2018年03月02日

病院・最終話








「……マサヤ…」
「何だ?」
「……さっき話してた人、誰?……知り合い?」


帰りの車の中。イツキは何の事でもない風に、軽く、そう尋ねてみる。


「…叔父貴の所の…、池袋の嶋本組の、若頭補佐だ。……お前、何か、話したのか?」
「ううん。ちらっと見ただけ…」
「一応、見舞いには来たんだろうよ。…叔父貴とは揉めているようだがな。…叔父貴にも、組にも…世話になったくせに、恩を仇で返すような真似をする。……食えない奴だ」


黒川は忌々し気にそう言って、ふんと鼻息を鳴らす。
そうやってイツキに話すのは、おそらく警戒しろと促す意図もあったのだろう。

池袋の揉め事に首を突っ込む気は毛頭無いのだが、どうにも、向こうはそう思わないらしい。
叔父貴の身に万が一の事があれば黒川は出て行くのだし、そうであればその前に、諸共叩いてしまおうと考えているのか。





「……ふぅん。……そんなに怖そうな人には見えなかったけどね。
……俺、この間、ヤられちゃったのって、……あんな人なのかもとか、思った……」





半分冗談で、半分本気で。探りを入れる様に、感触を確かめる様に。
冗談めかしてイツキは笑いながらそう言い、黒川の横顔を伺う。
意外な予想だと驚くかも知れない。『目隠しをされていても、ケツで相手が解るのかよ』と、笑ってくれても良い。






「……そうかもな」


けれど、それは想定内だったという様子。
黒川は表情も変えずに、そう答えるのだった。





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2018年03月03日

笠原








池袋界隈で1,2の勢力を誇る嶋本組。
組長の多田は高齢で身体も弱り、実権はほぼ、若頭の円城寺が握っていた。
しかし、代替わりを目前に、円城寺の下に控えていた若頭補佐の笠原が、下剋上を目論み画策する。

円城寺を蹴落とすにあたり、親戚筋の新宿の黒川が、気になるところだった。
今は関りはないにしろ、何か事が起これば、間違いなく出て来る男だろう。
黒川は組織を立ち上げている訳ではないが、人脈があり、配下に西崎組を従えている。
表向きは会社を興し、経済界にも顔が利く。不動産業で荒稼ぎし、……手元に、未成年の男娼を抱え、枕営業に使っていると聞く。

目障りな男だった。








未成年の男娼はどんなものだろうと、興味本位で、犯してみた。
悪くは無かった。
……最近では黒川もご執心の様子で、あまり外には出さなくなったと言うのも、頷ける。
恋人という程でも無いだろうが、その辺りが綻びになれば、牙城を崩す材料になるかも知れない。





円城寺も、くたばり損ないだ。
些細な検査で入院するくらいなら、いっそ死んでくれれば手間が省けるのにと思う。
冷やかしを兼ねて見舞いに行くと、待合のベンチに、あの男娼が座っていた。


泣いて、ヨガる。あの時のイキ顔とはまるで違う。


気の抜けた様子で小さな欠伸をかき、暇そうに足をプラプラさせる。
カワイイ、ただの、子供だった。





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迷路








気の抜けた様子で小さな欠伸をかき、暇そうに足をプラプラさせる。
カワイイ、ただの、子供。



待合のベンチでイツキを見掛けた笠原は、あれが、本当に、あの時の男娼だったのかと、一瞬疑問に思う。



さらって来たのは昼日中の学校帰りだった……、…男娼が学校に行っているというのも驚きだったが……
笠原が見たときにはすでに目隠しをされ、ベッドに繋がれた状態からだった。

少年との行為は、嫌いではない。
役得と、存分に楽しむことにする。



『イツキ』はその筋では有名だった。
とにかく具合が良いと。黒川ほどの男が手元に置いているのだから、上物なのに間違いはないのだろうけど、


抱いてみると、それが噂以上であることが解った。




若い、というのは勿論。それを差し引いたとしても…、……肌の馴染みが良い。
滑らかでしなやかで、手の平に吸い付くとはこのことかと思う。
仕事柄、若い女を飽きるほど抱いて来たが、遜色なく。しかも反応が良い。
触れる、その直前に、もう感じている。感じて、ピリリと緊張が走る、その加減が絶妙だった。

