2023年09月02日

とばっちりイツキ・13









イツキの両腕を押さえ込んでいた派手な上着の男は
正直、男との行為に興味は無かった。
兄貴分の二条が遊ぶと言うので、手伝っているに過ぎなかった。

確かに、この若い兄ちゃんは綺麗な顔立ちをしている。
上擦った声も女ほど高くはないが、どこか艶っぽく、耳に残る。
肌も白い。滑らかそうだ。下着を脱がすと……毛が生えていないのにも驚いた。
……立ちんぼをしていたと言うが、それにしても、出来過ぎていた。



「………く、……やべぇ………」
「…どうしたんです?…二条さん……」
「…いや、……待て待て待て…」


挿入し、腰を使っていた二条が、少し戸惑った様子で小さく呟く。
一度身体を離し、息をつく。どうやら思う間合い以上に…早く持って行かれそうなのだ。

派手な上着の男がイツキを見下ろすと、イツキは目を閉じ口を閉じ、んんん、と首を左右に揺する。
嫌なのか良いのか、判断が付かない。

暴れていた腕にもう力は無い様なので、男は押さえていた手を外し
その手で、イツキの顔を触ってみた。

イツキは一瞬、目を開けて
何に反応したのか、勝手に腰をビクビクと震わせた。




「二条さん、こいつ、…ヤバくないですか…?」



男がそう尋ねると二条は、ああ、と頷き
それから、また、イツキに深く入って行く。


イツキの極まった声は



隣の部屋の三浦にも聞こえるものだった。





posted by 白黒ぼたん at 00:29 | TrackBack(0) | 日記

2023年09月05日

とばっちりイツキ・14








さすがに三浦も、この状況を見過ごす事は出来なかった。
元はと言えば自分の蒔いた種、イツキには何の落ち度も無い話なのだ。

どうにか助けてやりたいと、扉を叩く。
右手はまだパイプ椅子に括られている状態だったが、思い切ってそれごと、扉に当ててみる。

幸い、扉に掛かっている鍵は錠を回すような立派なものではなく、後付けの、ちょっとした金具のもので
何度目かの大きな振動で、カタンと、それが外れた。



「………うわっっ」



扉が開いたと同時に勢い余り、三浦は部屋に転がり出る。
そしてすぐ、目の前に見えたのは




終わって、傍らに立ち、衣服を整えていた二条と
次は自分の番だと、ズボンを下ろし掛けている男と

その奥に、濡れた下半身を露わにし、横たわるイツキの姿だった。






「…やめろぉぉぉーーッ」





突然、部屋から出てきた三浦に、驚き、まだ誰も何の対応も出来ない内に

三浦は叫び、イツキの前にいた男に突進し、その身体を弾き飛ばした。







posted by 白黒ぼたん at 22:20 | TrackBack(0) | 日記

2023年09月11日

とばっちりイツキ・15








そこから先は、まあ、大騒ぎだった。




三浦は、イツキの前にいた男を突き飛ばし、イツキを護るようにその上に覆い被さり
これから自分の順番と意気込んでいた男は激怒し、三浦を退かそうと、その背に蹴りを入れる。


「……み、三浦さ…ん?」
「…イツキてんちょ、…逃げよう、…立てる?」
「いや、……むり……」


そんな会話をしている間も男の攻撃は続く。
三浦の服の後ろを掴み引き摺る。三浦は抵抗し、繋がれたパイプ椅子ごと腕を振り回し
それが男の顔に当たり、さらに怒りを増大させる。


一歩離れていた場所にいた二条は驚き、その騒ぎに少し見入ってしまう。
抵抗して暴れる、というのは良くある事だったが
なかなか激しい騎士道っぷりだなと、半ば、感心していた。



けれども、事態はそんな悠長に構えている場合では無かった。



「…てめぇ……、ふざけやがって…、いい加減にしろよ…」



派手な上着の男は怒鳴り、その上着のポケットから折り畳み式のナイフを取り出す。
慣れた様子で手首を返すと、刃先が飛び出し、鈍く光った。

威嚇か、一度大きく手を振り回すと、それは三浦の耳を掠り細い赤い線を作る。
そしてそのまま、今度は首筋に刃先を当てる。







「………まあ、待て、待て…」



さすがにマズかろうと二条が声をかける。



丁度、同じタイミングで



テーブルの上にあった連絡用のケータイが、ブルブルと震え着信を告げた。




posted by 白黒ぼたん at 05:40 | TrackBack(0) | 日記

2023年09月12日

とばっちりイツキ・16








「………はい。二条です。お疲れ様です。……はい」

ケータイは上との連絡用のものだった。
二条は落ち着いた声で応対し、その様子を派手な上着の男も見守る。
手にはまだナイフが握られたままだったが、すぐに刺される心配は無さそうだった。

