2022年03月01日
思惑
最近のイツキは生意気だと黒川は思っていた。
勿論、もう、どう扱っても良い商売道具などとは思っていないし
自分にとっておそらく、重要な存在なのだろうと……まあ認めてはいる。
だからこそイツキが望めば、お遊びのような石鹸屋の仕事も許してやるし
嫌がることも泣かせることも、極力遠ざけるように努力はしていた。
その状況にイツキは、調子に乗り、我が儘で生意気になっているのではないかと
ふと、思う。
そもそも……我が儘、でもない。普通に、ただの、自由な意見という位なのだが
イツキ相手に対等な関係など築くつもりもなかった黒川には、どうにもまだ、状況に納得が行かないところだった。
「……少し、寄っていくぞ……」
「……………え?」
ある夜、食事の帰りに、黒川はイツキをホテル街へと誘う。
二人で暮らす部屋があると言うのに、わざわざ、専用の場所を用意する時は
行為の最中、大声を上げたり…あたりを散らかしたり、汚したり…
そんな事の心配がある場合なのだと、お互い、知っていた。
乱暴に組み敷き、立場を解らせる。
そこまで思っていた訳でもないが
まあ、たまには泣かせるのも良いだろうと
黒川はほくそ笑む。
「…良いけど。俺、明日、お休みだし。ああ、でも、そんなんだったら
締めのラーメンまで食べなきゃ良かったじゃん。……しかも豚骨…」
黒川の思惑を知ってか知らずか
イツキは自分の口元を抑え、臭いなどを気にしながら
呑気に、黒川の後を付いて歩いて行った。
posted by 白黒ぼたん at 23:15
| TrackBack(0)
| 日記
2022年03月04日
思惑・2
訪れたホテルはそう新しくも無いが清潔感があり、何度か利用している。
こんな場所柄なのか、多少の問題は目を瞑ってくれる。
鍵を受け取り、部屋に向かう。狭いエレベーターの籠の中はいつでも
少し、独特な雰囲気があり、二人は黙って階数表示のパネルだけを眺める。
部屋に入ると黒川はイツキの腕を掴み、強めに引きながら歩く。
別に、逃げる相手を手込めにする訳でも無いのだが、そのままベッドへと放る。
「お前と、こんな所に来るのも久しぶりか?……お前は誰かと来ているのかも知れんが…」
「んー。…どうだったかな…。マサヤ、そっちにハンガーあるかな?」
イツキはベッドの縁に座りながら、上着を脱ぐ。
目の前に立つ黒川の背後を指差し、棚からハンガーを取って貰う。
「マサヤも先に脱いだ方がいいよ。皺になるよ」
「………色気も糞も無いな。……『仕事』が無くなって、すっかり鈍ったな」
「もう、そういうの、要らないでしょ、俺」
これから抱かれるというのにイツキは別段構えた様子もなく
上着を脱ぎ、シャツのボタンを外し、一度立ち上がりズボンも脱ぐ。
そういう小慣れた感じが所が気に入らないのだと黒川は少しムッとするが
確かに服に皺が付いたり、細かいボタンを外すのに手間が掛かったりするのは、嫌だ。
備え付けの冷蔵庫から缶ビールを取り、それを飲みながら、黒川も服を脱ぐ。
イツキが「……俺、お水が欲しい」と言ったが、それを聞こえなかったフリをするのは
ただの小さな嫌がらせだった。
「………マサヤ」
「……何だよ」
黒川もベッドに上がりいよいよ始まる、というその間際に、イツキが真面目な顔を向ける。
「ごめん。俺。…………歯、だけ…磨かせて………」
そんな興醒めな事を言って、イツキはベッドから急ぎ下りるのだった。
posted by 白黒ぼたん at 11:07
| TrackBack(0)
| 日記
2022年03月06日
思惑・3
黒川は、レストルームでイツキが立てる水音を忌々しく聞く。
直接まで食事をしていたのだから気になるのも仕方がないが、それは自分も同じで。
コトに及ぶ直前に、あれやこれやと水を差す。
