見ると、すでに黒川を眺めていた一ノ宮と目が合い
一ノ宮は言いたい言葉を飲み込んで、慌てて、視線を逸らせるのだった。





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2017年10月08日

寂しい男








裏の中華屋で黒川は一人、食事を取っていた。
ラーメンと餃子のセット。
正直、餃子は6個では多すぎるし、デザートに付いて来る小さな杏仁豆腐も要らなかったが、
今日は、分けてやる、相手もいない。


イツキが傍にいない事で何が困るかと言えば
一緒に食事をする相手がいないという事だろうか。
目の前にいて、始終、話をする訳ではないが
なんとなく。いない、というのも、寂しい。



瓶ビールを頼み、グラスに注ぐ。
まだ未成年のイツキが、辺りを伺いながら、こっそりビールを飲む様子も、可笑しかった。
あと一年もすれば公然と酒を飲むことが出来ると
楽しみにしていないと言えば、嘘になる。



「……クソ。……あの、馬鹿…」



意味もなく、悪態を付いてみる。


会って冷静に話をして、至らなかった部分を謝罪すれば、状況は良くなるのかもしれないが
その切欠が無くて困っていた。

以前、イツキが遠くに離れてしまった時とは、違う。
今は、距離的には近くにいるのに、以前よりも遠い。

電話も繋がり、部屋に上がってセックスも出来るが
その先に踏み込む切欠が、理由が、見つからない。






目の前に残った、小さな杏仁豆腐がその答えなのだと
本当は、知っているけれど。





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最小限







「……なんとかなりそうだよ。昨日も偉い先生と会ったけどさ、普通で…
若い子だから、ヤンチャの一つもあるでしょうって言ってくれて…、…良かったよ」



問題があった10月が過ぎて、11月。
イツキと黒川は、相変わらずの膠着状態。
梶原は受験勉強にまい進する日々。
徐々に、静かに、落ち着きを取り戻していた。

昼休みには、また、イツキと梶原と大野の三人で、過ごすようになっていた。
……若干、大野の、イツキへの視線は厳しかったが……

確かに反省している様子と、紙パックのコーヒーを飲む姿が可愛いのに、流されてしまったという所。



「あとは、合格するだけ…ってね」
「それが一番、大変なんだろ、テル?」
「まあ、そこは…、頑張るしかねーよ。……まあ、うん。……頑張るよ」



梶原と大野の会話に、闇雲に口を挟むことも出来なくて
イツキは互いの顔を伺いながら、少し安心したように頷き、胸を撫ぜ下す。
自分と関わったことが原因で、梶原の将来に、暗い影が落ちてはと心配していたのだが……
どうやらその影響は、最小限に留まったらしい。



「…お前の方は大丈夫なのかよ、イツキ。……あの人と、ちゃんと、話、つけたのかよ?」



梶原がイツキに尋ねると、大野はまだ、ほんの少しだけ、嫌な表情を浮かべる。
あんな事があったのに、まだ懲りずにイツキの心配をする梶原に、呆れているのだ。

イツキもそれは申し訳なく思っているようで、項垂れたまま、
曖昧に微笑んで、紙パックのストローを咥えたまま、小さく首を横に振るのだった。






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2017年10月10日

報告








ホテルの部屋に、黒川は秋斗と一緒にいた。

何日か続きの仕事があり、新宿と横浜を往復する毎日だった。
一段落つくのが真夜中になることも日常で、遅すぎる夕食を取り、そのままホテルへ向かう。
部屋で、酒を飲みながら、残りの細かな仕事の話などをして、最後に身体を重ねる。
それは、特に意味も無く、ただ眠りにつく前の軽い運動のようなものだった。



事を終えると秋斗はベッドから起き、シャワーを浴びに行く。
戻って来た時には身なりを整え、帰り支度をしていた。
黒川が少し意外そうな顔を見せると、それに気づいたのか秋斗は黒川の傍に寄る。


「社長にお話ししておきたい事があります」


イツキとは違う、艶めかしさ。多少ずる賢いところもあるが、こんな夜には重宝していた。


「…なんだ?」
「一応、ご報告なんですけど…、僕、今、お付き合いしている人がいます」
「……は?」



たった今、熱く吐息を交わらせた口が、そう言う。



「………リー、か?」
「いえ、全然関係のない、一般の方です」
「……それで?……この仕事から抜けたいとでも言うのか?」
「ああ、いえ、全然。社長との事も含めて、僕の好きにさせてくれる人なので、それは構わないんです。ただ、ご報告しておきたかっただけです」