「………はい、…………えっ…」

二条は相槌の後、少し驚いた声をあげ、それからイツキの方を見た。



そしてようやく、イツキが、手を出してはいけない相手だったと知ったのだった。






その後は驚くほど簡単に、イツキと三浦は解放され、建物の外へと出された。
あたりは街灯も少なく場所も解らず。
二人は半ば呆然とし、とりあえず、道路脇の植え込みの段差に腰掛ける。


「………なん、だ? 何で急に……」
「色々、連絡が付いたんだと思います。それより三浦さん、大丈夫ですか?」
「俺?俺なんかどうでもいいよ、………イツキてんちょの方が……」


三浦は隣に座るイツキに向き直り、話を続けようとするのだが
口から漏れるのは意外にも嗚咽で、目からはボロボロと涙を溢していた。


「………ごめん。俺のせいで……酷い目に………」


肩を振るわせ泣き崩れる三浦をイツキがどう慰めようかと迷っている内に




目の前の道路に車が通り、停まる。

それは助けに来たには遅過ぎる、黒川だった。





posted by 白黒ぼたん at 22:12 | TrackBack(0) | 日記

2023年09月16日

とばっちりイツキ・17









そもそも、黒川がイツキからの連絡に気がついたのが遅かった。
四六時中スマホを握り締めている訳でもないし、直ぐに取れない時だってあるだろう。
それを見たのは、イツキが部屋に連れ込まれてから1時間ほど経った頃。
その頃にはもう、折り返しの電話に答えることは出来ない状態だった。

『糞』

と、黒川は相変わらずの悪態を付く。
どうせまた自らトラブルを招いたのだろうと、少し呆れ、痛い思いをした方が勉強になるのではないかと
下らない事を考えかけていたのだが

その場に一ノ宮が一緒にいたのが幸いだった。

「二条虎松」の事はすでにリサーチ済みで、上部への連絡方法も解っていた。
急ぎ事情を説明し、これ以上コトが進むのを止めさせる。
二条が使うマンションの場所も解り、車を走らせたのだ。








暗い道路脇に座り込む2人の姿を見つけ、車を停める。
運転席から降りて来たのは一ノ宮だった。

助手席の黒川は車から降りずに、表情も変えずに、イツキを見るだけだった。






posted by 白黒ぼたん at 23:40 | TrackBack(0) | 日記

2023年09月19日

とばっちりイツキ・終










三浦は、突然解放された事も丁度目の前に迎えの車が来た事も
まだ事態が飲み込めず呆然としていた。
それがすべて、イツキが手を回してくれたことだと察すると、
ただただ頭を下げ、迷惑を掛けてすまなかったと詫びた。


「…まあ、細かい話はまた今度。…病院まで送りましょう」

そう言って一ノ宮は、イツキと三浦を車の後部座席に乗せる。
三浦は、パイプ椅子が繋がったまま腕を振り回していたので、実は骨が折れていた。

座席に深く腰を下ろすとルームミラー越しに黒川と目が合う。
その瞬間、三浦は、今回の一件の中で一番の殺意を感じ、背筋が凍った。








「……ごめん。マサヤ。……ありがと」


やっと一息ついたイツキが小さな声でそう言う。
イツキは黒川の真後ろに座っているため、お互いの顔は見えない位置だった。
それでも、黒川が呆れたように鼻息を鳴らすのは解った。


「……ヤられたのか」
「…あー、ん、…ちょっとだけ。でも、三浦さんが守ってくれたんだよ」
「…もともとの原因だろうが。……それなりの落とし前は付けて貰わないとな…」


そんな言葉に三浦は震え、イツキはそっと目配せし、大丈夫ですよと微笑む。
……つい先刻まで男に暴行を受け犯されていた本人だというのに、イツキにはもう、その影は見えなかった。




「……イツキてんちょ。……本当に、ごめん。俺、何でもするから、何か……」

「でも、俺。ちょっと、嬉しかったです。だから、平気です」





そのやりとりを聞いて
助手席の黒川はまたつまらなそうに
フンと鼻息を鳴らした。







posted by 白黒ぼたん at 11:03 | TrackBack(0) | 日記