2018年02月02日

それから








3、4日は驚く程何もなく穏やかに時が過ぎた。
イツキはのんびりと学校に行き、若干眉間にシワを寄せ気味の梶原と昼食を食べ、タクシーで帰り、黒川と夜を過ごす。


乱暴された傷も、時間と共に和らいでゆく。
怖さも、感じた…違和感も、何となく、ただの気にし過ぎだったのではないかと…自分に納得させる。
そうでもしないと、やり切れないし、今までだって何度も、酷い目には遭って来たのだし。



それでも学校が冬休みに入り、ずっと部屋に籠りがちになると、
どうにも、落ち着かなくなる。

始終黒川と一緒にいて、セックスしている訳にも行かない。

ようするに、暇なのだ。





「………あー………」


昼間。部屋に一人。
ソファに寝そべり、スナック菓子を食べながら、気の抜けたテレビを見ていると、
駄目な人間になったような気がする。
こうなってしまうと本当に、自分にはやる事がないし、やりたい事もないし、…一周回って、自分は、世界のどこにも必要とされていないのではないかと、思う。



「……なんかする。そろそろ、動き出す……」


そう言って、ソファの上で伸びをして、また、丸まって。

『何か』と言っても、自分に何が出来るのだろうかと、半分、うとうとしながら考えるのだった。






まあ、しばらくはのんびりしても良いんじゃない?いっちゃんw
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2018年02月03日

やりたい事リスト








「例えば、何か、仕事を見つける。
ああ、その前にちゃんと学校は、卒業するけどさ。

社員さん…は、無理だとしても、バイトとか、何か…。
夏に美容室の手伝いをさせて貰ったのは、楽しかったな…。

美容関係の仕事がいいのかな。女の子たちと話しをするのは、別に嫌じゃないし。
普通に、お手伝い…、細かな雑用…、受付とかだって、覚えたら出来そう…。

………秘書とか?………おれ、秘書とか意外と向いていそう?
………どんな仕事があるのか、よく知らないけど。

ああ、マサヤの秘書になる?……車の免許取って、運転手とか。一ノ宮さんみたいに……」



「馬鹿か!」




夜。部屋に戻った黒川と、食事中。
イツキが可愛い夢を語るも、黒川に一蹴される。




「馬鹿か、お前は。痛い目に合ったのを、もう忘れたのか。
暫くは大人しくしていろ。目立つ動きはするな。
…そんなに暇なら、部屋の掃除でもしていろ!」

「………事務所のお茶汲みでもいいよ?」

「…茶も、運転も、お前に出来るかよ。俺を殺す気かよ?
……お前は…、………ただ、ここに居れば良いんだ」



黒川はビールを一口飲む。
捲し立てて、喉が渇いたのか、それとも


照れ隠し、だったのか。








ツンデレ・2 か!
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2018年02月04日

油断








多少、油断していたのは事実。





ある日の夕方。
部屋に一人でいたイツキは、どうしてもアイスが食べたくなって、コンビニに買い物に行く。
マンションからコンビニは、数分の距離だし、どうしたって人の目がある場所なのだし。
まず危険は無い。これが危険と言うなら、イツキはもう、何も出来なくなってしまう。


ジャージの上下にコートを羽織り、外に出る。


コンビニではアイスの他に、牛乳とスナック菓子とプリン、それとレジ前でおでんをいくつか選び、荷物は両手いっぱいになってしまう。
「……主婦か…」とイツキは一人でつぶやいて、くすくすと笑う。

店を出て、来た道を戻り、マンションまでもう少しという所で


イツキは突然、後ろから、身動きが取れないように肩を抱かれ、声も出せないように口元を塞がれた。

















「……だから、ごめん。ごめん。本当に、ごめん!……マジ、本当、…ごめん!」




街中で偶然イツキを見つけた佐野が、イツキを驚かせようと、ちょっとした悪戯を仕掛けたのだが、いかんせん、間が悪すぎた。

つゆだくのおでんのカップを足元に落とし、零れる嗚咽を抑える様に口に手を当て、恐怖で身体中を震わせるイツキ。

佐野がいくら地べたに額を擦りつけ謝ったところで、それは、冗談で済まされるものでは無かった。




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2018年02月06日

事務所に三人








「………すんません…」



事務所で。
黒川の前で、頭を下げ謝る佐野は、まるで悪さを叱られた小学生の様。

イツキはソファに座り、ようやく、落ち着きを取り戻す。

黒川は煙草をプカプカとやりながら、呆れたように大きなため息をつく。



「…馬鹿か。道端で何をやってるんだ。イツキもイツキだ。一人で出歩くなと言っただろう」
「………コンビニ行っただけだもん…」
「それで、こんな目に遭うんだろう。……まったく、騒ぎの好きな奴だ…」
「…すんません。…俺が悪いんっす」



