2018年06月01日

梶原と佐野







「俺だって好きでココにいる訳じゃねぇよ。…なあ、イツキ、もう帰ろうぜ?」
「佐野っち、先に帰っても、いいよ?」
「そんなん、社長に怒られるだろう!…せめて事務所の近くにしねぇ?そしたら俺、車置いて行けるし、そしたら飲めるし……」


黒川の命により、大人しくイツキの運転手を務めている佐野は愚痴をこぼしつつ、ノンアルコールのビールを啜る。
梶原と目が合うと、一睨みし、本当につまらないと言った様子で、溜息を付く。


イツキは佐野をなだめる様に、まあまあ、と手をやり
佐野の料理の皿に、自分の分のソーセージなどを乗せ、もうちょっと待っててという風に微笑む。


「どうしようか?梶原。…俺、今は少し…バタバタしてるんだけど…、…でも、大丈夫だから。どっか、遊びに行く?…何か、…大野も一緒でも……」
「んー、そうだなぁ……」


言われて梶原は、またチラリと佐野を見遣る。
……もしかしてその「遊び」にも、コイツが付いて来るのではないかと心配する。
そもそも、何故イツキが今、バタバタしているのか…、聞いてみたいのだけど、多分、それは聞かない方が良いのだと思う。




「…つか、何?…バタバタって…?」




思うのに、聞いてしまう。



「何かヤバイのに目、付けられてるんだよな、な、イツキ。
拉致だのレイプだの痴漢だの。マジ、大忙しなんだよな。
だからお前と遊んでる暇はねーの。ハイ、さいなら〜」



そしてイツキがどう答えようかと口を開きかけた時には、佐野が返事をしていた。






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2018年06月02日

短い逢瀬







「ごめんね、梶原。今度、またゆっくり話そ。……佐野っちは、来させないようにするから、ね」
「……って言うか…、お前、平気なの?……何か、危ない目に遭ってるの?」
「ちょっとだけだよ。大丈夫。……俺、梶原とはもっと話したいコト、あるから。……また連絡するね」
「………うん」

「おい、イツキ、行くぞ!」




ファミレスの駐車場で捲し立てられ、イツキと梶原の短い逢瀬は終わる。
イツキはバイバイと手を振り、佐野の車に乗り込み、梶原も手を振りながら、テールランプを見送る。







久しぶりのイツキは、


多分、自分では気が付いていないのだろうけど、おかしかった。






学校で毎日会っていた頃は、ちゃんと高校生の顔をしていたのに、今は……、可愛く艶っぽく、色気がダダ洩れだった。
元々、そうだったものを隠していたのかも知れないが、今は隠すことさえ、忘れてしまったのか。
話をする時も、いやに距離が近い。良い匂いがする。うなじのあたり…だろうか、掻き上げて確かめたくなる。
言葉の最後の「…ね」の時に、ニコリと笑うのも、反則だと思う。

だいたい、拉致もレイプも痴漢も、さらりと話す事柄じゃない。








「………お祝いは、………お前がいいな。……とか、どーよ?」



残された駐車場で、梶原はポツリと呟いて、一人、顔を赤くするのだった。




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2018年06月03日

佐野とイツキ









「先に事務所の駐車場に車入れるから、そっから歩いて帰るんでも、いい?」
「……車でマンションまで行ってくれても…いいのに」
「んー、……ちょっとお前と、歩きたいかなー…って」



事務所から少し離れた場所の、借りている駐車場に車を入れる。
マンションまでは歩いて数十分の距離。
歓楽街のど真ん中。一本裏道はホテル街。佐野は、下心を隠す気も無し。



「佐野っち…歩いて帰るだけだよ?…エッチ、しないよ?」
「えー?しねぇの?……ホラ、社長が俺を呼んだ時点で、それは、込みってヤツだろ?」
「込みじゃないよ!…もう!」


