2015年06月30日

1.訃報








朝から細かい雨が降りしきる日。
イツキは佐野が運転する車に乗り、一度も訪れた事がない、実家へ向かっていた。




父親が死んだと報せがあったのは、昨日の夜の事だった。




「……制服にしたんだ?……あー…、便利だよな、制服って。……いつもの黒スーツでもいいような気もするけどなー…、あー、でも違うか、なんか……」


佐野はハンドルを握りながら、やけに明るい声で、そんなどうでも良い話をする。
そうでもしないと、重たい空気に、息が詰まるようだった。
ちらりと横目でイツキを見ると、佐野の話に返事もせず表情も変えず、ただ宙を眺めているばかり。
どんな因縁があったとしても、父親は父親なのだ。突然の訃報に、戸惑うなという方が無理な話だろう。




「………だよ、……佐野っち。…大丈夫」
「え?」
「大丈夫。俺、別に、普通だから……」


佐野の心配を察したのか、イツキはそう言うのだけど
その声は小さく掠れ、とても大丈夫だと言う声には聞こえなかった。





posted by 白黒ぼたん at 22:53 | TrackBack(0) | 日記
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