2015年10月16日
厄介な仕事
「……じゃあ、結局は俺が悪いって事?……普通に、道、歩いてただけだよ!」
「…そういう事だろうよ」
「どういう事?」
「いるだけで、そういう目に遭うという事だ。…諦めるんだな」
めずらしく甘い雰囲気でリビングのソファで抱き合い、
そこでは場所が狭すぎると、ほぼ、お姫様抱っこ状態で寝室に連れられ
ベッドの上で、頭の先からつま先まで、念入りに愛撫されていたのだけど
ちょっとした黒川の軽口から、また、言い合いになってしまう。
突然車に押し込められ乱暴されたのだから、無条件で慰め、優しくしても良いだろうに
こんな時ですら、この男は、イツキを許さない。
「……だって、……マサヤの知ってる人なんでしょ?相手。マサヤと喧嘩したから、俺のとこ、来たんでしょ?」
「おそらくな。確証は無いが…。……お前が顔も確認しないからだ」
「見れる訳ないじゃん!急にだったんだから…。俺…、すごい…、怖かったんだから!」
「そんなタマかよ。もっと酷い目にだって遭っているだろう?」
そう言って、黒川は、さすがに言い過ぎているかと……イツキを伺う。
イツキは黒川の暴言に怒ると言うよりは…驚いて、目を丸くして、黒川を見る。
ここには黒川を諌める一ノ宮も、もういない。
やがて、イツキの目から、ぽろぽろと涙が零れ落ちてきて
それを収めるのは、黒川にとっても、厄介な仕事だった。
posted by 白黒ぼたん at 22:23
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