呆れたように笑って車から降りようとするイツキを、佐野は捕まえる。
イツキの手を取り、自分の股間にあてがう。
服の上からも解る程、そこはパンパンに膨れ上がっている。


「……俺、もう、こんなんなっちゃってるんだけど…」
「…だーめ。……しないよ、佐野っち」
「……お前と一緒にいて、期待するなっつー方が無理だろ?……な、……イツキ」


「駄目。俺、夕べもマサヤとして…まだお尻、痛いくらい。最近…多過ぎて…、無理。
これ以上したら、うんこ、止まんなくなっちゃう。そしたら、困るでしょ?」




大真面目な顔でイツキがそう言うものだから、佐野も、可笑しくて吹き出してしまう。



「色気、ねーコト、言うなよ。…萎えるわ!」
「だって、本当だもん」
「じゃー、エッチは諦めるから、チューだけさせて」
「……………ん」











車の中で、唇を合わせ、舌を絡め、唾液を吸い。
それは別れ際のキスにしては酷く濃密で、



いやらしかった。






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2018年06月04日

クラブ「フェリーチェ」








笠原は縄張りとしている街の一角に、クラブを所有し、そこを活動の拠点としていた。
表向きは普通の、綺麗な女性を並べた、華やかな店だったが
店の奥には賭けポーカーや麻雀などいわゆる…違法な賭博をさせる、会員制の個室があった。



「……カシラ。野田鉄筋の社長、どうします?…ずい分、負けが込んでますぜ?」
「ああ、あれはもう駄目だな。…さっさと回収しないと、飛ぶな……」



事務所で。数台の監視カメラのモニターを覗きながら、笠原は手下の男とそんな話をする。
少額から始めた博打が当たるのは最初の内だけ。やがて額はかさみ、借りた金は底をつき、それを補うためにとさらに金を借り、イチかバチかの勝負に出る。
そうやって、ほどなく首が回らなくなり、客は家も会社も失うことになる。


「……工場の土地、銀行が来る前に、押さえておけよ」


そう言って、笠原は笑った。







部屋の内線が鳴り、手下の男が出る。
すぐに表情は曇り、監視カメラを操作するパソコンを弄る。



「……カシラ。……「フェリーチェ」に怪しい客が来ているようですぜ?」
「……誰だ…?」




切り替えたモニター画面には、クラブのバーカウンターに座る、明らかに一般客とは違う様子の男が映っていた。
連絡によれば入り口のボーイを半ば押し切り、店内に入って来たようだ。
眼光鋭く、威圧感のある佇まい。おそらく同業者だと思われる。



「………おやおや、そう来ましたか…」



それは、笠原が知っている男だった。









posted by 白黒ぼたん at 23:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2018年06月07日

カウンターの客








「……失礼ですが、どなた様からのご紹介でしょうか?」
「なんだよ、この店は紹介が無いと、酒も飲めないのか?」
「……いえ、一応、ご確認をと思いまして……」



バーテンはいぶかし気な表情を浮かべ、カウンターの客に声を掛ける。
一般の店とは言え、一般の一見さんは、そうそう訪れない店。
ホールの隅で、いやにガタイの良い黒服がトランシーバーを片手に、こちらを伺う。



「…そう警戒するなよ、…騒ぎを起こしに来た訳じゃない」


カウンターの客は出されたバーボンに口を付け、少し馬鹿にしたように鼻で笑い、ちらりと店内に目をやる。

奥の扉の向こうには違法な賭博場があり、明らかにこの男はその存在も知っているようだった。







店内が俄かに気色ばみ、笠原が現れる。
黒服と何かを話し、動きを制するように手を挙げ、そして、カウンターの客に近寄る。
バーテンは静かに頭を下げる。



「………黒川さん、…ですね?」



呼ばれるも、男は気付かなかったという風に視線もくれず、煙草に火を付ける。



「…嶋本組、若頭補佐の笠原です。…本日はようこそお越し下さいました」



本来、黒川と笠原の間には上下関係はないのだろうが、店のオーナーらしく、笠原は頭を下げる。

黒川は紫煙を燻らしながら、ごくごく小さく、頭を傾げる。






posted by 白黒ぼたん at 22:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2018年06月08日