興醒めするのも甚だしい。自分を、舐めているのか、とすら思う。
イツキの我儘には、多少の目は瞑って来た。
生意気を言うのは可愛いものだし、それを聞くのは大した苦でもないのだが
やはり、今一度、きちんと、躾なければいけないだろうと思っていた。
水音が止み、パタンと音がして、イツキがレストルームから出て来た。
同時に、部屋の明かりが全て落とされる。イツキが壁面のスイッチを触ったのだ。
「……消しすぎだ。馬鹿。少し残せ…」
煌々と光る照明の下でイツキを広げるのも良かった。
それで無くとも、ベッド周りの淡い光りくらいは残すものだろう。こんな暗闇では泣き顔も見れない。
今の黒川にはどんな些細な事でも、イツキが自分の意に反することが気に入らなかった。
不機嫌そうにちっと舌打ちする。
黒川はベッドの宮棚に手をやり、調光パネルを探す。
どうにか手探りで戻って来たイツキは、ベッドに上がり
黒川に、しがみ付く。
「…マサヤ、明かり、……や」
「…見えなさ過ぎだろうが」
「…いい。見えなくて。……なんか、俺、恥ずかしくて…」
そんな事を言って
イツキは黒川に回した手に力を込める。
先程まで、シャツや下着だけは身に付けていたのだが
今は無く、全裸のようだ。
posted by 白黒ぼたん at 22:03
| TrackBack(0)
| 日記
2022年03月09日
思惑・4
「……なんだ。…やる気満々かよ。…相変わらずだな…」
何も身に纏わずに正面から抱き締めてくるイツキに、黒川は少し驚き
それを気取られないように、いつものように茶化してみる。
手を、イツキの背に回すと、イツキは小さく跳ね腰を引く素振りをする。
微かに当たるイツキの中心は、すでに熱を帯びているようだ。
「…何も始めていないのにコレかよ。…お前は……」
「だって、マサヤ…」
黒川の言葉を遮ってイツキが動く。
強く黒川にもたれ掛り2人ベッドに寝転ぶ。
キスを仕掛けたのはイツキが先だったか。唇だけを重ねるくすぐったいキスを繰り返し
さらに奥へと思うとふいに離れ、黒川の首すじに顔を埋める。
「だってマサヤ。こんな風に誘われるの久しぶりで…、俺
そう思ったら、なんだか……我慢出来なくなっちゃって……」
「……ヤる事はいつもと同じだろうが…。仕事が無くなっても、淫乱ぶりは変わらんな…」
「…駄目?」
イツキは黒川に身体を擦り寄せ、脚を絡ませ
もう我慢が出来ないという風に迫ってみせる。
暗闇だし近過ぎだし、顔の表情は解らないが、解る。
自分の手を欲しがり、焦れている様子が、可愛くない筈もない。
「…駄目、じゃあ、無い、な。……まあ、…いい」
posted by 白黒ぼたん at 23:03
| TrackBack(0)
| 日記
2022年03月11日
思惑・5
いつもより強めに抱いている筈なのに、イツキは一向に構う様子もなく。
…そうは言っても、少し乱暴に手を引いたり脚を広げたり、不意に敏感な部分に爪を立てたりする程度だが…
痛がり、困ったようなぐずる声を漏らしてはいるが、その程度。
口で奉仕しろよと髪の毛を掴むと、イツキは自分からするりと滑り込むように、黒川の股ぐらに顔を突っ込んだ。
「…張り切りすぎだ。…どれだけ溜まっているんだか……」
と馬鹿にした口調で煽ってみても
「……………うん」
と素直に返されては、逆にこちらが困る。
うっかりしていると黒川自身が持って行かれそうになる。
自分が仕込んだ以上にイツキの口淫は良く、黒川の好みなのだ。
そして止めるタイミングも丁度良い。イツキは名残惜しそうに舌先を這わせ、身体を起こし
互いのそこを擦り合わせながら、正面から抱きつく。
黒闇にも目が慣れ、顔の表情も見て取れる。
涙か涎か、あちこちがてらてらと濡れて光るのも、イヤラシさを増す。