とばっちりのように叱られるイツキは、唇を尖らせ、拗ね、
佐野はひたすら平謝りをし
黒川はもう一度、大きなため息を付く。


「……まあ、いい。…佐野、この後ヒマか?……ついでだ、イツキとメシでも行ってこい」


そう言って黒川は、内ポケットから万札を数枚出し、佐野に手渡すのだった。






まだ仕事が忙しいという黒川を残し、イツキと佐野は、事務所の近くの定食屋へ行く。
黒川の前では大人しくしていた佐野だったが、ようやくいつもの調子を取り戻し、
ビールを注ぎながら、「やった。公認デートだな」などと言って笑う。





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2018年02月07日

公認デート・1









佐野の知り合いの店だという定食屋。

一番奥の席で人目に付かないのを良い事に、佐野はイツキのグラスにもビールを注ぐ。
ツマミは、刺身定食とヒレカツ定食のご飯無し。
腹も満たされ、アルコールも入り、ようやくイツキは落ち着いたようで、穏やかな表情を見せる。



「……いや、マジで。…あんなに驚くとは思わねぇもん…」
「佐野っち。間が悪すぎ。……俺、この間、ちょっと、あって…、今、…駄目な時期…」
「レイプされたって?…また?……それにしたってよ…」



『お前、そんなの、慣れっこじゃん』と言いそうになって、さすがにそれは止める。
イツキが経験してきた酷い事のアレコレを知っている佐野には、今更何が起こっても、別段変わりはないような気がするのだが…

イツキがデリケートになっていると言うなら、それも、仕方がない。



「…でも、まあ、アレだな。社長とは、イイ感じだな。…もっと怒られるのかと思ったけどさ…」
「最近、優しいんだよ、マサヤ。……気持ち悪いくらい…」



ビールのグラスに口を付けながら、イツキはそう言って笑う。
相変わらず可愛いし、それ以上に、ふわりとした柔らかさと艶っぽさが増したと、佐野は、ごくんと唾を飲み込む。






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2018年02月08日

公認デート・2








ビールを何度かお替りし、ツマミにと鶏の唐揚げを頼み、
小一時間も経つと、イツキも佐野も、かなり酔いが回ってくる。
ここ最近の近状報告から、仕事の話、学校の話。…一周回って、夜の、ちょっと下世話な話まで。

お互い赤い顔を鼻先まで近付け、くすくすと笑いながら、本人たちはヒソヒソ声と思っている声で。



「……マジ、マジ。…今、俺、モテキでよ。どの店行っても、佐野さ〜んって、もう大変でさ、身体、持たねぇわ」
「お店って…、どんなお店なのさ、ふふ…」
「ふっふっふ。まあ、色々な。……でもよ…」



佐野は一拍置いてグラスを飲み干し、自分のグラスとイツキのグラスに、新しいビールを注ぐ。
イツキはあまり飲み過ぎないようにしようとは思っているのだけど、ついつい、佐野につられてしまう。