偶然








「…驚きましたよ、黒川さん。……あなたがこんな場所にいらっしゃるとは…。何か、私に、ご用でしたか?」


笠原はカウンターの黒川の隣の席に座り、白々しくも、そう言う。
黒川はチラリと笠原を見て、ふふ、と笑う。


「たまたま、立ち寄った店がココだったと言ったら?」
「…まさか。そんなに軽く入れる店ではありませんよ」
「そうだろうよ。……そんな偶然、滅多にあるもんじゃぁ…ないよな」


初対面ではないが、以前何かの折に挨拶をした程度。
煙たい、面倒な相手と認識している同士、探り合いながら言葉を重ねる。



「…ウチのイツキが世話になったそうだな、…駅で、あんたに介抱されたと言っていたぜ?」
「……ああ、……偶然…」


言いかけて、笠原は口を噤む。
……そんな偶然は、滅多にあるものではない。



「……ずい分と贔屓にされているようですね。…高校生とは…、若い」
「まあな、…良かっただろう?」
「…何がでしょう?……ああ、綺麗な子でしたが…」
「……ふん」



胸倉を掴み、殴りかかるような真似はしない。
こんな敵陣で暴れるつもりは、毛頭ない。




ふいに笠原の傍に、手下の男が寄り、耳打ちする。


「……カシラ、席の用意が出来ました」
「…ああ。……黒川さん、折角だ。…奥で遊んで行かれるでしょう?」


それが当然のもてなしだと言う風に、
笠原は賭博場のある奥に視線をやるも、黒川は見向きもしない。
静かに紫煙を吐き、言葉の綾をつく。


「カシラ?……嶋本組の若頭は、叔父貴のハズだろ?」
「………勿論。……これは、ここの店での…呼び名ですよ」
「…そうか。……てっきり若頭の座を狙って、先走っているのかと思ったぜ」







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2018年06月10日

一瞥








「…まさか、そんな。……はは」



と、笠原は乾いた笑みを浮かべる。
黒川は二本目の煙草に火を付ける。



「…笠原さん。俺は嶋本組のイザコザに関わる気は無い…。…あんたが叔父貴と本気でやり合うなら話は別だが…な。
あまり、ふざけた真似はするなよ?」

「……さあ、……何の話ですかね……」

「ただの忠告だ。……俺を怒らせるなよ?」




黒川はふんと鼻息を鳴らし、おもむろにスーツの内ポケットに手をやる。
…一瞬、表情を凍らせたのは、脇に控えていた手下ばかりではない。
それでも、黒川が取り出したのは、鉛色の鉄の塊でも人を傷つけるものでもなく、……数枚の一万円札で
それを、テーブルの上に、はらりと、静かに置く。




「…じゃあな、…邪魔したな」
「……もうお帰りですか?……ごゆっくりなさればいいのに…」
「…ココは、あんたの場所だろ?……人の場所に立ち入るほど、無粋な真似はせんよ」



黒川が椅子から立ち上がる。
控えていた手下が明らかに敵対心むき出しの目で黒川を睨み、身構えるも
笠原はそれを手で制する。




最後に黒川は笠原に一瞥だけくれて、店を、出て行くのだった。







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2018年06月11日

気に入らない男









黒川が帰り、事務室に戻った笠原は、憮然とした顔でソファに座り足をテーブルに投げ出す。
…騒ぎも、暴れもしない…、ただ静かに上から威圧する態度が、気に入らない。
未遂とはいえ身内の男娼に手を出したのだ。…そして、おそらく、その前の拉致強姦も、こちらの仕業と解っているのだろう。