くるりと向きを変えて、今度は黒川がイツキの上になる。
イツキの脚を抱え上げ、中心に先端をあてがうと、少しの抵抗で入口をくぐり
あとは誘われるように、飲み込まれるように、奥へと入っていく。
イツキは身体を仰け反らせ、小さく息を吐きながら、その全ての感触を味わっているようだ。
「………っく」
漏れたのは、黒川の声か。
イツキは腰を上げ突き出し、さらに深く、黒川を飲み込もうとする。
「………この、ウワバミめ……」
と、呟いたところで、それは今のイツキにとって褒め言葉でしか無いようだ。
posted by 白黒ぼたん at 13:00
| TrackBack(0)
| 日記
2022年03月15日
思惑・6
何度か突き上げ、奥を抉る。
イツキは艷声を上げ、身体をくねらせ、黒川を受け入れる。
一際高い声が出そうになると、手を当て、それを噛み殺す。
いつもマンションの部屋で抱かれている時の癖なのだろうが
……今日はその声が聞きたくてホテルに来ているのだと、
黒川はイツキの手を払い避け、手首をベッドに押し付ける。
もう片方の手を枕元のパネルにやって、小さな灯りを一つ、付ける。
自分が征服しているはずのイツキを見下ろすと、イツキは、潤んだ目で黒川を見上げる。
ただ視線が合っただけなのに、イツキの中が急に締まり黒川は慌てる。
「……マサヤ、………もっと…」
半開きの唇から言葉が漏れる。
焦らしてやるつもりが、中々、思うようにはならなかった。
実は、イツキにも思惑があった。
最近の黒川との関係は落ち着いているとは言え…
確かな約束も保証も何もない日々に、不安を感じない訳ではない。
「仕事」をしていた以前のように、黒川の役に立つ事もない。
まして、その不安を振り払ってまで黒川の傍に居たいという自分の気持ちにすら、根拠がない。
今現在、どれだけ、互いが互いを必要としているのか知りたいと思っていた。
ホテルに誘われた時には、それを確かめてやろうと思っていた。
まあ、だからと言って、それらを全て計算の上でコトに及べる程、イツキは頭脳派ではない。
始まってしまえば成り行き次第。それが、この結果なのだから怖い。
posted by 白黒ぼたん at 22:54
| TrackBack(0)
| 日記
2022年03月18日
思惑・最終話
終わってみれば二人とも強く抱き合ったまま、少し、うとうとと眠り
目を覚ませば視線を絡め、唇を重ねる。
思惑は所詮、思惑で。
互いの思いや今の立場や、色々と確認したいこともあるのだろうが
目の前の肉の欲にかかれば、それは些細なものだった。
それでも。
「……マサヤ…」
「…何だ?」
「俺、…マサヤとのエッチ、……すき」
すでに明け方。締め切りとはいえ部屋の中はうすら明るい。
イツキは穏やかに微笑み、真正面から、そんな気恥ずかしいことを堂々と言う。
そして事もあろうか黒川に、「…………マサヤは?」と聞き返すのだ。
「…………ああ」
否定はしない。黒川にすれば上出来の答えだったが、今日のイツキはそれでは終わらない。
「…………すき?」
「……ああ」
「………」
もう一度聞き直し、そんな相槌では解らないとでも言うように、さらにぐっと黒川を覗き込む。
摺り寄せる身体はまだ少し熱を帯びている。立つ、匂いに、先ほどまでの精の生臭さが残る。
「……………すきだよ」
気迫に押され、うっかりそう言ってしまってから、これでは意味が違うと黒川は思ったが
イツキがとろけるような笑顔を見せ、さらに身体を寄せ抱き付いてくるので
そういう事になってしまった。
思惑・おわり
posted by 白黒ぼたん at 14:03
| TrackBack(0)
| 日記
2022年03月22日
雨の日・1
昼過ぎから降り出した雨はいつの間にか本降りになり道路を濡らす。
