2015年07月05日

5.由紀






「………お兄ちゃん……?」



イツキと母親が、お互い、どうして良いのやら立ち竦んでいると、後ろから声が掛かる。
セーラー服を着た少女。どことなく雰囲気がイツキに似ている。



「………由紀?」
「…お兄ちゃん!」



少女は、イツキの妹の由紀だった。
由紀はイツキの傍に駆け寄り、抱き付こうと手を伸ばしかけるのだが、会えなかった時間に躊躇し……止まる。
それでも、手を、イツキの腕にやり、控えめに袖口を掴むと、ぽろぽろと涙を零した。



両親が、妹に、イツキの事を何と言って説明しているのかは解らないが、
兄妹が、ほぼ4年もの間、離れていた事に変わりはない。
仲の悪い兄妹では無かった。仕事で留守がちな両親に替わり、イツキはあれこれと妹の面倒も見ていた。



「……久しぶり。……大丈夫だった、由紀?」
「…………ん…」



由紀は手の甲で目元をごしごしと拭うと、とりあえず顔を上げ、うん、うんと2,3度頷き、



「…お兄ちゃん。…お父さん、あっちにいるよ」


と、奥の部屋に案内するのだった。




posted by 白黒ぼたん at 23:00 | TrackBack(0) | 日記
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