飾りのような胸の乳首も、邪魔で、指先に引っ掛かるのが楽しい。
レイプされているくせに欲しがり過ぎて、腰をヒクつかせる様子も、卑猥だ。



中も、




笠原の、好みだった。





待合のベンチで見かけた少年と、あの時の男娼とを、繋げる線を探す。
それは複雑に絡んだ迷路のように、笠原を惑わすのだった。





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2018年03月05日








やたらと静かで明るい朝。
目が覚めたイツキは窓際に寄り、窓を開ける。外は、雪景色だった。




「……寒い…」

そう零したのは、黒川だった。
寝返りを打ち、窓を見る。

「……何故、窓を開けている…、馬鹿か…」
「マサヤ、雪だよ?」
「……閉めろよ、寒い」


まだ寝足りないといった様子の黒川はそう言い、毛布を肩口まで引き上げ、包まる。
珍しい都内での雪に情緒の欠片も感じないのかと、イツキは少しむくれ、窓をぴしゃりと閉める。


「すごいね、積もってそうだよ。電車とか、止まっちゃうかな?」
「……さあな…」


イツキは再びベッドに戻り、縁に座ると、黒川の顔を覗き込むようにして話す。


「道も、大変だよね。雪かき、しなくちゃかな…」
「街中で積もるかよ、すぐに溶ける」
「でも、道、凍っちゃうかもよ?滑りそう……」
「こんな雪で転ぶのは、ババアかお前ぐらいだろう。……くだらん…」
「………」



あまりに黒川の反応がつまらないので、イツキはもうそれ以上は何も言わず、ただ窓の外を眺めるだけにする。

このままずっと降り積もって、街も人も全てが、埋もれてしまってもいいのに、と思う。

そうすれば世界には、二人きり。この部屋だけが、世界の全てになる。







……いや、

この口の悪い男と二人きりはちょっと嫌だなぁ…と、イツキは考え直して、小さく笑うのだった。









ちょっと休憩〜。
二人でお布団に包まってるといいよ。
posted by 白黒ぼたん at 23:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2018年03月08日

鼻息、舌打ち







『…マサヤ?…俺、ちょっと出掛けて来る。…すぐ、そこ。知り合いとお茶』
「………ハァ?」



逢魔が時。黒川が事務所へ向かって少し経った頃、イツキから電話が入る。
レイプ事件があり、その犯人もおおよそ見当がついている中、一人で無暗に出歩くなと言い聞かせているのに。


「………馬鹿か。……また、フラフラと……」


黒川は言いかけて、言葉を探す。
フラフラ出歩いて、悪い奴らに捕まるぞ、とは……あまりに子供じみている。
心配だからと言って、四六時中一緒に居る訳にも行かない。どこに行くにも連れて歩くことなど出来ないし、そんな事をすれば

どれだけ、溺愛しているのだという話になる。


自分が危険な立場なのだと、イツキ自身も解っているだろう。
自分で、ある程度の責任と覚悟を持ってもらわなければ、この世界のココにいることは出来ない。


「………ふん。……まあ、気を付けろよ」
『うん。人がいっぱいのトコで普通にお茶するだけ。帰ったら、また連絡するから』


そう言って、電話は切れた。



黒川はふんと鼻息を鳴らし、ケータイをデスクに放り投げる。
そしてうっかり、イツキの茶飲み相手の名前を聞きそびれた事に気づき、小さく舌打ちする。



事務所の端の書棚に向かっていた一ノ宮が、何事かと、視線だけを寄越した。




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2018年03月09日

今日の本題






二人の部屋からも、事務所からも、最寄りの駅からもほど近い、ごく普通のカフェで、
イツキは待ち合わせをしていた。




相手は、





ミツオだった。






「最近、どう?……えーと、あれ、以来、だよね?」
「……え。……えっと。………大丈夫です」


あれ以来、とは、イツキが小野寺絡みで嫌な目に遭い、その慰みに、ミツオの元に寄った夜以来。
行動だけを見れば実はまあまあ身勝手なイツキは、その理由も、その後の経過も特に連絡することはなく……

つい数時間前、連絡を貰ってから初めて、あの夜はミツオに頼ってしまったな…と
少し、反省した。


ミツオは、あの夜のイツキが気にならないと言ったら嘘になるが、結果的に身体を重ねられたので…それでヨシと言った風。
しかも今、目の前で、何故だか照れ臭そうに顔を赤らめ、幸せそうに微笑む様子を見たら、まあ、過去の出来事はどうでもいいかと言った所。



