2016年02月06日

ちょっとした話・1



(…番外編的な)





その日、イツキがその界隈を歩いていたのは、単に道に迷ったからだった。


黒川の事務所に行くのに、いつものように、いつもの駅を通ったのだけど
以前、見掛けた和菓子屋にもう一度行ってみたくて、うろ覚えの出口から地上へ上がる。

日本一と言われる巨大ターミナルのこの駅は、1つ出口を違えるだけで、とんでもない方向へ放り出される。
イツキが地下街から階段を上がると、そこはおそらく、知っている街中のどこかなのだろうけど…目的の和菓子屋がある通りではなかった。



「………んー…」



と、少し、唸る。
まあ、それでも通りの看板や人の流れから、多分、正しい思われる方向へ歩き出す。
賑やかな通りは、黒川の事務所がある辺りより、少し、趣が違う。
風俗店などのいかがわしい店は少なく、替わりに音楽や小劇場などのホールがあるのか、若者が多く歩いていた。



「……やめて下さい。あたしたち、そんなんじゃ、ないです…!」



人混みの中から、そんな声が聞こえてくる。
どこにでもトラブルはあるのだろう、周囲もそんなに気にも留めず、イツキもちらりと伺っただけで、その向こうでタクシーが拾えないかと脇を通り過ぎる。


「…離してください、やだ。…本当に、そんなつもりじゃないんです!」


若い女性二人が、いわゆるチンピラ風の男に絡まれているようだった。
イツキは通り過ぎ、そして、足を止めて、ふと振り返ってしまう。


そこにいたのは、どこかで見たことのある、女の子だった。





posted by 白黒ぼたん at 23:00 | TrackBack(0) | 日記
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