2016年01月14日

はじめてのあるばいと






それは予想した通り、散々なものだった。




「……はい。岡部くんね、よろしくお願いします。じゃあここに立って、チラシ配って、大きな声で『抽選会場、あちらです』って言って……、んー、もっと大きな声、出せるかな、もうちょっとね。

お客様誘導してね、元気よくね。…んー…、もうちょっと笑顔が欲しいかなー。
チラシ、落ちてるよ、気を付けてね。顔が怖いよ?もっとニコニコして…

で、このロープの内側に並んで貰って…、……ああ、そっちじゃなくて、こっちね、うん。
で、並んでいる間に抽選券が10点あるか確認してね。……ん?……暗算でね。……大丈夫だよね?
…いや、それ、9点。………大丈夫だよね?

……あー、違う違う、ピンクの券持ってる方はこっち、こっち。
こっち並んで貰って…、ロープの内側ね、ああ、前の方、追い越さないの!
……チラシ!……踏んでる、踏んでる!


……ええと、じゃあ…、もう、そっちはいいから…こっちでお子様に風船配って貰おうかな…
この風船、ヘリウム入りだから、手、離しちゃ駄目だよ、離したら………あッ」




イツキが手に持っていた風船はふわふわと浮き上がり、あっという間にホールの天井近くまで飛んで行ってしまった。
横では風船を貰い損ねた子供が、泣きだす。
その泣き声を聞いている内に、イツキまで、泣きたい気分になって来た。





「……岡部くん…、お疲れさま、もう帰っていいよ。これ、今日の手当てね。交通費込みで三千円。
で、人が足りなかったら明日もお願いするかも…なんて話もあったけど、もう、来なくてもいいから。
はい、お疲れさま」


最後にはそう言われ、厄介払いをするように手をひらひらと振られ、おまけに、
後ろで作業をしていた別のアルバイトには、「……あんなので金、貰えるなんて、ドロボーと一緒だよなー」などと、囁かれるのだった。



posted by 白黒ぼたん at 22:40 | TrackBack(0) | 日記
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