2018年05月01日

ようやく登場








「……終わった…?」



ホームのベンチに座り、イツキは両腕を抱え、カタカタと小さく震える。
突然に始まり、突然、放り出されてしまい…、まだ、自分に何が起きたのか、はっきり解っていないようだった。

駅は、本来下りるはずの駅より、3,4つ行き過ぎたところ。
ホームは忙しく人で溢れていたが、逆にそれで皆、イツキを気にする事もない。
イツキは慎重に辺りを伺い、呼吸を整え、どうにか、気を落ち着かせる。
こんな事はよくある事だと、事故に遭ったようなものだと、自分自身に言い聞かせる。





とにかく、場所を移動しようと、イツキはベンチから腰を上げようとして…

すぐに、座り直す。



「…………や」



小さく呟いて、また、うずくまってしまった。




ズボンも下着も、ジェルやら何かの液体で濡れていたが、身体を動かすとさらに、中から、何かが垂れた。
そして、そのわずかな感触だけでも、身体の奥が疼いた。

一度も、イかされていないのは知っていたけれど、限界のギリギリの所で止められて…、身体はまだ、その状態のまま、次が…欲しいまま。
イツキはまた両腕を抱え、丸くなり、自分の身体がまだ事の途中なのだと、気付いた。








「………大丈夫?」



そう、イツキに声を掛ける男がいた。

それは、おそらく、先日の…イツキを拉致して乱暴した一味の首謀者。
池袋の、笠原、と呼ばれている男だった。







ようやく登場。
そして、連休へ……笑
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2018年05月07日

小話「海辺のホテル」







東京から少し離れたそのホテルは、特に綺麗でもお洒落でもなく。
それでも、ロビーの全面ガラス窓から見える海は、何よりも素晴らしかった。
歩けば、すぐに海岸に出られるほどの距離。ゴツゴツとした岩場に上がる波しぶき。
繰り返される、波の音。揺れる水面に映る、月明かり。

イツキはロビーのソファに半分横になりながら、ぼんやりと海を眺めていた。









事の後で、重たい身体。
無理やり飲まされた酒のせいで、酷く眠い。
目を閉じると、ただ、波の音だけが自分を包む。
まるで波間にたゆたう様。
このまま流されて、どこかに行ってしまえばいいと、思う。






「……待たせたな。…行くぞ」



迎えに来た黒川が、ソファのイツキを見付け、声を掛ける。
イツキは目を開け、一瞬、黒川を見上げ、また目を閉じ。
気だるい声で「…はぁい」と、返事をした。








特に、設定も無いお話。
ちょっとした箸休め的な…w
posted by 白黒ぼたん at 21:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2018年05月08日








イツキは


電車内で、酷い痴漢に遭っていた。
おそらくは計画的。その道のプロの仕業。
理由も何も解らないけれど、とにかく、身体を極限まで昂られ…
…そのまま、放り出されてしまった。


