2015年10月03日

金曜日・8







そろそろお開きの時間と、眠っているイツキを起す。
肩を揺すると、イツキは意外に簡単に目を覚まし、「…寝ちゃってた…?」と少し恥ずかしそうにはにかむ。

清水が送ると申し出たが、当然、それは断り、梶原と帰ると言う。
まあ、それはそうだろうと、清水も納得し、店の前で、今日の会は解散となった。




「……タクシー…、もうちょっと先の方が捕まえ易いから」

と、イツキは通りの向こうを指さし、梶原と並んで歩き始める。
…この道を、清水と一緒に歩いた事を、少し思い出す。




「…梶原、平気?…お酒、飲まされたんじゃない?」
「…あ、……ああ。……はは、ちょっとクラクラすんな…」
「意外と、飲めるクチなんじゃない?」


清水に付き合い、梶原はウイスキーの水割りを何杯か飲んでいた。
店の中では気が張っていたのか、さして酔いが回った気もしなかったが、…今になって、頭がぐるぐると回り出す。

梶原は、イツキも飲み過ぎていたのではないかと、心配して様子を伺う。

イツキは特に表情も変えずに、流れる車のライトを眺めていた。



「……なあ、先輩ってさ、お前の事、まだ、好きなのな」
「…ね。……困っちゃう…」
「…そんなに、悪い人じゃ、ないのかもな…」
「…うん。…だから、困る…」



言いながら、イツキはすっと手を挙げ、空車のタクシーを止める。
…ふと、梶原は…、イツキは酒に酔った振りをしていただけで、本当は、寝ていたのも全て振りなのではないかと、思った。



posted by 白黒ぼたん at 23:00 | TrackBack(0) | 日記
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