2015年07月24日

佐野の役目・4







家のため、父親のためと、黒川に身を預けることになったイツキだったが…
…誰かを恨むこともなく、自分の人生を呪うこともなく、ただ、自分がそうしたかっただけと…健気に今まで、生きてきていた。

一度は父親と決別し、これで本当に、自分の人生は自分で選んだものだと…気丈に振る舞っていたのだけど、



やはり、心の奥底では確かに……家族が平和でいられるのは自分のお陰なのだと、思っていた。


逆を言えばそれが、イツキを支えている全てだったのに。



それを永遠に失くして、改めて、その空白に驚く。








『……イツキ、泣くなよ。……俺は、お前が、好きだぜ?』


佐野にはイツキの心の機微までは解らなかったが…イツキが今、漠然とした不安を抱えていることぐらいは、解った。
精一杯、抱き締めて、優しい言葉を掛けてやる、それ位しか出来なかったが、

それが、今の、自分の役目なのだと、知っていた。



『……だって、俺……、意味、……ない…もん……』
『あるよ。……俺が、…すげー、お前、欲しいし……』


佐野は、涙で濡れるイツキの頬に、手をやる。
ただ、この一瞬だけでも、イツキを安心させてやりたかった。






posted by 白黒ぼたん at 23:00 | TrackBack(0) | 日記
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