2016年01月08日

忠告







「イツキくんが来ましたよ。…バイトを始めるので、銀行口座が欲しいと」
「…ああ」
「以前、作ったものを渡しましたが…。本当に、お許しになったのですか?」
「ああ」



数日後。
黒川が事務所に戻ると一ノ宮がそう告げる。
明らかに怪訝な表情を浮かべながらコーヒーを淹れ、それを黒川に手渡す。



「どういう風の吹き回しか知らんが急に言い出してな。…まあ、勝手にすればいい。どうせ、まっとうな仕事なんざ、出来んさ。
適当に遊んで、酷い目に遭って、すぐに飽きるだろうよ」
「…そうですかね…」
「何だ。いやに気を揉むな」
「…あの子は、色々考えていますよ?」



一ノ宮も自分のコーヒーを手に持ち、デスクに寄り掛かる様に腰を預ける。
一口啜り、溜息を付き、何をどこまで話そうかと、少し考える。



「自由になるお金や、…あまり下手な知恵を与えない方がよろしいかと思います。
…普通であれば…、こんな場所にいられるはずは無いのですから…。
ここを、離れたいと……、あなたの傍から離れたいと、…気付くかも知れませんよ?」

「………そうだな」





一ノ宮の忠告に、黒川は、そう返事をして笑う。
それはもう、その事なら解っていると、いった様子だった。





posted by 白黒ぼたん at 22:02 | TrackBack(0) | 日記
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