2018年11月22日

階段・6







最初、秋斗から声を掛けて来た時には、黒川は
秋斗は何か下心か目論みか…ただの愚痴相手以外の目的があるのだろうと思ったのだが…

それは違った。
純粋に、愚痴を零す相手が欲しかっただけだった。



「…僕がこーゆー仕事をしているのは、百も承知なんですよ? 全部解ってて、納得した上で一緒になったのに、……今更……」
「足を洗って、カタギになれとでも言われたのか?」
「言わないんですよ!…言いたいくせに、言わないんですよ?」
「……言って欲しいのかよ?……どっちだよ」



冷蔵庫に入っていたビールと洋酒。それから自動販売機で買った日本酒のワンカップを空けて、秋斗は管を巻く。
黒川は若干面倒臭げに、適当に返事をしながら、そろそろお開きにするかと時計を見る。

その、視線を外した一瞬に、秋斗は黒川に抱き付く。




「……社長…。……僕」
「…飲み過ぎだろう、秋斗」



黒川は一度、秋斗の身体を引き離す。けれどすぐに、秋斗が再び抱き付く。
勢い余って、そのまま、ベッドに倒れてしまう。













清水とイツキは店を出る。
駅への近道の細い路地は、右にも左にも、ラブホテルの看板が光る。
意識をするな、という方が無理な話で
清水はその看板の一つの前で立ち止まり、軽く、親指を差し向ける。




「……じゃあ、さ。……俺も、最後に一回だけって言ったら、どうする?」






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2018年11月25日

階段・7









「……だめ、です…」
「…俺、もうココ、離れるんだぜ?……しばらく、会えなくなる…」
「……うん…」


ホテルの入り口のすぐ横で、清水はイツキを口説きに掛かる。
…一応、男同士。…通行人が少し不思議そうに二人を見る。
イツキは視線を逸らせ下を向く。
キッパリと、断らなければいけない事は解っている。



「イツキ。お前とは…イロイロあったじゃんか。…良い事も、悪い事も。
…最後はさ、お前のこと、ちゃんと抱き締めたい。…お前のこと、ちゃんと、俺ん中に残したいんだ。………駄目?」




耳元で甘く熱く、そう囁かれる。
イツキは返事に戸惑い、清水は、返事が無いのは「駄目」ではないのだと、判断する。
イツキの背中に手を回すと、ぐっと引き寄せ、そのまま入り口に向かう。

曇りガラスの自動ドアが、静かに開いた。












黒川と秋斗は身体を絡めたままベッドの上。



黒川は秋斗の頭に手をやる。イツキとは違う黒髪は、艶やかで重たい手触りだ。
少し、秋斗が顔を上げ、すがるような眼で黒川を見つめる。

唇を合わるのは自然な流れで、それを途中で止める事は出来なかった。





posted by 白黒ぼたん at 00:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

階段・最終話







翌日の昼下がり。
イツキと黒川はマンションのエントランスでバッタリと出会う。
イツキは部屋着姿のまま出てきた所で、黒川は、外から帰って来た所。

お互い、前の晩に何があったなど、知る由もなし。




「マサヤ。おかえり」
「…ああ。…何だ、出掛けるのか?」
「んー。…お腹、空いたから、コンビニでも行こうかなって…。マサヤ、何か、いる?」


そう言ってイツキは微笑む。……あれだけ淫猥な身体のくせに、昼日中の光が似合う。
黒川は若干寝起きの風情。珍しく乱れた髪に手をやり、少し考えている様子。



「……メシでも行くか。……焼肉、行きそびれたしな…」
「え、いますぐ?……じゃあ、俺、上着取って来る…」
「いや、いい。……どうせ、すぐに脱ぐ…」







黒川は踵を返し、マンションを出る。イツキは慌てて小走りで、黒川の後を追う。

手を挙げ、止まったタクシーに乗り込む前に



イツキは、黒川に追いつき、その腕にしがみついた。








おしまい




posted by 白黒ぼたん at 21:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2018年11月28日