続きが、欲しくないと言えば、嘘になる。


あちこちを濡らし、少しでも動けばその刺激で達してしまいそうな程、身体の疼きを抱え、……戸惑い、うずくまる所に、
一人の男が近寄り、声を掛けて来た。



「……大丈夫?」



あからさまに様子のおかしいイツキを、見るに見兼ねて、だろうか。
とりあえずイツキは手を挙げ、大丈夫ですから…と言う風にひらひらとさせて見せるが、

妙に、男は、引き下がらない。





それどころか、さらにイツキに近寄り

ただでさえ敏感になっているイツキの、肩に手をやり、身を屈める。







「………キミ、さ。……イタズラされてたでしょ?…電車で…」





そう、耳元で囁かれ、イツキはドキリとして、弾かれたように顔を上げる。
すぐ、真正面にある、男に、イツキは見覚えがあった。


池袋の、笠原。




そして同時に、これらの出来事すべてが、仕組まれた罠であることに気付いた。







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2018年05月09日

小芝居








イツキは動揺していた。
多分、この小芝居はすべて、この男の仕業なのだろうと……思ってはいたが
そもそも、先日のレイプ犯が、この男なのだという確証は無い。


何をどう、拒み、どんな言葉で責めるのが適切なのか、まだ何も、考えつかない。
まして、力の入らない、震えた身体。
股間を濡らしたジェルは、催淫作用もあるのか、


疼きは収まるどころか、焦れ焦れとイツキの身体を犯す。





「………い…え、……おれ、……大丈夫…ですから……」
「……ああ、こんなに服も汚されて…、……ふふ、酷いね…」



男の親切をやんわりと断ってみるものの、聞く耳は持たず。
男は、ハンカチでイツキのズボンを拭う素振りをする。
太ももを摩り、その中心を摩り…、何度も往復し、水気を拭き取るためにか、力を入れ、布地を摘まむ。

その下には、すっかり反応し勃ちあがったままの、イツキ自身があるというのに。



「……………や……、め………」
「…イタズラされて、感じちゃったかな。……仕方ないよね、若いもんね」
「……触ら……ないで…………」


今にも泣き出しそうな顔。か細い声を振り絞り、どうにか、男の手に自分の手を重ね、その動きを止めようとする。


「………あ、あなた、………俺のこと、知ってて、………こんなこと、してる…の?」




イツキは顔を上げ、キっと男を睨み付け、精一杯の虚勢を張る。

その顔が、気に入ったのか、男はさらに、ふふと笑う。








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2018年05月11日

予想通り







「……ん?……どういう事かな?」
「……だから、……何か、……目的が…あって………」
「目的も何も。……キミが、可哀想な目に遭っていたから、でしょ?」



男は薄ら笑みを浮かべながら、上辺は優しく、イツキを介抱している。
それでも密着した身体は離れる事はないし、重ねている手は、指先だけ芋虫のようにもぞもぞと動き、イツキに小さな刺激を与え続ける。

男の指先も体温も、耳元で、囁くような声も、ともすれば耳たぶを舐められそうな気配も。

何もかもが、………感じてしまう。

そんなイツキの状況を、男は明らかに楽しんでいる。



「ああ。思い出した」
「……えっ」
「病院で会ったよね、御茶ノ水の。……カワイイ子だから、覚えているよ」
「…………違う、そんなんじゃ…、なくて……!」

「なくて?………他に、……私と、……どこで会ったかなぁ……?」




なかなか核心に辿り着かない、まどろっこしい会話。
業を煮やしたイツキは、つい、熱くなってしまう。
熱くなって、冷静な判断が出来なくなることが、相手の狙いだというのに。






「………おいで」





突然、男はイツキの手を引いて、立ち上がる。
振り解こうにも、男に本気になられては、太刀打ちは出来ない。

もとい、力の入らない身体。ふらつく、足取り。
このままどうしたって、なるようにしかならないのだと…、半分、諦め
半分は、…………これで、疼く身体が楽になるのかもと、思い。


引き摺られるようにホームを抜け、階段を下り

大方の予想通り、多機能トイレへと、連れ込まれる。






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抵抗








一応、拒んではいるのだ。
「だめ、だめ」と繰り返し、手をバタバタと振り回し、突っ張り
精一杯の抵抗の目で相手を睨み、これ以上近づいたら許さないと、威嚇してみせるのだが、