「……カレシと上手く行ってる…みたいだよねぇ?……なんか、そんな、オーラが出てる」
「…そ、………そんな事は……」



イツキはさらに耳まで赤くし、口籠り、顔を横に逸らせた。
その様子が可愛すぎて、ミツオは一瞬、今日の本題を忘れそうになってしまった。



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2018年03月10日

本題・2







「…ミツオさん、俺、今日、そんなに遅くまでは駄目です…ケド」
「ああ、俺もこれから仕事だから。取りあえず何か食べよ?ここ、サーモンのクリームパスタ、美味いから」


美容師のミツオは普通に恰好良い。
長身で肩までのパーマっ毛。今はオシャレな口髭をたくわえている。
街中で擦れ違う女子が、10人中9人は振り返る。
パスタをフォークにくるくる絡める指先が、長くて、イツキもつい、見つめてしまう。


「……イツキちゃんは、進路、決まった?」
「え、いえ…。…上の学校とも思ったけど…、マサヤと…、あ、えーと…、今一緒にいる人と…、……一緒にいるのがいいのかなぁ…と…」
「ええ?…ケッコンしちゃう訳じゃないでしょ?」


ミツオの言葉にイツキは驚き、フォークを口に咥えたまま、目を丸くする。
その表情に思わずミツオはくすくすと笑う。




「…あのさ。今度、店、リニューアルするんだよね。上の階も使って、ネイルとかも出来る大きなサロンにするんだけど…。
…イツキちゃん、本格的にスタッフで入ってくれないかなって…。受付とか事務方とか、そういうの。
今までは若手のスタイリストが交代で事務仕事も見てたんだけど、専門の子がいた方がいいな…って、…店長とも話していてさ……。
だったら……、イツキちゃんが良いなって……」


「……俺に、……仕事?」


「うん。5月オープンでまだ先の話だけど。…ちょっと考えておいてくれるかな?」







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2018年03月12日

本題・3







「………って、言う話…」
「ふん」



ミツオとの話も終わり、イツキは事務所で黒川と落ち合う。
一ノ宮は外出中。黒川は仕事の手を止め、一服する。
イツキは素直にきちんと、ミツオから店のスタッフとして誘われた事を告げると、黒川は半分馬鹿にしたように笑う。


「…お前に何が出来る?受付で客の名前を聞くだけなら、誰にだって務まるだろう?
……わざわざお前を指名する理由が解らん」
「…夏にちょこっとバイトした時に…、感じが良かったって…。…女性のお客様相手で、…俺ぐらいが丁度、柔らかくていい…とか……」
「ふん」


黒川は煙草を咥えながら部屋の隅の冷蔵庫に向かい、中から缶ビールを取る。
「飲むか?」とイツキに聞くと、イツキは「今はいらない」と言う。


「……いい?」
「何が?」
「仕事。……俺、やってみたいな……」


吸っていた煙草を流しに放り投げ、黒川は缶ビールを開け、喉に流し込む。
イツキの話に、どこまで真面目に向き合うか、考え中といったトコロ。







「……それとも、心配しちゃう?……俺が、マサヤから、離れるの」
「馬鹿。心配するかよ。……別に」

「……そ?……じゃあ、いい?」


うっかり手拍子で答えた黒川に、イツキはニコリと可愛く笑い、首を傾げてみせるのだった。






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2018年03月14日

本題・4








セックスは二人の部屋で。
あのまま事務所で始めてしまっても良かったのだが、ソファの上で半分身体を重ねたところで、一ノ宮が戻り、
三人、目を合わせて、苦笑いを浮かべてしまった。


『後の書類は私がやりますから、もう、帰って下さい』と、一ノ宮が、二人を追い払う様に手を振る。
お言葉に甘え、イツキと黒川は、二人の部屋に帰る。

部屋に入るなり、コトが始まる。




どうにかしてやっと寝室に辿り着き、身体を絡める。







「……んっ……」

少し急いていたのは黒川の方かも知れない。
イツキの鼻に抜ける声がまだ湿り気を帯びる前に、脚を開き、指を差し入れ、中を掻き回す。
ジェルを塗りたくっていたとしても、まだ、キツイ入り口。
そこを何度も解きほぐし、指を差し入れ、痛みで眉間にシワを寄せるイツキの顔を覗き込む。


「……ふふ。……良い顔だな…」
「…や、……マサヤ、………まだ、……むり……」
「もっと鳴けよ。……、……もっと、だ………」


それはまるで、好きな子を泣かせる子供のよう。
もしくは、反応を見て、相手と自分の存在と距離を確かめているのか。

イツキは目を閉じ歯を食いしばり、尻の、異物感に必死に耐える。
黒川の腕にしがみつき、爪を立てる。


その痛みが、心地よかった。





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2018年03月15日

本題・最終話








「……仕事も、まあ、いいだろう。ずっと、お前を連れ歩く訳にもいかないからな…。
美容室だか、ミツオだか知らんが…、…まあ、…いい。
…ただ、まだ少し大人しくしていろ。…池袋の動きが、気になるからな…。
ああ、5月オープンとか言っていたな、…ふん。丁度いいか……」




