2018年09月25日

未遂








「あきれた。……そんな甘ったるいセリフ、どの口が言うんですか…」



黒川がイツキとの電話を終えると、それを待っていたかのように後ろから声が掛かる。
場所は、ホテルの一室。



「…聞くなよ。……悪趣味だな」



若干、気まずいように黒川は薄笑いを浮かべ、ケータイをスーツの内ポケットにしまう。
振り返った視線の先には、……濡れた髪をタオルで押さえる、秋斗がいた。



横浜でちょっとした打ち合わせの後、取りあえずお決まりのように、ホテルに誘ったらしい。
軽く触れあい、服を脱ぎ、コトの前に、シャワーを使いたいと秋斗がバスルームに向かう。
……その隙に、黒川は、イツキに電話を掛けていた。





「…イツキくんですか?……相変わらず、トラブルメーカーですね」
「…まあな」
「それが可愛くて仕方が無いってトコですか?」




半分、呆れ、秋斗はふんと鼻息を鳴らす。
そして、黒川が立つ窓側に歩み寄り、カウチに引っ掛けてあった自分の服を取る。
そのままバスルールに引き返し、今度は下着を身に着け、外に出て来る。



「……なんだよ。……帰るのか?」
「……たまにはお付き合いしよっかな…って思ったけど。止めます。……社長も『僕』じゃ、ないんでしょ?」





秋斗はすっかり冷めてしまった様子で、頬を膨らませながら、着替えを済ませる。




最後にしばらく黒川を見つめてみるが、引き止める様子もないので、

「……じゃ、失礼します」

と言って、部屋を出て行った。





posted by 白黒ぼたん at 21:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2018年09月26日

微熱







翌日。
黒川が戻って来るまで、イツキは言い付け通り、ずっと部屋に籠っていた。
…実は少し熱を出し、動くに、動けなかったのだ。



「…熱?……裸で寝ていたのか?」
「違うよ。マサヤ、そればっかり…。……夕べ、ソファで転寝しちゃって…」
「似たようなモンだろう」



寝室のベッドに横になるイツキ。隣に立つ、黒川。
脇のチェストには、飲みかけのペットボトルと体温計。
黒川は手を伸ばし、イツキの頬に触れる。

「……もう、大分、下がったんだけど……」

そうイツキは言うが、身体はまだ若干熱い。
黒川は呆れたように、ふんと、鼻息を鳴らす。







昨日の電話とは違い、態度の悪い男。
……もっとも、昨日、電話を掛けて来たタイミングも最悪なのだけど、幸い、イツキはそれを知らない。



「……マサヤ、……シウマイ買って来た?」
「……あ?……ああ」
「…ん。……起きたら、……食べるね…」


そう言って、イツキは、すうと眠りに落ちて行った。








態度の悪い最悪な男は、目の前の子供を
「少しばかりくれてやった甘い言葉に酔い、熱を出す、馬鹿な奴」だと
心の何処かで、確かに、思っていない訳でもなかったのだが




それ以上に、何か…違う気持ちがあることは、自分でも解っていた。






posted by 白黒ぼたん at 23:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2018年09月28日

食卓







熱も下がったイツキは、久しぶりにキッチンに立つ。
少し前に買っていた、ステーキ用の良さげな肉をくんくんとやって、まだ大丈夫そう…と、フライパンに落とす。
味付けはシンプルに塩コショウ。それでも岩塩をミルで挽くと、なんだか格段に美味しくなる気がする。

コンビニで買った袋入りサラダを、ボウルにざっと開ける。
海苔をちぎり、じゃこを巻き、ごま油を掛けるのが最近の流行りだ。

リビングでは、すでに黒川が、冷えたビールをグラスに注いでいる。
お土産のシウマイは、冷たいまま食べる方が、好きだった。




「……まだ、横浜の仕事って、あるんだ?」
「ああ。ほとんどリーに任せているが、たまにな……」
「…秋斗くん、元気?」
「………ああ」


夕べ、黒川と秋斗が一緒にいたことを、イツキは知らないはずだったが
何気ない言葉が、まるで探っているようにも思えて、無駄に戸惑う。
黒川にしてみれば、結局何も無かったのだから、問題は無いだろうと考え

イツキにしてみれば、実は、意外と、どうでも良い話だった。


幸い、この二人には、一般的な、肉体の貞操観念が欠如している。





「…肉。…焼き過ぎだな……」
「んー。ちょっと古かったから、しっかり焼いてみた」
「ふん。……まあ、ウマいけどな…」


そう言って、肉を口に運び、ビールを飲み、肉を口に運ぶ。
イツキは黒川が無事に肉を食べるのを確認してから、自分はシウマイを小皿に取る。


「俺、これ、好き」
「……今時、どこでも買えるぞ?」
「マサヤがお出掛けして、お土産に買って来るっていうのが、いいんじゃん」


イツキはシウマイを口に放り、ニコリと笑う。
黒川はそんなものかね、と鼻を鳴らし、イツキのグラスにビールを注いだ。






posted by 白黒ぼたん at 16:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2018年09月29日

確認・1







どれくらい飲んだかと言えば、二人でビールの350缶を3本。
その後で、うやうやしく登場した大吟醸の一升瓶を、半分ほど。
イツキがうつらうつらとした所で、黒川はイツキの手を引き、寝室へ。
コトを始めるには十分なお膳立て。酒臭い吐息も、どちらのものか区別もつかない。



「……むり、……おれ、…ねむい……」



裸になったイツキはそう言って、黒川の首の後ろに手を回し、腰を摺り寄せる。
言う事とやる事がちぐはぐなのはいつもの事なので、黒川は構わず、イツキの中に指を挿れる。
いつも、手の届くところに置いているジェルを、すくい、入り口とその奥を丹念にほぐす。
イツキは「……ん、……ん……」と甘ったるい鼻息を上げながら、さらに黒川の身体にしがみつく。



「……ふ。…良さそうだな…。……お前は、本当に……、飲むと、穴がゆるくなるな……」
「…マサヤ、と、……だからだよ?」
「……どうだか…」
「マサヤ?」




ふいに、イツキは正気の目になって、黒川を見つめる。
首に回していた手をするりと落として、そのまま、黒川の頬に、手をやる。



「……俺は、マサヤの、……なんでしょ?」
「…ああ」
「…だったら、マサヤとするのが、いいの……、決まってんじゃん?」
「…ああ、……そうだな…」




妙な言葉遊びのような気もして、黒川はイツキの顔を覗き込む。
イツキは、ニコリと笑う。







posted by 白黒ぼたん at 23:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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