激怒し、正面から乗り込んで来るのなら、それ相応の出方もあるのだが
…どうにも。…ともかく、気に入らない。



「…はは。オンナを寝取られたって言うのに、あの程度ですか。
賭場を荒らす度胸も無い。…大した男じゃないですね」


事務室にいた手下が軽口を叩く。笠原はそれを、睨む。
大体、賭博場を隠すこの店を知っていたのも、気に入らない。

『人の場所に立ち入らない』と言うのは、『自分の場所にも立ち入るな』と言う事だろう。
さらには、それを荒らす気になれば、いつでもそう出来る…とでも言いたいのか。








「………カシラ…」

事務所の隅でパソコンを触っていた別の手下が、恐る恐る声を掛ける。

「…何だ」
「………その、………野田鉄筋なんですが…」
「ああ?……自殺でもしたのか? …相続で揉められたら面倒だ、早く、土地を……」
「…その土地が、もう、別名義に替わっています」



借金のカタに押さえるはずだった土地が、すでに持ち主の手から離れたと聞き
笠原は、手下と一緒になって、パソコンの画面を覗く。






その土地の名義には「黒川興業」と記されていた。









posted by 白黒ぼたん at 20:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2018年06月13日

ひねくれ者







真夜中、黒川は部屋に戻る。
酔い覚ましの水を一杯飲み、寝室に入る。
ベッドに眠るイツキの身体を、壁側に押し退け、空いたスペースに潜り込む。

おもむろに、イツキの髪を触る。

風呂上がりで濡れたまま……、では、無いようだ。




「………ん…、マサヤ…、………おかえり」
「…ああ」
「……遅かった。……おれ、…ご飯、……待ってたのに……」


半分、寝ぼけた様子。


「佐野と、遊んで来たんだろう?……メシぐらい、勝手に食って来いよ…」
「………遊んでないよ?」
「ヤっただけか。……ふふ、遊びの内にも入らないか……」



黒川の軽口に、イツキは…しばらく無反応だったものの、突然、はっと目を開ける。
薄い常夜灯がともる部屋の中。お互いの表情ぐらいは、はっきりと解る。


「俺、ヤってないよ?……誘われたけど、ちゃんと、断ったよ?」
「はい、はい」
「本当だよ?……だいたい、佐野っち呼んだの、マサヤでしょ?……何、それ?……した方が良かったってこと?」



確かに、際のキワまで怪しい雰囲気にはなったのだけど、寸での所でイツキは拒み、何事もなく部屋に帰って来ていたのだ。
……そうだと、決めつけて掛かる黒川に、腹を立てるのも当然だった。


「……マサヤ!」
「ああ、嘘だよ」





ふいに手を伸ばし、黒川はイツキを抱き締める。
わざと怒らせ、ムキになって言い応えするところが見たい…などと、ひねくれ者のする事。




「喧嘩したい訳じゃない。言ってみたかっただけだ、怒るなよ。………イツキ」





黒川は、イツキの耳たぶを噛みながら、そう言った。






posted by 白黒ぼたん at 23:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2018年06月15日

小話「写真」










ある日イツキは一人、事務所の用事を託っていた。
用事と言っても簡単なもので
溜まった新聞紙を束ね、雑誌を束ね、ビールの空き缶を潰し、まとめ
流し台とトイレを掃除し、ヤニのついた窓ガラスを拭く…


「…………」


家政婦かよ、と愚痴を零す事すら通り過ぎ、呆れ
それでも黙々と、片付けものをしていた。





ガサリと、古新聞の山が崩れ、中から大きめの封筒が出て来る。
拾い、何気に中を覗くと、そこには写真が何枚か入っていた。


自分が男に抱かれている、写真だった。






コトの最中に、写真を撮られることは、まあ……ある。
後から見せられたり、脅しの材料に使われたり、知らないトコロで出回っていたりと…イロイロだ。
黒川の手元に来るものも、あるだろう。黒川がどんな様子で、それを眺めているのかは知らないけれど。