黒川の指先と言葉で、イツキは軽く行き、小さく震えながらベッドに伏せる。
黒川は一度イツキから離れ、飲みかけのビールを一口飲み、煙草に火を付ける。

適当に聞き流していたイツキの話を、一応、ちゃんと聞いていたのだろう。
ベッドの縁に座り、煙草を吹かしながら、そんな事を言う。


「…余計な揉め事は起すなよ?…見境なく、男に媚びを売るな。…まあ、そう言ってもお前の事だ、すぐに新しい問題を……」
「………マサヤ」
「…持ち込む。……そうだろう?」
「……ん…」


小言に、反論でもしたいのか、イツキは身体を少し傾け、黒川の方を向く。
手を伸ばし、ベッドに突いていた黒川の手に、重ねる。


最近のイツキは、本当に生意気だと、黒川は思う。
そうやって自己主張もすれば、反論も、抵抗もする。我が儘も言う。
ある程度は譲歩し、飲んでやっているのだと思う。

まだ、自分が、イツキをコントロールしていると、思ってはいるのだけど。





「………マサヤ、続き。……して」




きゅっと手を握られ、そう請われると、一瞬で、何かが吹き飛ぶ。


イツキは黒川を見上げ、にこりと、笑った。






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2018年03月16日

小話「アレ」








まだコトの途中。


可哀想なイツキは綺麗にイク事も出来ず、穴に、卑猥な玩具を詰め込まれたまま、短い吐息を繰り返す。
そこ、も、ここ、も、もう限界のきわで、あとほんの少しの刺激で足りるというのに

黒川はそれを与えずに、悪趣味に、隣で眺めて笑う。



「……マサヤ、……もう、だめ……」
「……ふふ。お前はそうしているのが、一番、いいぜ?」



手足を拘束され、芋虫のように身を捩りながら、イツキは涙目で訴える。
黒川は自分だけ、水割りのグラスに口を付け、指先の先だけでイツキに触れ、反応を楽しむ。


「のど、乾いた……、マサヤ……」
「……ん?」


もじもじと腰を揺すりながら、イツキがそう言う。
黒川は仕方なく、持っていたグラスをイツキの口元に近づける。

…と、言っても、横向きのイツキがちゃんと飲めるはずもなく。


イツキは、舌をチロチロと出し、グラスの縁を舐める様に、水分を取る。





「……まるで、…アレだな。……テレビでやっている、ペットの餌だな。……ふふ」



そう言って、黒川は笑う。



イツキはもう一度黒川を見上げ、抗議の目をするも


「………いじわる…」



と、つぶやくのが精一杯だった。








少し、書きそびれた話を書こうかな…と。
アレは、以前、コメントで頂いた、猫ちゃんのアレ。
いっちゃん、ぺろぺろしたら、可愛いかなーと。
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2018年03月17日

小話「ストーカー」







「……仕事、ですか?『Sutudio JAM』?ああ、表通りの…、夏にバイトをしていた所ですね。へえ、良かったじゃないですか」



事務所で。
イツキと一ノ宮の二人。
イツキはざっと、そんな話をする。



「うん。でも、マサヤが反対しなかったのが、意外と不思議…。気持ち悪いくらい…」
「ははは。…あまり束縛し過ぎては、イツキくんに嫌われると思ったのでしょう」


軽く笑いながら、一ノ宮は真実を言う。

冷静に考えてみると、二の足を踏んでいるのは、イツキの方だった。



「そうなの?……まあ、そう思って、そうなら……、良いけど。ありがたいけど。
……ほら、俺って、……ちょっと…、……その、…普通じゃないじゃん?
問題とか、影響とか、……大丈夫なのかなって……」

「あの美容室が入るビルは10年前の再開発の折にバックが綺麗になって…、今は大手のクリーンな企業が付いています。
併せて、この界隈でしたら、社長が影響力を持っていますし、美容室のオーナーもグループ企業の会長も存じ上げています。
まあ、問題は、そう起きないと思いますよ?」

