2018年10月21日

宴席・13








一ノ宮が車を回して迎えに来たのは、それから数時間後。
会食があったクラブの、近くのバーで、黒川は一人で飲んでいた。


「………イツキくんは?」


一ノ宮が尋ねるも、黒川はふんと鼻息を鳴らし、グラスに口を付けるのみ。
重たい口を開いたのは、それからさらに、杯を重ねた後だった。







『……どういうつもりだ。…馬鹿か!』
『……だって、……あのままじゃ、……あそこで喧嘩になっちゃったじゃん…』


笠原が先に席を立つと、黒川はイツキの胸ぐらを掴むようにして引き寄せ、問い詰める。


『そんなもの、どうにでも出来る。……ヤリたかったのか?奴と!』
『……マサヤ、……怒んないでよ……。…セックスなんて、…穴、貸すだけだって。…洗って返せばいいって、…マサヤ、いつも言ってるじゃん…』
『……な…』


黒川が返事に詰まる間に、ホールの向こうで笠原がイツキを呼ぶ。
車の用意が出来き、これから……ホテルへ向かうのだ。
扉の前に立つ笠原は不敵に笑う。
…仮に、多額の金が動くにしても、……この一件は、笠原の勝ちなのか。


『……せっかく俺が、……拒んでやったのに…』
『ん。……嬉しかった』


照れたようにはにかみ、俯くイツキは、これから別の男に抱かれに行く。


『……大丈夫。……俺、マサヤの、でしょ?』



posted by 白黒ぼたん at 22:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2018年10月22日

宴席・最終話








『……大丈夫。……俺、マサヤの、でしょ?』
『……ああ』
『…ん。……じゃ、ちょっと行って来ます』



そう、まるで買い物か何かに出掛けるように、イツキは行ってしまった。





今まで、散々、他の男にイツキを抱かせて来たのだから、
今更、一つや二つ、それが増えようが、大した問題は無いはずなのだが……
何か、どうも、……黒川の胸の奥にはザラザラとした違和感が残る。
笠原が異様にイツキに執着していたためか。イツキが、笠原との行為に、いつもとは違う感覚を覚えていたからか。

黒川の、イツキに対する感情が、変わったのか。











事の次第をかいつまんで、黒川から聞いた一ノ宮は
少し驚いた様子で、感嘆の声を上げる。
イツキを売りに出すことは、最近でも…たまにある事だったが、その事で、こんなに黒川が荒れるのは、初めてだろう。


「……それは。……イツキくんに、……助けられましたね」
「ふん。…馬鹿のくせに、気張りやがって……」



黒川はそう吐き捨てて、手元のグラスを一気に煽った。








おわり


posted by 白黒ぼたん at 20:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2018年10月24日

結果オーライ







連れて来られたのは都心のホテル。
すでに部屋は押さえてあったのか、スムーズに部屋まで案内される。
イツキは、黙ったまま、笠原の数歩後ろを歩く。



「……静かだね」
「………」
「…ふふ」



部屋は上階のスイート。バーカウンターには洋酒がずらり。
リビングの壁はほぼ窓ガラス。パノラマの夜景が広がる。



「どうする?…飲み直す?」
「…先、シャワー浴びてきて、いいですか?」
「…ああ」



ろくに顔も合わせないまま、イツキはバスルームに向かう。
笠原は上着を脱ぎ、ネクタイを解き、酒を飲みながらイツキを待つ。











笠原にしても、この状況は少し意外だった。
事を急いたか、思いのほか、黒川とのやり取りが熱くなってしまったのだが
そこで、イツキが、自分から身を差し出してくるとは思わなかった。

あのままでは、騒動が起こるとでも思ったのか。
良い心がけと言うか、お人好しと言うか。……ただの甘ちゃんと言うか。

ただ、意外だと思ったのは、黒川も同じなのだろう。
……驚き、悔しがる様子が見て解った。
一応、取引として金の話もし、さらに以前の野田鉄筋の土地など、笠原側の負担も大きかったが……







ガウンを羽織り、バスルームから出て来たイツキを見ると
……まあ、それも良し、と、思うのだった。






posted by 白黒ぼたん at 23:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2018年10月25日

ビジネスライク







バスルームから出て来たイツキは笠原と目が合うと、何の挨拶なのか、一度ぺこりと頭を下げ、寝室へ向かい
「お待たせしました、…どうぞ」などと
まるで色気のない言葉で誘う。