ゴミの山の中に紛れているのなら、見て、思い出したくもないものなのか…
それとも本当に、どうでもよいものなのか。




「……ふーん」


イツキは仕事の手を止めて、自分の写真を眺める。
よくもまあ、こんな体勢がとれるものだと思う。
後ろから撮られたものなどは、普段、自分が見ることが出来ない場所なので…新鮮に驚く。
眉間にシワを寄せ、涙とヨダレで顔をぐちゃぐちゃにしている写真は、嫌がっているのかヨがっているのか…区別がつかなかった。





これ以上、見ていると
思い出して、身体が変になりそうだったので、
写真は封筒の中に入れ
ゴミの山に、戻して置いた。






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2018年06月16日

小話「写真・2」








眠りに落ちる数歩手前。
これは現実ではないと気付くのだけど、溢れる記憶に翻弄される。
その昔、といってもほんの1、2年前のこと。








数人の男に何度かイカされ、抗う気力も体力も残っていない頃。
濡れて緩んだ穴は簡単に、次の塊の挿入を許してしまう。
もう、感覚が気持ち悪くて、嫌々と泣く様子が……まるで悦んでいるようだと
男たちは笑い、さらに刺激を与えようと、イツキの幼い中心や乳首を、乱暴に触る。

頭を押さえつけられ、口を開けさせられ、膨張した男のモノを突っ込まれる。
先端が喉奥に当たり、陰毛が鼻先をくすぐる。
舐める事も、ましてや噛みちぎる余裕もなく、ただ、口の中を犯される。
呼吸が出来ず、頭がクラクラとする。


その向こうに、どうにもできない痺れるような快感があって、……困る。




『………すげぇな…、コイツ。……またイクぜ?』



脇で眺めていた男が煽る様にそう呟き、顔の間近でカメラを構える。
パシャパシャとシャッター音が聞こえ、笑い声が聞こえる。


喉の奥で射精され、思わずむせ返り、咳き込む。
汚れた口元に、男は終わったばかりのモノを擦り付け、記念撮影とばかりに
もう一枚、写真を撮る。







「………も、…………や…………」



呟いたのは、記憶の中か、今のイツキか。

イツキは自分の股間に手を当てて、もじもじと腰を揺すっていた。







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2018年06月17日

小話「写真・3」








「……きったねぇな……」



事務所に帰って来た黒川は、束ねられた新聞の山を見て、そう呟く。
紐の結い方が甘く、チラシなどが飛び出し、山は今にも崩れそうだった。
イツキに片づけを頼んだが、まあ、しないよりは多少マシという程度。
ゴミ袋を脇にどかせ、黒川はソファに腰掛ける。


ふと、足元に、写真が落ちているのを見つける。
掃除の途中、どこかからか出て来たものだろうか。


コトの最中の、イツキの写真。
男のモノを口に咥えながら、視線だけをこちらに寄越していた。


いつの、何のものなのか、まったく見当はつかない。……数が多すぎる。
こうなるように、自分が仕向けたのだから、別段、思う所もない。




「……ふん」



鼻息を鳴らし、黒川は写真をゴミ箱に投げ入れた。













黒川が二人の部屋に帰って来たのは翌日のこと。
手には、イツキが好きな寿司屋の折り詰めを持っていた。


「………近くまで行ったからな…」
「…すぐ食べる?…お茶、入れるね」
「…そういや、……事務所の湯飲みが、キレイになってたな…」
「茶渋!落とすの大変だったんだよ。スポンジの裏っかわで、超、擦ったよ」


そう言ってイツキは、穏やかな笑みを、黒川に見せた。











非常に分かりにくい黒川の気遣いww
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2018年06月18日

仕返し









「……や、だ……、や………、…………いや…」





自分の寝言で目が覚める。
イツキは薄闇の中、ここが、どこか、しばらく解らなかったのだけど
自分の部屋で、隣には黒川が寝ていて…、さっきの出来事はただの夢だったのだと
気付いて、一つ、深く息をつく。





