2015年08月19日

雅也とイツキくん・1







午後。
イツキくんが事務所を訪れる。

ご尊父が他界した事のお悔やみを述べると、イツキくんは久しぶりにそれを思い出したような顔をして、ぺこりと頭を下げる。

確か、それ以来しばらく、社長と2人だけの時間を過ごしていたはずだった。




「……なんか、急に、仕事だって言って…出て行っちゃって。…それで、ここに、ゼ…ニア?…の、スーツがあるから、持って帰ってクリーニングに出せって…」

「…ああ、横浜の件が迫っていますからね…。スーツは…そう言えば……」




部屋の片隅に無造作に置かれたままの紙袋を覗くと、何かの時にくるくると丸めて突っ込まれたスーツが、そのまま皺くちゃで入っていた。
それをイツキくんに渡すと、また彼はぺこりと頭を下げ、なんとなくぎこちない笑みを浮かべる。



「…どうしましたか?…何か、問題がありましたか?」
「……ううん。……ない、けど。……マサヤ、急に、だから…、何かなって…」




どうやら、突然手離され、姿を消した社長に納得が行かない様子だった。

とりあえずコーヒーを勧めると、実は酷く空腹だと言うので

一緒に、裏にある中華屋へ向かった。






posted by 白黒ぼたん at 00:26 | TrackBack(0) | 日記
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