まあ、役には立たない。



カタン、と個室の錠が下ろされ、イツキは奥の便座に座らされる。
車椅子が利用できる程の広さ。手を伸ばしても扉には届かない。

その、イツキの伸ばした手を、男は掴み
……自分の股間に押し当てる。
服の上からでも解る、充分に張りのあるそれは、間違いなくイツキを満足させるだろうと

イツキは、一瞬ドキリとして、思わず相手の顔を見てしまう。




「……素直な子だね。……欲しい?」


男はまた、笑う。そして、唇を噛みしめ、首を横に振るイツキのズボンを、下ろし始めた。





「………ああ、酷いね。びちょびちょだ…。……これじゃ、風邪、引いちゃうよ…」


下着も、脚も、濡れて、すっかり冷え切っていた。
男の手が伸びただけで、その温かさに、気が緩んでしまう。






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2018年05月12日







男の手はイツキの股間に潜り、指先は簡単に、奥の穴へ吸い込まれて行く。
イツキが「…あっ」と短く叫ぶ間に、男の人差し指と中指は、くちゅくちゅとイツキを掻き回す。



「…………め、……だ…め……」
「イきたいんでしょ?…楽にしてあげるよ」
「……んっ…………んん…」


そんなに激しく動いている訳ではないのに、欲しいトコロに丁度当たる。
止めようと思っても、甘ったるい吐息が、鼻から洩れてしまう。
正面には男の顔があって、イツキは、感じている自分の顔を見られたくないと、必死に顔を背けてみるのだけど
無駄に、首筋を晒すだけ。その無防備な白い肌に、男は唇を寄せる。


「………んー……」


それだけの事で、イツキの中は収縮し、軽く痙攣する。


「……相変わらず、いい反応だね。……楽しみが増えたよ…」


イツキは少し顔を傾け、チラリと、男を覗く。




「……それって…、………前にも、俺と、……したって、事?」
「…うん?………ふふ、どうだったかな…」
「………それで、………まだ、…続きがあるって事?」





この期に及んで、まだそんな事を考えられるイツキを、男は少し意外そうな目で見る。
身体はゆるく、すっかり溶け切っているというのに、最後の芯のような強さが中にあって、


それが面白くて、興味を惹くのだと、男は思った。



posted by 白黒ぼたん at 22:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2018年05月14日

裏目









男は、イツキの中に挿れていた指を一度大きく掻き回し、そして、未練たっぷりに引き抜く。
イツキは身を強張らせるも、無くなってしまった感触を追う様に、腰が勝手にヒクつく。

抜いた指を、男はイツキの顔で拭くように擦り付ける。
独特な臭いが鼻につき、それがさらに、神経をおかしくさせるようだ。



「……続き、……したいでしょ?」



男はそのままイツキの顎を掴むようにし、イツキの顔を自分に向けさせる。
自分を睨んではいるものの、その目は怯え、涙ぐみ、湿った赤い唇からは、はあはあと短い吐息が洩れている。
膿のように溜まった欲情が、今にもぱちんと弾け、溢れ出しそうになっているのが、解る。



その趣味のある者には、イツキは格好の獲物なのだ。







「………おれと…、……こうして、……なんかに、する…気?」
「………何って?」
「……池袋で、何か…、………悪い事してる人、でしょ?」
「悪い事か、…ははは。………キミを囲っているヤツ程じゃ無い……」




話ながら男は、少しお喋りが過ぎると思っていた。
実際イツキは、どうにか残っていた理性を掻き集め、男の正体を探っていた。
小芝居を打ち時間を使ってしまったことが、裏目に出たようだ。






「………それを知ってて、おれに…こんなコトしちゃ、駄目……でしょ?
………駄目だから、………してるんだろうけど………」





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反撃









それは一瞬の出来事だった。




イツキが、男の不意をつくように、身体を動かす。
男は、イツキが逃げ出すのだと思い、咄嗟に、扉の方向へ意識を向けたのだが


イツキが手を伸ばしたのは、扉とは反対側。その先にあったのは、赤い呼び出しボタンだった。

本来、身体の不自由な人が利用するこのトイレには、万が一の為の非常ボタンが設置されていた。
………直に、係員が、様子を伺いにここへやって来る。







「………へえ、……そんな事、しちゃうんだ…?」

男はすぐに、イツキが何をしたのかを理解した。
このままここでイツキを犯すのも、連れ出して場所を変えるのも、どちらにしても、もう時間は足りないだろう。

男はもう一度、イツキの顎を掴み、自分に向けさせる。




「……これで、逃げられたと思う?」
「………すぐに…、……だれか、………来る……」


男に睨まれながらも、イツキは震える声で、そう言う。




その唇に、男は、唇を重ねる。




男の舌は、閉じていたイツキの唇を何度もなぞり、ぬるりと、隙間から割って中に入る。
くすぐる様に歯を舐め、舌を合わせ、絡ませ、吸い上げる。




まるで恋人同士のようなキスに、イツキは頭をくらくらさせながら、どうにか、顔を背ける。




丁度その時、外側から、扉をドンドンと叩く音がした。






posted by 白黒ぼたん at 23:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2018年05月16日