あんな写真を見たせいか、昔の事を思い出してしまった。
どれ、という話ではない。どれでも、あの時分はいつも、酷い目に遭っていた。
好きで男に抱かれていた訳ではない。
悔しくて惨めで痛い思いも、いくつも、した。
あれは「仕事」で、そこに自分の感情は無いし、過ぎてしまった事はもう考えないようにしていたけれど
やはり、思い出すと……苦しい時もある。


そう、自分を苦しめた張本人が隣で眠っているのは
不思議。………少し、ムカつく。







イツキは、

寝息を立てる黒川の、鼻を、摘まむ。

少しすると黒川は寝苦しそうに、顔を左右に振る。

そして、目を、薄く開ける。






「………………なんだ?」
「……なんでもないよ…」






イツキはそう言って、黒川の横に潜りこみ、丸くなった。







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2018年06月20日

デートプラン








梶原は都内のガイドブックとケータイを眺め眺め、イツキと、出掛けるプランを考えていた。
本当は卒業旅行よろしく、泊りがけで遊びに行きたいのだけど…それは、キッパリ断られてしまった。
近場で、あまり賑やか過ぎず、それでも楽しくて、……ちょっと落ち着けるところ……

「……いや、別に、落ち着いてどうこうとか、考えてねーし、…恋人同士かよ」

自分でツッコミを入れながら、梶原は誰もいない部屋でふふふ、と笑った。





場所は、都内の海沿いの大きな公園に決めた。
水族館もあるし、観覧車もある。二人でバーベキューは…しないけれど、芝生の広場で弁当を食べてもいい。
夕暮れ時には海が見えるベンチに座る。
今まで、学校で楽しかった事とか、これからの事とか、話す。話して……



「……いや、それだけだから。他に何もねーだろ。……恋人同士かよ」


そう呟いて、梶原はまた、一人で笑った。





約束の日。
実は、梶原は楽しみ過ぎて、夕べはほとんど眠る事が出来なかった。
そのくせ直前になってうとうとしてしまい、あやうく、寝過ごすところだった。
目を覚まし、時計を2回見て、慌てて飛び起き家を出る。
待ち合わせの駅前。改札前にはすでにイツキの姿。



「……ごめんっ、……ちょっと遅れ…た………」





そのイツキの後ろには、憮然とした表情の、佐野が立っていた。





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2018年06月21日

移動中








「ごめん…梶原。本当に……」
「いいよ、仕方ないんだろ?」
「本当にごめん。俺、付いてこなくていいって言ったんだけど…、マサヤが駄目だって…。
……佐野っちがいる方が、アブナイと思うんだけど……」



電車に乗り込み、扉側の手摺りに捕まり、二人並んで立つ。
佐野は少し離れた座席に座り、相変わらず不機嫌な顔で、こちらを見ている。


「……でも、今日は、何も話さないって約束したんだ。一歩離れたトコから、見てるだけって…」
「それはそれで、気になるけどな…」
「いない人だと思えばいいから!気にしなくていいから!」
「……はは…」


梶原は乾いた笑いを零し、佐野をチラリと見る。
……まあ、奴にしても、不本意なのだろうと思う。
それと同時に、そこまで心配し、警戒されるイツキの身辺はどうなっているのだろうかと思う。……それでも、
せっかくの機会なのだ。アレコレ考えていても仕方がないと割り切る。



申し訳なさそうに憂い顔を浮かべるイツキ。
今日は白シャツに黒パンツ。黒のロングコートはチェックの裏地。赤いマフラーが可愛い。



「いいよ、大丈夫だよ、イツキ。普通に、遊ぼうぜ? メシは?腹減ってない? 向こう着いてからで平気? …つーか、実は俺、今、腹ペコ」



梶原がそう言って笑うと、
イツキも、やっと笑って、「……ちょっと、お腹、空いてる」と言った。





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