2019年03月23日

林田さん・4







「……でさ、俺はしばらく彼女作る気はないんだけど…、会社の女どもがウルセーのよ。
……ハーバルのミカちゃんも、俺狙いっしょ?……いや、モテるアピールじゃないけどさー」



部屋にはすでに酒とツマミが用意されていた。朝のうちから、仕込んでいたらしい。
単純に酒好きなのか、イツキの心配をよそに林田は好きに飲み始め、良い感じに出来上がって行く。
ありがたい事に、未だに、イツキを普通の男子と思っているようで、何のてらいもなく自分の女性関係の話などをする。


おかげでイツキも、変に身構える事もなく、久しぶりに楽しい酒を飲む。


「……まー、……前カノ引きずってるって言われると…それまでなんだけど。まだ、なんか、整理付かないんだよね……」
「林田さんって、一途なんですね」
「いやっ、別にっ……でもなー、そういう所が面倒臭いとも言われるんだよなー…」


林田は苦笑いを浮かべ、ビールを空ける。立ち上がり冷蔵庫に向かい、冷えたビールを2本取り、イツキの前のテーブルに置く。


「……イツキくんは?……なんか、そういうの無い?……一人でこっち、来たんだろう?……寂しくなったりしない?」
「無い…、というか、そもそも…そんな…相手は……いなくて……」
「いないの?」
「いないんですけど……、………面倒臭い相手は……います……」

「いるんだっっ?」




イツキも酔ってきたのか、少し、気が緩む。
いよいよ話が面白くなってきたと、林田は鼻息を荒くして、身を乗り出した。





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2019年03月24日

林田さん・5








「何?誰?…彼女?」
「……か…彼女ではないんですけど…、……まあ…ずっと一緒にいたんですけど……」

興味津々の林田は、イツキの話に喰い付いてくる。
イツキは…、こんな話はそうそう人にするものではないと解ってはいたけど、……どこか、誰かに、聞いて欲しい気もあったし

何より、すでに酔っ払っていた。


「今は、ちょっと事情があって…離れてるんですけど…、……連絡とか、無くて……
……俺からするべき?……いや、……違うと思うんですよね……、向こうが、……してくるのが…、当たり前…っていうか………」


ぽろりぽろりと本音が零れる。
知らない土地で気丈に振る舞っていても、やはり心の奥底では、いつも黒川の事を考えてしまう。
自分が思うのと同じように、黒川も、自分の事を思っているのだろうか。
今すぐ迎えに来いとは言わないが、せめて、連絡くらい寄越しても良いのではないか。



「……そっか…、連絡入れるタイミングって、結構難しかったりするよね。2,3日過ぎちゃうと、今急に電話したら変かな、とか考えちゃったりして……」
「それにしてもですよ?……気になんないのかな、とか……ちょっと、……思い出すとか……」
「あー、………その子のこと、好きなんだねぇ、……イツキくん」



林田の素直な感想に、イツキは思わず厳しい目を向けたのだが、丁度林田はビールを飲むためにグラスに口を付け、下を向いたところだった。
林田も、耳まで赤い。実はかなり、酔いが回っている。



「……そーゆーのはさぁ、……こじれる前に、サクッと電話した方がいいよ。何も無かったみたいにさ……」
「だって…、おれ、から、とか、…………シャクで……」
「そんなのも全部さ、解ってて、折れてやるんよ。……器の違いってヤツ?………懐深いトコ、見せつけてやるんよ…」



イツキは憮然としながらも、そんなものなのかなと、少し真面目に考えてみる。






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2019年03月25日

林田さん・6






イツキは憮然としながらも、少し真面目に考えてみる。
待っていたところで、黒川が、そうそう連絡を寄越さないことは知っている。
片意地を張った所で、損をするのは、いつも自分なのだ。



