2015年10月10日

傍杖・5







険しい顔をして事務所に飛び込んで来た黒川は、ソファに身体を横たえ眠るイツキを見て、とりあえず…安心する。
傍に寄り、掛けてあった毛布を捲り、身体に特に酷い傷跡が無い事を、確認する。




「…相手は、誰だ?」
「何も解らないようです。スタンガンで脅され、車に乗せられ…。すぐに目隠しをされて、向こうは一言も喋らなかったと…」
「用意周到だな。……そういうプロの奴らだろう」


黒川は手に持っていた封筒をテーブルの上に投げる。
一ノ宮が中を覗くと、それは、イツキが車内で犯されていた時の写真だった。
事務所に入る階段の下に、置かれていたそうだ。


「…ポラロイドですか。…仕事が早いですね」


皮肉めいて、一ノ宮が言う。
黒川も、鼻で笑う。




おそらく、自分に恨みを持つ者の仕業なのだろう。
イツキが黒川の女だと知った上で狙い、身元が割れる証拠を一切残さずに、凌辱した写真だけ残す。
それだけで、黒川を侮辱する、目的を果たすには十分なのだろう。




「……海王商事ですか?……先日の、金田社長…」
「さあな。…これだけ仕事が出来るなら、もっとマシな事に使え」



そう黒川は冗談のように言って、また、鼻で笑うのだけど、



しばらく黙った後、急に、手の届くところにあった背の高い観葉植物を掴み、
鉢ごと、部屋の隅に、投げつけるのだった。




posted by 白黒ぼたん at 23:00 | TrackBack(0) | 日記
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