2015年10月19日

困った男







「嫌なのは…それじゃなくて…。…それがあったって、マサヤが変わらないって事。
あの人、本当に、俺の事はどうでもいいんだろうな…。……特別大事にされたいとか…、思っている訳じゃないけどさ……」



帰りの車の中でイツキは、そう零す。
決して全てがその通りでは無いと…少しは思っていても…、これくらいの愚痴は許されるだろう。

自分が姿を消した時には、必死に探し出し、連れ帰った。
命に関わる程の問題が起きた時には、優しい。

それは、知っているけれど、それだけで黒川の数々の暴挙や言動が、帳消しになる訳ではない。




「……俺が、駄目なの?……覚悟が足りないって、奴?……マサヤの傍にいるには、どれだけの事を我慢しないといけないの?」




半ば皮肉めいて、イツキは運転席の一ノ宮をちらりと伺う。
一ノ宮は黙ってハンドルを握っていたけど、やはりどこか、困った顔をしていた。




「……イツキくん」
「…んー…?」
「例えば、…そうですね。社長の目の前で、私とイツキくんが命の危機に晒されていて、どちらか一方しか助けられないとしたら……」


話しの途中で、車はイツキのマンションの前に到着する。
一ノ宮は路上に車を停め、1つ溜息をついて、やっとイツキを見る。


「そんな状況でしたら、社長はおそらく、私を助けます」
「………ふぅん…」


想像していた通りの答えに、イツキは口を尖らせ、鼻で返事をする。



「ですが、それで…、もしあなたを失くしてしまったとしたら、その後、社長は生きては行けません」
「…何、それ。……じゃあ、最初っから、助けてくれればいいのに……」
「本当ですね」




そんな話をして、イツキと一ノ宮は顔を見合わせて、笑ってしまった。



黒川に困っているのは、イツキだけでは、無いようだった。




posted by 白黒ぼたん at 23:54 | TrackBack(0) | 日記
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