あまりに淡々とさばけた様子でそう話し、秋斗は黒川に、普通の仕事上がりのように頭を下げて、ホテルの部屋を出て行った。



残された黒川は一人、ベッドの上で呆気に取られていた。






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2017年10月11日

生活臭







ある日の夕方、イツキは事務所の近くの、二人で使うマンションの部屋に来ていた。
黒川と距離を取る様になって以降、ここに来ることは無かったのだが、何枚かのシャツや下着を置きっぱなしにしている事が気になっていた。
辺りに黒川の姿が無いか、部屋の明かりは付いていないか、伺ってから中に入る。


一番最初に気になったのは、部屋の、黒川の煙草の臭いだった。
久しぶりだから余計にそう感じたのかも知れないが、テーブルの上の灰皿が、山盛りになっているのを見て、納得してしまう。
そう散らかっている訳ではなかったが、それでもあちこちに、ビール缶やコンビニのビニール袋が放ってあって
半ば無意識ながら、それらを片付けてしまう。



忘れ物のシャツは洗濯機の底に、皺くちゃのまま入っていた。
湿ったバスタオルは、いつ使ったものなのか、カビ臭い。

洗面所にはコンセントに刺さったままの電気シェーバー。スタンドには歯ブラシが二本。
バスルームの換気扇は回りっ放し。……ボディーソープの残りが半分だった事を思い出す。





自分が生活していた場所への愛着は、勿論、あるだろう。
もしかして、もう二度と戻らない…、そんな可能性もあることに今、気が付いて…愕然とする。




「………マサヤ…」



声に出して名前を呼んでみると、鼻の奥がツンと痛くなる。
二人で過ごす時間が嫌なものばかりでは無かったのは、イツキにも、解っていた。





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2017年10月13日

空っぽの左手








一人、マンションに戻った黒川は、すぐに変わった様子に気が付いた。
廊下に散らばっていた洗濯物や、流しの洗い物が片付けられている。



「……イツキ、いるのか?」



玄関に靴もなく、部屋の明かりも付いていなかったのだから、居るはずがないだろうと思うのだけど
一応、名前を呼び、風呂場や寝室の扉を開け覗き込む。

そして、やはり、居ないと解ると軽く笑い、帰って来た時よりも疲れた面持ちでソファに沈み込んだ。




電話が鳴ると、慌てて出る。




「………なんだ、一ノ宮か…。………ああ、いや、何でもない……。ああ、それで……?」



耳と肩にケータイを挟み、黒川は煙草に火を付ける。一ノ宮からの仕事の報告に適当に返事をしながら、一服する。
ここ数日、黒川の周りは俄かに忙しくなっていた。
横浜では新しいビルをテナントごと買収する話が進んでいたし、新手の風俗の企画などもチラホラ。
そして、まるで別件の問題も抱えていた。



「……叔父貴の所には明日にでも顔を出す。……少し、カネを用意しておけ……」



あまり良くない案件のようで、深く溜息を付きながらそう話す。
叔父貴は池袋界隈を仕切っている豪傑で、黒川とは程よい距離感を保っているのだが、最近では新興勢力に圧されトラブルを抱えているとも聞く。
仕事上、手を貸せることがあれば、勿論、手伝うのは当たり前なのだが
逆に、トラブル先から、目を付けられてもかなわない。




電話を切って、黒川は、もう一度深く溜息を付く。
そして無意識に左の手の平をながめ、また引っ込めるのだった。





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2017年10月15日

佐野と焼肉・1






黒川が一人、イツキの気配が残る部屋で悶々としている頃
イツキは佐野と、焼肉屋に来ていた。

帰り道、事務所の近くでバッタリ出会った佐野に、誘われたのだ。



「お前、超、久しぶり。何?何してた? まだ、あの、くだらねぇガッコー、行ってるの?」
「……行ってるよ。……くだらなくないよ。……ちゃんと勉強、してる…」
「へぇー」


佐野は半分茶化したように声をあげ、笑いながらビールを飲み、トングで鉄板の肉を裏返す。
イツキは、佐野が注文した焼酎を水のグラスに入れて、飲む。
やたらと機嫌の良い佐野に少し戸惑ってはいるが、それでも、一人でいると気が滅入ってばかりなので、ありがたい。


