2016年01月22日

結論







「バイト、探してるんだって?…俺、誘われてるのがあるんだけど、今は無理だし、…それ、紹介しようか?」



イツキが図書室の小部屋でのんびりしていると、読みかけの本をぱたりと閉じて、大野がそう話し掛ける。
一人だけクラスが離れた大野は、最近は、イツキとこの部屋で話をすることが多い。
話題が少し遅れてしまうのが寂しいが、適度な距離感と、何より秘密めいたところが、いい。



「………もう、……しない」
「…え?」
「…一日だけ、したよ。梶原に紹介してもらったの…」
「へえ、どうだった?」


大野の問いに、イツキは少し不機嫌な顔をして、ふんと鼻を鳴らす。
その様子を見れば、そのバイトが上手く行かなかったのだということが解る。



「…あはは。…なんだ、何か欲しいもんでもあったのかよ?」
「…別に。お金が欲しかった訳じゃなくて…、……なんか……」


イツキはソファの上で窮屈そうに身体を伸ばし、それからまた器用に、落ちないように丸くなる。
その仕草は猫のようだと、大野はいつも思う。



「…なんか、お金って、…どうなってるのかなって。…俺、結構、お金の事でイロイロ…大変な事に遭ったし。今は、お金、あるけど…、多分、……あんまり良いお金じゃない。
ちゃんと、働いて、お金貰うのって、どんなものなんだろうって…思っただけ…」

「ふぅん。…それで? 答えは出た?」

「…まあね。…お金はお金だよ。綺麗も汚いも無いよ」



そう言って、イツキは小さく笑うのだった。





posted by 白黒ぼたん at 21:01 | TrackBack(0) | 日記
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