「……でも、何?…佐野っち」
「…ん?」



話の続きを焦らすように、佐野は煙草を咥え、ふふ、と笑う。



「……色々遊んだけどよ。……やっぱり、お前がいいな。……こう、身体の相性がばちこーんって合うカンジ?
ぴったり、馴染むって言うかさ。とにかく、最高」






佐野にしては、今日一番の口説き文句のつもりだったが、

何か、イツキの心に引っ掛かったのか、イツキの顔が一瞬曇る。






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2018年02月09日

公認デート・3







「……どうした?」
「…………ん…」
「何?…何か心配ゴト?……言っちゃえ、言っちゃえ」
「……うん…」



イツキの杞憂に気付いた佐野は、悩みを聞き出そうと、酒を注ぎながら促す。
……本当は「……もっと静かなトコロで話そうぜ?」と誘いたくて、話の糸口を探る。


イツキは溢れるほどになみなみ注がれたグラスに、キスをするように口を付ける。




「…俺さ。…身体の相性は…、…マサヤが一番……」
「………あ、そう……」




秒速で佐野を振ったことに、イツキは気付くこともなく。
もう一度グラスに口を付けると、今度は、何かキッカケを作る様に一気に全部飲み干した。

少し、驚く佐野を他所に、イツキは空のグラスをカタンとテーブルに置く。






「………マサヤが一番なのは変わらないんだけどさ。………この間のは、ちょっと、ヤバかった。……感じた…訳じゃないけど…、…無いけど、ちょっと……感じちゃった」

「え、この間のって…、レイプされたって奴?」

「…うん。…捕まって、目隠しされて、ヤられただけだけど…、……なんか、すごく……、良くて、……俺…、なんか…、フワっとした……」

「お前、ヤってる時はまあまあ、いつでもフワっとしてるぜ?」

「いつものレイプとは違うんだってば!……もっと凄い、良かったの!」




思わず、大きな声が出てしまい、イツキは慌てて手で口を塞ぐ。




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2018年02月10日

公認デート・4







イツキは手で口を塞ぎ、誰かに聞かれはしなかっただろうかと、辺りをキョロキョロと伺う。
幸い、誰も気にしていないようで、イツキは照れ笑いを浮かべ、佐野を見遣る。

佐野もつられて笑ってはいたけれど、まだ、イツキの話の意味が解らないようだった。




「…えーと、…何?……滅茶苦茶、感じまくったって…こと?」
「…そうなんだけど…、…それだけじゃなくて…、何ていうかさ……」


今度は顔を近づけて、小さな声で囁く。
イツキの頬が赤いのは、酒に酔ったためか、こんな話のせいなのか。


「……すごい、……感じが、マサヤの感じに似てて…。……俺、途中で、本当はマサヤなんじゃないかって思ったくらいで……」
「……はは。…実は、そうだったんじゃねぇの?」
「…違うよ…。…一瞬だけ、顔、見たし…。…もっと若い人だった…」
「なんだ。若いオトコの勢いに、腰砕けになったって話か!」


佐野が半分冗談めかしてそう言うと、イツキは至近距離で、キッと睨む。
勿論、いくら睨まれたところで凄味はないのだが、佐野は軽く笑って、うそうそ、と誤魔化す。



「…佐野っち、ちゃんと聞いて。…こんな話、佐野っちにしか、出来ないんだから…」

「聞いてるよ。……でも、そいつとは、それっきりなんだろ?」


「そう…だと、…思うけど。……なんか、俺、そんな感じになったの、初めてで…、ちょっと…、怖い…。
……今まで、本当に、イロイロあったけど、でも、マサヤのエッチは別だったのに…
それ以上で来られちゃうと、俺、どうなるか…解んない……。

…ああ、何だろう。何、言ってるんだろう、俺。……佐野っち、俺の言っている意味、解る?」



すでにかなり酒に酔った頭で、まとまらない考えを、どうにか説明してみるものの………呂律すら回らない。






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2018年02月12日

公認デート・5








イツキ自身、その件は、あまり深く考えないようにしていたのだけど
やはり、感じた……感覚は、簡単には消えなかったようだ。
感じた思いが何なのか、よく解らない。解らない事だから、怖い。
 
怖い。





「……解るよ、イツキ。…お前のキモチ…」

思い悩むイツキに、佐野は同調し、優し気な声を掛ける。

「…今まで経験してなかったコト、あると…、怖いよな。解る、ワカル」
「……佐野っち」
「…でもな…」


佐野は、テーブルの上に置かれていたイツキの手に、自分の手を重ねる。
本当にイツキを気遣っているのかは、微妙な所。


「でもな、イツキ。…エッチ中の、そういうカンジって、結構アテにならないぜ?
状況とか、体調とかで、感じ方って、全然違うだろ?」
「……ん…」
「ちょっとしたツボにハマって、気にし過ぎちまうとかって…、あるじゃん。案外、その程度かもよ?」
「……そう、かな…」


佐野の説得に、少し、イツキの気が緩む。
重ねられた手は、重ねられたまま。佐野の人差し指が、イツキの手の甲を、くるくるとなぞる。





「そうだよ。…ちょっとした違いで、その日の感じ方なんて、変わるもんだよ。……何なら、今から、試してみようぜ?
……俺と、すげぇ、イイ感じになったら、……その、レイプ野郎のコトなんて、気にならなくなるぜ?……多分。………な?、な?」





