2016年01月18日

佐野とイツキ






「…三千円!今どき、ガキの小遣いだってもっと貰えるぜ?」


目の前の佐野はそう言って、笑う。
そして、口の中に入れていた焼肉を零しそうになって、慌てて、手で押さえた。

事務所の近くで偶然佐野に出会ったイツキは、誘われるまま食事に行く。
どこか、何か、人恋しかったのかも知れない。

先日のアルバイトの話をすると、佐野は驚き、半ば馬鹿にしたようだった。


「…そんなに笑う事、ないじゃん…」
「悪い、悪い。でもよ、スーパーで、人前で声張り上げて…なんて仕事、お前に一番似合わないだろ」
「でも、高校生で、初心者で、時間も短くてって言ったら、他に、仕事なんてないでしょ?」

「…あるじゃんか、…お前には」



そう言うと佐野は、さっきとは別の笑みを浮かべて、イツキをチラリと見遣る。
それは、男とセックスする事なのだと、佐野もイツキも、言わなくても知っている。



「……そういうのが…、嫌だから…、なんか、他に出来ないかなって…、思ったんだよ…」
「…ふぅん。…お前がフツーに働くなんざ、想像も出来ないけどな…」



網の上の肉を裏返し、合間に、ビールを飲みながら、佐野は言う。
イツキはビール瓶を持ち、佐野の空いたグラスにそれを注ぎ、何食わぬ顔で、自分のグラスにも注ぐ。



「…チップで貰うの、とか…。マサヤに貰うお金だってそうだよ。…俺の周りは、汚いお金、ばっかりだよ…」




posted by 白黒ぼたん at 00:26 | TrackBack(0) | 日記
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