一ノ宮は車のワイパーを少し早くし、スモールライトを灯す。
助手席に投げた書類をちらりと見遣り、今日の仕事が終わった事を確認する。
この近辺には黒川が管理している土地や建物がいくつかあり、定期的にそれを見て回っているのだ。
道路沿いにあるラブホテルもその一つだ。勝手が利くこともあり、ヤバい内容の「仕事」に使っている。
今日は確か、レノンが来ている筈だと…何気に目をやると、
出入り口から少し離れたところを、傘も差さずに歩くレノンの姿が目に止まった。
「………レノンくん?…………どうしたんですか?」
一ノ宮は車を脇に停め、驚き、声を掛ける。
見ればすでに髪の毛も、肩口も、雨に濡れている。
レノンは初め、誰が声を掛けて来たのか解らないようで警戒していたのだが
それが一ノ宮だと解ると少し安堵し、…それでも、不貞腐れたように顔を背ける。
「………別に。………帰るだけだよ」
「…帰るって……、一人ですか?……ああ、いや、とにかく車に乗りなさい」
「……いいよ」
「良くはありません。とにかく、乗って」
一ノ宮はわざわざ車を降り、妙な意地を張るレノンの腕を掴み、半ば強引に車に乗せる。
雨の中、濡れて、一人で帰す訳にはいかないだろう。
優しさ、とは少し違う。
なにしろこの少年は今しがた、こちらの命令で、ホテルで売春をして来たところなのだ。
人目に付いては、まずい。
posted by 白黒ぼたん at 21:42
| TrackBack(0)
| 日記
2022年03月24日
雨の日・2
取り敢えず一ノ宮はレノンを事務所へと連れていく。
家に送り届けるにしろ、まず、濡れた服をどうにかしてやらないといけない。
「……あいつ、……いるの?」
「………社長ですか?…今はご不在ですよ」
「……あっそ」
駐車場に車を停めて、事務所の階段を上がる。
そう尋ねるレノンは、あまり黒川には会いたくないらしい。
先日、イツキを交え4名で食事をして、少しは印象が変わったのかも知れないが
それでも、自分にこんなに酷い仕事を回す男だ、好意は抱かない。
事務所に入ると一ノ宮は奥の棚に向かいタオルやら何やらを取り出す。
ポットに湯を沸かし、まだ入り口に突っ立ったままのレノンにソファに座るように促す。
「…上着は脱いで。…中まで濡れていませんか?…これ、作業着のジャンパーですが、羽織って下さい。
ドライヤーは無いので、髪の毛はタオルで。…冷えていませんか?」
「…………うん」
レノンはまだ不貞腐れているものの、一ノ宮の言葉には素直に従う。
上着を変え、髪をタオルでごしごしとやり、やはり少し寒いようで身体を少し強ばらせる。
一ノ宮はコーヒーを淹れ、どこぞの届け物らしい高級チョコレートと一緒に、レノンの前に置く。
「……お疲れ様でした。…『仕事』の後だったのでしょう? …佐野くんが迎えに行ったのでは無いですか?」
「……ケンカした」
「…ええ?」
一ノ宮も自分のカップにコーヒーを入れ、ソファのレノンの向かいに座る。
レノンは熱々のマグカップを両手で持ち、唇を尖らせて、啜る。
一ノ宮の穏やかな口調と、胃に落ちる温かい飲み物のお陰で、やっと一息つく。
「……迎えに来たよ。でもあいつ、文句ばっかりでよ。俺と関わると騒ぎが起きるとか社長に怒られるとか。
あんまり五月蝿いから、もう帰れよって言ってやった。
…そしたら、ホントに帰りやがった…」
「おや、まあ!」
「でも、今日は……そんなに身体も痛くないし…駅まで歩いて行けるかなって…
雨も、そんなに降って無かったし……」
posted by 白黒ぼたん at 21:19
| TrackBack(0)
| 日記
2022年03月28日
雨の日・3
そんなに降っているように見えなかった雨は、ホテルを出て数メートル歩いただけで
