2015年12月13日

靴下







毛足の長い絨毯に躓きそうになりながら、イツキはホテルのラウンジに向かう。
ソファに座る黒川と目が合うと、黒川は吸っていた煙草を灰皿に押し付け、腰を上げる。

黒川はイツキの傍に寄り、身嗜みをチェックするように上から下までを眺め、
髪の毛の先を少し、摘まむ。
そして、何も言わぬまま歩きだし、イツキも、その後に続く。

エレベーターの前でボーイが用件を聞こうとするのだが、
黒川は大丈夫、と言う風に手を挙げ、2人だけで籠に乗る。
階数を押し、上がって行くランプを眺め、どちらともなく溜息を付く。

つま先ばかりを眺めていたイツキは、今日の靴下の色を、思い出したりする。




靴下は、いつ、脱ぐのだろうか。
シャワーを浴びる時か、それとも、最後まで脱がないのかも知れない。
そんな事を、思う。



チンと可愛く音が鳴り、エレベーターの扉が開く。


黒川が先に降り、イツキはすぐ、黒川を追い越すように前に立つ。



「…いいよ。1102号室でしょ。…一人で行くよ」
「……ああ」



そう短く応え、黒川はイツキの頬に手をやる。
他の男に抱かせる事を、少しは、申し訳ないと思っているのだろうか。
手の平の熱からは、その区別が難しくて…


「じゃあね」
と言って、イツキは自分から、離れ、歩き出すのだった。





posted by 白黒ぼたん at 21:10 | TrackBack(0) | 日記
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