「……サクッと…、電話ねぇ……」
「そう。サクッと。……大丈夫。俺たち何も変わってないよ、って。……ずっと、……す……」

急に林田の言葉が途切れる。
見ると、何故かボロボロと涙を零していた。
どうやらこの話は、林田にとって、苦い思い出を蘇らせるものだったらしい。

「………林田さん?……大丈夫ですか?」
「えっ?……いや、その、これは違って……っ」

驚くイツキを尻目に、林田は慌てて洗面所に駆け込み、そのまま暫く出て来ることは無かった。









「……あー、ヤベヤベ。……マジで泣いたわ、格好ワリィ……」

林田は鏡に向かい、赤い目を擦る。…前の彼女を思い出してしまった。
何かのきっかけで擦れ違い、こじらせ、そのまま自然消滅してしまった恋。
タイミングなど、ほんの些細なもの。少しの差で、その先が大きく変わる。

「ハズカシイ…。中二か、俺は……」

冷たい水でハシャバシャとやって、幾分、酔いも冷めた気がする。
気分も新たに飲み直そうと、部屋に戻ると、……待ちくたびれたイツキは、ソファにもたれ掛る様にして眠っていた。

「……あー……」

偉そうに講釈を垂れた挙句に泣くという、みっともない所を見せ、その弁解も出来なかった。
林田は苦笑いを浮かべ、うとうととやるイツキに毛布を掛け、自分は一人、もう少しだけ…と、飲みかけのビールを煽った。





テーブルは、冬にはコタツになるタイプ。
その周りに、座椅子に毛が生えた程度のローソファー。
向こうの和室には客用布団を敷くスペースもあったが
家で飲み会をすると、みんな大抵、このソファでゴロ寝になった。

林田も、自分の布団には行かず




………イツキの隣りで、寝入ってしまう。






posted by 白黒ぼたん at 23:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2019年03月26日

林田さん・7








ソファでうとうととやっていた林田は、ふと目を覚ます。
……やはり、こんな場所で寝入っては風邪を引く。ちゃんと、向こうの和室の布団に行かなくては……と、近くで寝ていたイツキに手を伸ばす。

起して、布団で寝ようと、声を……掛けようとして、……一瞬、手が止まる。



「………こいつ、……キレイな顔、してるよなぁ……」



最初に出会った時から、当然、それは思っていたけれど、寝顔を見ても、改めて思う。
整った顔立ちに、長いまつげ。赤い唇。
その全てを引き立てているのが、男のものとは思えない、きめの整った素肌だった。

伸ばした手を、頬に当てる。



「………すべすべ…。……はは、……子供みたい………」




若干、アルコールの残る、頭。
どこか呆けているのか、林田はしばらくイツキの頬に手をやったまま、手触りを楽しむ。

指先でくるりと円を描く。

感触がくすぐったかったのか、イツキは肩をすくめ…、まぶたをぴくぴくとさせ、薄く目を開く。





「……………の?」
「…えっ?」





イツキが何か言ったような気がして、林田は聞き取ろうと、顔を近づける。
覆いかぶさるように顔を寄せる。距離感がオカシイのは、事故のようなものだと思う。


イツキが、チラリと、林田を見て、ニコリと笑う。





「……………しないの?」


そう言われる前から、とうに林田の理性は、どこかに吹き飛んでしまっていた。





posted by 白黒ぼたん at 19:30| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記

2019年03月27日

林田さん・8







目の前にいるのが、まだ知り合って間もない少年だとか、アルコールが残っていて、冷静な判断が出来ない…だとか。

考える前に、唇を重ねてしまっていた。
イツキの唇は思った以上に柔らかく濡れていて、感触を確かめる様に、もう少し…と前のめりになると、……舌が、ぬるりと入って来て、驚く。
けれど、絡めるのかと思うと、すぐに引っ込む。
追うように、イツキの唇を割ると、……まるで林田が無理強いでもしたように微かに抵抗され、「………ん」と、吐息を洩らされる。

さらに奥へ、立ち入る。

ぴちゃぴちゃと唾液と舌を交え、イツキはさらに艶っぽい息を吐く。
……林田は、イツキが自分のキスに感じているのかと……うっかり錯覚する。
少し、唇を離すと、イツキが顔を背け、そうすることで林田の目の前にはイツキの耳元と白いうなじが見える。

