2015年07月12日

12.帰宅







「着いたぜ?」



結局、数時間、無言のまま。車は、イツキのマンションに到着する。
前の通りに車を停め、佐野が声を掛けると、イツキは力なく、こくんと頷く。
佐野は車を降り、助手席側のドアを開ける。

イツキは幽霊のようにふわりと歩き、階段をひとつひとつ確かめるように上がり、マンションの入り口に向かう。
ポケットから鍵を取り出すと、手に力が無かったのか、落とし、慌てて佐野が拾う。


「………大丈夫か?」
「………ありがと。……佐野っち。……もう、いいから」


佐野から鍵を受け取り、イツキは、絞り出すような小さな声でそう言う。
心配だから部屋まで送るという佐野を、きっぱりと断り、入り口の扉を開ける前に帰って欲しいと、視線で促す。



「………そっか。……じゃあ、な。……何かあったら、連絡しろよ?」
「…………ん」



イツキはひらひらと手を振る。
佐野は、心配ではあったのだが、諦めて踵を返す。

自分がいてはイツキが部屋にも入らないような気がして、
……そして、早く、独りきりになりたいのだと思って…
一度だけ振り返って、じゃあな、と手を振って、自分の車に戻った。




車を出す前に、一服する。
今日は、酷く疲れたなと、思う。




posted by 白黒ぼたん at 23:00 | TrackBack(0) | 日記
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