「佐野っちは?…最近は、どう?何してるの?」
「俺か?…今は出会い系で…ちょっと良い儲け話みつけてさ…。あとはオッパブ」
「…お…パブ?」
「ああ。行くんじゃねぇぜ、経営、経営。これがナカナカ。今、ぽっちゃりばっかり集めててよー…」


イツキには良く解らない話をしながら、佐野はゲラゲラ笑う。
それでもイツキは、この雰囲気が楽しい。
夜の街で、酒を飲みながら、怪しげな話をする場面が馴染む。




「ところでさ、イツキ。お前、……社長と揉めてる?」
「………え?」
「お前、また…どっかで誰か…、男、引っ掛けてるんじゃねぇだろうな?」


思いがけない佐野の質問に、イツキは目を丸くする。





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2017年10月16日

佐野と焼肉・2







「この間、社長と焼き鳥屋で一緒に飲ませて貰ったんだけどよ。…なんか、変だったぞ?」
「……変って…、どんな風に?」
「んー。……俺はまたお前が何か、どっかで遊んでるのかと思ったぜ?」


佐野の話を聞いて、イツキも少し、考える。
実際、黒川とは大揉め中だし、様子が変だというのも解るのだけど、それでなぜ、自分が遊んでいると思われているのか。


「……違うよ。ちょっと言い争って…、…こじれちゃった。…「仕事」も続いたし…、小野寺さんも嫌だし。…梶原にも迷惑掛けちゃったし…」
「なんだ。いつもの夫婦喧嘩か」
「……夫婦喧嘩って…!」


思わず声を荒げるイツキに、佐野は笑って、焼きあがった肉をイツキの小皿に入れてやる。


若干、肉を入れるペースが早すぎる気がする。
タレだの塩だの。タンやロースやカルビやら。
焼く順序も、好みの味付も、何もかも。
気が付かない内にイツキは、黒川仕様になっている。




「……喧嘩、とかじゃなくて。……もうちょっと。
俺とマサヤの関係が…、どうにか、変わらないかなって…思ったんだけど。
マサヤは、別に何とも思ってないみたいで……

…結局、昔と一緒なのかな…。…お客さんと…したり、マサヤの相手したり…、そうやって都合よく使えれば、何でもいいのかな……

マサヤにとって俺って、ただの道具とか、…そんな感じ……」



イツキは焼酎の水割りに口を付けながら、そう、ぽつりぽつりと言葉を繋ぐ。
自分でも、自分が何に悩んでいるのか、解らなかった。
そんなイツキの迷いを、佐野は、笑いながらバッサリ切り捨てる。



「…あっはっは、何言ってんだ、お前?。お前と社長って、どう見たって相思相愛のラブラブだろ?
いっつもイチャコラして、ヤッたのヤられただの喧嘩も何も、ネタの内だろ?
社長がお前にベタ惚れなんて、見れば解るじゃんかよ!」




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2017年10月17日

佐野と焼肉・3







「…あっはっは……、は………」


佐野は高笑いをしてビールを飲む。
ふと正面のイツキを見ると、イツキは少しも笑ってはいなくて、困る。
黒川との関係に迷っているイツキを励ますつもりが、ただの空回りに終わる。


「……は、は。……えーと。まあ、そのアレだ。お前と社長って…、フクザツだからよ。色々…、あるだろうけど。……その…」
「……複雑…だよねぇ…。おかしいよねぇ…。俺も、もう、解らなくなっちゃった…」
「……でもよ。……離れられねーんだろ?……やっぱりさ、その、……気持ちはあるんじゃねぇの?……お互いに」
「………そうかなぁ……」



珍しく真剣な面持ちで、佐野は、そんな事を言う。
佐野は基本的には遊び好きの軽い男だけれど、イツキの事は可愛く思っているし、何より、付き合いも長い。
イツキが、黒川の元に来た、一番最初の頃から、この二人を見ているのだ。


