2018年07月25日

三人の時間








梶原は用事があって、他の教室へと移動中。
聞き慣れた話し声がして階段を見上げると、イツキと大野が、図書室から出て来るところだった。



「…俺、お前に殴られる覚悟だったのに」
「やだ、大野。俺、そんな事、しないよ」



二人、嫌に距離が近い。
ふざけ合っているのか、肩や腕に手をやり、ぽんぽんと叩く仕草。
親し気に微笑む様子に、若干、嫉妬を覚える。



「……あ、梶原…」

先にイツキが梶原に気付き、手を振る。
そのまま階段を降り、踊り場の大きな窓の前で梶原と合流する。
大野はどこか少し照れ臭そうに、梶原に、小さく笑って頭を少し傾げる。
……梶原には、二人の空気感がサッパリ解らない。



「…何?どうした?…図書室で何の話だったの?」
「……んー、……内緒」



今度はイツキが照れ臭そうに笑い、大野を見遣る。



イツキにすれば、キスだのハグだのセックスよりも、
『ずっと友達でいよう』などという言葉の方が、よほど、照れ臭いのだった。




その後は食堂へ向かい、三人で、コーヒーを飲んだ。
こうやって時間を過ごせるのもあと僅かなのだと、知っていたけれど、誰も口にはしなかった。






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2018年07月26日

黒川の背中








「……俺、思うんだけどさ…」
「なんだよ」


マンションの部屋で。
イツキは黒川とベッドの上で。
お互い裸で、濃密な触れあいをした後だというのに、イツキは学校での、大野とのやりとりを黒川に説明しており
少々、ムードを台無しにしていた。


「…お前がトモダチだと思っていたヤツに、実は馬鹿にされていて、しかもズリネタにされていたって話なら、もう、いらん」
「……まあ、そうなんだけど、でも、違くて……」



黒川は身体を起こし、サイドテーブルの上から煙草を取ると、火を付ける。
イツキは枕を高くし、横向きに寝転び、黒川の背中を眺める。
肩の後ろの盛り上がった筋肉、そこから流れる背骨のライン。引き締まった脇腹には小さな古傷。



「……大野は、本当は、梶原が好きなんじゃないかなって……。
…もともと、二人、仲良しだった所に俺が割り込んじゃった訳だし…
それで、俺が、梶原に迷惑かけるわ、勉強の邪魔はするわで……
そりゃ、嫌にもなるよね。
本当に、大野は、梶原が大好きで、心配だったんだろうなって……」

「ハイハイ。恨まれついでに襲われなくて良かったな。それとも仲直りで3Pでもするつもりか?」

「…もう、マサヤ!……俺、真面目に話てんのに、何でそんな意地悪ばっかり言うのさ」



相変わらずの黒川の軽口に、イツキは思わず、黒川の背中をぽんと叩く。
黒川は振り返り、そのイツキの手を掴む。
もう片方の手で吸っていた煙草を、灰皿に置き、それからイツキの手を引き寄せ
もろとも、ベッドに倒れ込むように、寝転ぶ。



「…こんな場所で、他の男の話ばかりするなよ、イツキ。…もうお喋りは、終いだ」




そう言って、イツキの口を塞ぐのだった。






posted by 白黒ぼたん at 23:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2018年07月27日

ムカツク







マサヤに、ムカつく。

いつだって、俺の話をきちんと聞きはしない。
馬鹿にしたように笑って、はぐらかして、セックスを始めれば、それで良いと思っている。

一応、拗ねて、抵抗はするんだけれど、ぞんなの全然効果はなくて、
何故か逆に、楽しまれてしまうのが、嫌。



「…話があるなら、続けろよ。……ほら、どうした?」



指を奥まで捻じ込まれ、くちゅくちゅとやりながら、そんな事を、耳たぶを舐めながら言う。
本当に、ムカつく。








イツキに、ムカつく。


俺の前で、俺の女のフリをしながら、平気で他の男の話をする。
勿論、どうされたって、事実に変わりはないのだけれど
所詮お前は俺がいなければ駄目なのだと解らせたくて、少し、意地悪をする。


イツキの穴に指を捻じ込み、一番、好きなあたりを指先で引っ掻く。
あまり強くはしない。……焦れて、焦れて、あいつがもっと欲しがるまで、いやらしく続ける。
時折、耳たぶを舐め、適当な言葉を囁くと、中をきゅっと締め付けてくる。
早く、何もかも投げ捨てて懇願しろよ…と、思うのだけど…



「……マサヤ。……そこじゃない。………そこ、……マサヤのじゃないと…届かないんだから……。早く…、………早く、して…」



そう、言われたら、言われたで、まるで俺に指図をするようで、ムカつく。







本当に、どうしようもなく。




posted by 白黒ぼたん at 22:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2018年07月28日