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2018年02月13日

公認デート・6







「……俺とだって、…すげー気持ちイイやつ、出来ると思うぜ?
…だって、俺、お前のこと、全部知ってるもん。
お前が気持ちイイとこ、全部。お前が、……おかしくなっちゃうトコも…」


どうにかイツキをお持ち帰りしたい佐野は、アレコレ言葉を並べ、落としに掛かる。
重ねていたイツキの手を握り、持ち上げ、自分の口元まで引き寄せると、イツキの指先をぺろりと舐める。



「……やだ、佐野っち。……くすぐったい…」
「…な、イツキ。……試してみようぜ?………すげーの…」
「……ホントに?……すごいの?」
「…ああ」



甘い声で囁きながら、佐野はイツキの指を根元まで咥える。

……それはまるで、別のモノを舐めているように……吸い上げ、べろりと舌を這わせる。

イツキは目をとろんとさせ、恥ずかしそうに佐野を見る。
佐野は確信したように、ニヤリと笑う。




「……な?」
「……………わかった」



イツキは小さく応え、こくんと頭を縦に振る。
佐野は思わずヨシ、と拳を握りそうになる。



けれど次の瞬間、イツキの言葉に耳を疑う。




「……いいか、どうか、マサヤに聞いてみるから、待ってて」


そう言いながら、イツキはすでにポケットからケータイを出し、
佐野が止める間もなく、黒川に、電話を掛けてしまうのだった。





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2018年02月16日

公認デート・7








「………馬鹿か、お前らは……」



ほどなくして佐野の目の前に、仏頂面の黒川がやって来る。
電話を受けて、飛んで来たのだろうか。
丁度仕事も一区切り付いた所だと言い、自分もビールを頼むと、煙草に火を付ける。
佐野はただただ、申し訳無さそうに項垂れ、イツキは別段変わりもなく、自分もお替りとビールを頼む。


「……すんません、社長…」
「…まったく。メシとセックスはワンセットなのか?しかも、そんな事をわざわざ聞くか、普通?」
「…だって、マサヤ。勝手にしたら、怒るじゃん…」
「『いいぞ、行ってこい』とでも言うと思ったのか、……馬鹿が」


黒川は声を上げ、後は呆れて話す事も無いという風に鼻息を鳴らし、テーブルに置かれたビールに口を付ける。
イツキも新しいビールを一口飲み、それから「…トイレ」と言い出し、席を立ってしまう。

……こんな空気感の中、黒川と二人にされた佐野は、もう、消えて無くなってしまいたいと、さらに背中を丸くする。




「……佐野」
「は、はい…」



呼ばれて、おそるおそる顔を上げる。
機会があるごとに自分がイツキを誘うのは、…まあ黙認されている事とは言え、公けに認められた話ではない。


けれど、


上目遣いでチラリと伺う黒川は、言葉の割には怒っている風でもなく、
馬鹿な奴と呆れながら、口の端を上げ、少し笑っているようにも見えた。






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公認デート・8







「……悪かったな、佐野」
「………へ?」


一喝されてもおかしくない場面で、黒川はそんな事を言う。
…考えてみれば最初から、危険が無い訳ではない佐野と食事に行かせたり、少しでも怪しければすぐにイツキの元に駆け付けたりと…、…黒川は変だ。


どういう事なのかと佐野は、半分頭を上げながら、ビールを飲みながら薄く笑う黒川を見る。


「…相変わらず、…馬鹿だな、イツキは…」
「いえ、……俺が誘ったんで……」
「あいつ、何か言っていたか?」
「……へ?」


探る、口ぶり。明らかに、佐野の目の前には、イツキの事を気に掛ける黒川がいた。


「…あいつ、また、…ヤられてな。まあ、よくある事だ、別に怪我も何も無いんだが…、
少し気になる事があってな……」
「……相手って、解ってるんスか?」
「いや。……だが、…いや、……まだ、な……」




心当たりでもあるような、黒川の様子。
佐野は他に何か尋ねようか、何か話そうかと慌てているうちに、通路の向こうにトイレから戻ってくるイツキを見つけてしまう。
そして、特に考えもせず、場を繋げるために


「……あー、あいつ…、……社長とのセックスが一番イイって言ってましたよ」


と、言う。







その後に見せた黒川の表情は、佐野が、今までに一度も見た事がないものだった。







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2018年02月17日

公認デート・最終話








「…………マサヤ…?」


次に、イツキの記憶が繋がったのは、二人の部屋の寝室で、目の前には黒川の姿があった。
……あの後、三人でしばらく飲んでいたのだが、黒川が来たことでイツキの気がすっかり緩んだのか…
かなり、飲み過ぎてしまったようだ。


