2015年08月01日

嫌な、マサヤ・3







「……でもさ」



黒川の指先は、煙草の匂いがする。
イツキは、言うつもりはなかった愚痴を、つい、口にする。



「…マサヤのせいで、俺も、家族も…ぐちゃぐちゃだよ。マサヤがいなかったら、もっと別の、いい人生が、あったのかもしんない……」

「馬鹿を言え。……俺が、助けてやったんだろ?」

「俺を、脅したじゃんか…。言う事聞かなかったら…、お父さんの仕事、駄目にするって…。お母さんと妹にも…、なんか、するかもって……」




今更言っても仕方がない事だと解っていたけど、父親の訃報を聞いて以来、
時間が、気持ちが、遡ってしまっていた。
いくつもあった人生の分岐点の、どれを選べば正解だったのか、後悔は無かったのか、迷う。




「お前の親父にも非はあっただろう」
「…そうだけど…」
「もう黙れ、イツキ」



そう言って、黒川は、イツキの口をキスで塞ぐ。
ぞんざいな言葉とは裏腹に、それは随分と優しい、丁寧なキスだった。





posted by 白黒ぼたん at 23:35 | TrackBack(0) | 日記
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