2015年07月11日

11.失言






「…でも、元はと言えば借金のカタだもんな。知らない家族はシアワセだよなー。
親父さんも死んだんだし、全部、言っちゃってもいいんじゃねぇの?」
…ああ、でもそうすっと…、社長、捕まるか?……あっはっは…」


勿論、半分は冗談だったのだが。イツキからは何の反応も無い。
不思議に思い赤信号の間に隣を見ると、イツキは、両手で顔を隠したままうつむき、


小さく震えていた。



「……あ。……悪い…」



さすがに佐野も必死で取り繕おうとしたのだが、信号は青に変わり、前を向くしかない。


「…ごめんな、イツキ。言い過ぎたな、こんな時に…」
「…………いい…」
「…ん?……あっ、焼肉屋があるぜ?……何か、食って行くか?」
「………いい。……もう、………しゃべんないで…」




それきり、イツキはもう、何も話す事は無かった。
涙を流す訳でもなく、嗚咽を飲み込む訳でもなく。
顔を覆っていた手は、また、だらりと垂らされて
イツキは何の表情もないまま、窓の外の流れる景色に目をやるだけだった。



posted by 白黒ぼたん at 23:00 | TrackBack(0) | 日記
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