イケシャアシャア








『……大丈夫ですか?……扉、開けますよ?』




扉の外から係員らしき人の声が聞こえる。
当然、鍵は掛かっているのだが、非常時には外から開けられるのだろう。
ドンドンと扉を叩きながら、中の様子を伺っているようだ。



中では、
男が名残惜しそうに、イツキを眺めていた。




「……試さなくて、良かった?」
「何が…」
「セックス。……私たち、身体の相性、イイと思わない?」
「………思わない!」




イツキがムキになって声を荒げたところで、扉が開き、係員が中に入って来た。
少し、予想していた光景と違ったのか戸惑ったように、イツキと男の顔を交互に見遣る。



「ああ、良かった。いや、この子が電車で気持ち悪くなってしまったようで、様子を見ていたんです。
熱でもあるのかな?…動けなくなってしまったみたいで……」


男はいけしゃあしゃあとそんな事を言い、係員がイツキの傍に寄った隙に、脇をすり抜け、

……最後にチラリと視線を流して、外に出て行ってしまった。









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2018年05月17日

その頃の黒川









その頃の黒川は、まあまあ、大きな仕事の真っ最中だった。


西崎と配下の若い衆を数人連れ、負債を抱えた、とある会社に赴き
一頻り暴れた後は経営者に頭を下げさせ、最後に残された土地の譲渡契約書にハンコを押させる所だった。


胸ポケットのケータイが鳴る。





『………マサヤ?』
「今、忙しい。後にしろ」
『…迎えに来てくれないかな…?』
「……忙しいと言っただろう、切るぞ」



隣にいた西崎が、何か急用でも…と、心配そうに黒川を見るも、黒川は、関係ないという風に手をひらりと外に振る。
……その様子と、少し漏れる声で、電話の相手がイツキだと気付く。





『……あのさ、俺、今、駅なんだけど…。……痴漢に遭っちゃって、動けなくなっちゃったんだよね。………迎えに来て?』

「……ハァ?。タクシーでも乗って帰って来ればいいだろう」

『………おれ、今、一人とか、……無理。……マサヤ、来てくんないなら、別の人に頼んでも…いい?』

「……勝手にしろ」








そう言って黒川は電話を切る。




それでも数十分後には、駅の救護室で待つイツキの元に、半ば怒った様子の黒川がやって来るのだった。






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2018年05月19日

代案









『……勝手にしろ』



そう言って、電話は切れて、イツキは少し途方に暮れた。

多分、黒川は来る。……来るとは思うけれど、もし来なかったら、どうしようか。







もう、一人で歩く気力は無かった。
身体も、ココロも、大したダメージは負っていないようだったが、手がずっと震えていて力が入らない。
黒川が来てくれなかったら、佐野でも呼ぼうか。……それとも、ミツオか。
おそらく、優しい声を掛けてくれるし、慰めてもくれる。
その後に、する事になるだろうけど、まあそれも、仕方ないと思う。

最悪、誰も迎えに来れないようなら、
救護室の隅でこちらを心配そうに伺っている、駅の係員でもいいや、と思う。
泣きついて、抱き付けば、とりあえずどうにかなるかな…と、