朝と夕方







朝。
黒川が目を覚ました時、すでに、隣で寝ていたはずのイツキの姿は無かった。
どうやら学校に行ったらしい。
アホらしい、ごっこ遊びも、あと数えるほど。
特に感傷がある訳でもないが、この先、生活のリズムが変わるかも知れないなと…少し、考える。

まあ、どうでも良いが。

寝室を出て、リビングへ。
テーブルに、今朝の新聞が置いてあるのは、朝の唯一の、イツキの仕事。
黒川はインスタントのコーヒーを淹れ、その新聞を広げた。





夕方。
イツキが部屋に帰ると、すでに黒川は出掛けた後だった。
キッチンを覗くと、灰皿とコーヒーカップが流しに置いてあり、イツキは一人満足気にうなずく。
二人で暮らしているからと言って、家事らしい家事はほとんど無いし、その分担なども無いのだけど…せめて
灰皿は流しに、と何度も言い続け、最近はやっとそれが守られるようになっていた。






黒川から電話が入る。

夜は肉と魚のどちらが良いかと聞かれ、今日は魚と答えた。












繋ぎの「どうでも良い話シリーズ」ですw
拍手の方はしばらくそのままで…
posted by 白黒ぼたん at 00:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2018年11月29日

夜は魚






いつも行く、武松寿司に向かったのだが
仕入れの都合で臨時休業だと言う。
仕方なく、駅前をウロウロしていると
イツキが、あそこに行きたいと、賑やかな店を指さす。



「……回転寿司だぞ?」
「前に梶原と行ったんだ。美味しかったよ、面白いし」
「……ふん」



黒川は鼻息を鳴らし、イツキに付き合う。
回転寿司と言ってもピンキリで、本当に美味しい店もあるのだろうけど…
…そこはまあ値段なりに、…そこそこ、といった様子。



何が楽しいのかイツキはニコニコ笑い
知ったような顔で、湯飲みに粉末の茶葉を入れ、お湯を注ぐ。
割り箸を取り、醤油を取り、レーンに載って回って来たわさびの小袋を取り
準備万端とばかりに、目の前を通り過ぎる寿司の小皿を吟味する。



黒川は、早々に日本酒を頼む。
ツマミにと、中トロの皿を取り
ネタだけ食べると、シャリは、イツキにやるのだった。














またまた、どーでも良い話を…w
メッセージで回転寿司の話が出たものですから…

新幹線に乗って来る注文の皿を取る黒川を書きたかったんですが…
さすがに……www
posted by 白黒ぼたん at 00:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2018年11月30日

怒る、黒川






「きちんと確認しないお前が悪いだろう!」
「…だって、マサヤだって…」
「だっても糞もあるか!……使えん奴め!」
「………!!」




一ノ宮が事務所に入ると同時に、そんなやりとりが聞こえ
擦れ違い飛び出して来たイツキは、酷く、不機嫌…と言うより泣き顔に近いものだった。


「…どうか、されましたか?」


心配になって、一ノ宮が声を掛ける。
黒川は「…ふん」と悪態をつき、煙草を咥え、カチカチとライターを鳴らす。




その日は一日中、黒川は仏頂面で態度も刺々しく
仕事の話をしに来た西崎などは、とばっちりを受け、酷く散々な目に遭った。

けれど結局、誰も、イツキとの口論の理由は、聞き出せなかった。











黒川の服はほぼ、洗濯はクリーニングに出すのだが
下着や、タオル類などは、家の洗濯機で洗い、そのまま、乾燥機にかけていた。

よもや、喧嘩の原因が

イツキが間違えて黒川のシャツを洗ってしまい、乾燥のし過ぎで縮ませてしまったから、とは

口が裂けても、言えなかった。









ちっちゃい男だな! 黒川!
posted by 白黒ぼたん at 00:21| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記
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