耳の下に顔を埋める。
イツキが「………あ…」と声を上げる。
ざわりとイツキが総毛立つ感覚が、林田にも伝わる。






どん、と音を立てて、身体中の血液が林田の下半身に集まる、……そんな気がした。
集まり、熱くたぎり、膨張し、はち切れそうになる。
勿論、この感覚が何なのか、林田にも解っている。そして、こんな感情になってはいけないことも解っている。


けれども、どう制御することも出来ない。





「………ヤバイ、………俺、………変だ………」
「……………ん…?」
「………た………勃ってる。………ヤバイ……は…は……」




林田は、男同士の行為の経験は無く、当然、男相手にこんな感覚になるとは、思ってもいなかった。
戸惑い、狼狽する。

間近のイツキがチラリと視線を寄越し、林田の下半身に手を伸ばし、その質量を確認する。



「………ほんとだ。………おっきくなってる……」



視線を絡めながらイツキはそう言い、ニコリと笑う。
……恥ずかしさで林田は、さらにビクンと、大きく脈打つのだった。





posted by 白黒ぼたん at 23:26| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記

2019年03月29日

林田さん・9







どうしよう…とか、どうなるのだろう…とか、思っているうちにイツキの身体が重なる。
払い除けた方が良いのか、冗談…と笑い飛ばせば良いのか…、迷っているうちに、色香にむせる。

林田の部屋着のスウェットは、少し引っ張っただけで簡単に下着ごとずり下がり、中から勢いよく、モノが姿を見せる。
若々しい、力強い雄の形に、イツキは思わず息を飲む。





「……ひあっ、……駄目…だろ、……あ、……ふ…ぁ………」


あられもない声を上げたのは、林田の方だった。
イツキが林田のモノを、口に含んだのだ。
すでにパンパンに膨れ上がったものを、根元まで咥え、上手に舌を絡める。
……それは、林田が今までに体験したことのない、強烈な感触だった。



吸い上げ、喉の奥で締め付ける。じゅっと水音を立てる。ちらりと視線を寄越す。
……けれど絶妙の加減で、……林田が最後まで達することはない。
目が合うと、イツキはニコリと笑う。そしてまた口を開き、赤い舌を見せ、べろりと絡める。










「………ん。………だめ……」



次にそう言ったのは、イツキの方だった。
もちろんその言葉に意味はなく、林田にも聞こえない。
林田は身体を起こし、逆にイツキに覆いかぶさり

溜まった欲情を、発散させた。






posted by 白黒ぼたん at 23:42| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記

2019年03月30日

林田さん・終







翌朝、林田が目を覚ました時には、部屋にイツキの姿は無かった。






激情のままに身体を重ねてしまった。
もっとも林田は、自分がどうやって、初めての男同士のセックスをスムーズに行えたか……よく解らないでいた。
女性相手と同じように、同じような感じで……しただけだったが、

得た、快感は、今までのどの行為よりも新鮮で、衝撃的だった。


終わって、息が整ってから、やっと自分が大変な事をしたと、気付く。
傍らの、まだ息が荒いイツキを気遣い、「………ごめん」と声を掛ける。
イツキは深く息をついて、心配しなくて大丈夫、という風に首を小さく振って、林田の胸にしがみつくように抱き付く。

イツキは、林田を見上げ、ニコリと微笑んだ。








「………あー、………俺、………何だ?………なにしたんだ…?…」

林田はひとり布団の中で、寝ぼけた頭を抱えながら、夕べのコトを思い出す。
坂道を転がるより早く、雷に打たれるより衝撃的で、まさに、青天のへきれきで。
気が付いた時にはイツキを抱いていた。

魔が差した、と言うべきか。



実を言えば今回のことは、ほぼほぼ、イツキが仕掛けたようなものだが、
林田は、それを知らない。

可哀想に、……無理やりイツキを抱いてしまったという罪悪感と
初めて体験した、違う種類の快感に


しばらく、頭を悩ませることになるのだった。







posted by 白黒ぼたん at 23:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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