事務所で







黒川と一ノ宮は仕事中。
面倒な書類を片付け、一息とソファに移動し、一ノ宮は水割りのグラスを作りテーブルに置く。




「…そう言えば、どうですか?…最近、イツキくんの方は…」



乱暴な手に出る池袋のやり方を危惧して、一ノ宮はそう尋ねる。
黒川は、グラスを一気に煽り、解りやすく溜息をつく。




「…あの、馬鹿。クソ、くだらない。
ガッコーのオトモダチだか何だか知らんが、青春ゴッコか、阿呆らしい。
残り少ない高校生活を楽しみたいだの、何だの、食堂のランチがあと何日しか食べられないだの…、知るかよ!……挙句には、卒業旅行に行きたいだの、抜かしやがる。
熱海か、草津だと。何でチョイスが温泉なんだよ、そんなに裸が見せたいのか?アホか!
……まあ、熱海ぐらいなら知っている宿もあるし、良いかとは思うが…、まったく……」


そう、一気に息巻く。

一ノ宮は自分のグラスを口元まで運ぶ手前でそれを聞き、小さく、微笑む。



「そうですか。…良いですね、熱海なら。
……ええと。……池袋の、笠原の動きはどうですか?…上からの仲裁が入って、多少、大人しくなったようですが……」


「……ああ?……ああ、そうだな。……まだ、様子見だがな……」




笠原の動向を忘れていた訳ではないが、
イツキに毒され、黒川もすっかり学校モードになっていたようだ。


誤魔化すように、空のグラスを一ノ宮に差し出すと
一ノ宮は笑いを堪えて、新しい水割りを作った。




posted by 白黒ぼたん at 22:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2018年07月30日

週末熱海夜話・1








「行ってもいいぜ?…熱海」
「……え…」
「お前と、オトモダチと、3人分。この週末で慌ただしいが、それでも良ければ…」


そう言って黒川はイツキの前に、ホテルのパンフレットのようなものを置く。
最初の1ページを見ただけで、ハイクラスの、良い場所だというのが解る。
広い敷地内にはいくつもの温泉や、プール。屋上には熱海の景色が一望できる露天風呂もあるようだ。


「……え?……うそ、……なんで?」
「…ん?……行きたいと言っていただろう?……丁度、…部屋が空いていてな…」


そう言って、黒川はニコリと笑う。





ただの、優しさ、では無いことは明白だった。





イツキは、パンフレットと黒川の顔を交互に見遣りながら、どういう事だろうかと警戒する。




「……そう、怪訝な顔をするなよ」
「だって、絶対、オカシイじゃん。……こんなの、急に。……何か、あるんでしょ?」
「まあな」
「……何?……向こうで、……お客さんが待ってるとか…」
「……ハハ」


当たらずとも遠からず、と言った様子で、黒川は軽く笑う。



「まあ、大した用事じゃない。心配するな。
ちょっとした集まりがあって、それに顔を出すだけでいい。…ヤらなくても、いいぞ?」





posted by 白黒ぼたん at 23:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2018年07月31日

週末熱海夜話・2







東京駅から電車に乗る。
少し懐かしい感じのする、対面式の座席。


「…スゲェ、熱海。スゲェ…」
「俺、このホテル知ってる。なんか、なんとかアワードで一位取ったとか…、マジ、こんなトコ、いいの?……タダ?」
「……ん。いいらしい…」


急な誘いだったのに、梶原も大野も予定が合い、二つ返事で参加する。
席に座り、売店で買ったジュースやお菓子を広げ、ホテルのパンフレットを眺める。


「…それより、…どうして東海道線? 新幹線にすりゃ、早いのに」


大野がそう言うと梶原は、「…この時間が、旅の醍醐味ってヤツだろ?」と言ってニヤリと笑う。
確かに、とイツキも思い、ふふと笑って、外の景色に視線を向ける。
その様子が、少し…、……これからの事を杞憂しているようにも見える。



「……イツキ。……本当に大丈夫だった?……黒川さんに、何か…言われたんだろ?」
「…んー。まあね。でも別に、大したコトじゃないよ。向こうでちょっとだけ、用事があるだけ…」
「…用事?」
「ん。同じホテルで、なんか…集まりがあって、…顔、出すだけ………」







『……それだけ?……本当?』
『…山野辺って地元のボスがいてな。…そいつと、ちょっと、絡んでくれればいい。
ああ、ヤル必要は無いぜ?……ハグか、ボディタッチか…、それっぽく見える写真が撮りたくてな。』
『マサヤもいるの?』
『ああ、でも他人のフリな。な、簡単なコトだろう?』




半ば騙されるように、甘ったるい愛撫をされながら聞いた黒川の勅令を思い出す。
そう、簡単なコトなのだと、…その言葉を飲み込むように、イツキは目の前のチョコボールをぽいぽいと口に放り込んだ。





posted by 白黒ぼたん at 20:22| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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