2015年07月28日

鬼門







「……んで、メシ食って…、帰りました。…大丈夫かなとも思ったんですけど…、あいつ、大丈夫だからって…言うから……」




夕方。佐野は黒川の事務所に寄り、昨日からの経緯を説明する。
黒川は顔色も変えず煙草を吹かせ、部屋の隅では一ノ宮が様子を伺う。


「ご苦労だったな、佐野。…メシ代だ」
「ありがとうございます。……えっ、こんなにっ……」


黒川が手渡した札の枚数に佐野は驚く。思わず、一ノ宮を見てしまうと、一ノ宮は、まあ貰っておきなさい、と言う風に2,3度頷く。
佐野はぺこりと頭を下げ、札をポケットにしまう。


「……あの…」
「何だ?」
「社長は…、イツキんとこ、行かないんですか?」
「まあ、その内にな。…もう帰っていいぞ、佐野」


そう言って黒川は、手をひらひらと振る。


イツキに対する同情も、お悔みの言葉も、流れで一夜を共にしてしまった事も責めも…
何も無い事に拍子抜けする。
すでに黒川は次の煙草をくわえ、手元の新聞を広げている。
もしかしたら、本当に、黒川にとっては…どうでも良い事なのかもしれない。

そんな事を考えながら佐野はもう一度頭をぺこりと下げ、事務所を出て行った。






そのやりとりを傍で見ていた一ノ宮は、

イツキの父親は、生きていても死んでしまっても、黒川の鬼門なのだと

つくづく、思った。








posted by 白黒ぼたん at 23:00 | TrackBack(0) | 日記
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