「……え。……そんな事、いつ調べたの?」

「………えーと。………夏に、イツキくんがバイトに行った時点で……、社長が洗っておけよ、と………」





そこまで話して、一ノ宮とイツキは顔を見合わせ、はははと、乾いた笑いを浮かべる。

『まるで、ストーカーみたい』 と

お互い、思ってはいたが、口には出さずにいた。





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2018年03月18日

小話「なんとか水産」








別に、俺。

マサヤが言う程、ユルくないし、フシダラでも無いと思う。

他の男とエッチとか、別に、したいと思っている訳じゃ、無い。





ある日の午前中。
冬晴れの気持いい昼食時。
買い物にでも行こうかと駅前に出たところで、バッタリ、ミツオさんに会った。


「イツキちゃん!…一人?」
「ん。…ミツオさんも?……これから仕事ですか?」
「いや、今日は休み。メシ、行こうかと…、……ね、イツキちゃんも一緒に、どう?。店の話とか、聞きたくない?」


話しながら、一緒に歩く。
……まあ、こんな昼間だし、お昼ご飯だし、もしかしてこれから一緒に仕事をする人かも知れないし…、真面目な話だし。


そう思って辿り着いたのは、なんだか雑な看板に、なんとか水産と書かれた店。
…扉の脇には、24時間営業と書かれていた。



「ここ、海鮮丼、美味いんだよ。……炉端も出来るけど。……一杯、やっちゃう?」



俺が返事をする前に、もう目の前にはビールが置かれていた。
店内は普通の居酒屋と一緒。周りを見れば、時間に関わらず、アルコールを飲み、上機嫌な客が騒いでいた。



お昼ご飯、と思ったけれど、結局注文したのは、

炉端で焼く貝のセットと、マグロのカマと、厚切りベーコンと、イカわたとキノコのホイル包み焼き。
ビールを何杯か飲んで、その後、うっかり日本酒を飲み始めて






その後のことは、よく、覚えてないや。






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2018年03月20日

小話「酔っ払い」








目が覚めたら、自分の部屋の、ソファの上だった。




えーと。




起き上がって、時計を見ると、21時。
今日はお昼から飲み始めてしまって、最後に時間を確認したのが…15時…くらい。

その後は、
さらに飲み続けていたのか、どこか、場所を変えたのか…。


おそるおそる、あれこれを確認する。


髪の毛は、濡れていない。
服も、きちんと着ている。ボタンも外れていない。
どこかで一度、脱いだ様子はないけれど…、靴下が片方、無かった。

ポケットにはケータイと財布。道端で貰ったポケットティッシュ。チョコの包み紙。柿の種。

マサヤからの連絡は無くて、なんとなく、ほっとする。

足元にコンビニのビニール袋が落ちていて、中に、おにぎりと、溶けたアイスが入っていた。
レシートの時間は18時。だんだんと時間が繋がる。





『イツキちゃん、大丈夫?今日は少し、飲み過ぎちゃったかな?
まさかあんな事になるなんて、俺もビックリしたけど、楽しかったよ、じゃあ、またね』




ケータイには、そんなメッセージが残っていた。
エッチは、…していないと思うけど、何があったのかは、サッパリ解らない。


ああ、もう。お酒はしばらく止めようと、反省した。





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2018年03月22日

小話「一ノ宮」







一ノ宮は案外、一般的な生活を送っていた。


自宅は事務所から車で10分程。歩いても30分程の距離だろうか。
幹線道路沿いの古いマンション。南向きの2LDK。3階の部屋は窓を開けるとすぐに、高速道路の防音壁が見えるのだと言う。

スーツ姿の一ノ宮は、物腰も穏やかで、そう、怪しい人物には見えない。
昼過ぎに出掛け、明け方に戻るのだが、都心の場所柄、そういう仕事なのだろうと思われるだけ。
ゴミ出しのルールも守るし、マンションの他の住民と、挨拶もする。


部屋は、必要最低限のものしか置かない、ごくごく、シンプルな内装だった。
自炊もほとんどしない。あまり、食事に興味は無いらしい。
興味が無いのはそれだけに限らず、人付き合いや、娯楽や、諸々。

おおよそ欲が無い。




それでも別に、寂しい、つまらない人生、という訳ではない。
その静かさが一ノ宮には合っているし、すぐ身近に、欲のままに生きる男がいるお陰で、飽きる事はない。

正直、黒川の行動を見ているだけで、お腹が一杯という所だろうか。





仕事を終え、部屋に戻る。
シャワーを浴び、明日に必要な物を整える。

部屋の明かりを落とし、小さなグラスにバーボンを入れ
観葉植物に霧吹きで水をやり、葉を、一枚ずつ丁寧に拭く。




その時間が、一ノ宮は好きだった。





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