最後には黒川の肩にもたれかかり、かなり、際どい事を口にし、佐野を驚かせたのだが…幸い、それは、覚えていない様子。



「……あれ、俺、……誰かと、……した?」
「……さあな。……酔っ払いめ…」


黒川は笑い、ベッドに横になるイツキのシャツを、脱がす。
簡単に裸になってしまったイツキは温もりを求め、黒川に擦り寄り、腕と足を絡める。


「……あまり、外で、………色気を垂れ流すなよ。また、面倒な事になるぞ?」




黒川はイツキの身体をさらに引き寄せ、顔を近づけ、そう言う。
イツキは二、三度瞬きをし、意外と…正気の目を一瞬、黒川に向ける。



「じゃあ、ちゃんと、マサヤが傍にいてよ。
……俺、どうなるか、解らないでしょ?」





そう言って、目を伏せ、拗ねたようにわざと他所を向く。

まるで悪いのは黒川だと言わんばかりの態度。



それに付き合ってやるのも一興と、黒川は、イツキを抱き締めるのだった。










あらー?
佐野っちとの話のはずが、結局黒川に持って行かれた感・笑
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2018年02月20日

黒川夜話









イツキを甘やかしている自覚はある。

元々は、売り子だ。
馬鹿な親父のせいで負債を負い、何もかもを俺に差し出した。
俺も多少感情的になり、あいつに辛く当たることも、やや、あっただろう。
何でも言う事を聞くあいつを好きに扱うのは、半分は俺の身勝手だと、解っていた。

『マサヤは、もっと、俺に優しくしないと駄目だよ』

粗雑な態度に飽きたのか、次第にイツキは生意気を言い始める。
この関係を保てていられるのは自分の我慢のお陰と、その対価を求める。
まあ、言い分も、解らなくはないので、時々は、折れてやる。

言う事をきき、優し気な素振りを見せれば機嫌も良くなる。
冷たい寝床を温めておくには丁度良い。甘い菓子でも買っておけば、なおのこと。

将来を誓い合う訳でもない。過分な要求もない。手慰みにしては、上等だろう。








と、自分に言い聞かせてみるのも、限界で。

男にしては柔らか過ぎる素肌を毛布に包み、丸まり、ちらりと顔だけ出す。
帰って来るのが遅い、などと、この俺にそんな他愛もない愚痴を言い、拗ねる。
見上げる眼差しに視線が絡むと、どうにも冷静ではいられず、誤魔化すように、あいつの髪の毛をくしゃりとやる。



その手を、なかなか離す事が出来なくて、困る。









posted by 白黒ぼたん at 23:49| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記

2018年02月22日

病院にて・1







「……入院?……叔父貴が?………」


年の瀬も押し迫った頃。
車を運転していた黒川は、一ノ宮からの電話を取る。
昼食にと、国道沿いの餃子屋に出掛けた帰り。
助手席のイツキは眠たそうな目を擦りながら、隣の黒川を見遣る。

短い通話はすぐに切れ、黒川は舌打ちをしながら、ハンドルを握り直す。


「……どうしたの…?」
「…池袋の叔父貴が入院だと。……まあ、持病のある人だが…、……この面倒な時期にな…」
「…面倒?」
「お前には関係ない話だ。……ああ、少し、寄るぞ。顔を出して来る…」





「叔父貴」と呼ばれる人は、池袋界隈を仕切っている組織の、若頭を務めているらしい。
実際、黒川とどういう関係なのか詳しくは教えてくれないのだが…まあ、どこかにいるらしい黒川の、「親父」の「弟分」という事なのだろう。
面倒見の良い初老の紳士で、一見では、その筋の人物とは見られないそうだ。
イツキは会ったことはないが、黒川と一ノ宮の会話の端々から、存在は知っていた。


もっとも、黒川は、あえて、イツキを遠ざけていた。
池袋とは仕事上の付き合いは無く、イツキに「仕事」をさせる必要も無かった。
隠している程では無いが、吹聴して回る理由も無い。
最近では揉め事も多く、争いが起きそうだという話も聞く。そこにわざわざ、首を突っ込む気は毛頭無いのだけれど…。



現在地から入院先の病院が近くだと聞き、直接、そこに向かう。
数十分で到着し、地下の駐車場に車を入れる。





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