「…せっかちだなぁ。…やっと、こんな状況になったのに、少しは間合いを楽しまないと…」
「でも、…する事は、…一緒でしょ?」


イツキはベッドの縁に腰掛ける。その脇に、ロックグラスを持った笠原が近寄る。

先ほどのクラブでは、黒川を遮り、こなれた様子で男を誘い
部屋に入れば淡々と、ビジネスライクに事を進めようとする。

それでも目前に立てば、イツキが緊張し、身体を強張らせているのが解る。
何気に手をやり髪の毛に触れると、びくりと肩を震わせ、遠ざける様に少し身体を反らせてみせる。



「……じゃあ、何で自分から引き受けたの?……黒川を、助けるため?」
「…別に、…俺は…、……こういうの…が…仕事だから…」
「…ふぅん?」



笠原はイツキの髪の毛を後ろに引っ張る。同時に、イツキの顔が上がる。
進んで仕事に勤しむ割には、怯えた目、嫌そうな顔が堪らない。



「じゃあ、……始めてもらおうかな」







posted by 白黒ぼたん at 22:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2018年10月29日

垂れ流し









一応イツキが、もてなす側、なのだろうか。

笠原はスーツの上着だけを脱ぎ、ベッドに上がると、枕を背もたれのようにして上半身は起す。
イツキは、笠原の太ももあたりに跨り、笠原の正面に向かう。
イツキのガウンが肩まで開けているのは、わざとなのか、たまたまなのか。
それでもまだ、そう、色気は滲まない。いかんせん、顔が、嫌そうだった。

笠原が鼻で笑う。



「プロ、なんだろう?…もっと、良い顔、見せろよ…」
「…………」


返事の代わりにイツキは笠原のネクタイを解く。
シャツのボタンを一つ、二つ、外し、首筋に顔を埋め、ちろちろと舌を這わせる。
笠原はイツキの肩に引っ掛かっていたガウンを胸のあたりまで下す。
肩から背中に手をやり、ぐっと抱き寄せる。イツキの細い身体が、笠原の腕に納まる。





ふいに、イツキが腕を突っ張り、笠原と少し距離を取る。

お互いほぼ裸で、こんなに近くにいて、これから間違いなく行為に及ぶというのに…

まだ、きちんと顔を合わせてはいない。

もちろん笠原とて、イツキが本当にここに来たくて、来た訳ではないと解っている。

「仕事」と言う割には徹し切れていない態度。
イツキがこの道に手練れているというのは、買い被りだったかと、笠原が思い始めた頃。






「………だって。……笠原さんと…して、……すごい良かったら…、どうしようって…。……俺、……戻れなくなったら、……困る……」



上目遣いで色気を垂れ流しながら、イツキはそんな事を言う。




posted by 白黒ぼたん at 23:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2018年10月30日

薄明り







笠原は手を伸ばし、イツキの頬に触れる。
イツキは、いつの間にかもう始まっていたのか、びくりと震え、潤んだ目を笠原に向ける。



「……困ればいい」



今度は簡単に離れられないように、笠原は強くイツキを引き、そのまま二人、ベッドに横になる。
顎を掴み顔を向けさせ、唇を合わせる。
イツキは短く「…あ」と息を吐いて、腕を笠原の首の後ろに回す。
背中のシャツを掴む。笠原が片手で自分のシャツのボタンを外すと、イツキはそれを後ろに引っ張って脱ぐのを手伝う。
イツキのガウンは、もう、身体を捩らせている間に、胸まですっかり肌蹴てしまっていた。


「………んっ……」


笠原がイツキの胸に手をやり、小さな突起に触れる。そこはすでにピンと張り、爪の先で引っ掻かれると痛いほど。
イツキの反応に気を良くした笠原は、さらに乳首を摘まみ、コリコリと擦り合わせる。


「……おれ、…そこ、……だめ……」
「…ふぅん」



お互いあちこち触りながら、残っていた衣服もすっかり脱いでしまう。
部屋の中は薄明り。イツキは







笠原の裸を見るのは、初めてだった。
正面からは見えないのだが、背中には、鮮やかな色彩の不動明王が彫られていた。





「………笠原さんって…」
「…なに?」




『ヤクザみたい』と言いかけて、止めて、
イツキはふふ、と小さく笑った。




posted by 白黒ぼたん at 23:34| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記
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