イツキは、係員に向かい視線を流し、小さくニコリと笑った。






「おい」
「………あ」



呼ばれて、振り返ると、扉を開けて黒川が入って来たところだった。
不機嫌そうに煙草をふかし、舌打ちし、誰彼構わず睨み付ける。

イツキは、勢い、立ち上がり、黒川の元へ駆け寄る。

黒川は文句の一つでも言ってやろうと口を開きかけたのだが
腕にしがみつくイツキがぽろぽろと涙を零すので、ふん、と鼻息だけ鳴らし、イツキを連れて帰るのだった。







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今回の報告








「…電車で、急に、…イタズラされて…、……ちょっと酷くて……」
「……ふん」




駅前のパーキングに停めてあった黒川の車で、移動する。
すぐに部屋に帰るつもりだったのだが、イツキの服が濡れて汚れて…臭かったので、近くのラブホテルへ。
フロントのアルバイトに金を渡し、適当な服と下着を買って来させ、まずは風呂と、湯船に湯を張る。
こんな場所の風呂はとにかく広くて、ありがたい。
一緒に黒川が入って来たのは想定外だったけれど、とりあえず身体を温めて、イツキはやっと安堵の息を付く。





「ほじくり返されて、本番までされて、……馬鹿か、お前」
「だって。………逃げられなかったんだもん…」
「顔は見たのか? 素人じゃ無いんだろう?」


湯船で身体を寄せ合いながら、今回の報告。
今更、ハズカシイも糞も無いのだけど、一緒の風呂は少し恥ずかしい。


「見てない。………でも、終わって、最後に…あの、池袋の人がいたよ」
「池袋の……、笠原か! 奴にヤられたのか」
「ヤられてない。……大丈夫って、声掛けられて、介抱されたけど。……多分、グルだよ…ね?」
「だろうな。…まったく。……迂闊過ぎる。簡単に、引っ掛かりやがって……」


黒川は呆れたといった風に、大きく溜息をつく。

イツキは、一応ごめんなさいと謝り、項垂れる。




笠原にトイレまで連れ込まれ、あやうく流されそうになった事は、なんとなく、話せなかった。





posted by 白黒ぼたん at 22:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2018年05月22日

男の感触








特別、印象深いオトコ、という感じではない。


歳は30代…前半といったところか。
背は黒川よりも少し低いくらい。どちらかと言えば細身、でも筋肉質。
顔もやや面長。目尻の下がった大きな目。すっと通った鼻筋。穏やかに結ばれた唇。

一見すると普通の人のよう。笑うと顔がくしゃりとして、優しそう。
実際、痴漢にあったイツキを介抱したのが、自作自演の芝居ではなく、……本当の出来事なのだとしたら……、なんと優しい人物なのかと思う。

それでも、それは違う。
心配を装い、自分を覗き込むその目の奥は、暗い。
光を全てのみ込み、引きずり込まれてしまいそうな、怖さ。






血管が浮く、筋張った長い手指が、素肌を這う。


艶のある低い声が耳に残る。









「………マサヤ」
「…何だ?」
「………して」


湯船の中で身をくねらせて、イツキは黒川に擦り寄る。
もとより、しない選択肢は無いのだけど、イツキが自分から言い出すことは珍しい。



「なんだよ。……弄られて、盛りがついたのか」
「……そうだよ」




身体に残る、男の感触を早く忘れてしまいたくて、
イツキは、黒川の腕に、しがみついた。






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波の底








まるで、波間に溺れてしまうよう。
息も出来ず。
水面の輝きがすべての救い。

ただ、ただ。

流されていくだけの、恍惚。








「だめ、だめ、だめ、だめ………め…………ッ」



風呂場からどうやって寝室に移動したのか、覚えてはいない。
途中でかなり酒を煽る。多分、素面ではいられない思いがあったに違いない。イツキは。



何か、おかしいと、黒川も気が付いていたが…

それを詮索するよりも、乱れ、溺れていくイツキが面白くて…嵌る。





『…他の男に弄られたトコロを、掻き出してやる』 と、
責めるつもりも無かったのだが、言葉の綾で。
指を、差し入れ、さらに奥へ…、腕の中ほどまで挿れ、揺らす。


本当に壊れる、その際のキワを、イツキの表情を見ながら、黒川は探る。
イツキは、駄目と口にしながら身体を震わせ、すべての刺激を快楽に替える。










まだ。




この瞬間に勝るものはないと、


イツキは少し、安心していた。







posted by 白黒ぼたん at 22:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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