2015年07月07日

6.父親







ほんの申し訳程度の小さな祭壇の前に、質素な棺が置かれ、そこに父親は眠っていた。
最後に顔を見た時よりも、痩せているような気がする。
…もっとも、最後に見たのは、黒川に足蹴にされ血だらけになった顔なのだけど。



悲しみも、怒りも、何の感情も、浮かんでは来なかった。

逆を言えば空っぽで虚ろで、何も、考える事が出来なかった。

この男の所為のみで、自分の人生がおかしくなったのだとは思っていないけど

一因を担っていることは確かで、だからと言って、責める訳でもなくて。


見合う気持ちが、解らなくて、困る。




「……去年、仕事を辞めてから、お酒ばっかり飲むようになってね、…身体、壊して…
最後は、肝臓、やられちゃってね……」



一歩後ろにいた母親が、そう説明する。



「……もっと早くに連絡しようとしたんだけど…、お父さんが、するなって…。……一樹はもう、家の子じゃないって…言ってね。…でも本当は、会いたかったんだと思うのよ。
……ごめんね、間に合わなくってね……」



そう言って母親は泣くのだけれど、イツキにはその涙の理由が、さっぱり解らないのだった。





posted by 白黒ぼたん at 00:19 | TrackBack(0) | 日記
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