2015年08月26日

新学期の朝・3







めずらしくイツキは慌てふためき、校舎の中を走っていた。
副理事の加瀬を探していたのだが、彼の部屋にも、職員室にも、その姿はなく、
ようやく、始業式を行う講堂の舞台の袖で、その姿を見つけ、駆け寄る。


「……どういう事ですか?話が違うっ」


何の挨拶もなくイツキが喰って掛かると、さすがに加瀬も驚いた様子だった。
周りには他の教師もいて、みな、忙しく、始業式の準備の指示を加瀬に仰いでいた。


「……約束…、したのに…、……ちゃんと!」
「加瀬先生、パネルの位置は中央に戻しましたが…、……ん、君、生徒はまだ中に入っちゃ駄目だよ」
「うるさいな!…加瀬さんに話があるんだよっ」
「…あー、待って、待って、待って……」


イツキが他の教師にも噛み付きそうだったので、加瀬は慌ててイツキを引き離し、舞台の袖の奥に連れて行く。
緞帳の影に入り、周りに誰もいない事を確認する。



「駄目だよ。表で私に話掛けちゃ…」
「話が違う!約束したじゃん!…2回も、エッチした!」

「声が大きいよ。こちらも大変だったんだよ、急な上からのお達しでね、…教育の機会は公平であるべきだとか何とか、騒ぐ連中がいてね。
間際も間際だよ、全部、組み換えなんだからね。春休み返上で作業だよ、まったく…」

「………約束したのに…」


最後には涙声になり、項垂れてしまうイツキに、加瀬は、慰めるように、腰をぽんぽんと叩く。




「……まあ、悪かったね。今度、何かで、穴埋めはするよ」



そう言って、イツキから逃げるように、どこかへ行ってしまった。




posted by 白黒ぼたん at 22:45 | TrackBack(0) | 日記
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