「……複雑で、色々あったから、逆に、素直になれねぇって…、感じかもな…」


実は、冷静に、率直に、一番に、二人の事が解っているのかも知れない。






しばらく、大人しく、鉄板の肉を焼く。
佐野は焼酎をボトルで頼み、イツキと一緒に水割りで飲む。




「……ねえ、佐野っち…」
「……ん?」

「………さっき言ってた、マサヤが俺にベタ惚れって、……本当?」



ほろ酔いの上気した頬で、イツキは少し恥ずかしそうに、そんな事を聞く。
可愛くて儚げで艶っぽくて、思わず佐野は鼻の穴と、股間を、膨らませるのだった。



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2017年10月18日

佐野と焼肉・4







さて。
会計も済んで店の外に出る。
結局、二人で焼酎のボトルを一本空けてしまい、まあまあの酔っ払い加減。

佐野は、足が縺れたフリをして、イツキを店先の物陰に追いやる。



「……ホテル、行こうぜ?」



何のてらいもなく、佐野はイツキを誘う。
つい数分前まで、イツキと黒川の色恋話をしていたというのに、それとこれとは話が別、と言う様子だ。

身体を寄せ、腰を押し付け、服越しでも挿入出来てしまいそうな、そんな動きをする。


「…行かないよ。…馬鹿、佐野っち……」
「ご無沙汰なんだろ?……軽く…、抜くだけだって……」
「………馬鹿…」


酔っているせいか、それともまんざらではないのか、
一応、拒否はしているものの、イツキの声はすでに甘く、息も早い。

それでも、頭の片隅に僅かに残る理性を掻き集めて、どうにか、踏み止まる。
手を突っ張り、佐野と距離を取り、困ったように微笑み、首を横に振る。



「……駄目、……でしょ?………今、俺、…多分…」
「……三人目んトコ、行くのか?」
「…え?……誰?」
「……ああ、クソ。イツキ…。……社長と、オジャンになるなら…、次は俺にしてくれよなぁ……」




そう言う佐野はすでに呂律も回らない様子。

もっともイツキも、言葉の意味は良く解らず、それに気付いたのは、一人で乗る帰りのタクシーの中でだった。





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2017年10月19日

佐野と焼肉・最終話







「………三人目って、……何?」



どうにか佐野と別れ、一人、帰りのタクシーの中。
飲み過ぎたせいか頭が働かないのだが、ふと、佐野の言葉を思い出す。


『…社長が言ってたぜ?…お前が、誰かと、ヤって来たって…』
『…そんなの。…仕事で、いっつもじゃん…』
『それ以外だろ?……社長が知らない奴、いるんじゃねぇの?』



そんなやりとりをしていたのだが、イツキには覚えがなく…
とにかく黒川が、自分に難癖を付けているのだけだと思っていたのだが…。


新宿の賑やかな街並み、行き慣れた美容院の前を通り過ぎて、はたと、気付いた。

「……ミツオさんと…、したのって…、いつ?……俺、それ、マサヤに言った?」
「……えっ、お客さん、何ですか?」

イツキの大きな独り言に、思わず、タクシーの運転手が返事をしてしまい、
イツキは酔った顔をさらに赤くして謝り、下を向いてしまうのだった。







『…複雑で色々あったから、逆に、素直になれねぇって…感じかな…』




佐野の言葉を、思い出す。


黒川が、本当は、自分をどう思っているのか。


知らなかった訳では、無い。





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2017年10月20日

空洞







「…………あっ…」




思わず、声が漏れてしまった。
真夜中。誰もいない一人の部屋なのだから、別に遠慮することもないけれど
自分の喘ぐ声を、自分で聞くのも、恥ずかしい。


佐野の誘いを断って帰って来たものの
イツキの身体は、勝手に疼き、お茶を飲んでも夜風に当たっても、収まらなかった。


ベッドの横の引き出しには、色々な玩具が入っている。
程よい大きさのディルドを取り、ローションで濡らし、先端を入り口に押し当てると
それはつるんと抵抗もなく、簡単に、飲み込まれていく。
手元に出っ張りが無ければ、全て入ってしまうほど。
逆に、中の丁度良い場所に、丁度良い膨らみが当たって、……いい。



「…ん……、………ふ…」



じわじわと快楽が上がる。




ここ1,2週は黒川からの連絡も何も無く、「仕事」も無く
静かで落ち着いた、当たり前の生活だったのだけど
それでは埋まらない空洞が、イツキの中にはあって
時々、騒ぎ、眠れなくなる。


何をしても、満たされない。



「……………マサヤ…」




身体が小刻みに震える。
名前を呼んだから、イくのか、行ったから、名前が零れたのか。







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