間違いだったのだと気付く。
引き返すのは癪だし、雨が凌げるところまで走って行く…ほどの体力は残っていなかったようだ。
「……佐野くんには後でキツく叱っておきましょう。でも、レノンくんも一人で動いては駄目ですよ?」
「……俺、……一人でもへーき…」
「私共が駄目なんです」
一ノ宮はテーブルの上の菓子の包みを開け、レノンに差し出す。
レノンはそれを大人しく受け取る。
「レノンくん、万が一の時は私に連絡をして下さい。どうにかしますから…」
「……なんでだよ」
「…心配だからですよ。それでなくとも…無理な仕事を強いているのですから」
そう言って一ノ宮は、申し訳ないといった風に少し頭を傾げ、穏やかに微笑む。
その様子にレノンは戸惑う。
今、自分の身に起きている状況と、一ノ宮の柔和な物腰がどうにも擦り合わない。
黒川はいつも、乱暴で横柄だ。その黒川の近くに、こんな人がいることが不思議でならない。
「………あんたさ。……なんで普通の人なのに…、ここにいるの?」
「……え?」
レノンは感じたままを尋ねてみる。語彙力が無いのは、まあ子供だから仕方がない。
話の流れが外れ、一瞬、一ノ宮は何の事だかは解らなかったが、
すぐにレノンの質問の意味を察した。
「ははは。……普通の人…では、ありませんよ」
「でも、あいつなんかより全然普通じゃん。……俺に、親切だし…」
「それが私の仕事ですから…」
一度言葉を区切り、一ノ宮はコーヒーを飲む。
間が開くと、窓を打つ雨の音が室内に響く。
レノンは、一ノ宮の答えにまだ納得が行かないと、覗き込む様な視線で一ノ宮を見ている。
良くも悪くも素直で、思った事がすぐ口に出てしまうのだなと、一ノ宮は思う。
posted by 白黒ぼたん at 20:00
| TrackBack(0)
| 日記
2022年03月31日
雨の日・4
「レノンくんは…社長が…苦手ですか?……まあ、そう、得意な方もいないのでしょうが…」
「苦手………って言うか…、嫌い。ムカつく。あいつ……」
「…………はは…」
自分で聞いておいて予想通りの答えに、一ノ宮は思わず笑う。
レノンが今の状況になるまでに、おそらく、黒川からはかなりの圧が掛かったのだろう。
……借金で雁字搦めにし、身体を売ればと安易に持ちかけ、品定めにと2、3度抱き、後は……売る。
事細かに具体的には聞いてはいないが、想像するには易い。
この流れで、黒川に好意を抱くものは、まあいないだろう。
「………やり方はかなり強引ですがね。まあ、そこは…ビジネスと割り切って……。それを差し引いても、社長は、………この世界ではまだお優しい方ですよ」
曖昧な言葉だが、おそらく、褒め言葉だろう。
レノンにも雰囲気は伝わるが、それでも怪訝な表情で一ノ宮を見る。
一ノ宮は
普段からあまり、自分の事を語るタイプではない。
今日は少し、おしゃべりだなと……自分でも思っている。
…反抗心と探究心とが混じり合ったレノンの視線が、どうにも…重たい湿度と雨音とに紛れて…
一ノ宮のガードを緩めているようだ。
「…ギブアンドテイクなので…仕事の状況については何も申しませんが。…レノンくんにとって悪い話では無かったでしょう? それ以上に一応、気にも掛けていますし……。
根は………優しい方ですよ。………私の方が、よほど悪い。
彼はそれを、代わりに引き受けてくれているんです」
「…………意味わかんない。……わざと嫌な奴になってるって事?……なんで?
………ああ、役割分担的な?……飴と鞭、みたいな?」
意外と的確なレノンの答えに、一ノ宮は笑う。
「まあ、そんな感じです」
「……それって、誰得?……何作戦さ?……意味わかんね……」
「ははは…、確かに……」
posted by 白黒ぼたん at 14:35
| TrackBack(0)
| 日記