2015年09月11日

八つ当たり







数日前にクリーニングに出した、黒川のスーツを受け取りに行く。
部屋に持ち帰るのかと一応確認すると、事務所に持って来いと言うので、渋々、向かう。

この事務所に赴き、良い目に遭った事は、あまり、無い。





繁華街の一本裏手の雑居ビルの2階。
階段を上がり、扉に手を掛けると、中から、険悪な怒号が聞こえる。
内容まではよく解らないが、今、中に入ってはいけないことは、イツキでも解る。
静かに、急ぎ足で階段を戻ると、丁度降りたか降りないかの所で扉が開く。




「……あんたのやり方はよく解ったよ、黒川さん。フェアな取引が出来ると思ったこっちが馬鹿だったって事だな。
…覚えておけ、何でも自分の思い通りに行くと思ったら、大間違いだぞ!」


事務所から出て来た男はそう捨て台詞を吐いて、勢い、扉を閉め、最後には蹴飛ばす。
そうして、怒り心頭と言った様子で階段を降り、下の出入り口にいたイツキの脇を通り過ぎる。
イツキは、何食わぬ顔で余所を向き、上の事務所とは無関係という素振りで、その男を見もしなかったのだけど、


男が、イツキを眺める視線だけは、感じていた。






少し間を置いて、事務所に入る。
中は黒川一人で、テーブルに足を投げ出しソファに座り、煙草を吸っていた。
入って来たイツキをチラリと睨み、ふんと鼻を鳴らすだけで何も話さず、紫煙を吹かし、
苛ついたように、テーブルを蹴飛ばし、無駄にイツキを怯えさせるのだった。





posted by 白黒ぼたん at 23:00 | TrackBack(0) | 日記
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